<憑依>大好きな漫画の作者に憑依しました②~零夜先生~

男子大学生の秀雄が大好きな漫画ー
”霧の中の王国”

その作者である”零夜先生”に憑依して
漫画の続きを知ろうとした彼は
予想外の出来事に直面することにー

・・・・・・・・・・・・・・

「失礼します…零夜先生ー」
扉をノックする声が聞こえるー。

”漫画の続きを知るために零夜先生に憑依したいー”
秀雄はそう思って、憑依の術を使ったー

しかしー
”零夜先生”は本名も顔も不明の漫画家ー。

”零夜先生”という名前と、秀雄が頭の中で
勝手に思い浮かべている
ベートーベンのような音楽家風の零夜先生の姿を
浮かべて憑依の術を使ったところー
零夜先生ではなく、見知らぬ女性に憑依できてしまったのだー。

「ーーーえ…」

だがー
今、
”零夜先生”と部屋の外の声は言わなかっただろうかー。

そう思いながら「は…はい」と返事をすると、
「ーおはようございます。零夜先生ー」と、
穏やかそうな笑みを浮かべるギャルっぽい女性が入ってきたー

”…こ、この女の人ー、ギャルと同居してるのかー?”
ますます意味が分からないー

そう思いながらー
「ーーえ!?って、今、零夜先生って言ったー!?」
と、女性の身体のまま叫んでしまう秀雄ー。

「ーーはい」
ギャルはニコニコしながらそう返してくるー。

「ーーーーーー」
秀雄は、乗っ取った女性の可愛らしい雰囲気の部屋や、
部屋に飾られている人気キャラ・真ん中ぐらしのぬいぐるみを
見つめながら苦笑いするー

「あ、あのー…え?人違い…ですよね?」
女性の声でそう言うと、
ギャルは笑いながら答えたー。

「ーーえ~~何の冗談ですかぁ~?
 零夜先生~!」

とー。

「ーーーーーーー」
「ーーーーーーー」
「ーーーーーーー」

頭の中が混乱する秀雄ー

混乱の末に、秀雄がようやく振り絞った言葉はー
「え…?零夜先生ってー女?」だったー。

自分を指さしながらそう言うと、
ギャルは笑いながら
「ー先生~!ついに、自分を見失っちゃったんですかぁ~?」と呟いてからー

「ーーほら!先生!ちゃんとおっぱいついてますよね!」と
ギャルが秀雄が乗っ取った女性の胸を突然揉み始めるー

「ひぅ!?!?」
不意打ちだったからかー、
変な声を出してしまうー。

「ーほら、そこも、ついてないですよね?」
ギャルが笑いながら言うと、
秀雄は、乗っ取った女性の身体の下半身のほうを見つめながら
顔を真っ赤にして頷いたー

”ぼ、、ぼ、、ぼ、、僕ーー零夜先生に憑依…できてたのか?”

そう思いながら今一度鏡を見つめるー

”え…じゃ、、じゃあ…この穏やかそうな図書館で本を読んでそうなー
 女性が、零夜先生なのかー?”

そう思った瞬間、
一気にドキドキが爆発して、
顔を真っ赤にしてしまうー。

「ーーぼ、、ぼ、、ぼ、、ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ
 僕が零夜先生ー!?」

思わず、そう叫んでしまうと、ギャルは
「ー僕?」と、笑いながら反応したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

零夜先生に憑依した秀雄は、
ようやく少し気持ちを落ち着けると、
「仕事場の方に先に行ってますので、
 先生も早く来てくださいね」と、ギャルが笑いながら
立ち去っていくー。

零夜先生の本名はー、
綾野 麗(あやの うらら)ー

本名の麗(うらら)を麗(れい)と読み替えてー
父親が漫画を描くことに猛反対していたことから、
本名や素性を明かさずに漫画を描くことを決意、
”闇に紛れるように”漫画を描く麗ー…ということで
”零夜”という名前をつけたのだという。

「ーーー…そっか…零夜先生は女の人だったのかー」
麗に憑依した秀雄はドキドキしながら鏡を見つめるー

「ーこんな穏やかそうな人がー…
 あんな凄い話を描いているなんてー」

まるで男性作家のような迫力のある画風に、
場合によってはヒロインを容赦なく殺すこともある
情け無用の作風ー。

そんな作品をこの人が描いているなんてー…

正直、
かなり個性的な性格が、容姿にも出てしまっているような
”常人には理解できない芸術性を持つベートーベンのような容姿の人”
だと、勝手に想像していた秀雄は、拍子抜けしたー。

普通にー
どこにでもいそうな穏やかそうな人だー。

しかも、漫画の作風とはまるで異なる部屋ー
可愛らしい小物が並べられていてー
真ん中ぐらしのキャラクターグッズが置かれているー。

”霧の中の王国”の作者とは思えないー。
そんな、部屋だったー

「ーーいやー」
麗は呟くー。

さっきのギャルー…
あの子は、アシスタントの千乃(ちの)という子で、
零夜先生…つまり、麗の大学時代の後輩なのだというー。

大学時代から美術系のサークルで漫画を描いていた
零夜先生…麗に憧れて、大学卒業後もこうして
麗と共に仕事をしているのだとかー。

「ーそれにしても、零夜先生がまだ20代だなんて
 思わなかったなぁ…」

麗はそう呟くと、
”ますます霧の中の王国が好きになったー”と、
笑みを浮かべながら、
鏡を見つめるー

一瞬ー
エッチなことが頭によぎってしまったが、
すぐに首を横にぶんぶんと振ったー。

麗の髪が揺れて、そんな状況にも
ドキドキしながらー
「ーー僕は何を考えているんだ!」と、自分で自分を
しかりつけるー。

「ーーー…零夜先生は、大事な…そう、ファンにとっての、
 僕にとっても宝物だ…!
 その零夜先生の身体を汚すことなんて、してはいけないー!」

麗の身体でそう叫ぶと
「ーっていうか…零夜先生の身体で僕…って言ってるとー
 なんかこう…ドキドキするー」
と、顔を真っ赤にしながら呟いたー。

「ーーーーふぅ」
深呼吸をする麗ー

「僕が零夜先生に憑依したのは、
 漫画の続きを知りたいから…それだけだー。
 エッチなことはしないし、エッチなことは考えないー」

胸を揉みながらニヤニヤする麗や、
エッチな服を着て楽しそうにする麗のことを
一瞬思い浮かべてしまうも、
繰り返し”エッチなことはしないし、エッチなことは考えない”と
自分に言い聞かせる。

そしてー
再度深呼吸すると、
「よし!あのギャルの子のところに向かおうー」と、頷くー。

麗は、自宅兼仕事場で仕事をしていて、
プライベートの部屋と仕事部屋を分けているようだー。

アシスタントでもある千乃には、合鍵を預けていて、
こうしていつでも麗の家にやってくることが
できるようになっているー。

それだけ零夜先生は、この千乃というギャルの子のことを
信頼しているのだろうー。

「ーあ、零夜先生~!待ってましたよ~!」
千乃が嬉しそうに笑うー。

既に何かの作業をしているのだろうかー。
机に向かっていた千乃が振り返り、
「ーあ、じゃあ」と、何かを取り出そうとするー。

容姿は完全にギャルだが、
言葉遣いはしっかりしているし、
仕事もできそうな雰囲気だー。

この人もまた、”霧の中の王国”や、
零夜先生の過去作品を仕上げるためには
欠かせないピースのひとつなのだろう。

「ーーって…えぇっ!?」
麗に憑依している秀雄は思わず叫んでしまったー。

ギャルー…千乃が、突然”巫女服”を差し出してきたからだー。

「ーーーな、、な、、なに…?」
麗が普段どんな振る舞い方をしているのかは
全く分からないが、そう呟くと、
千乃は「な、なにって”いつもの”ですよ~?」と、笑うー。

「今日は巫女服ってことでしたしー」
千乃は、そう言うと、
「先生、いつも、”自分の描く物語のキャラの服を着て”
 執筆するじゃないですかぁ~」と呟いたー。

千乃によれば
”零夜先生”が漫画を描く際には、
”その時描いている回”で活躍するキャラクターと同じ服装をすることで、
零夜先生自身が物語の登場人物と”魂を共鳴”させて、漫画を描くのだというー。

それをすることによって、
零夜先生は、自然にその世界に意識を溶け込ませることができー、
独特な世界を生み出すことができるのだ、とー。

「ー(ふぇぇ…何を言ってるか全然僕には分からない…
 これが、独特な作品を生み出す人の感性とか…
 そういうやつなのかなー…?)」

「ささ、零夜先生!着替えちゃってください!」
アシスタントの千乃が、笑いながら言うー。

戸惑っている麗ー。
ニコニコしている千乃ー。

「ーーあ、あの…」
麗がようやく口を開くー

「ーはい?」
千乃がニコニコしたまま首を傾げるー。

「ーどこで、着替えればー?」
普通の服から、巫女服にどこで着替えろと言うのかー。
そんな風に思いながら麗に憑依した秀雄が戸惑っていると、
「どこって…?ここに決まってるじゃないですかー」と、
千乃はニコニコしながら答えたー。

「ーえ…え…えっ!?えーっと…め、目の前でー?!」
麗が顔を真っ赤にしながら言うと、
千乃は「今更何言ってるんですかぁ~先生~!」と笑うー。

「ーーいつも普通に着替えてるじゃないですか~!
 それに、別に何も減るものじゃないですし~!」
千乃の言葉に、
「ーそ、そ、それは、そうだけどー」
と、ドキドキしながら麗が言うー。

”だ、、ダメだ…漫画の先を見るどころじゃないー”

このままだと、ドキドキでこの場で失神してしまいそうだー。
そう思った秀雄は、慌てて”零夜先生”の身体から
抜け出そうとしたー。

零夜先生を汚すわけにはいかないー。
ここでおかしな行動をすれば
アシスタントのギャル・千乃にも変な風に思われてしまうかもしれないし、
アシスタントとの関係に傷をつけてしまうようなことがあれば、
零夜先生にも迷惑が掛かってしまうー。

そんなこと、絶対に、絶対に避けなくてはいけないー。

そう、思いながら秀雄は零夜先生から抜け出そうとするー。

けれどー

”どうやって抜け出せばいいんだよ”
つい”先を見たい”という思いだけで、憑依してしまったが
抜け出す方法が全く分からないー。

試しに”なんとなく零夜先生の身体から抜け出せそうなこと”を
やってみたが、何も変わらないー

念じてもー
魂をジャンプさせるようなイメージをしてもー

何をしてもー、だ。

しまいには、零夜先生の身体で、ジャンプしてしまったー

「ーーえ…??え…なに、急にジャンプしてるんですかー?」
零夜先生=麗が急にジャンプしたことに驚く千乃ー。

「あ、、ううん…あ、、あの…登場人物の気持ちになりきってー」
麗は咄嗟にそう言うと、千乃は「あ~…なるほど」と、頷くー。

”なるほど”って、いつもそんな感じなのかー?

と、思いながらも、
麗の身体から抜け出す方法が見つからず、途方に暮れるー。

”あれかー?
 僕が憑依してから1日経過したりすると、勝手に僕の身体に戻るのか…?”

憑依には制限時間があって、一定時間後に元に戻るのかー
それとも、一晩寝ると、自分の身体に戻るのかー。
詳しい条件は分からないが、とにかく元の身体に戻る条件が、
”何か”あるはずだー。

「ーーーー」
女の人の身体で着替えるだけで緊張するのにー
しかもその女の人が憧れの零夜先生でー
さらに、ギャルなアシスタントの子の目の前で
着替えることになるなんてー

ドキドキー
ドキドキー

不思議なことに、”着替え”の方法は
”身体”が覚えていたのか、自然と着替えることができていくー。

巫女服を身に着けるのもー
”新鮮味”を感じながらも、手は的確な動きで、
着替えを進めていたー

「ーー……う…」
顔を真っ赤にして言葉を失う巫女服の麗ー

「さ~先生!早速作業の続きを書きましょ」
笑う千乃ー。

その言葉に、作業スペースに座るとー
そこには”描いている途中の漫画の先の展開”、
そしてー”零夜先生”のこの先の展開のメモが
残されていたー

(おぉぉぉ!霧の中の王国の次回のお話ー…すげぇ…!)

あまりの衝撃に、麗は口をパクパクさせながら
目を輝かせたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

先の話をついに見ることに成功した彼の
このあとの行動は…!?

次回が最終回デス~!

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