<憑依>正気を取り戻すまでのこの時間

”憑依されていた人間が意識を取り戻すまで”

その時間に快感を感じる、
危険な男がいたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

男が、笑みを浮かべながら倒れ込んでいる
一人の女子大生を見つめていたー

彼女は、髪を乱したまま、床の上で横たわっているー。

死んでいるわけではないー
かと言って、寝ているわけではないー
酔いつぶれているわけでもないー。

男は、そんな彼女の前に、しゃがみこんで、
彼女が目を覚ますのを待っていたー。

彼女は今、気絶している状態だー。

しかしー
男が暴力を振るったわけではないー

目の前に、アイドルのような衣装を着た
ツインテールの女子大生が意識を失っているのには
ある理由があったー

「ーーーーー…なかなか起きないな」
男が笑みを浮かべるー。

彼女は、ついさっきまで、アイドルの衣装を着て、
アニメソングをノリノリで歌いながら、
踊っていたー。

部屋には、”風間 佑香(かざま ゆか)”と
書かれた学生証が転がっているー。

彼女はー
アニメ好きではないー。
いや、アニメも見ないー。

なのに、さっきまでアニメソングを熱唱し、
ノリノリで踊っていたー。

「ーーーーーーーーー」
男が時計のほうをちらちらと見るー

”この女”は、なかなか目を覚まさないなー。

そんな風に思いながらー

「ーーーう、、、」
時々うめき声をあげる佑香ー。

男は、そんな佑香を見ながら、ゾクゾクしていたー。

佑香は、先ほどまで、この男に憑依されていたのだー。

この世にはー
何らかの手段で”憑依能力”を手に入れた”憑依人”たちが、
少数ながら、存在しているー。

この男も、その一人ー
岩原 龍一(いわはら りゅういち)は、
知人を介して、憑依薬を手に入れて、憑依能力を会得した人物ー。

もちろん、憑依などというものは、世間一般には
知られておらず、それができる人間も”ごくわずか”だー。

だが、彼には、その力があったー。

そしてー
”憑依仲間”たちと異なるのは、
龍一は、”憑依している間”よりも、もっと楽しみにー
もっとゾクゾクしている時間があったー。

それが、”今”だー。

憑依されていた人間が
”正気を取り戻すまでのこの時間”

その時間に、彼は最も快感を感じていたー。

憑依されていた人間が気を失いー
無防備な状態で倒れ込んでいるのを見ると、興奮するー。

目を覚ますまでの時間や、反応も人によって
それぞれで、中には思わぬ反応を見せたりする人間もいるのだー。

そしてー
目を覚ました瞬間の反応も、人によって異なっているー。

「ーーー…う… あれ…?」
佑香が目を覚ますー。

眠そうに目をこすりながら、
「ーー寝落ちしちゃったかな…?」などと呟く佑香ー。

帰宅直後に男に憑依されたため、
佑香はそう思っているのかもしれないー

「ーーって…えぇっ!?」
佑香が驚いたような声を出すー。

”クククー すげぇ驚き方だなぁ”
龍一はそう思いながら、正気を取り戻した佑香を、
壁に寄りかかりながら、見つめているー。

龍一は今、自分の身体から”幽体離脱”して、
ここに来ているー
そのため”幽霊”や”透明人間”のような状態であり、
龍一がここにいることを、佑香は認識できていないー

「な…な、、なにこれ…?」
佑香が震えているー。

”まぁ…いきなりアイドルみたいなフリフリの服着てたら
 びびるか”

ニヤニヤしながらその様子を見つめる龍一。

”しかも、ツインテールだしなー”

佑香が普段、どのような髪型にしているのかは知らない。

だが、大学から帰ってきたときは、
少なくともツインテールではなかったし、
龍一が”物色”していた限りでは、
佑香はツインテールにしていることはなかったー

”目が覚めたらいきなり
 自分がアイドルみたいな恰好をしていて、
 しかも髪型をツインテールにしていた”

などということになれば、
驚くのも無理はないだろうー

「ーーーえ……え…… えっ…」
佑香は混乱している様子だったー

”クククー
 そう怯えるなって”

龍一は、そう呟くと、そのまま佑香の部屋から外に出たー。

壁をすり抜けて、上空まで浮遊する龍一。

”服”は、時間帯指定で佑香の家に到着するようにしてあったため、
佑香を乗っ取ったあと、佑香として受け取ったー。

”その服は、お前にやるぜー。
 ま、着払いでお前の金を使ったけどー”

そう呟きながら、龍一は”次”のターゲットを目指し、
そのまま場所を移動したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーぁ」

女子高生がニヤニヤしたまま、床に崩れ落ちるー。

龍一がたった今”抜け出した”のだー。

”へへへへ…やべぇなこの顔”

大人しそうな女子高生が、狂ったような笑みを浮かべながら
そのまま気絶しているー。

憑依から抜け出す瞬間に、
ニヤニヤしたまま抜けると、たまにこうなってしまうー。

”まるで、死んでるみたいだな”

死んでるみたいに動かない女子高生
ニヤニヤしたまま気絶していて、非常に不気味だー

今回は、実家暮らしの子ー、ということもあり、
服は買わず、そのまま学校帰りの制服でお楽しみをしたー。

ちょっと汗ばんでいるのもまた、マニアであれば
喜んだかもしれないー。

「ーーーう、、、…う… ぅ」
ニヤニヤしていた顔が歪み、憑依されていた女子高生が
苦しそうにピクピクし始めるー。

”たまに痙攣するやつ、いるんだよなー。
 やっぱ、憑依されるって、負担になるのかもな”

龍一はそんなことを考えながら
悪夢にうなされているかのような女子高生を見つめるー。

そしてー

「ーーひっ!?!?!?」
と、怯えた表情で、がばっと目を覚ましたー

”目覚めるまでは早かったなー
 なんか、苦しそうだけど”

龍一がそう呟くー。
だが、当然この女子高生には、
龍一の姿が見えていないし、
龍一に自分が憑依されていたことも、知らないー。

龍一は、笑みを浮かべながら
キョロキョロしている女子高生を見つめるー。

”へへへへへ…”
戸惑っている様子を見るのも、また快感の一つだー。

”さ~て、次は”

龍一は
その日”3人目”のターゲットへと向かうー

龍一は、毎週”10人”ほどターゲットを決めて
自分の休日である日曜日と月曜日に、こうして
欲望の限りを尽くしているー。

それ以外の日は仕事をしているし、
ずっと憑依ばかりしていると、他のことができなくなってしまうー。

だからこそ、龍一はこれを”自分の休日のお楽しみ”と
決めていたー。

「ーーーんぁぁぁぁ… んっ」
裸でキッチンに倒れ込む女ー

「お、、お母さん…お母さん!」
泣きながら少年が戸惑っているー。

龍一に憑依されて、突然服を脱ぎ捨てて
息子の前でエッチをした挙句、倒れた母親は、
白目を剥いて、ビクビクと痙攣していたー

”おぉ、激しい痙攣だなぁ”
龍一は笑みを浮かべるー

白目で苦しそうに震えている母親を見て
息子は泣きじゃくっているー

口からは泡を吹いているような状態の母親ー。

”へぇ…だいぶ激しい感じだな
 ゾクゾクするぜ”

龍一はそう呟くと、母親の様子を見つめるー

激しく身体を震わせてー
最後には、泡を口から垂らしながらー
そのまま動きが止まる母親ー

あまりの衝撃だったからかー
理由は分からないが、
失禁までしてしまっているように見えるー

”あらら…地獄のような状況だなー
 子供も泣いてるし”

龍一は、まるで人事かのように
そんな風に呟くと、
母親が目を覚ましたのを見届けて、そのまま”4人目”の
ターゲットへと向かったー

4人目はー
一人暮らしのOLー。

わざと酒を飲みまくって、
OLの身体で酔っぱらう龍一。

「うへへへへへぇ…やっべぇなぁぁぁ」
OLの身体で酔った状態を体感しつつー
憑依から抜け出すーーー

するとー

「ふぉっ!」
龍一は、笑みを浮かべるー

”酔った身体”から抜け出すとその瞬間に
”一気に正気に戻る”という、
普通の人間では経験できない感覚を味わうことが
できるのだー。

泥酔状態から、いきなり正気ー
この、感覚は、何とも表現できない
独特の味わいだったー。

”ふ~~~…さて”
龍一は笑みを浮かべながら、居酒屋で酔いつぶれたOLを見つめるー。

”へへへへ…こりゃ当分目を覚まさねぇだろうな”
龍一は笑みを浮かべるー。

店主も、周囲の客も、
”酔いつぶれそうな感じには見えない美人”が
酔いつぶれていることに困惑の表情を
浮かべている様子だー。

「ーーー…ん…」
OLが声を漏らすー。

龍一は”お…泥酔してる割に正気を取り戻すのが早いな”と笑うー。

だがー
帰宅途中に憑依されて、気づいたら酔いつぶれている状態をー
本人は認識できるのだろうかー

「ーーーーん……ぁ~~~~~?」
イってしまっているような目つきで、OLがそう呟くと、
「ー姉ちゃん姉ちゃん」と、近くにいた金髪の男二人組が
OLに声をかけるー

「そんな酔いつぶれて、どうしちゃったのさぁ~?」
チャラそうな男の言葉に、OLは
「うっせ~よ!」と、叫びながら、へらへらと笑うー。

「ーーあ~~あ~~あ~~そんなに酔っちゃって」
金髪の男の一人にそう言われると、
OLは、自分が酔っていることも理解できていないような様子で
「ーわたしは…無敵の女なのぉ~」と、一人ゲラゲラ笑いだすー。

憑依前に調べた感じでは、普段はこんな性格ではないー。
酔っ払いすぎて、正気に戻ったのに、正気ではないー
そんな状態になってしまっているのだー。

「ーーーなぁなぁ、姉ちゃん、このあとどう?ホテル」
金髪の男の一人が言うと、
OLは「ホテルぅ~?」と、首を傾げながらも、
「ーいってやるわよ!」と、笑いながら叫びー
そのまま男たちに支えられながら、
居酒屋を後にしてしまったー

”あらら”
龍一は、笑うー。

”し~らねっと”
あのOLはどうなるのだろうかー。
ホテルに連れ込まれて、色々されてしまうのだろうかー。

まぁー
龍一には、そのようなことはどうでも良いことだー。

”でもいきなり憑依されて目覚めたら酔いつぶれてた、なんて状況じゃ、
 本人は驚くだろうなぁ…へへ”

そんな風に考えながら、
龍一は、この日の最後の獲物ー
”5人目”の対象の場所に向かおうとしたー。

だがーー

「ーーーー!!!!!!!!!!!」
龍一は、偶然、街を歩いていた女に目を奪われたー

一目ぼれー…
ではない。

3年前に実家を出た姉・萌(もえ)が、夫らしき人物と一緒に
歩いていたのだー。

龍一が実家を出たのは2年前ー。24の時だ。
萌は、その1年前に実家を出て、結婚したと聞いているー。
現在は確か、29だったはずだー。

姉・萌とは仲が悪く、ここ3年、一切連絡も取り合っていなかったが
こんなところで再会するとはー

”クククー姉貴がこんなところにいるとはなー”
龍一は笑みを浮かべるー

姉であろうと、母であろうと、見知らぬ女であろうとー
今の龍一にとって、
”女体”は”器”でしかないー。

龍一の憑依能力を持ってすれば、
誰であろうと”支配”することができるし、
”誰であろうと”意のままに操ることができるー

夫と幸せそうに歩いている萌を見て、
龍一は静かに微笑んだー

”姉貴ー。今日の5人目は、お前に決めたよー”

姉・萌は
”意識を取り戻すまでの時間”どんな反応を見せてくれるだろうかー。

そしてー
”意識を取り戻した瞬間”
そんな反応を見せてくれるだろうかー。

そんなことを思いながら、龍一は、姉・萌に
躊躇することなく、憑依するのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

以前から書こうと思っていたネタの一つだったのですが、
「書くほどでもないかな…?」と、今までお蔵入りになっていたお話デス~!

ちょうど年末年始の「体越し」との兼ね合いで、
単発のお話を2日続けることになったので、
今回、書いてみました~!

たまには、違う部分に快感を感じている憑依人も新鮮ですネ~!

お読みくださりありがとうございました!☆

PR
小説

コメント