<入れ替わり>ラーメンチェンジ①~頑固な店主~

店主が頑固なことで有名なラーメン店。

そんなラーメン店の前を通りがかった女子高生が
偶然お店の脇から出てきた店主と激突!

身体が入れ替わってしまい…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー不満があるなら、来なけりゃいいんだ。
 とっとと消えな」

ラーメン屋の店主がそう言い放つー

たった今、クレームをつけていたクレーマーの男は
「なんだと!?」と怒りの形相を浮かべるー。

「ーーこんなふざけた味のラーメンが食えるかってんだ!」

男はー
このあたりの飲食店に入っては味にクレームをつけて
怒涛の勢いで返金を要求し、”無銭飲食”を繰り返している男だったー。

「ーーーなら、残して帰れ」
店主の男は、動じることもなく、そう言い放ち
クレーマーの男に目を合わせようともしないー。

「ーーーはぁ?ふざけんじゃねぇよジジイ!
 客に向かってなんだその態度は!」

クレーマーの男が机を叩くと同時にー
「ーーうるせぇな!」と、店主の怒鳴り声が響き渡ったー

「ーーお前みたいな奴が客だと?笑わせるんじゃねぇよ。
 客扱いして貰いたけりゃ、まずはルールを守るんだな。

 店の敷地内に入っただけで、”お客様”扱いして貰えると
 思うなってんだ!」

店主の言葉に、クレーマーの男は
「ーーく…く…ネットで晒してやるぞ!」と怒りの言葉を口にするー

「ーあ~~あ~~、そういうの面倒くせぇ!好きにしろクレーマー野郎」
店主が言うと、クレーマーの男は、返金されなかったことに
腹を立てて、そのまま店から飛び出していったー。

「ーーーお騒がせして、申し訳ないー」
店主が、店内にいた他の2名の客に向かって頭を下げるー。

”頑麺”
そう名付けられたこのラーメン店は、
店主の父の代から始まったラーメン店で、
有名ではないが、地域の根強い常連客によって支えられているお店だ。

現在の店主ー
2代目店主の角蔵(かくぞう)は、
非常に頑固な性格で、
口も悪かったが、
その一方で、”お客様”に対しては
”最高の食事”を提供できるように、
手厚くもてなす人物でもあったー。

ラーメンに対しては人一倍こだわりが強く、
父から受け継いだ独自製法で、妥協を許さない
ラーメン作りを行っているー。

「ーーいえいえ、角蔵さんは何も悪くないですよ」

「ーあいつ、この前、牛丼屋でも、”なんだこのゴムみたいな牛は!”
 とか言ってましたからねぇ」

2名の客がそれぞれ笑うー。

「ーいやいや、それでも食事中に見苦しいものを見せて申し訳ないー」

そう言うと、
角蔵は、二人にトッピングを無料で提供することを提案し、
二人の客はそれぞれ、味付けタマゴを注文するのだったー。

そんな、頑固な店主のラーメン屋ー。

これからー
”予想外の出来事”が起きるとは、
店主の角蔵も、常連客もー

そしてーーー

ごく普通の女子高生のー
宮原 深雪(みやはら みゆき)も、まだ知らなかったー。

「ーー明日、予定とかあるの~?」
深雪と一緒に下校中の友人、庄山 澄子(しょうやま すみこ)が呟くとー
「ー明日は特に何も~」と、深雪が答えるー。

明日は土曜日ー
深雪も、澄子も”金曜日の下校中”の解放感を味わいながら歩いていたー。

深雪と澄子が、手を振って分かれて、別々の道を進むー。

「ーー明日は何しようかな~」
そんな風に呟きながら、深雪が商店街の中心部から少し外れた道を歩くー。

深雪は、綺麗な黒髪に、
可愛らしい顔立ちの女子高生ー

特別、特徴的な顔立ちではなく
”どこにでもいそうな可愛い子”という感じの子だー。
成績もほどほどに良く、学校での態度も、一般的に良い感じの
ごく普通の女子高生だー。

たまに”深雪ってあんまり特徴がないよね!”などと
揶揄われたりするものの、
本人は「ノーマルが一番!」などとあまり気にしていない様子だったー。

そんな深雪にとって、苦手なものがあるー。

それはー
”ラーメン”だったー。

父親がラーメン好きで、小さいころは、
よくそんな父に無理やりラーメン屋に連れていかれて、
大変な思いをした記憶もあるー。
ラーメン屋に行くたびに、ラーメンが食べられない深雪は
オムライスやチキンライス、チャーハンなどを食べて
やり過ごしたー。

「ーーーー」
家に向かって歩く深雪ー

頑固なラーメン屋店主が経営するお店・頑麺の前を通るー。

いつも、高校への登校・下校の際に
このお店の前は必ず通るのだが、
ラーメン嫌いの深雪は、当然この”頑麺”にも
入ったことはないー。

しかしー

ちょうど、お店の脇の設備の確認をしていて、
建物の脇から出てきた店主の角蔵とー
まさか、”そんな場所から人が出てくる”と
思ってもいなかった深雪がーー

「ーーーあ!」
「ーー!!!!」

ぶつかって、転倒してしまったー

「ーーどこ見て歩いてるんだ!」

「ーーす、すみません!ごめんなさい!」

同時に叫ぶ二人ー

しかしーーー

「ーーーえ?」

「ーーーーえ??」

二人は、目を見合わせて、目をパチパチとさせるー。

怒鳴りつけたのは、深雪ー

怒鳴られて咄嗟に謝ったのは、角蔵ー。

何かが、おかしいそんな光景が広がっているー。

「ーな、何で俺がもう一人ー?」
深雪が、目の前の角蔵を指さして呟くー。

「ーーえ…わ、わたしー?」
角蔵が、目の前の深雪を指さして呟くー。

二人は、ぶつかった衝撃でー
身体が入れ替わってしまったのだったー

「ーーん???」
胸を触る深雪(角蔵)ー

「ーーお???」
スカートを触る深雪(角蔵)ー

手や、髪、口元、頬、
色々な場所を触った挙句、
最後に「ーーーーえ?」と、困惑したような表情を浮かべたー

ナチュラルに目の前で胸を触られた角蔵(深雪)は
戸惑った様子で、「え!?ちょっと…こ、これ、どういうことですか?」と
首を傾げながら呟いたー

「ーーー……お、、俺に分かるわけないだろ!」
深雪(角蔵)は、深雪の声でそう叫ぶと
「と、とにかく店内で話そう!」
と、深雪(角蔵)が、角蔵(深雪)を店内に引っ張り込んだー。

「ーーーえっ!?えっ!?」
角蔵になってしまった深雪は、突然の出来事に
困惑を隠せない様子ー。

”あ、アニメで見たことあるけど…こ、こんなことってー!?”
アニメで見たような展開ー
まさか、自分がこんな経験をすることになるなんてー…!?

と、角蔵(深雪)は戸惑うー。

そして、ラーメン店の中に連れて来られてしまった角蔵(深雪)は
「あーー…あの、わたしたち…入れ替わってー…」と、声を発したー

入れ替わってしまったこの状況…
まずはお互いに状況をーーー

「バカ野郎!!!!!!!!!
 どこ見て歩いてるんだ!お前は!」

てっきりー
入れ替わったことについて話しだすのかと思っていた
角蔵(深雪)は、深雪(角蔵)の突然の怒鳴り声に驚いてビクッとしてしまうー

「全く!前も見ずに歩いているから、こんな風になるんだ!
 だいたい最近の若い奴らはな、スマホとかをー」

ガミガミと文句を言いだす深雪(角蔵)ー

それを、深雪の姿と声でやられるのだから、
たまったものではないー

角蔵(深雪)は、ごめんなさい!ごめんなさい!と謝りながら、
”わたしって怒るとこんなに怖いの…?”と心の中で
ビクビクしながら深雪(角蔵)のほうを見たー。

確かにー
スマホはいじってなかったが、深雪は”土曜日と日曜日何をしようかなぁ”などと
思いながら歩いていたためー
前をあまり見ていなかったのはあるかもしれないー。

そんな風に思いながらひたすら謝り続けていると、
「ったく、どうしてくれるんだよ」と、
不機嫌そうに深雪(角蔵)が呟いたー。

「ーーえ…えっと…」
角蔵(深雪)が戸惑っていると
「ーあと30分で夜の部が始まるってのに」と、不満そうに
深雪(角蔵)が呟くー。

深雪の身体で、”おじさんの説教”が長々と続くー。
角蔵(深雪)は、ひたすら謝りながらも、
”おじいさんだって、前を見てなかったんじゃ…?”と、
だんだんと不満を抱き始めるー。

「ーー俺の身体でそんなに謝られると、
 まるで俺が謝ってるみたいだから、もう謝らなくていい!」

角蔵(深雪)が不満に思い始めていた最中、
深雪(角蔵)はそんな風に呟いたー。

”どうしてそこまで言われないといけないのか”
というほどに、酷く怒られ続けた角蔵(深雪)は、
少し不貞腐れていたー。

確かに、自分にも悪いところはあったかもしれないし、
こんな風に”身体が入れ替わってしまった”という状況は
大変なことだけど、
それは、こちらも同じことー

”わたしだって不安なのにー”
と、思いながら、目から涙をこぼすと、
深雪(角蔵)は「泣いてる場合じゃない!」と叫ぶー。

「ーーえ」
角蔵(深雪)が言うー

「ー早く、準備をするんだ!」
とー。

「ーー準備…って、どういうことですか?」
角蔵(深雪)が涙を拭きながら言うと、
「決まってるだろ?店の準備だよ!それ以外に何があるってんだ!」
と、深雪(角蔵)が腕組みをしながら呟いたー。

「ーーーえ…わ、、わたしがやるんですか…?」
角蔵(深雪)が困惑しながら言うー。
まさかこの頑固そうなおじいさんは、わたしにお店を
やれって言ってるのー?と、深雪は
角蔵の身体でおろおろとしてしまうー。

「ーー俺のラーメンを楽しみに食べに来てくれるお客さんがいるんだー。
 その人たちを、裏切ることはできねぇ」

深雪(角蔵)のその言葉に、
「ーーえ…え、、そ、それは、それはわかりますけど!」と、
角蔵(深雪)は叫び返すー。

「わ、わたし、ラーメンなんて、
 カップラーメンとか、袋のラーメンしか
 作ったことないですよ!?」

角蔵(深雪)は、料理が苦手、というわけではなかったが、
ラーメンが苦手だからー
当然、自らラーメンを作るようなことはなかったー。

弟が小さいころに、カップラーメンを作ってあげたり、
袋のラーメンを作ってあげたり、
そういうことをした程度だー。

「ーーー…んなこと分かってるよ!
 いかにも料理できなさそうな顔だからな!」

深雪(角蔵)がそう言うと、
角蔵(深雪)は「あ!顔で決めるの失礼ですよ!」と、
少し不満そうに呟くー。

深雪(角蔵)は、角蔵(深雪)のほうを見つめると、
また、”小言”を口にーー

ーーは、しなかったー

「ーーそれもそうだ。すまん」
深雪(角蔵)は手短にそう言うと、
「とにかく!お店をやらなくちゃならねぇ」
と、すぐに店の話題に戻すと、
「ーーい、いえ、あの!わたしだって、帰らないといけないんですけど!」
と、下校中であることを主張するー。

時計を見る深雪(角蔵)ー。

「ーーー何時までに帰らないといけないんだ?」

今は夕方ー

角蔵(深雪)は「9時までにはー」と呟くと
「それなら、まだ平気だろ!」と、深雪(角蔵)は言いながら、
お店の準備をするように、再び促してきたー

「え…ちょ、ちょっと待ってくださいってば!
 わたし、ラーメンなんてー」

角蔵(深雪)が叫ぶとー
深雪(角蔵)は自身に満ち溢れた表情で言い放ったー

「ー大丈夫だよ!代わりに俺が作るからー」
深雪(角蔵)は言うー。

角蔵になった深雪は、”角蔵のフリをして、店に立ったり、
奥でラーメンを作ってるフリをすればいい”とー。

そして、深雪になった角蔵は
”新人女子高生アルバイト”として、
角蔵から教わっているフリをしながら奥でラーメンを作る、

とー。

「ーーえぇぇ!?」

深雪(角蔵)の提案に、角蔵(深雪)は困惑することしかできなかったー。

②へ続く

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コメント

ラーメン店の頑固な店主との入れ替わりモノデス~!

入れ替わった状態で、お店をやることに…!?
色々大変そうですネ~!

今日もお読みくださりありがとうございました!!

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