”モテる親友”
彼に疑問を抱いた航は、
彼のことを調べ始めるー。
その先に待っている結末は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーで、でも、佐奈…この前…その…」
航は困惑しながら呟くー
「ついこの前、浮気してたよな…?」
航はそう言い放つー。
「だってわたし、エッチなことしたいんだもん!」
「龍哉なんかじゃ、満足できない!」
佐奈はつい先日、クラスメイトたちの前でそう騒ぎー
クラスメイトたちを引かせたばかりだー。
それなのにー
「ーーそ、それは…わ、、わたしにもよくー」
佐奈の目が、明らかに泳ぐー。
動揺しているのが分かるー。
龍哉の洗脳はー
”完全に全てをコントロール”することもできるものの、
普段はある程度自由に行動させていたー
流石に、自分への行為を植え付けた相手を全て、
自分でコントロールするのは、無理があるし、
日常生活はある程度本人に任せる必要があったー。
そのためー
色々と思想や、考え方、記憶に手を加えてあるもののー
今回は”新しい本命の彼女にしようとしていた梨香子”が
航の妹だと知り、慌てて計画を変更してしまったため、
綻びがあったー。
佐奈のことも、”新しい彼女”を作るために、
クラスメイトたちの前でわざと浮気させて、
佐奈を悪者にした上で別れようとしていたのだがー、
梨香子がダメになったことで、急遽、佐奈と復縁したことで、
周囲からも変な印象を持たれた挙句ー、
佐奈に対する洗脳も、不自然な形になってしまっていたのだー。
「わ、、わたし…なんか…変なの…」
佐奈が急に不安そうな表情になって呟くー。
「ーーー変?」
航は首を傾げるー
「ーーた、、確かに”変”だから、俺…心配なんだー」
航はすぐにそうつけ加えると、
佐奈はさらに不安そうな表情を浮かべたー
「ーわたし…龍哉のことで頭がいっぱいなのー…
龍哉のためなら…なんでもしたいって、そういう気持ちが
身体の底から湧き出てくるのー…
でもーー
わたし…」
佐奈は、「ーー自分が、よくわからないー」と、言うと、
航のほうを見て、「わたし、どうしちゃったのかなー?」と、
不安そうに呟くー。
「ーーさ、、佐奈… 落ち着くんだー」
航はそう言うと、ひとまず、佐奈を落ち着かせようとするー。
その時だったー
「ーーーーーー!!!」
偶然、佐奈と航が会話しているのを、通りすがりの龍哉が
目撃してしまったー
表情を歪める龍哉ー。
(このままじゃまずいー)
龍哉は、佐奈の顔を思い浮かべながら、咄嗟に
佐奈に、新たな”命令”を送るー。
「ーーーわたし…龍哉にーーー何か…されてるのかもー」
佐奈が、そんな不安を口走ったー
航は「それはどういうー?」と、聞き返すー。
しかしー
「ーーっく…」
佐奈が突然、一瞬震えるような動きをしたー。
「ーー佐奈…?」
航が、そんな、佐奈のおかしな動きに反応して佐奈のほうを見ると、
佐奈は突然、敵意を航に向けたー
「ーーーー…な~んて、わたしが不安を感じてるとでも思った?」
航を睨みつけながら突然そう呟く佐奈ー
「え…?」
航は佐奈の豹変に驚くー。
「ーーわたしは龍哉が大好きなのー。
わたしを龍哉から引き離そうっていったってそうはいかないー。
あんた、龍哉からわたしを奪おうとしてるんでしょ?
そんなこと、させないー」
佐奈の言葉に、
航は「いきなり…何を言ってるんだよ…?」と、戸惑うー。
「ーーーこれ以上、わたしに関わらないで」
佐奈はそれだけ言うと、乱暴に空き教室の扉を開けて、
そのまま立ち去ってしまったー。
「ーー……佐奈!」
航は、佐奈を追いかけようとするー。
”佐奈の様子は明らかにおかしいー
何が起きているー?”
”モテる親友”龍哉への疑問ー
そして、幼馴染である佐奈のおかしな行動ー
航は、純粋に佐奈のことを心配して、
そのあとを追うー。
”くそっー”
物陰からその様子を見つめていた龍哉が、
”これ以上は無理だー”
と、呟くー。
こうなったら、航を洗脳してしまうしかないー。
「ーーーー親友を失うのは悲しいけどー…」
龍哉は、”少しでも洗脳した相手”は、もう、”本来のその人間ではない”という
考えを持っているー
だからこそ、親友である航を洗脳したくはなかったー。
だがー
もう、これ以上は無理だー。
”屋上に行け”
龍哉は、佐奈にそう”命令”するー。
「ーーーぁ…」
廊下を走っていた佐奈は、震えながら、
突然屋上の方に向かって走り出すー。
「ーー佐奈!」
佐奈が屋上に向かっていることに気付いた航がそう叫びながらー
佐奈を追って、屋上にたどり着いたー。
”ーーー”
龍哉は、屋上に向かいながら、全神経を集中させて、
佐奈を完全に支配するー
「ーーわ、わ、、航ー…お前は…知りすぎたー」
佐奈が、不自然な口調でそう呟くー。
「ーーな、なんだってー?」
屋上にたどり着いた航が、佐奈に向かって叫ぶー。
「ーーーお前の…お前の妹を、お前の妹だと知らずに、
洗脳したのは、誤算だったよー」
佐奈の言葉に、航は「何を言ってる!?」と叫ぶー。
佐奈の言ってる意味が分からないー。
”ーーーーー”
屋上に向かう非常階段を登りながら、龍哉は佐奈を通じて会話を続けるー。
佐奈に言葉を喋らせている間に、屋上にたどり着きー
背後から航に声を掛けてー
航が振り向いた瞬間に”洗脳”するー。
それで、おわりだー。
「ーー悪いな航ー
俺は…”モテモテ”でいたいんだー」
龍哉はそれだけ呟くと、
再び、佐奈に神経を集中させるー。
「ーーーわたしは、龍哉の操り人形ー」
佐奈の言葉に、航は「なんだって!?」と叫ぶー。
「ーーわたしも、保険の先生もー、航の妹もー
み~んな、龍哉の意のままに動く人形なの」
佐奈がクスクスと笑うー。
航は唖然としながらも「そ…そんなこと、あるわけがー」と、戸惑うー。
佐奈はクスッと笑うと
「ーー本当だよ」と、笑うー。
「ーー信じられないなら、見せてやるよー」
その言葉と同時に、佐奈は、狂ったように踊り始めるー。
意味不明は、奇妙なダンスを笑いながら踊る佐奈ー
「ーー佐奈が、こんなことするかぁ??
ははっ!いひひひひひひひひひっ!
ほら、狂え!身体を狂ったように動かせ!」
佐奈の身体が時々ぽきっと、音を立てながら、
狂気のダンスを踊るー。
「お、、おい!やめろ!やめろ!」
航が叫ぶと、佐奈は身体を折り曲げたまま、ニヤァ…と笑うー。
「ーーー俺が、モテてた理由ー…
これで、わかっただろー?
俺は、相手の目を見ることで、相手を洗脳することができるんだー」
佐奈が、龍哉の言葉を口にするー。
猫背のような態勢のまま、佐奈は笑みを浮かべるー
「ーーわたしね…航のことが好きだったんだよー?
洗脳して、ぜ~んぶ、喋らせたから、俺、よ~く知ってるんだー
お前のこと、好きだったみたいだぞ?佐奈ちゃんー」
佐奈がニヤニヤしながら近づいてくるー。
”ーーーー”
龍哉は、まもなく屋上に到着するところまで
非常階段を登っていたー。
佐奈を使って航を”あえて”挑発しているのはー
”航が余計な行動をしないようにするため”だー。
佐奈を洗脳して、佐奈に視線を釘付けにしていればー
他の行動は起こさないー
佐奈のことで精一杯になるはずー
その間に航を洗脳してしまえばー
この騒動は、これ以上、広がることはないー。
「ーー航も、わたしといっしょにー
龍哉の操り人形に、なろっー
そしたら、わたしともヤラせてあげるからー
ふふ…ふふふふふふふ」
佐奈が笑みを浮かべるー。
航は「ふ、、ふざけるな!目を覚ませ!佐奈!」と叫ぶー。
そしてーー
龍哉が屋上にたどり着いたー。
”時間稼ぎ”は成功したー
人目につかない屋上で、航を洗脳してー
それで、フィニッシュだー。
”これからも、俺はモテモテの人生を、送るぜー”
龍哉は、笑みを浮かべながら背を向けて立っている航に向かって叫ぶー。
「ーー航ーーーーーーーーー!」
とー。
佐奈への命令を止めた龍哉ー
佐奈が、その場に膝をついて、口を開いたまま、
動かなくなるー。
「ーーーー」
航は抜け殻のように膝をついた佐奈を見て
怒りがこみ上げてくるー
「ーー俺はお前のこと、親友だと思ってたー」
龍哉は、航に向かってそう呟くー。
「ーーでも…俺に疑問を抱かれちゃったならー…仕方ないー」
龍哉はそう呟くと、航の後ろ姿を見つめるー。
”航ー…悪いなー…
でも、俺はこのモテモテの人生を捨てるつもりはないんだー”
龍哉は心の中でそう呟くと、
航がこちらを振り返った瞬間に航を”洗脳”しようと、心の準備を始めたー。
屋上に強めの風が吹くー。
その時だったー
「ーー!?」
航が龍哉に背中を向けたまま、後ろ向きに迫ってくるー
「ーーー!?!?!?」
龍哉が慌てて航を洗脳しようとするー。
しかしー
龍哉の”洗脳”は、相手の目を見ていないと、することはできないー。
一度洗脳さえしてしまえば、いつでも意のままに操ることができるのだがー
最初は、相手の目を見る必要がー
後ろ向きに迫ってきた航が、龍哉の前にやってくるー。
龍哉は慌てて、航の正面に回り込んで、航の目を見つめようとするー。
しかしー
正面に回り込むとー
航は目を瞑っていたー。
「ーー俺だって、お前のこと親友だと思ってたよ」
航は、目を瞑ったままそう呟くとー
悔しそうに「お前が、そんな奴だったなんてー」と、歯ぎしりしながらー
龍哉に拳を叩きつけたー。
「ぐあっ!」
吹き飛ばされる龍哉ー。
航は、目を絶対に合わせないように、
目を瞑ったり、逸らしたりしながら、
龍哉の胸倉を掴んだー。
「ーーみんなを…元に、元に戻せ!」
航が龍哉の胸倉を掴むー。
龍哉は「わ、、、航ー…やめてくれ…わかった…わかった!」と
悲鳴を上げるー。
だがー
それも演技ー。
龍哉は航が目を開いた瞬間に、航を洗脳するつもりだったー。
「ーーーーー……だったらー
龍哉ー」
航が目を開くー。
その瞬間ー
龍哉が目を赤く光らせーーーー
「ーーーーーやっぱり、お前はそういうやつだよー」
航は、洗脳される直前にーー
龍哉の顔面を思いっきり殴りつけたー。
”洗脳”のことを事前に理解していたからこそー
洗脳されるまでのわずかな時間で、龍哉を殴りつけることができたー。
龍哉は、”しゃべりすぎた”
佐奈を使って、”目を見て洗脳する”ということを喋る必要は、なかったのだー。
龍哉を殴りながら、航は思うー。
暴力なんて、振るいたくないー。
同級生の目を殴りつけた男としてー
自分は、罪に問われるかもしれないー。
けれどー。
やるしかなかったー。
佐奈と、梨香子をー
みんなを守るためにー。
”洗脳”なんて周囲は誰も信じないだろうー。
龍哉にそういう力がある限り、龍哉の目を潰しでもしなければー
龍哉は、この場では反省しても、また、必ず誰かを洗脳するだろうー。
「ーーーお前のしたことは、絶対に許されないー」
航は、泣いていたー。
「ー龍哉ーー…俺がお前にしてやれることはーー
これだけだー」
親友の”これ以上の暴走”を止めるー。
航は、泣きながらー
龍哉がもう、これ以上”人を洗脳”できないようー
龍哉を、傷めつけたー。
この日ー
龍哉は、失明したー。
そしてー
それと同時に、幼馴染の佐奈も、妹の梨香子もー
洗脳されていた他の人々も、無事に正気を取り戻したのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー悪いのは、全部、俺なんだー」
当然、航は”同級生を失明させた”として
大問題ー
警察沙汰になったー。
だが、しかしー
龍哉は”悪いのは全部俺だー”と、言い続けたー。
自分の目は、自分でダメにしたのだとー。
自分で、自分を傷つけたのだとー。
被害者であるはずの龍哉が一貫して、
”悪いのは自分”だと主張しー
目を殴りつけたのも、自傷行為だと主張を繰り返しー、
航と龍哉の争いを目撃している人間もいなかったことからー
航はー
相当色々周囲から言われたもののー
学校には、残ることができたー。
龍哉は、洗脳の力を失い、目を失いー
始めて、己の罪に気づいたのだろうかー。
航に対して、病院で、深々と頭を下げながらー
「俺を止めてくれてありがとうー」と、そう呟いたのだったー。
正気を取り戻した佐奈は、航に対して、申し訳なさそうに
「わたし…ごめんね…」と、頭を下げたー。
自分が、好き放題されていたことをわずかながら、覚えているのだと言うー。
妹の梨香子は、期間が短かったからか、あまり自覚はなかった様子だったがー
それでも、佐奈も、梨香子も無事に正気に戻ったことは、確かだったー。
「ーーーーー」
航は、自分の拳を見つめるー。
”モテる親友”を止める他の方法はなかったのだろうかー。
どんな理由であれ、この拳は親友の目をダメにしてしまった拳だー。
航は、そんな風に思いながらー
”でもーーー”と、
親友の龍哉がこれ以上罪を重ねることはなくなりー、
佐奈と梨香子、他の被害者たちは、日常を取り戻したー。
「ーーーーこれで、これで、きっと、よかったんだー」
航は、恐らく、自分は親友の目をダメにしたことを
永遠に苦しみ続けて生きていくことになるだろう、と自分で考えるー
けれどー
それでもー
「ーこれで、よかったんだー」
と、教室で他の女子と話をしながら笑っている佐奈の笑顔を見つめながら
そう、自分に言い聞かせるのだったー
おわり
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コメント
モテる親友の最終回でした~!
洗脳されていた人々は無事に解放されましたが、
航くんには、モヤモヤが残るお話になってしまいましたネ…!
お読みくださり、ありがとうございました!
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