”妙にモテる親友”
そんな彼の家に、
自分の妹が密かに足を運んでいたことを知った兄・航はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーおかえり~!」
帰宅した兄・航を出迎える妹の梨香子ー。
航は「ただいま」と言いながらも表情を曇らせるー。
友達と遊びに行く前に、忘れ物を取りに戻った航は、
梨香子が家からこっそりと出ていく姿を偶然目撃してしまいー
気になった航は、梨香子を尾行したー。
その結果ー
梨香子が、親友の龍哉の家に入って行ったのだー。
しかも、玄関先で、梨香子と航がキスをしているように見えたー。
「ーーーどうしたの?お兄ちゃん?」
梨香子の言葉に、航は「いや」と呟いて、そのまま部屋に向かうー。
友人との約束があったため、結局、あの様子を確認してから、
すぐに引き返して、友人の元に向かったもののー
航の中ではモヤモヤが膨らんでいたー。
梨香子は、彼氏ができたと言っていたー。
まさか、航の親友である龍哉のことなのではないかー?と、そう疑問を抱くー。
もちろんー
”妹の彼氏”が”親友”であったとしても、
航は、祝福するつもりだし、
それだけであれば、何も問題はないー
だが、龍哉は、航の幼馴染である同級生・佐奈と既に付き合っているー。
そうなればー
もし、梨香子の彼氏が、龍哉のことなのだとしたら、
”梨香子は遊ばれている”あるいはー
”龍哉に彼女がいることを知った上で付き合っている”ことに
なってしまうー。
もしもー
親友の龍哉が、妹の梨香子のことを遊んでいるのであればー
どうにかしなくてはならないー。
航は、そう思いながら、複雑な感情を抱きー
そのままスマホのほうを見つめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーふぅ~最高だったな」
龍哉が笑みを浮かべるー。
洗脳した梨香子を部屋に連れ込んだあとにー
梨香子にメイド服を着せて、たっぷりご奉仕させたー。
梨香子のフェラは最高だったー。
あんなにかわいい子に、あんなことをさせることができるなんてー
「ーー”最高の力”だー」
龍哉は呟くー。
龍哉には、人を洗脳して、意のままに操る力があったー。
もちろん、最初からそんな力があったわけではないしー
そういう力を、自分から手に入れたわけではないー。
だがー
龍哉は、中学3年生の時に、高熱で1週間ほど寝込みー
生死の淵をさまよった際にー、
この力に目覚めたのだー。
理由は、分からないー。
ただ、”死”の直前にまで追い詰められた龍哉の身体が、
何らかのはずみで、変異したのかもしれないー。
今では、頭の中で強く念じてー
相手の目を見るだけで、相手に特定の感情を植え付けたり、
意のままに操ることができるようになったー。
”脳に障害が残るかもしれないー”
当時、原因不明の高熱で、そう言われたー。
結局、原因は未知の感染症によるものー、と
医師は言っていたもののー
そのおかげで、龍哉は、この力を手に入れることができたのだー。
”ごしゅじんさま…”
とろんとした目で、龍哉を見つめていたメイド服姿の梨香子を思い出すー。
「ーーへへへ…今はメイド扱いだけど、
近いうちに彼女にランクアップさせるのもいいかもしれないなー」
洗脳した梨香子の側には”彼氏”と思わせてあるがー
今の龍哉の彼女は同級生の佐奈だー。
だが、佐奈より、梨香子の方がいいかもしれないー
龍哉はそんな風に思い始めていたー。
”別れるのは、簡単だからなー”
龍哉は、”実行に移すかー”と、思いながら
静かに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日から、龍哉は計画を実行に移したー。
”佐奈と別れて、梨香子を正式な彼女にする”という計画だー。
「ーー佐奈…お前は今日から、男好きのビッチ女だー」
龍哉が言うと、佐奈は「はい…」と、うつろな目で答えるー。
「ーー男を誘ってヤレそうな相手とは手当たり次第ヤレー。
別に隠す必要はないー
周囲にバレて噂になっても構わないー」
「ーーーうん」
佐奈は頷くー。
「ーーわたし…男の人といっぱいヤっちゃうー」
佐奈の言葉に、龍哉は「そうだ。偉いぞ」と呟くと、
そのまま立ち去っていくー
その日の昼休みー
佐奈は、さっそく隣のクラスの不良男子を誘惑してー
空き教室でエッチなことをし始めたー
そしてー
それが先生に見つかるー
「ーーさ…佐奈ー」
龍哉は猿芝居をしながら、佐奈の”浮気”に唖然とするー。
周囲は、”佐奈に浮気された龍哉”として、龍哉に同情したー。
佐奈は「だってわたし、エッチなことしたいんだもん!」と、叫ぶー。
龍哉は、戸惑った表情を浮かべながらー
内心で笑みを浮かべたー
”これで、俺は彼女に浮気された可哀そうな男子”として別れることができるー、とー。
放課後ー
航が龍哉を呼び出したー。
龍哉は「どうしたんだ?」と、いつものようにさわやかな笑顔を
浮かべながら、航に呼び出された、校舎の一角にやってくるー。
「さっきは、大変だったな」
航が苦笑いしながら”佐奈の件”を言うー。
当然、龍哉が人を洗脳してモテているー、などということはまだ知らない航は、
佐奈の浮気に心を痛めていたー。
元々、航自身も幼馴染の佐奈のことを好きだったために、
そのショックは余計に強かったとも言えるー。
「ーーいや…仕方ないよ。俺に魅力がなかったってことなんだろうさ」
龍哉は少し寂しそうな”演技”をしながら笑うと、
「で?話って?まさか、佐奈のことを言うために呼んだわけじゃないだろ?」と呟くー。
「ーーあぁ、まぁな」
航はそれだけ言うと、龍哉のほうを見て、
「ーーお前…俺の妹とどういう関係?」と、本題を切り出したー。
「え」
表情を曇らせる龍哉に対し、航はすぐに
「あぁ、いや、別に怒ってるとかそういうことじゃなくて、
確認だよ、確認ー。気になってさー」と、言うー。
「妹?」
龍哉の言葉に、航は「あぁ…言ってなかったっけ?」と、呟きながら
スマホを取り出したー
”宮田 梨香子”
妹の写真を見せる航ー
龍哉は、表情を歪めたー。
”この子ーーー…航の妹だったのかー?”
とー。
”人を洗脳して好き放題できるー”
そんな、状態で生活を続けたが故の、”油断”ー
街中で偶然下校中の梨香子を見つけて洗脳した龍哉はー
家族構成などは本人から聞いたもののー
梨香子の名前しか聞いておらずー
名字を知りもしなかったし、まさか兄が航だとは
夢にも思っていなかったのだー
「ーー知ってるだろ?昨日、お前の家に行ってるの見たからー」
航がそれだけ言うと、龍哉は「あ…あぁ」と頷くー。
「ーーーーー」
龍哉は険しい表情で、航にどう弁明するかー
迷っていたー
「ーーーーまさかとは思うけどー…」
航は、沈黙する龍哉に言葉をさらに投げかけるー
「ーーー”恋愛”関係じゃないよなー?
梨香子、最近彼氏できたって張り切ってるけどー
お前…佐奈と付き合ってるもんな?」
航の声のトーンが低くなるー。
”もしも梨香子を浮気相手にしているならば、許さない”と、
そんなオーラを感じさせるー。
「ーーも、もちろんだよー」
龍哉は顔を上げて、航のほうを見るー
一瞬、航を完全に洗脳して操り人形にしようかとも考えたー
だがー
少なからず、航に対して友情を感じている龍哉に、
それはできなかったー
洗脳は、便利だがー
一方で、洗脳すれば
”龍哉にとっての操り人形”は一人増えるが
”龍哉にとっての親友”は、いなくなってしまうー
洗脳は、その相手本人の”元々の人格”を殺すようなものだー。
身体は本人であっても、もう、中身は別人ー、と言ってもいいのだからー。
「ーー悪い!」
龍哉は両手を合わせるー。
「ーー実は!お前の妹に”あること”を聞いていてー!」
龍哉がそう叫ぶと、航は「あること?」と首を傾げるー。
「ーーお前、来月誕生日だろ?
何をあげればいいか、アドバイスを色々聞いたりしててー」
龍哉の言い分は、苦しかったー。
航は「そのために、家にまで?」と呟くー。
「ーーそ、そう!梨香子ちゃん、ああいう性格だろ?
だから、ほら、相談したら一緒にネットで選んでくれるってなってさ!」
龍哉はそこまで言うとー
「ーじゃあ、彼氏はお前じゃないんだな?」と、航に確認されたー
龍哉は「もちろん!もちろん!そんなわけないだろ!」と、
慌てて否定するー。
「ーーーならよかったー」
航は、「変なこと聞いて悪かったな」と龍哉に言い放つと、
それ以上、もうその話はしてこなかったー
”ふぅ~…”
龍哉は、心の中でため息をつきながら、
”まさか、航の妹だったなんてー”と、
よく調べもせずに、適当に洗脳したことを悔やむー。
今後、見知らぬ相手を洗脳するときにはー
最低限調べることは必要だな、と航は反省するー
”早いところ、梨香子の洗脳を”調整”しないとなー”
彼氏とは分かれたことにしー
龍哉とは誕生日プレゼントの相談のために会ったーという
辻褄合わせの洗脳が必要だー。
「ーー龍哉」
航が、声を掛けてくるー
「え」
龍哉が、冷や汗をかきながら航のほうを見ると、
「お前、顔が青ざめてるぞ?大丈夫か?」と、航は心配そうに呟くー
「あ、あ、、あぁ!大丈夫!大丈夫さ!」
龍哉のその言葉に、航は複雑そうな表情を浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーー」
航との話が終わったら龍哉は、
焦った表情でトイレに駆け込むと、
すぐさま、航の妹・梨香子の”洗脳”を調整し始めるー
”龍哉とは、誕生日プレゼントの相談で会っていたことー”
”龍哉とは、梨香子が前に学校行事で遊びに来たときに知り合ったこと”
”彼氏とは別れたこと”
色々な記憶を無理やり刷り込んでいくー。
一度、洗脳した相手であれば、
その姿を思い浮かべて、強く念じるだけで、
調整することができるー。
「ーーーはぁ…」
龍哉は、冷や汗をかいたまま、トイレで一人、ため息をついたー。
「ーーまさか、航の妹だったとはなー…
今度から気を付けようー」
”自分の不注意”で墓穴を掘ることだけは避けたいー。
龍哉は、そう思いながら、トイレの外へと向かったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー彼とは、別れちゃったー」
翌日ー
妹の梨香子から、そう言われた航は驚くー。
「ーーそ、そっかー…
あと、そういえばさー」
航は親友の龍哉の家に梨香子が足を運んでいたことを確認するー。
すると、龍哉から説明された通りー
梨香子は、”お兄ちゃんの誕生日プレゼントの相談の話だね”と
答えたー
だがーーーー
”その答え”が、さらに航に疑念を抱かせる結果に
なってしまったー。
”まるで、口裏を合わせたかのような答え”に、
航には感じられてしまったからだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
学校に到着するとー
龍哉と佐奈が仲直りしたー、と聞かされた航ー。
「ーーーお前…佐奈と仲直りしたのか?
あんな、堂々と浮気されたのにー?」
航が言うと、龍哉は
「ほら…佐奈にも色々考えがあったんだと思うしさー」
と、苦笑いするー。
”梨香子”がダメだったからー
”佐奈”を捨てる必要がなくなったー
いや、”佐奈”とはやっぱり関係を継続したい、と思った龍哉は、
佐奈に再び、自分に対する愛情を強く植え付けて、復縁したー。
クラスでも疑問に思う声はあったが、龍哉は、佐奈と
再び復縁したのだったー。
「ーーー佐奈」
疑問を強く抱いた航は、幼馴染でもある佐奈を呼び出したー
「ーーどうしたの?」
呼び出された佐奈がやってくるー。
「ーーーー……あのさ……変なこと、聞くけどさー」
航が少し言いにくそうにしながらー
不思議そうな顔をしている佐奈に、言い放つー。
佐奈とは幼馴染の間柄だー。
去年頃までは、かなり仲が良かった、と航自身は思っているー。
だからこそー、分かるー。
最近の佐奈の様子は”おかしい”
とー。
もちろん、人は変わるー。
だからこそ、今まで何も行動しなかったー。
けどー
妹の梨香子の件で、強い疑問を”モテる親友”に対して抱いた航は、
聞かずにはいられなかったー。
「ーーーーあいつに…龍哉とは…本当はどんな関係なんだー?」
航の言葉に、
佐奈は一瞬、ぽかんと口を開いて、宙を見つめてからー
「ーー大好きな、彼氏ー」
と、微笑みながら答えたー
③へ続く
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”モテる親友”に疑念を抱き始めた彼の運命は…?
次回が最終回デス~!
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