お嬢様に憑依したギャンブラーの男は、
お嬢様の身体で大金をギャンブルにつぎ込んでいく…。
その先に待っている運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーくそっ!死ね!!!!」
競馬場ー
お嬢様の美里は、自分が購入していた馬が
敗れるや否や、大声でそう叫んだー。
乱暴な口調のお嬢様に、周囲の観客たちも
驚いた様子だー。
「ーお、、お嬢様…」
執事の伊佐山は困惑した様子ー
「ーーー!」
周囲から白い目で見られていることに気付いた美里は
「ーって、思っちゃうこともありますわよね~
おほほほほほほほ」と、明らかに怪しい言い訳を付け加えたー。
「ーーお嬢様、さすがにお金を使いすぎでございます」
競馬場からの帰路ー、
執事の伊佐山は、困惑した様子で美里に対して
そう言い放つー
美里は、自分の髪を指にくるくる巻きつけながら
「ーわたしは最後に勝つのよ」と、執事の伊佐山の言葉に聞く耳を持たないー
「ーお嬢様!」
執事の伊佐山が車を止めて、
運転席から後部座席にいる美里のほうを振り返るー
「ーーお嬢様は、最近…変でございますぞ!」
執事の伊佐山が叫ぶー
「変ー?」
美里は不機嫌そうに伊佐山のほうを見つめるー。
”まぁー…そりゃ、急にお嬢様がギャンブルに溺れ始めたら
そう思うのも無理はないよな”
美里に憑依している敏三は、そんな風に思いながらも、
”でも、最後に勝てば文句ないだろ”と、心の中で笑うー。
そうー
これだけ資金があればー
必ず勝つことができるのだー
今日は負けても、明日、倍にして取り返せばいいー
「ーーギャンブルの怖さを、お嬢様は分かっていないのです!
このまま続ければ、お嬢様は破滅しますぞ!」
執事の伊佐山はなおも食い下がるー。
小さいころから美里の世話をしてきた伊佐山だからこその
厳しい言葉だったー。
「ーーうるせぇなぁ」
美里はつい、お嬢様口調を忘れて、そう呟いてしまうー
「う、、う、、うるせ、、、お、、お嬢様!?」
美里がそんな言葉遣いをするはずがないー
と、言わんばかりの表情で、執事の伊佐山が目を見開くー。
「ー執事の分際で、主に逆らうの?」
美里は脅すような口調で言うー。
”お前は黙ってろよ。俺はギャンブルで最後に必ず勝つんだからよ”
敏三は、そんな風に思いながら、美里の身体で続けるー
「ーーこれ以上、わたしに口答えするなら、クビにしてもいいのよ?」
美里が、こんな悪女のようなことを言ったことはあるのだろうかー。
いや、そんなことは関係ないー
今の美里は、”ギャンブラーお嬢様”なのだからー。
「ーーーお、、お嬢様!私はお嬢様のためを思って!」
執事の伊佐山は困り果てた様子で叫ぶー
「ーあ~もう!うるさい!クビですわ!クビ!クビ!」
美里の言葉に、執事の伊佐山は表情を歪めて、しばらく沈黙したあとにー
「お嬢様…長い間、お世話になりましたー」
と、車で美里を屋敷に送り届けた直後、そのまま立ち去って行ったー
「ーふん。うるさいやつが消えて、ようやく
自由にギャンブルできるぜ」
美里は、一人笑みを浮かべるー
だがー
無意識のうちに、美里の目からは
涙が零れ落ちていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふふふふ ほら、わたしは最後に必ず勝ちますわ!」
翌日ー
競輪で大儲けした美里は、嬉しそうに笑みを浮かべたー。
実際問題ー
美里に憑依して”ギャンブル”を始めてからの
支出と収入を見ると
”完全に赤字”なのだが、
それでも、この日”大幅に儲かった”ことにより、
美里に憑依している敏三は”勝てる”ような気持ちになってしまったー。
それもまた、ギャンブルの落とし穴のひとつー。
「ーーおほほほほほほ!わたしは最強のギャンブラーですわ!」
部屋で札束を前に笑みを浮かべる美里ー。
だがー
翌日は、大負けを喫しー、
その翌日も、派手にやらかしたー。
”儲かる日”よりも”損失が出る日”の勢いが圧倒的で、
美里はついに、父親の会社のお金にまで、手を染めたー
父親の幸彦は厳しそうに見えて、娘には”超”甘いタイプー
お金も難なく、父親から借りることができたー。
しかしー
「ーくそっ!!くそっ!なんで勝てないんだ!」
半月後ー
美里は、髪をボサボサにして、血走った目で、
パソコンを見つめていたー。
「くそっ!!!くそっ!!!
ふざけんな!!おい!こら!!くそがァ!」
競艇で思い通りの結果にならず、
美里は鬼のような形相で
パソコンを殴りつけていたー。
綺麗な手に痣を作りながら、
荒い息をする美里にはー
もはや、穏やかなお嬢様の面影は
完全になくなってしまっていたー。
「このクソ野郎が!」
美里は怒りのあまり、部屋のゴミ箱を
蹴り飛ばすと、怒り狂って、疲れるまで
部屋の中で暴れ続けたー。
「ーーーみ、、美里…?」
美里の母親が心配そうに美里の部屋を覗くー。
「ーうるさい!黙ってろ!」
美里は大声で叫ぶー。
もはや、お嬢様として振る舞うのも忘れていたー。
「ーー俺は負けねぇ…俺は、負けねぇ
金さえあれば、絶対に勝てるんだー…」
美里は何度も何度も何度も「負けない」と呟くと、
明日、どのギャンブルに挑むかを考え始めたー。
そしてー、ついにー
美里は、破産したー。
父親の資産を食いつぶし、父親の不動産資産も、会社の資産も
全て、泡となって消えてしまったー。
”お金持ちのお嬢様”だったはずの美里は、
ギャンブルに溺れた結果ー
”破産したお嬢様”に成り下がってしまったー。
「ーお父様!お金!お金をちょうだい!」
美里が叫ぶー。
父は、首を横に振ったー
父は憔悴しきっているー。
「もう、金はないよー」
とー。
美里が全部使ってしまったー。
もう、父親に出せる金は、本当に全くと言っていいほどなかったー。
「ーー役立たず!」
美里は、そう叫ぶと、家を飛び出したー
”くそが!金持ちってのはこの程度破産するのかー?
使えねーやつだ!”
美里にはー
美里に憑依した敏三には、まだ”奥の手”があったー
「ーーーこうなったらー
”女の身体”を武器に資金を確保するしかねぇ」
歪んだ笑みを浮かべる美里ー。
美里は家を飛び出しー、
風俗店で働き始めー
さらには自ら積極的、接触を試みた結果ー
AVに出演するようにもなったー。
「ーーはぁ…♡ はぁ…♡」
洗脳されて好き放題されるAVを撮影中に、
美里は、ふと、鏡に映る自分を見つめるー
”お嬢様がこんな堕ちちまったなんて…たまんねぇ…”
美里に憑依している敏三は、そんな風に思いながらもー
美里の身体を使って、金を稼ぎまくったー。
そしてー
それを、ギャンブルにつぎ込んでいくー。
だがー
それでも、美里がー
いや、美里に憑依している敏三が、ギャンブルで勝つことはできなかったー。
全ての人間が、ギャンブルで負けるー
と、いうことではないのかもしれないー
実際に、うまく行ってる人間も、いるにはいるのだろうー。
しかし、
彼にはー
敏三には”運”も、”戦略”も、
何もかもが足りなかったのだろうー。
AVや風俗店で稼いだお金も全て注ぎ込みー
やがて、美里は消費者金融にも手を染めるようになりー
結局は”元々の敏三”と同じ状況に陥ってしまったー。
消費者金融から返済を迫られて
”返済のためにギャンブルをして負ける”
その、繰り返しー。
いつしか、美里のあまりの金遣いの荒さに、
風俗店も、AV業界も美里を見放しー、
美里は、さらに危険な撮影や、お店で働きー
心身ともにボロボロになっていたー
「くそっー」
ボロいアパートで、購入した宝くじの結果を見て
歯ぎしりをする美里ー。
「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」
缶ビールを手に、現実逃避のために
酔っぱらった状態の美里は、
「どうして、どうしてこんなことになるんだ」と、
今にも酔いつぶれそうな状態で叫ぶー
「もっと、もっと金があればー
俺は最後には、必ず、勝てるんだー
もっとーーー」
ギリギリと、歯ぎしりをしながら、
次第には唇をかみ始めて、唇から血を流す美里ー。
この美里が、少し前までは
お金持ちの娘で、穏やかな性格のお嬢様だったなどとー、
信じる人間は、
元々の美里を知っている人間以外、もはや、誰もいないだろうー。
そのぐらい、今の美里は変わり果ててしまっていたー。
「ーーあ~~~…うぜぇうぜぇうぜぇ」
美里はだらしなく寝転がりながら、
面倒臭そうに自分の胸を揉んだり、アソコをいじったりして、
快感に溺れて、
現実逃避をしようとしていたー。
しかしー
それすらも、もう、ままならなかったー。
ギャンブルで再び破産してしまった現実が、
酔ってもー
性欲に溺れてもー
忘れることができないー
「くそっ!」
机を蹴り飛ばした美里は、
パソコンの画面を再び見つめるー
電気も、まもなく止まるかもしれないー
「俺は…俺は、最後には必ず笑う男だー」
美里はそう呟きながら、
呆然とした様子でパソコンの画面を見つめるー
そしてー
「ーーーーーー!!!!」
美里は、突然ニヤァ…と、不気味な笑みを浮かべたー
あったー。
まだ、あったー。
人生を逆転する方法がー。
「そうだー。
やっぱり、やっぱり最後に笑うのは、俺なんだー」
笑みを浮かべる美里ー。
”闇.net”
最初に、敏三が破産して、偶然見つけたサイトー。
お嬢様である美里を乗っ取った時に、使ったサイトー
敏三は、美里に憑依する前のことを思い出しながらー
再び”闇.net”にたどり着いたー
「あったー
クククー
あったーーー」
美里は狂った声で、それを嬉しそうに見つめるー。
”憑依ルーレット”
これのおかげで、敏三はお嬢様である美里に
憑依することができて、人生、逆転することができたのだー。
「こんな二流のお嬢様じゃダメだったんだー」
美里は自分の顔を触りながら笑うー。
人の身体を使い、破産させ、
その身体を二流と言い放つ、あまりにも身勝手な敏三はー
”次”は、さらに金持ちのお嬢様を探して、憑依しようとしていたー。
”ターゲット”の情報をネットで探しー
そして、それを見つけるー
「こいつがいいー」
美里はそう呟くと、再び”闇.net”にアクセスしたー。
”ハズレを出した場合は”欲深いあなたの罪”を
闇.netは、裁きますー”
その説明書きを見て、美里は笑うー
「俺は、最後には必ず笑う男だー」
笑みを浮かべる美里ー。
そう、前回だって当たったんだー
今回も、ハズレるわけがないー
”俺は強運を持つ男だー”
「ひひひひひひ…」
と、言いながら、憑依ルーレットを回すボタンを
押そうとする美里ー。
万が一、ハズレたとしても、命までは奪われまいー。
それにー
ハズレるわけもないー。
結局ー
この”闇.net”とやらが一体何者なのかは分からないがー
そんなことは、もはやどうでもいいー
「ーーー俺は、必ず勝つんだ!
あははははははははははっ!」
美里の顔をぐしゃぐしゃに歪めながら笑みを浮かべて
憑依ルーレットを回すー。
ガッツポーズする美里ー
新しいお嬢様の身体を乗っ取った敏三はー
自分が、競馬場で、数万円の利益を毎日のように上げてー
宝くじで1等を当てて、億万長者になったー
パチンコでも、競艇でも、競輪でも、何もかもうまく行くー。
やがて、お嬢様の身体でラスベガスに飛んだ敏三は、そこで
カジノの王になりーーーー
ーーと、いう夢をー
最後に見たー。
パソコンがついたままのぼろいアパートの一室ではー
”元・お嬢様”だった美里が
目を見開いて、うすら笑みを浮かべたまま、パソコンの前で
横たわっているー
そしてー
パソコンの画面には
”ハズレ”と表示されたルーレットの画面が表示されていたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ギャンブルで破滅してしまう男のお話でした~!
お金持ちのお嬢様に憑依した時点で、やめておけば…
幸せなライフが送れたかもしれませんネ~!
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