”金さえあれば、俺は勝てるんだー”
ギャンブルで破産した男は、
自らの失敗を顧みず、そんなことを考えていたー。
ある日、男は怪しげなサイト”闇.Net”と出会い、
そのサイトの力で、
お金持ちのお嬢様である美里への憑依に成功するー。
”金持ちのお嬢様”になった男は、
早速、お嬢様の身体でギャンブラーになることを
宣言するのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー娘の美里の様子がおかしい?」
美里の父親・幸彦(ゆきひこ)が呟くー。
「はいー」
執事の伊佐山が頭を下げると、幸彦は目を細めるー。
「ー私(わたくし)のことを突然、セバスチャンと呼んだりー
ギャンブラーになると言い出したり…
まるで、お嬢様が別人のように振舞っておられるのですー」
伊佐山の言葉に、幸彦は「ーーそうか」と、頷くー。
「ーー今夜、しっかり話をしてみようー」
厳しさが表ににじみ出ている雰囲気の父親・幸彦が呟くー。
「ーーお手数おかけして申し訳ありません」
執事の伊佐山が言うと、
幸彦は「構わん。伊佐山、お前はいつもよくやってくれているー」
と、少しだけ微笑むとー
仕事で使っているパソコンをシャットダウンして、
椅子から立ち上がったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーふふふふ お金 お金…!
お金ですわ~~~~♡」
嬉しそうに万歳をする美里ー。
美里に憑依した敏三は、あえてお嬢様口調で
喋りながら、笑みを浮かべていたー。
「ーー俺はーー
いいえ、わたしは…必ず勝ちますわ…♡ ふふふふ」
美里はそう呟くとー
早速部屋のパソコンで、競馬や競輪ー、宝くじー
色々なサイトを確認し始めるー。
「ーーお嬢様がパチンコとか、大丈夫かしら~?」
わざと甘い声で呟く美里ー
「ま、いっか♡ 勝てればいいんだし」
美里は、そう呟きながら、近隣のパチンコ店も
探していくー。
敏三は”所持金”に限りがあるせいで、
”ギャンブルに勝つことができない”と、
そう、思っていたー。
この美里とかいうお嬢様のように、
お金に制限がなければ、ギャンブルなど、いくらでも
勝つことができるのだー。
敏三は、本気でそう信じていたー
「美里」
部屋がノックされたー。
「ーーーーあ、、、は、、は~い!」
美里は表情を歪めながら返事をするー
さっきの執事とは違う声だー
そう思いながら、部屋に入ってくる男を見つめるとー
”いかにも厳しそうな男”が入ってきたー。
「ーーー!」
美里に憑依している敏三は表情を一瞬、詳しくしたー。
”たしかこいつー
このお嬢様の父親だったなー”
事前に調べておいた情報を頭の中で整理するー。
写真でしか見たことはないが、
確かこの男は、美里の父親であったはずだー。
「ーーーあ、、お、、お…」
”パパ”
”お父様”
”親父”
普段、なんて呼んでいるのか分からないー
敏三はそう思いながらも
何度か美里の身体で咳払いをするとー
「パ、、パ、、パパ、何かしらー?」
と、呟いたー。
父・幸彦は、険しい表情で美里を見つめるー
「パパー?」
不思議そうな顔ー
”ち、違ったか!くそっ!”
そう思いながら
「あ、、お、お父様ー」と、呟いて見せるー。
それが正解だったのか、
幸彦は険しい表情で美里を見つめると
「ギャンブルを始めたい…と、伊佐山に言ったそうだなー」
と、呟いたー。
「え…え~…あ、、うん、、
わ、わたしだってもう20歳なんだし、
一度は何でも経験してみたいと思ってー」
適当な理由をつける美里ー。
「ーーーーーー……」
父・幸彦は美里を険しい表情で見つめるー。
「ーー美里……何かあったのか?」
”娘”である美里の雰囲気がいつもと違うー。
そんなことに気付いたのだろうー。
父・幸彦は不安そうな表情で美里のほうを見つめるー。
「べ、、べ、別に…何でも、、ありませんのよー
おほほほほほほっ」
美里はそう笑いながらー
”絶対普段こんな話し方してねぇぞ!?”と、
敏三は内心で自分にツッコミを入れるー。
疑いの目を向ける幸彦ー
”こうなったらー”
美里に憑依している敏三は、奥の手を使ったー。
「ーーねぇ、お父様… お・ね・が・い♡」
甘えるような声を出す美里ー。
「ーーわたしも、色々な世界を見て見たいの…!
ねぇ、、お願い…♡」
上目遣いで父親の幸彦を見つめる美里ー
こんな手が通用するとは思えないがー
せっかく、人生逆転のチャンスを手に入れたんだー。
お嬢様に憑依して、ギャンブラーとして成功するんだー。
「ーーーーー…み、美里がそこまで言うならー」
父・幸彦が、美里のほうを見て、そう呟いたー
「ーーーえ?」
予想外の反応に、美里は目をパチパチさせると、
父・幸彦は微笑みながら答えたー
「ははは 昔からお前の我儘には、父さん、叶わないなー
いつもそうやって、お願いされると、俺が折れてしまうー」
幸彦は照れくさそうにそう言うと、
「分かった。伊佐山に資金を用意させるー。
何でも、経験は大事だからな」と、優しく呟いたー。
「ーーーえ…えへへへ さすがお父様ですわ♡」
嬉しそうに甘えてみせる美里ー
”馬鹿なお父様で助かったぜー”
美里に憑依している敏三は、内心で笑みを浮かべるー
どうやら、この父親は、
”愛娘だけには甘い”タイプの父親のようだったー。
(一人娘らしいしー…仕方ないか へへへ
でも残念だったなぁ、お父様
お前の愛娘は、俺のものだぜ へへへ)
心の中でそんな風に思いながらー
美里は”ギャンブラーお嬢様”として、
ギャンブルに挑戦するチャンスを得たのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やった~~~~~~~~~!!!!大当たりですわ!!」
嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる美里ー
その翌日ー
早速、競馬場に足を運んだ美里ー。
背後には、執事の伊佐山も控えているー。
競馬場にあまりにも不釣り合いなお嬢様が
現れたことで、周囲は驚いた様子を見せているー
「ーどう?見た?これが俺ー、いや、わたしの実力ですわ!」
美里は、ドヤ顔で笑うー。
伊佐山は、そんな美里を見て「は…お見事でございます」と、頭を下げたー
ドヤ顔で歩き出す美里ー。
「(やっぱ、最後に笑うのは、俺だぜー)」
美里は、内心でそう呟くー
「ーーやっぱ、金持ちのお嬢様は違うなぁ~」
女子トイレで、自分の顔をみつめながら満足そうに微笑む美里ー。
”金”を容赦なく使うことができるー。
そんな環境では、
ギャンブルの予想も、やはり変わってくるー。
”賭けることができる金額”が変わってくるからだー
「ーーへへへへ…わたしはギャンブラーですわ♡
な~んてな」
そう呟くと、美里はそのままトイレから出てー
再び競馬に興じるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーあははははははっ!
あははははははははははっ!」
帰宅した美里は、札束を天井に向かって投げつけながらー
札束の雨の中で、うっとりとした表情を浮かべるー
「ー勝ったー…!俺は勝ったぞー!」
嬉しそうに叫びながらガッツポーズする美里ー。
「ーさ~て、今日は祝杯ってことでー」
ニヤリと笑みを浮かべながら鏡を見つめる美里ー
「ちょ~っと、このお嬢様のボディチェックでもしちゃおうかなぁ~」
美里は、そう呟くと、自分の髪を触ってから
ペロリと自分の指を舐めたー。
「ーーへへへへへ 金も、美貌も手にした俺は最強だぜー」
そこまで呟くと、美里は、部屋の扉が開いたことに気付き、
慌てて舐めていた指を口元から離したー。
「ーあら?セバスチャンー
ノックぐらいなさい」
美里は少しだけ不機嫌そうに言うと、
執事の伊佐山は「申し訳ございません」と頭を下げるー
「ーーどう?セバスチャンー
わたし、才能あったでしょう?」
美里がそう言うと、伊佐山は「今日は、お見事でございましたー」と
頭を下げるー。
だが、美里の次の言葉を聞いて、伊佐山は表情を歪めたー。
「明日は、パチンコに行きますよわよ」
美里が脚を組みながら椅子に座って言うと、
伊佐山は「今、なんと…?」と、唖然とした表情を浮かべるー
「聞こえなかったかしら?パチンコに行くのよ!」
美里の言葉に、伊佐山は「え…、、そ、それは…その!」と
反論しようとするー。
「美里お嬢様にパチンコなんて、似合いませんぞー!」
執事の伊佐山が少しだけ声を荒げるー
「お黙り!
いいこと?セバスチャンー。
何が似合うか、何が似合わないか決めるのは
あなたではなくってよ?」
美里の顔を、執事の伊佐山に近付けると、
伊佐山は、戸惑った様子を見せるー
「ーあ、、あの、お嬢様ー
私はセバスチャンではー」
「ーーいいのよ!執事は全員セバスチャンよ!」
美里はそう言うと、笑みを浮かべながら、
「明日はパチンコですわ!」と、ドヤ顔で叫んだー。
そしてーー
翌日、パチンコに挑戦した美里は、
大勝ちしー、
莫大な利益を上げていたー
「あはははははははっ!わたしは最強のギャンブラーですわ!
ギャンブラーお嬢様ですわ!!
おほほほほほほほっ」
部屋の中で調子に乗って笑う美里ー。
競馬にー
パチンコにー
お嬢様・美里に憑依してから
成功が続いているー
美里に憑依している敏三は、
満足そうな笑みを浮かべるー。
「やっぱ、金持ちなら負けないんだ!
俺が、俺が負けてたのは、金がないからだったんだー!
もう、俺は絶対に負けねぇー!
わたしは、勝ちまくりますわよ!
おほほほほほほほほほほ~~!!!」
元々の美里の人格など”完全無視”と言わんばかりに
大笑いする美里ー
翌日ー
美里は、宝くじを大量に購入し、さらには競艇場にまで
足を運んだー
しかしー
「ーーーくそっ!信じられませんわ!」
持っていたスポーツ新聞を床に叩きつけて、
それを踏みにじる美里ー
「お、お嬢様…そのような下品な行為ー…」
「ーーお黙り!」
美里はそう叫ぶと、
イライラした様子で髪の毛をボリボリ掻き始めるー。
美里に憑依している敏三の”癖”だー。
敏三は、”再び”同じ失敗を繰り返そうとしていたー。
敏三がそもそもギャンブルにはまりはじめたきっかけー。
それは、友人との付き添いで競馬場にやってきた際に、
いきなり儲かったからだー。
その時の”快感”を忘れることができず、
「俺は勝てるんだ」という妄想に取り憑かれー、
挙句の果てには、失敗してしまったー。
今ー
敏三は、それを繰り返そうとしているー。
敏三が、お嬢様・美里に憑依して
儲けることができたのは、
”美里の身体になったから”などではないー
”偶然”に過ぎないー。
その偶然に取り憑かれてしまった人間は、
”破滅”するー。
パチンコを始める美里ー。
美里のような、綺麗なお嬢様が
慣れた手つきでパチンコをやっている光景にー
周囲のおじさんたちは少し困惑した様子だー
「ーあら?何を見ていらっしゃるの?」
お嬢様口調で美里はそう言うと、
周囲のおじさんたちは美里から目を逸らしたー
だがー
この日、美里は、競艇でもパチンコでも
勝つことができずー
大負けしてしまったー
「くっそ~…!!今日はたまたま運がなかっただけよ!」
美里は大声で叫ぶー。
執事の伊佐山は不安そうにそんな美里のほうを見つめるー
”この前から、まるで人が変わったようだー…”
執事の伊佐山は、美里のほうを見つめながら
そんな風に思うー。
そんな伊佐山を他所に、
「でも、わたしにはいくらでもお金があるし!
明日は絶対負けませんわ!」
と、ドヤ顔で美里は叫んだー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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ギャンブラーと化してしまったお嬢様の運命は…!?
明日が最終回デス~!
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