<憑依>わたし、今日からギャンブラーになりますわ①~破産~

ギャンブルを止めることができずに
破産してしまった男ー。

だが、男は破産してなおも、
”資金があれば、俺は絶対に勝てるんだ”と
反省するそぶりを見せなかったー。

そんな男が、お金持ちのお嬢様に憑依してしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・

「やった~~~~~~~~~!!!!大当たりですわ!!」
嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるお嬢様ー。

競馬場に突如として現れたそのお嬢様に、
周囲のおじさんたちは、驚いた表情を浮かべているー。

競馬場にあまりにも不釣り合いなお嬢様ー
彼女の存在に、周囲は驚いているのだー

「ーどう?見た?これが俺ー、いや、わたしの実力ですわ!」
お嬢様が言うと、
執事のような男が、「は…お見事でございます」と、頭を下げたー

ドヤ顔で歩き出すお嬢様ー

「(やっぱ、最後に笑うのは、俺だぜー)」
お嬢様は、内心でそう呟くー

競馬場に突如として現れたお嬢様は
数日前に”わたし、ギャンブラーになりますわ!”と、
突然執事に向かって宣言ー
いきなり、ギャンブルに金をつぎ込み始めたのだったー

彼女はー
そうー

”憑依”されていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月ほど前ー。

「ーーくそっ!ふざけんな!負けは許さねぇぞ!くそっ!くそっ!」

競馬場ー
その男は、競馬場にいたー。

「ーーあぁぁぁ!ふざけんな!このクソ馬!」
男は大声で叫びながら、手に持っていた新聞紙を床に叩きつけたー。

男の名は、酒井 敏三(さかい としぞう)ー。
友人の付き添いで、競馬を見に来たところ、
試しに、と適当に購入したものが、見事に当選、
あっという間に5万円を手にしたことをきっかけに
ギャンブルにはまってしまった男だー。

競馬だけではなく、
宝くじ、競艇、競輪、パチンコ、あげくの果てにはオンラインのよく分からない
ギャンブルにまで手を出したー。

”最初にいきなり大当たり”を経験してしまったことがー
敏三を、ギャンブル依存症の男に変えてしまったー。

敏三は、今日も競馬で大金を失い、
歯ぎしりをしていたー

「くそっ!…くそっ!くそっ!」
敏三は床に叩きつけた新聞紙を何度も何度も
踏みつけるー。

「ー俺は、最後には絶対に勝つんだー!」

既にー
敏三は、色々なものを失ったー

仕事もー
友人もー
何もかもー。

”金さえあれば、俺は勝てるんだ”という妄想に取り憑かれて、
友人や家族に借金を繰り返した挙句、
結局、勝つこともできずに、お金を全て溶かしー、
それでも”お金があれば100倍にして返せるから!”と
さらに金を借りようとしてー
友人の大半は、敏三から離れたー。
家族からも既に呆れられてしまっていて、絶縁状態だー。

「ーーくそっ!金持ちはいいよなぁ…」
ボロアパートに帰宅した敏三は呟くー。

敏三はー
”資金さえあれば絶対にギャンブルに勝てる”と、
そう思い込んでいたー。

自分が、ギャンブルで勝つことができないのは、
”元の資金が少なすぎるから”で、あるとー。

部屋のインターホンを鳴らす音が聞こえるー。

「ーーー」
その瞬間、敏三は息を潜めたー。

”いるのは分かってるんだぞ!このギャンブル野郎め!
 とっとと出て来い!”

扉を乱暴にノックする、いかにも粗暴そうな男の声ー

”だ、誰がギャンブル野郎だー。
 俺は最後には必ず勝つ男だぞ

 お前なんか、いつか100人の福沢諭吉の束で
 ビンタしてやるからな”

敏三は、そう思いながらも、部屋の電気を全て消して
部屋の隅っこで震えていたー。

”借金”ー

家族や友人から見切りをつけられて、
お金を借りることができなくなってしまった敏三は、
ついに、消費者金融に手を出し、
それも返すことができずに、
別の消費者金融から借りて、
ギャンブルで大勝ちしようとして、また破産するー
を、繰り返していたー。

もはやー
敏三の人生は、”詰んでいた”と言ってもいいー。

チェスで言えば、チェックメイト一歩手前の
チェックの状態だー。

「ーーくそっ!」
敏三は、「俺は金さえあれば、絶対にギャンブルで勝てるんだ!」と叫びながら
スポーツ新聞を見つめるー。

スポーツ新聞に掲載されているギャンブルの予想を
している人のコラムを見つめるー。

「ーこいつみたく、金がいっぱいあればなぁ~!俺だって!」
敏三には、もう、資金がないー。

予想している著名人のように、1つの競馬のレースに、何千円も
何万円も賭けることは、もはやできないのだー。

”最後に笑うのは俺だ”
大きくそう書かれている壁を見つめる敏三ー。

借り物のアパートのはずなのに、
堂々と大きな文字で壁にそう書いてしまった敏三は、
満足そうに自分の汚い字を見つめると、

「そうー
 最後に笑うのは、俺なんだー」と、笑みを浮かべたー。

そしてー
その翌日、パチンコで破産したー。

「ーーくそっ…俺は、、俺は、、死ぬのかっ!」

夜ー
アパートの自分の部屋で絶望していた敏三はー
ネットで”逆転の方法”を探し続けたー。

「金さえあればーー
 金さえあれば、俺は勝てるんだ!
 金があればーー
 なんとか、なんとか金をー」

”俺がギャンブルで勝てないのは、金がないからだ”

敏三は、そう呟きながら
やがて”金持ちのお嬢様になる方法”と、
訳の分からないキーワードで検索を始めるー

「あ~あ、俺がお金持ちのお嬢様だったら、
 ギャンブルで稼ぎまくってやるのになぁ」

金持ちのお嬢様は、そもそもギャンブルなどしないー。
そんな初歩的なことも忘れながら敏三が
ネットを眺めているとーーー

「ーーーーー!!!!!!!!!」
敏三は、目を見開いたー

”人生大逆転のギャンブル”

そう書かれた”憑依ルーレット”なるものが、
目に入ったのだー。

人生ゲームのようなルーレットが、画面に表示されているー。

これを使い”あたり”が出れば、
”他人の身体に憑依し、その肉体も精神も、立場も人生も奪うことができる”
そう、書かれていたー

”闇.net”と、書かれたその不気味なサイトに
表示されている”憑依ルーレット”

「ーーこ、こんなふざけたもん、誰が信じるんだよ」

敏三はそう呟きながらも、
憑依ルーレットの説明を読んでいくー。

なんでも、サイトが言うには、憑依ルーレットを今、ここで
サイト上で回し、
”あたり”が出れば、挑戦者は幽体離脱して、
そのまま好きな身体に”憑依”することができるというのだー。

ただし、元の自分の身体は、その間抜け殻になってしまい、
長時間放置していると、そのまま死んでしまうー、とのことだったー。

だが、”身体は死んでも乗っ取った身体で生きることは可能です”と
注釈が書かれておりー

”たとえばこんな活用方法が!”
と、書かれたコーナーには、
”お金持ちのお嬢様に憑依して、お金持ちライフを満喫”と
そう、書かれていたー

「これだ!」
敏三は大声で叫んで、机を叩いたー。

お金持ちのお嬢様に憑依すれば、ギャンブルで勝つことができるー。

「ーーーギャンブルを堂々とやるには、20歳以上の…
 かつ、20歳ぐらいのお嬢様がいいなー」

敏三はそんなことを呟くと、
画面をもう一度見つめるー

”ただしー
 ハズレを出した場合は”欲深いあなたの罪”を
 闇.netは、裁きますー”

と、そう書かれていたー。

「ーーどういうことだ…?」
敏三はしばらく考えるー。

文章的に、ハズレが出た場合、何かペナルティがある、
ということだろうー。

こんな得体の知れないサイトー

”もしも”
憑依とかいうのが、本物ならー
このサイトは”何でもできる”と考えても良いー。

そうなれば、ハズレを引いた場合はどうなるかー

”死”

最悪のケースを想定するなら、そう考えるべきだろうー。

だがー

”どうせおふざけなら、ハズレだろうが当たりだろうが、何も起こらない”
”万一本当に何かが起きても死ぬことはないだろう”
”それに、どうせ、俺はもう破滅してるんだー”

そう考えた結果ー
敏三は、ルーレットを回したー

”万が一このルーレットが本物でー”
”万が一、当たりがでればー”

俺は、金持ちのお嬢様だー!

そう思いながら、敏三が目を見開くと、
ルーレットは”あたり”のところで止まったー

そしてー
敏三は事前に調べておいた、
”ちょうど、今年で二十歳になりました♡”と
SNSで公言していたお嬢様にー

”憑依”したー

「ーーーうっ…」

ビクンと震えるターゲットのお嬢様ー。

敏三が憑依したのは、
隣町に住む、不動産経営一族の娘で、
ちょうど今年20歳になった、
上園 美里(うえぞの みさと)ー。

「ーーー……!」
苦しそうにしていた美里は、
少しすると、やがて、ゆっくりと目を開き、
驚いたような表情を浮かべたー。

「ーーお、、俺…」
自分の手を見つめる美里ー。

そこにはー
敏三自身のごつごつとした手ではなくー
色白の綺麗な手があったー。

「ーーマ、、マ、、マジかー」
にやりと笑みを浮かべる美里ー。

「ーマジで俺、お嬢様になってるぞ!!!!」
嬉しそうにその場で、はしゃぎまわる美里ー。

どうせー
本当に憑依などできるはずがないー。

そんな風に思っていたのにー
現実に”憑依”することができたのだー。

「ーーこ、これ、夢じゃないよなー」
美里はそう呟きながら、自分の頬を引っ張るー。

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、
美里の身体の痛覚で感じる痛みに、ドキドキする敏三ー。

「へへへ…ちゃんと痛みがあるー」
嬉しそうな美里ー。

美里の身体で痛みを感じる、ということは
これは夢ではないー
現実だー

「やった…!やったぞ!」
大はしゃぎでガッツポーズをする美里ー。

”これで、俺は勝てるー
 やはり、最後に勝つのは、俺だ”

何度も、何度も「よっしゃ!」と呟きながら
ガッツポーズをする美里ー。

普段ー
このお嬢様がどんな振る舞いをしているのかは知らないが、
現在は女子大に通っている、というところまでは調べてあるー。

「ーーへへへ…この女と、親の資金力さえあれば…
 俺は絶対に負けねぇ…!
 今度こそ、絶対に、負けない!」

そうー
十分に”金”さえあれば、
彼がギャンブルで負けることなどありえないのだー。

「ーー美里お嬢様ー」
執事らしき男が入ってくるー。

”なんだこいつー
 いかにもお嬢様に仕える執事って感じじゃねぇか”

美里に憑依している敏三は、心の中でそんな風に考えるー。

美里の記憶を読み取ることは残念ながらできないがー、
美里になった敏三は適当にその名前を叫んだー

「セバスチャン!」
とー。

「ーーせ、、せばすー…?」
執事が戸惑うー。

「ーーそうよ!セバスチャン!あなたのことよー!」
ドヤ顔でお嬢様らしい振る舞いを適当にする美里ー

「ーーわたし、決めましたわ」

”こんな、お嬢様口調で喋るお嬢様、現実にいるのかー?”と
心の中でツッコミを入れながらも、
美里は叫んだー

「今日からわたし、ギャンブラーになりますわ!」

とー、
満面の笑みを浮かべながらー

「ーーは、、は、、ギャン…は、、はぁぁ…?」
執事は戸惑っているー

「セバスチャン!早速資金を用意してー」
美里がそう叫ぶと、
執事は、豹変した美里を見て、ただただ困惑することしかできなかったー。

「ーお嬢様…わ、わたしは、伊佐山(いさやま)でございますがー」
執事が申し訳なさそうに言うと、
美里は「お黙り!あんたはセバスチャンよ!」と叫んだー

”金さえあれば、絶対に勝てるー”

美里に憑依した敏三はギャンブルでの勝利を確信して、笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

ギャンブルで破産した男に憑依されてしまったお嬢様…!

その先に待つのは、成功か、失敗か、
ぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

憑依<わたし、今日からギャンブラーになりますわ>
憑依空間NEO

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