<寄生>はじめての彼女(前編)~不安~

今まで一度も彼女ができたことのなかった彼に、
「はじめての彼女」ができた。

妙に積極的な彼女ー。

彼はまだ知らないー
彼女の”本当の目的”をー。

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男子大学生の城嶋 智弘(じょうしま ともひろ)は、
今まで、一度も彼女というものができたことはなかったー。

智弘自身、奥手な性格の持ち主だし、
誰かを好きになることがあっても、
自分から告白するようなことは、絶対にないー。

”100パーセント相手がOKをしてくれる状況”に
ならない限り、智弘は自分から告白することが
絶対にないーと、断言できるほど、
恋愛に対しては奥手な性格だったー。

当然、”100パーセント相手がOKをしてくれる状況”などというものは
まず、あり得るものではない。
99パーセントであっても、100になることなど、
あり得ないことなのだー。

だからー
智弘は、彼女というものができたことはなかったー。

別に、自分からも特にアピールしたり、
積極的に好かれようとするわけでもないから、
今まで告白されるようなこともなく、
ほどほどに”クラスメイト”として、会話することはできるものの、
それ以上の関係に発展するようなことは一度もなく、
ついに大学生にまでなっていたー。

”別に、いないならいないで、いいけど”

智弘は、大学に入学した時点でも、
そんな風に考えていたー。

恋愛なんて、智弘からしてみれば、所詮は
人生のサイドメニューでしかない。

ポップコーンがなくても、映画を見ることはできるし、
映画を楽しむこともできる。
それと、同じだー。

恋愛イベントがなくても、人生を送ることはできるし、
人生を楽しむこともできるのだ。

確かに、あれば嬉しいのかもしれないー。

しかし、
映画を見に行った映画館で
ポップコーンが品切れだったからと言って、
わざわざ”サイドメニュー”とも言えるポップコーンのためだけに、
隣町まで行って、別の映画館に移動したりするだろうかー。

否ー。
そんな労力を使ってまで
映画を見ながらポップコーンを食べる必要はない。

映画を見るほうを、優先するだろうしー、
大して後悔もしない。

恋愛も同じ。

労力やリスクを負ってまで、恋愛する必要は、ないー。

と、智弘は考えていたー。

しかしー
予想外の出来事が起きたー。

絶対に彼女なんてできないだろうー、と
思っていた智弘に、彼女ができたのだー。

その彼女は、同じ大学に通う、
鈴本 架純(すずもと かすみ)ー。

学園祭の時に、”迷ってしまった”と、突然声を掛けられて、
一緒に行動することになり、
その時から、急接近することになったー。

”先日はありがとうございました”
そんなことを言われて、その後も積極的に
智弘に接近してくる彼女ー。

最初ー
智弘は、架純が”罰ゲーム”か何かで
自分に接近してきているのかと思ったー。

だが、架純と一緒に過ごしているうちに、
智弘は考えを改めるー。

架純の行動は、どう考えてもお金目的ではないし、
罰ゲームにしては、”一緒にいる期間”が長すぎるー。

そもそも、智弘を騙したところで、何のメリットがあるというのか。
架純が”智弘に対する恨み”を持っているのであれば
話は別だが、
そんなことはおそらくないし、
智弘は別に金持ちでもなければ、特別イケメンでもない。
智弘に接近するメリットがまるでないのだー

既に付き合い始めてから1か月以上が経過しているー。

罰ゲームで1か月以上も付き合うような子ではないはずだし、
そんなメリットはないはずだー。

そう思いながら、智弘は次第に架純に心を開き始めていたー。

これでもし、罰ゲームなのであれば、
完敗だー。

1か月間、智弘の家にまで何度かやってきているし、
一人暮らしだと言う架純の家にも、何度か上がらせてもらっているー

そして、架純はついに、”エッチなこと”を
積極的にしたいと言ってくるようになったー。

とても大人しそうな雰囲気の子に見えるのだが、
学園祭で初めて会話をしてから、
ここに至るまで、今まで彼女のいたことがない智弘からすれば
”スピード展開”すぎて、正直なところ、
頭がオーバーヒートしてしまいそうな気分だったー

けれど、同時に幸せも感じたー

恋愛は、人生のサイドメニューだと考えていた智弘にとって、
自分から恋愛をするつもりはなかったが、
相手からやってくるのであれば、話は別だ。

サイドメニューであるチキンナゲットを、
お金を払ってまで食べる気が無かったとしても、
店員さんが「無料です」と持ってきてくれれば
喜んで食べる。

それと、同じだー。

「ー明日、楽しみだなぁ~」
架純が嬉しそうに笑うー。

「ーーー」
智弘は、そんな佳純に対して返事をできずにいたー

「ーも~!緊張してるの~?」
笑う架純ー。

正直、智弘からすれば、未だに架純のようなかわいい子が、
自分なんかに好意を抱き、告白されて、
こんな風に付き合っている、なんてことが信じられなかったー

「ーーいやぁ…架純が…どうして俺なんかと、っていまだに思っちゃってさ」
智弘の言葉に、架純は笑いながらー
「人を好きになるのなんて、直感でしょ?
 理由なんて言葉に言い表せないしー
 好きだから好き、それだけ」と、微笑むー。

しかしー
少し不安なこともあるー。
架純の知り合いと話す機会があったのだが、
架純は元々恋愛に奥手なタイプで、少なくとも
こんなに積極的な子ではない、というのだー。

その不安も吐露する智弘ー

明日は、智弘の家で架純と”エッチなこと”をすることになっているー。

智弘にとっては初めての経験だー。
つまり、童貞を卒業ー
とか、なんとかすることになるのだー。

「ーーーーあ~うん」
架純は少しだけ笑いながらー
「みんなの言う通りなんだけどー
 だからこそ、かなー」と、呟くー

「だからこそ?」
智弘が聞き返すと、架純は「そう」と頷くー。

「”勢い”がないと、わたし、臆病になっちゃうしー
 いつまで経っても告白もできないし、手も繋げないし、
 キスもできないしー、
 エッチなこともできないしー。

 だからー
 智弘からすれば、わたしが積極的すぎる、って感じるかもしれないけどー
 みんなの言う通り、わたしは本来、奥手だからー。

 勢いがないと、止まっちゃうのー。

 わたしは、わたしなりに、目標に向かって頑張ってるのー」

架純の言葉に、
智弘は、架純自身も、奥手なりに頑張っているからこそ、
それがある種、空回りして、こんなに積極的になっているのかもー、と考えるー

「そっかー…無理はしてない?」
智弘が言うと、架純はー
「無理はしてないーって、言ったらうそになるけどー
 でも、智弘とそういうことしたいのは、ホント!
 だって、好きなんだもん」と、優しく微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・

”無理してないよ”
架純は、自分の部屋で、ひくひくと震えながら呟くー

目は白目になって、
ビクンとビクンと痙攣しながらー
架純は、口から”得体の知れないもの”が、
蠢いた不気味な状態で、へらへらと笑っていたー

「だってーー
 ”繁殖”したいんだもんー
 
 うへ…
 えへへへ…
 えへへへへへへ」

”人ならざる何か”を口から飛び出させている状態の架純は、
時折ぶるぶると震えると、やがてー

「ーーあの人間も、仲間に、するぅ…♡」と、
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

今日は大学は休みー。

予定通り、架純が智弘の家にやってくるー。

「ーーおはよ~!」
可愛らしい服装の架純を見て、ドキッとしながらも
智弘は、喉がカラカラに乾くのを感じながら、
架純を部屋の中へと招き入れたー

「ーーーーふぅ~~~」
緊張した様子の智弘ー

「ーなんか、すっごい緊張してそうだけど、大丈夫?」
架純が笑いながら言うー

「そ、そりゃするさー
 ついこの間まで、俺、生涯童貞だって
 思ってたぐらいなんだぞー?

 それなのに、こんなかわいい彼女が急にできて
 その彼女と…その…エッチなことするなんて…もう…
 心臓がー」

智弘がそこまで言いかけると、
「わたしも、ゾクゾクしちゃうー」と、架純は
欲情した様子で呟いたー。

昨日はー
”わたしも緊張してる”などと言っていたが
やっぱり、架純の振る舞いを見ていると、
緊張しているどころか”とにかくヤリたい”と言わんばかりの
強い意志を感じるー。

”本当は身体目的か何かなのではないか”
智弘の中で、そんな不安が膨らんでは、消えていくー。

いやー
だが、智弘自身、別にイケメンなどではないし、
智弘の身体目的で誘惑してくる女など、いるはずがないー。

”子供でも作らせて、金をーってか?”
智弘はそうも考えたが
智弘はいつも大学で友達と”貧乏ネタ”で盛り上がっているぐらいだし、
架純ほどの可愛い子が、智弘を騙すメリットは
やはり、何度考えても、ないー

「ーーほ~ら!」
架純がいきなり智弘にキスをしてきたー。

「ーーうおっ!?」
びっくりして変な声を出してしまう智弘ー。

「ーーふふふ…そんなに驚かないでよー
 まだまだ”ウォーミングアップ”なんだからー」

その言葉に、智弘は「あ、あぁ」と言いながらも、
架純が妙に色っぽいような感じがしてー

いやー
”何か得体の知れない違和感”を感じたような気がして
表情を歪めるー。

やっぱりー、
”この先”に進んではいけない気がするー

「ーちょ、ちょっと待ってくれ!」
智弘がそう叫ぶと、架純は不満そうな表情を浮かべて
智弘を見つめるー。

「ーは、、は、、初めてだからー
 心の、心の準備がー」

智弘は、そう言いながら
何度も何度も深呼吸をするー。

異性とのエッチな行為に、
興味がないー…
と、いうことではない。
積極的に彼女を作るような気は全くなかった智弘だが、
こうして、相手から来てくれるのであれば、
それは、拒む理由もないし、
”好き”になられたら、自分も好きになってしまうー

智弘は、そんなタイプだったー

でも、しかしー
何だか、胸が締め付けられるような思いがして、

「は、初めてエッチなことするときってー
 み、みんなこんな感じなのかなー?」

智弘の言葉に、架純は「きっと、みんな緊張してると思うよ」と
微笑むー。

「だって、今、わたしも緊張してるしー」
架純の言葉に、智弘は今一度深呼吸をすると
「そっか…そうだよな」と、微笑むー。

「ーごめんな…俺みたいな童貞が相手でー」
智弘が自虐ネタを挟むと、
「ーそういうの、気にしてるの男子の側だけじゃない?
 案外、気にしない子も多いよ!わたしみたいに」
と、架純は、智弘を持ち上げたー

「というかさ、色々な子とヤリまくってる~!みたいな方が
 わたしからすると違和感あるし、抵抗あるよね。
 だから、わたしは全然気にしないし、大丈夫」

架純の言葉に、
”どうして、俺に、こんな天使みたいな子がー”
と、未だに”架純と付き合えている”という事実が
信じられずに、震えるー。

「ーーーーー」

”経験ないほうが、”堕としやすい”から、、、ネー”

架純が、邪悪な笑みを浮かべたことにー
邪悪なことを考えていることにー

智弘は全くと言っていいほど、気づいていなかったー。

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

毎週土曜日だけ、書置きの予約投稿な都合上、
いつも通り、続きは来週になります~!

少しお待たせしてしまいますが、
来週の土曜日まで楽しみにしていてください☆!

今日もお読みくださり感謝デス~☆

・・・

(土曜日の作品だけ書置き(当日書く時間がないため)
 なので、ずいぶん前に先に書いているのですが、
 予約投稿の最終確認のために再チェックしたら
 昨日の作品と登場キャラの名前がたまたま被ってました笑

 名字が違うので別人デス~笑)

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寄生<はじめての彼女>
憑依空間NEO

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