次々と憑依されていく新人隊員たちー。
地獄のような訓練がついに幕を開け、
穏やかだった無人島の状況は、一変したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
持っていた銃を放ち始める新人隊員たちー。
「ーおい!何やってんだお前!危ねぇだろ!?」
軽い性格の新人隊員の一人、隆が叫ぶー。
だがー
隆が声を掛けた相手はー
不気味な笑みを浮かべていたー
「ガキ!俺は今、興奮してるんだよー」
仲間の隊員の一人が、笑みを浮かべながら言うー。
「ーーな、、な、、何言ってんだ!
ガキ…って、俺はお前と同い年だぞ!?」
叫ぶ隆ー。
その時だったー
隆も、”自分の中に何かが入ってくる”違和感を感じ、
表情を歪めるー。
”な、、なんだ!?”
だがー
隆は、精神力だけは強かったのかー
”うるせええええええええええええええ”と、自分の内側に
入り込んできた霊体を抑え込むと、
そのまま、周囲の仲間たちに向かって叫ぶー
「お前らいったい何してやがるんだ!?
あぶねぇからやめろって!」
銃を持って撃ち始めた仲間たちを見て、そう叫ぶ隆ー。
「ーーおい!お前ら、聞いてんのか!」
隆は、おかしな行動をし始めた仲間たちに向かって叫ぶー。
「ーー!」
隆は、自分の身体に強い衝撃を感じて、
下を向いたー。
「ーーえ?」
腹部から、血が流れているー。
「ーーひゃはははははははは!久々の人殺しだぜぇ!」
田辺教官によって放たれた”囚人”に憑依された隊員の一人が叫ぶー。
「ーーお、、、お…?」
隆は、意味も分からないまま、
その場に倒れ込むー
「ー須藤か。貴様は死んだぞ」
「ー貴様のようなヘラヘラしているやつは
戦場では生き延びられないと言っているのだ!」
田辺教官に言われたことを思い出しながら砂浜に倒れる隆ー。
そんな隆の周りに集まってくる”憑依された隊員”たちー
隊員たちは笑いながら隆に銃を向けるー。
その中には、大人しい女性隊員の璃子の姿もあったー
璃子は、狂ったように笑いながら、
「ーーあぁぁぁ 久々にマジで興奮するぜぇ…!」と、叫んでいるー。
”何がおきてるんだー”
この訓練の真相も、何も理解できないままー
隆は、憑依された仲間たちに滅多撃ちにされて、そのまま動かなくなったー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ!?いったい何が起きてるの?」
美智恵が叫ぶー。
「わ、分からない!でも、とにかく逃げるんだ!」
順太が叫ぶー。
砂浜での異変をいち早く察知しー
仲間たちが銃を撃ち始めた光景を見て、
順太は何かが起きていることを悟ったー
親しい女性隊員の美智恵の手を引きながら、
順太は、美智恵と共に、島の木々が生い茂っているほうに
向かっていくー。
「ーーーねぇ…わたし、さっきから頭がずきずきするんだけど…」
美智恵が頭を抑えながら呟くー
「ーーみ、宮田さんもー?」
順太はそう言いながら「少し休もうか」と、
周囲の安全を確認してから、銃を手に、美智恵を木に寄りかからせたー。
「何が起こってるの…?」
美智恵は、頭を抑えながら言うー。
「分からないー」
そう言いながらも、順太は”俺に身体をよこせ…”という声が
聞こえるのを感じたー
”うるさい”
順太は身体を何者かに奪われてしまうような”錯覚”を
感じながらも強い精神力でそれを抑え込むー
「ーーー…わたし、さっきからー
自分が自分で無くなっちゃうような…そんな感じがするの」
美智恵が不安そうに言うー。
「ーーーー…実は俺もさっきからー」
順太がそう呟くと、美智恵は「順太もー?」と、不安そうに呟いてから、
順太のほうを見つめたー。
「ーーもしかして、これが”P訓練”ー?」
美智恵の言葉に、順太は「俺もそう思うー」と呟くー。
先輩たちは”P訓練”が何かをなぜか誰一人として
教えてくれなかったが、
P訓練のことを聞くだけで、態度を豹変させる先輩も多く、
先輩たちが、この”P訓練”なる訓練を心の底から
恐れている、ということだけは、とてもよく伝わってきたー。
「ーーこの状況になることを田辺教官は知っていたからこそ、
島から離れたー」
順太がそう呟くと、立ち上がってー
「3日間ー、俺は絶対に生き延びてやる」と、静かに呟くー。
最初は”不測の事態”が起きているのかとも思ったー。
だが、今、この状況は、田辺教官の思惑通りなのだと、順太は悟っていたー。
「ーわたしも、負けないー」
美智恵の言葉に、順太は「一緒に訓練を乗り越えよう」と、
決意のまなざしで頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあはははははっ♡ あははははははははっ♡」
浜辺ではー
異変に気付くのに遅れた隊員のほとんどは、殺されていてー
海上刑務所からやってきた憑依薬によって霊体と化した囚人たちに
憑依されてしまった隊員たちは、欲望の限りを尽くしていたー
大人しい性格の女性隊員・璃子は、
周囲の憑依された男性隊員たちに、滅茶苦茶に弄ばれていたー。
璃子自身も憑依されていて
狂ったように笑っているー
「あぁぁぁ、女の身体マジやべぇよ!ほら、もっと、もっと襲えよ!
ぎゃははははははは!」
叫ぶ璃子ー
「ーーー」
何とか難を逃れた数名の隊員たちは
「何が起こってるんだ?」と、首をかしげながらも、
そのままその場から離れたー。
しかしー
憑依されず、憑依された隊員たちに殺されることなく、
難を逃れた隊員たちも、
疲れ・恐怖などから、最初は精神力で乗っ取りを防いだものの、
後から乗っ取られてしまう隊員も続出し、
”生き残り”はさらに減りつつあったー。
「ーーおい!面白れぇ遊び考えたぞ!」
笑いながら叫ぶ男性隊員ー。
彼も、既に憑依されているー。
「ーほら、見ろよ!」
そう言いながら、銃を構えて、自分の頭を容赦なく撃つー。
そしてー
近くにいた”捕らえられた男性隊員”に憑依するー
「ーえへへへへ!人の身体だから自殺体験もできちゃうぜ!」
周囲の乗っ取られた隊員たちが大笑いするー
”ーーーーー”
そんな光景をドローン越しに、近くの海上刑務所から見ていた
田辺教官は呟くー
「今年もー生き残るのは、数名になりそうだなー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2日目の朝を迎えー、
順太と、美智恵は、木々が生い茂る、無人島の中心地点あたりで
一晩を過ごしていたー。
「ーーーねむい…」
美智恵が目をこするー。
だが、順太は”寝たら身体を乗っ取られる”気がして、
一晩も寝ずに過ごしていたー。
「ー3日間なんだー。頑張らないと」
順太が言うと、美智恵は静かに頷くー。
ガサっー
その時だったー
近くの木が揺れる音がしてー
順太が銃を手に、振り返るー。
そこにはー
「なんだ、あんた、まだ生きてたのかー」
姿を現したのは、巨体の新人女性隊員が姿を現したー。
腕相撲では圧倒的な実力を発揮し、
屈強な男の腕をテーブルごと破壊したほどの実力者で、
この訓練前に、順太を揶揄っていた女性だー。
「ーーあぁ、安崎さんー」
順太が言うと、お互いに状況を確認し合う三人ー。
巨体の女性隊員・安崎も、囚人に憑依されたものの
”うるせーボケ!”と叫び、囚人に乗っ取られることなく、
霊体を追い出したのだったー。
「ーーはは、安崎さんらしいやー。」
順太がそう言うと、
「ーーどうやら”何か”にみんな、乗っ取られてるみたいだね」
と、呟くー。
順太もそれには同意見だったー。
「他のみんなは?」
順太の言葉に、女性隊員の安崎が返事をしようとしたその時だったー
銃声が響きー、
安崎がその場に倒れるー。
「ーーえ?」
順太が慌てて振り返るとー
そこには、銃を持って笑みを浮かべた美智恵の姿があったー
「ーーくくく…ようやくこの女の身体の主導権を奪えたぜー」
笑みを浮かべる美智恵ー
「ーー!み、宮田さんー…!」
順太が美智恵のほうを見つめるとー
美智恵は、既に囚人に身体を支配されてしまっていたー。
眠気に勝てず、眠ってしまったところ、完全に身体を
奪われてしまったのだー
「ーーー」
順太は”くそっ!”と思いながらも、銃を美智恵の方に向けるー
撃たれた安崎は、ぴくぴくしながら「に、、、げろ…」と呟いているー。
順太が美智恵を見つめるー
美智恵はニヤニヤしながら、
「ーこの女の身体と、ヤろうぜ??
俺、女として一度ヤッてみたかったんだよー」と呟いているー
「ーーお前は、何者だ?
いや、お前たちはー」
順太が言うー。
しかし、美智恵は答えないー。
「ーー」
美智恵の狂気的な笑みを見てー
順太は「くそっ!」と呟きながら、
そのまま、銃を美智恵の顔のすぐ横に放ちー、
隙をついて逃走したー
「ーーへへ、逃げたか」
美智恵はそう呟くと、瀕死の安崎のほうを見て、
「ーじゃ、死にかけの女とのエッチで我慢するか」と、
不気味な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーくそっ!」
身を潜めながら、順太は、2日目の夜を迎えていたー。
近くの昆虫を見つめる順太ー
”3日”と分かっている故、今回は無理して食べる必要はないー。
水分だけ補給すると、
順太は、このP訓練の終わりをじっと
待ち続けていたー。
身を、潜めながらーー
「ーーうるさい!出てけ!」
時々、頭の中に声がするー。
油断すると、身体を乗っ取られそうになってしまうー。
だから、眠ることもできないー。
美智恵が、一瞬の油断で乗っ取られたようにー
”クソッ!来るな!”
少し先で声が聞こえたー。
順太が茂みから顔を出すとー
男性隊員二人が対峙していたー
一人は笑みを浮かべていて
もう一人は、後ずさっているー
「へへへへ…どうだい?親友に追い詰められる気分はー」
笑みを浮かべているほうは、恐らく乗っ取られているー
もう一方は、その隊員に銃を向けながら後ずさるー
「や、、やめろ!お前を撃ちたくない!正気を取り戻せ!」
そう叫ぶ隊員ー
だがー
彼は、親友を撃つことができずー、
そのまま乗っ取られた親友に撃たれてしまうー
「へへへ…バカなやつだー」
その光景を見つめながら、順太は再び身を隠すー。
”あと、何人ぐらい、無事なんだー?”
時折、銃声が聞こえたりするー
まだ、順太以外にも、生き残りはいるはずー。
そんな風に思いながら、順太は”3日目”を迎えたー。
だいぶ、生き残りが減ったのだろうかー
順太は一瞬たりとも、ウトウトすることもできない状況の中、
再び”何かが入り込んでくる感覚”を感じたが、
自分の頭に銃を突き付けて「俺から出ていけ!」と叫び、
なんとか霊体を追い払うー。
「ーーーー!」
順太の前に、大人しい女性隊員の璃子が姿を現すー。
半裸の状態で、もはやボロボロー。
「ーーくくく…ヤリまくってヤリまくってー
すっかりボロボロだぜ はぁ…はぁ…」
初日に乗っ取られた璃子は、どれほど酷使
されてきたのだろうかー。
「ん~?お前、まだ、誰にも憑依されていないのかぁ~?」
璃子がニヤニヤしながら近づいてくるー。
順太は「と、止まれ!」と叫ぶー。
だがー
璃子が正気を取り戻す様子はないー。
順太は後ずさるー
「ーーー!!」
昨日の夜ー
今の自分と同じように、憑依された仲間を前に
撃てずに死んだ男性隊員を見たことを思い出すー
”撃たなきゃ、やられるー”
「ーーやめてくれ…!来るな!」
順太は今一度叫んだー
しかし、
璃子は、止まらなかったー。
順太は、涙を流しながら、引き金を引いたー。
動かなくなった璃子を前に、順太は怒りの雄たけびを上げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”時間だー
全員、身体に戻るようにー
これ以上、自分の身体に戻らないと、憑依薬の効力が切れ、
貴様たちは死ぬー”
無人島に徘徊していた霊体たちに、
田辺教官の声が響き渡りー
囚人たちは”撤収”したー。
そしてー
田辺教官がヘリに乗ってやってくるー。
”無事”だった隊員は、順太を入れて6名だけー。
「ー残ったのは、6名か。
貴様らは、未知なる状況にも対応できる、
”総合防衛隊”の未来を担う戦力だー。
よくやった。」
田辺教官はそれだけ言うと、
6名以外、全員死亡したことには、何も触れず、
順太らをヘリに乗せようとするー
「ーーこんな訓練」
順太がふと呟くー。
「こんなの、訓練じゃない!
何人死んだと思ってるんですか!?」
順太の叫び声に、
田辺教官は、順太のほうを睨みつけるー。
「ーこの程度の訓練で死ぬようなやつは、
実践では、相手に乗っ取られて、足手まといになるだけだ。
宇宙での生命体が確認されている今、
いつ、人間を操るようなやつが地球に来てもおかしくはない。
そのための、訓練だー。
足手まといは、総防には必要ない」
それだけ言うと、田辺教官は、
順太以外の隊員も、教官を睨んでいることに気づくー。
「ーーまぁ、貴様たちの怒りもわからんでもないー
だがー
今すぐ”忘れさせて”やるー」
そう言うと、田辺教官は、謎の赤い光をヘリコプターの方から放ちー
それを見た順太たちはー
”P訓練”で何が起きたのかをー
そして”死んだ仲間たち”の記憶を消去されー
”P訓練は恐ろしい訓練だ”という記憶だけが、残ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
10年後ー
順太は、総防の一員として、立派に活動を続けていたー。
時は流れー
今年も新人隊員たちがやってきたー。
10年前の自分と同じように、
初々しい隊員たちだー。
「ー先輩!今度行われる”P訓練”って何ですか?」
新人隊員の一人が順太に尋ねてくるー。
順太は
「う~ん、とにかくヤベェ訓練だよ」
と、苦笑いしながら答えるー
「え~?それじゃ全然わからないですよ」
新人が聞き返すー
だがー
不思議と、順太は”P訓練”のことをよく覚えていなかったー
記憶を消されたこともーーー。
「ーーなんか、すごくキツイ訓練だった…ってのは覚えてるな」
順太はそれだけ言うと、
新人隊員は「あくまでも秘密ってことですね!ま、明日になれば分かることです」と
余裕の表情を浮かべて立ち去っていくー。
一人残された順太は
”P訓練で自分が何か大切なものを失った”ような気がして
無意識のうちに、少しだけ涙を流していたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
頭の中で浮かんでいる内容を描き切るのに、
2話で十分だと思っていたのですが
最後は少し駆け足気味になってしまいました~…!
時折、2話で大丈夫だと思っていたら
あまり大丈夫じゃなかった…!ということを
前からやってしまいがちデス…笑
(スケジュールを先に発表しているので、やっぱり③まで!も
なかなかできないのデス…!)
お読みくださりありがとうございました~!
コメント