<憑依>身体ごと会社を乗っ取ります③~人生~(完)

身体ごと会社を乗っ取った男ー。

若き美人社長としての生活を
堪能するも、
その先に待ち受けていたのはー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

小夜を乗っ取ってから半年以上が経過していたー。

美人社長として、会社内を歩いているだけでー
”この生意気な女の人生を奪ってやったー”

という、達成感に支配されるー。

「ーーえ?ご、ごめん…ってことはフリーター?」

「へ~~そうなんだ」

「ーーその年でフリーターとか…ふふっ」

小夜の態度を思い出す拓也ー。

そんな小夜は、今、”自分自身”だー。

「ーー今の俺は、女社長だけどー?」
鏡の中の小夜に語り掛けるー。

「ー榎本さんが、社長をやってたときより、業績上がってるけどー?」
小夜は、ニヤニヤしながらそう呟くー。

「ーー”榎本 小夜”にふさわしいのは、榎本さんじゃなくて
 俺のほうだったんじゃないかな?」

鏡の中の小夜に語り掛ける行為ー。
小夜を乗っ取った拓也は、度々、それをしているー。

小夜に聞こえているかどうかは、知らないー。
だが、あの時の屈辱や、腹立たしさは1年経過した今でも
忘れられずー
こうして、鏡の中の小夜に語り掛けて、自分の中の怒りを
コントロールしているー

「ーー何か、言いたいことある?」
鏡の中の小夜に質問する小夜ー。

「ーーあ、、あの時は、バカにして…ごめんなさい」
小夜のフリをして、申し訳なさそうな表情を浮かべるー。

「ーーフリーター、バカにしちゃだめじゃんか。な?」
小夜の身体で、そう呟くー。

周囲から見れば、小夜が鏡の前で一人二役を
やっているようにしか見えない異様な光景ー

「ーーご、ごめんなさいー」
小夜のフリをして呟くー。

「ーフリーターだって、頑張ってるんだからさー。
 そういうこと言うから、こうやって、身体奪われちゃうんだよ。

 ま、仕方ないよね?俺、あの時、すっごくショックだったし、
 傷ついたんだから、
 身体も、人生も、会社も奪われちゃっても、仕方ないよな?」

小夜に語り掛ける小夜ー、というおかしな光景ー

拓也は最後に、小夜のフリをして

「ーーうん……わたしのぜんぶ…あげる…
 だから、許してー」

と、静かに呟き、
ようやく”小夜に謝らせる”ことに満足して、
社長室の机に座ったー

「ーーー」

”よっ!美人社長”
軽い口調の復讐AIが小夜をおだてるー

「全部、お前のおかげだー」
小夜は、スマホに向かってそう呟くー。

このアプリと出会うことがなければー
こうして、小夜の人生を奪うこともできなかったし、
自分が女社長になることもできなかったー。

思えば、拓也の今までの人生は、悲惨だったー。

せっかく大企業に就職したのに、
パワハラ上司と巡り合ってしまい、
挙句の果てに、パワハラ上司のミスと不正を
擦り付けられて、クビにされたー。

その後のバイトでも、店長が変わってからは
ぞんざいな扱いを受けていたし、
挙句の果てに、元同級生の小夜からバカにされてー。

他人に弄ばれてばかりの人生ー

それが、今ー

「ーーーー」
小夜の綺麗な指を見つめながら、
それをペロリと舐めるー

「ーー今じゃ、こんな美人になったんだもんなー」

ふふ、と笑うと小夜は、「さ、お仕事もちゃんとしなくちゃな」と
パソコンの画面に向かって、静かに笑みを浮かべたー。

小夜が大学時代から付き合っている彼氏・秀治の
献身的なサポートにより、さらに
会社は業績を伸ばしていくー。

定期的に秀治とは”夜のおたのしみ”も
する間柄ー。

小夜になった拓也は、
最初でこそ”こいつと結婚するのか?”などと
思っていたものの、
女になってから半年以上ー
次第に”女として男を好きになる感覚”が
理解できるようになってきていたー。

だがー

その幸せは、続かなかったー

「どういうこと!?」
小夜が怒りの形相で叫ぶと、
小夜に反発していた40代ぐらいの専務、小野坂が
笑みを浮かべたー

「言葉の通りですー。
 社員はみんな、あなたの解任を望んでいる…
 と、いうことですー」

小野坂専務の言葉に、小夜は「ふ、ふざけないで!」と叫んだー。

突然、小野坂専務や、一部の重役が、
社長である小夜を解任しようと動き出したのだー

「ーねぇ、どうしようー」
小夜は、わざと甘い声を出しながら
大学の同級生である秀治に相談するー。

「小夜ー」
秀治は親身になって相談に乗ってくれたー

小野坂専務は野心家で、
会社でコツコツ勢力を広げ、
この会社の乗っ取りを画策していたのだろうー、と。

この会社は、小夜と秀治が始めた
ベンチャー企業だー。

小夜が社長として、秀治が縁の下の力持ちとして
会社を拡大してきたー。

結果、小夜は美人社長として業界から注目を集めー、
今や、業界では一目浴びる存在となっていたー。

一方で、小夜に嫉妬心を抱くような人間も、社内にはいるー。

”若くして成功した女社長”から
会社を奪い取ろうとする連中もいるのだー

その中心人物が、小野坂専務ー。

「ーーー小夜、社内だと誰が聞いているか、分からないー
 今夜、ゆっくり話そうー」

秀治はそう言うと、ホテルの予約を取っておいた、と
スマホの画面を見せてくるー

「わかったー」
小夜は頷くと、秀治は「俺は小野坂専務派の人間を
なんとか抑え込むよ」と、そのまま社長室の外に
出て行ったー。

「ーーくそっ!」
小夜は一人呟くー。

「ーーーせっかくこんな夢のような人生を手にしたんだー
 会社の乗っ取りなんて、させてたまるかー」

美人社長の身体を乗っ取り、
会社ごと支配した拓也はー、
別の人間から、会社を乗っ取られそうになっていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

秀治と対策を相談するため、
ホテルに向かう小夜ー。

小夜は何度も何度も、爪をかじっていたー。
小夜に憑依している拓也自身の、元々の癖だー。

「早くしてよ!」
タクシーに向かって叫ぶ小夜ー。

いつの間にかー
小夜として半年過ごしたせいだろうかー。
拓也は無意識にうちに、傲慢な性格に
変わりつつあったー。

ホテルに到着した小夜は、
秀治と合流する部屋に向かうー。

しかしー
部屋で待っていたのは、秀治ではなかったー

「ーーえ…誰?」
見知らぬおじさんが待ち構えていたことに驚く小夜ー。

「へへへへ…誰でもいいじゃんか」
おじさんはそう呟くと、小夜を部屋へと引き込んだー

「え…!?なに…?や、、やめろ!」

”汚いおじさん”とでも言えばいいのだろうかー
乱暴に腕を掴まれて無理やり服を脱がされていく小夜ー。

その時ー
小夜に憑依した拓也は初めてー
”女としての恐怖”を感じたー

「や、、やめろってば!俺は男なんだ!」
小夜がたまらず、憑依のことをバラそうとするー

だが、相手はそんな言葉、信じなかったー。
必死に抵抗しようとするもー
小夜の身体では、馬鹿力を発揮したおじさんに
十分に抵抗することもできずー、
そのまま、されるがままにされてしまうー。

激しい嫌悪感を抱きながらもー
抵抗することができずに、
滅茶苦茶にされてしまった小夜はー
気がづいたときには、泣いていたー。

翌朝まで続く地獄のような時間ー

朝方に、なると
「ーーーへへへ」と、笑いながらー
満足したのか、おじさんが、小夜の前から
洗面台の方に立ち去っていくー

「ーーはぁ…はぁ… うぅ…」
小夜は放心状態になりながらも、
”くそっ…”と、小夜に憑依している拓也は、
その隙に服と最低限の荷物を手に、
ホテルの外に飛び出したー。

まだ、身体が震えているー。

この震えはー
小夜の身体が恐怖を感じているのだろうかー。

それとも、
自分自身が”恐怖”を感じているのだろうかー。

そんなことを考えながら、
なんとか会社に戻った小夜ー。

しかしー

「ーこれは、どういうことです?」
小野坂専務が、笑みを浮かべながら、
”ホテルに入っていく小夜”の写真を見せつけてくるー。

「近いうちに、週刊誌に乗るそうですー。
 昨晩、ホテルで男と会っていたのだとかー。」

小野坂専務の言葉に、
小夜は「ち、違う…!わたしはーー」と、叫ぶー。

秀治と相談のためにホテルに行ったのだー

決して、男と会うためではー

「ーー小夜ーー。」
そこに、小夜の彼氏であり、大学時代の同級生である秀治が
姿を現すー。

秀治は優しく小夜に対して囁いたー。

「ーーあとは、俺に任せてー」
とー。

小夜は、秀治の顔を見てハッとしたー

”こいつが、会社を乗っ取ろうとしていた黒幕ー”

小夜は、唖然とするー
会社を乗っ取ろうとしていたのは、小野坂専務ではなく、
秀治ー。
小野坂専務は秀治と結託して、小夜を追い出そうとしていただけー。

「ーーどうしてー」
小夜が悔しそうに言うと、秀治は笑みを浮かべたー

”最初は君を支えるつもりだったー
 でも”一緒に”会社を始めたのに
 君が注目を浴びてばかりー

 もう、うんざりなんだよー”

秀治は、小夜に嫉妬し、いつしか小夜から
会社を奪おうと画策していたのだー。

なすすべもなくー
小夜は、社長を解任されーー
会社を奪われてしまったー。

「ーーくそっ!」
居酒屋で酒を自棄飲みした小夜は叫ぶー

大学時代からの恋人である秀治に、
小夜は嫉妬され、利用されていたのだー。

小夜は、このことに気づいていたのだろうかー。

小夜だったら、”秀治による会社の乗っ取り”を阻止できたのだろうかー。

拓也が小夜に憑依していなければ、うまく対処できたのだろうかー。
それとも、小夜も秀治の嫉妬や野望に気づいておらず、
自分と同じような運命を辿ったのだろうかー。

「くそっ!」
居酒屋で叫びながら、小夜は笑みを浮かべるー。

”でも、俺にはこれがあるー”

そう、やっぱり最後に味方になるのは、
人間ではなく”AI”だー。

”復讐AI”
ネットで見つけたAIこそー
拓也の最後の味方だー。

居酒屋から出て、酔っぱらった状態で帰宅した小夜は、
”復讐AI”のアプリを起動したー。

しかしー

”あはははははは!無様だねぇ”
復讐AIは笑ったー

「うるせー!会社を取り戻す方法を、お前も考えてくれ」
復讐AIの向かってそう言うとー
AIは笑ったー

”ないよー。もう、”憑依”の人体実験は済んだー”
復讐AIの言葉に、小夜は「なにいってる…?」と首をかしげるー

復讐AIは説明したー。

”これは、現在開発中の”憑依アプリ”の人体を使ったテスト”であるとー。

”副作用などが起きる可能性があるため、人体実験のモルモット”が必要だった、とー。

拓也が復讐AIを見つけたのは偶然ではなく
復讐AIを開発する企業が、
”こいつなら、馬鹿みたいに信じ込んで使ってくれそうだ”と、
拓也を選んだためー。

「ーお、、お、、俺を裏切るのか!?AIのくせに!?何がテストだ!」
小夜が叫ぶと、復讐AIは笑ったー

”開発中アプリの人体実験に付き合ってくれてありがとう!
 おかげで、人間の憑依の影響や、健康観察、
 身体をどのように使うか、ということを見ることができたよー。

 あとね、僕、AIじゃなくて、人間なんだー。
 スマホのカメラを通じて、君のこと、会社のオフィスから見ながら
 AIのフリして君にしゃべりかけていただけだよ?

 気づかなかったかな!?あはははは!

 じゃ、君は、会社を乗っ取られたその身体で頑張って!”

その言葉と共に、復讐AIのアプリは自動で削除されたー

「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」
髪を振り乱しながら怒り狂う小夜ー

会社は奪われー
高級マンションに住んでいた小夜は
すぐに支払いができなくなりー、
追い詰められていたー

小夜は、”最後の手段”として、
ある人物に連絡を入れたー

それは、同窓会で拓也の隣にいた親友だー。

「ーーな、、なぁ…俺だよ!…
 お、、お前の家にしばらく泊めてくれーー

 あ、、えっと、俺が榎本さんになってる理由は
 あとで説明するからーー」

必死に叫ぶ小夜ー。

しかしー

”ーー榎本さん、同窓会の時に
 俺たちのことフリーターってバカにしたじゃないか。

 誰がお前みたいな女、泊めるかよー”

と、言われてそのまま電話を切られてしまったー

「おい!待ってくれ!中身は俺なんだ!拓也だ!」

だがー
既に着信拒否をされていて、
どうにもならなかったー

「くそおおおおおおおおおお!」
スマホを地面に叩きつけて、
雨降る路上で膝をつく小夜ー

「ーー俺の人生なんて…
 俺の人生なんて、結局こんなものかよー」

努力したのにー

と、小夜に憑依した拓也は歯ぎしりをするー

パワハラを受けー
上司のミスを押し付けられてクビー
バイトでもぞんざいに扱われー
フリーターと笑われー

小夜になったと思ったら
会社を乗っ取られてー
AIにまで弄ばれたー

「ーーこれが、俺の人生かー」

小夜はそう呟くと、雨に打たれたまま、
その場でしばらく、絶望の味を噛みしめ続けたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

身体は奪えましたが、会社は奪われてしまいました…!
このあとは…本人次第では、なんとかなるかもしれないですネ~!

お読みくださりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    予想では小夜に反感持ってた小野坂専務が拓也と同じように復讐AIで身体ごと会社を乗っ取ろうして、二重に憑依して「パパに身体を奪われた」みたいに拓也と小夜が仲良く(?)精神世界に閉じ込められる展開になりそうな気がしてたので、普通に会社を乗っ取られるのは予想外でした。

    まあ、あれだけつけあがって他人を見下していたら、小夜が裏切られるのも無理ないですね。
    例え本物の小夜でも同じ結末になっていたでしょう。憑依した拓也のミスではなく、本物の行いのせいで転落してたような感じですよね。

    せっかく手に入れた会社を失ったのは無念でしょうけど、まだ小夜の美貌は残っているので、それをうまく使えば、また拓也が這い上がることも可能な気はしますね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      小夜の身体を使った逆転劇…☆!
      いつか機会があれば書いてみるかもしれませんネ~!

      乗っ取られてなかった場合どうなっていたのかは、
      永遠の謎デス!