<憑依>身体ごと会社を乗っ取ります①~女社長~

同窓会で再会した子が、
社長になっていたー。

同窓会でバカにされた男は、
その女社長の会社の乗っ取りを画策ー。
そのために用いた方法は、
”身体ごと”会社を乗っ取るという、前代未聞の方法だったー。

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「ーーうっ…!」

企業の美人社長に彼は、憑依したー

「マ…マジかー?」
綺麗な手を見つめながら、微笑む女社長ー。

「ーーー……お前の会社…俺が身体ごと乗っ取ってやるぜー」
女社長は、不気味な笑みを浮かべたー

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1週間前ー。

「ーーー」
今日は、高校の同窓会に呼ばれているー。

石崎 拓也(いしざき たくや)は、
大学を卒業後に就職したものの、うまく行かずに退職。
今はコンビニでアルバイトをしながら、フリーターとして
生活をしているー。

大学時代は、血の滲むような努力をしたー。
その結果、一流企業に就職することができたー。

しかしー
”くじ運”が悪かったと言えばよいのだろうかー。

たまたま、パワハラを繰り返す上司の部署に
配属してしまい、
最後には、その上司がやらかした、会社に大損害を与える
大きなミスの責任を擦り付けられて、クビになってしまったー。

”努力”も”運”で水の泡になるー。
そんなことを、拓也は実感してしまったー。

そして、今日は高校の同窓会ー。
高校時代は、それほど目立つ存在ではなく、
友達も多くはなかったのだが、
数少ない友達が誘ってくれたため
”まぁ、行くか”という軽い気持ちで
同窓会に参加していたー。

拓也たちが高校を卒業してから、既に約10年ー。
全員、20代の後半になって、
あの時とはずいぶん変わったー。

同窓会の会場に到着した拓也は、
久しぶりの友人たちとの再会に、
懐かしさを感じながら、
自虐的な笑みを浮かべたー

「--俺は、今、フリーターだからさー。
 毎月ギリギリの生活だよ」

拓也が笑いながら言うと、
近くにいた友人が「ははっ!俺もだ!そんなに落ち込むな」と、
拓也の肩を叩いたー。

みんな、それぞれ苦労しているんだなー。
そんな風に思っていると、
綺麗なパーティドレスを身に着けた女が目に入ったー

”あんな子、いたっけなー…”
拓也がそんな風に思いながら、その綺麗な女性を見つめているとー

「お?拓也、お前、一目ぼれか?」
と、隣にいた友人が拓也を揶揄うー。

「ち、ちげぇよ!ってか、一目ぼれしたとしても
 俺なんか相手にされるわけないだろ」

拓也は言うー。
ああいうタイプの子は、
高校時代もクラスの女子たちの中心にいたような
キラキラしたタイプの子に決まっているー。

そう、拓也のような人間とは、
元々関りのなかったようなタイプの女子だろうー。

だがーー
そんな風に考えているとー
その綺麗な女性は、拓也の前の前にやってきたー

「ーーーえ?」
拓也が戸惑っているとー
「石崎くん、だよね?久しぶりー」
と、その綺麗な女性が、静かに微笑んだー。

「ーーえ…??え…????え?」
拓也が戸惑っているとー
「お、、お前!いつの間にこんな綺麗な子と…!」
と、隣の友人が呟くー。

拓也は、自分の高校時代を振り返るー。
正直、女子とは縁がなかったー。
男子の友達はいたが、女子の友達はいなかったし、
彼女もいなかったー。

いったいー?
いったい、この子は誰だー?

そんな風に思っていると、相手がそれを見透かしたかのように
口を開いたー。

「ーーあ、あの…榎本(えのもと)ですー。
 榎本 小夜(えのもと さよ)ー
 覚えてませんか?」

相手の綺麗な女性・小夜はそう名乗ったー

「ーー榎本 小夜ー?」
拓也は困惑した様子で、高校時代の記憶を探るー。

そしてー
ようやく思い出したー
2年生の時、同じ図書委員になって、
クラスは違ったけれど、図書委員として、
1年間、一緒に活動した子だー

お互いにそれほど友達が多いタイプではなく、
小夜は当時、かなり地味だった印象があるー。
髪も傷んでいるような感じの子だったし、
何より、かなり暗かったー

「ーーあ、、あ、、思い出した!図書委員のー!」
拓也が言うと、
小夜はにこっと笑いながらー

「久しぶり!」
と、笑顔を浮かべたー

ドキドキしながら、近くのテーブルに座り、
話をする拓也と、その友人、そして小夜ー。

小夜は、高校時代とはまるで別人のように
美人になって、はきはきと喋るようになっていたー。

「ーーす、、すごいなぁ…まるで別人みたいだよ」
拓也が言うと、小夜は
「ー自分を変えなくちゃって、努力したからー」と、微笑むー。

本当に、血の滲むような努力をしたのだろうー
容姿もそうだし、性格もまるで別人ー
しかし、話をしていると、確かにあの時一緒に
図書委員をしていた子と同一人物であることは分かったー

「ーーすごいなぁ、それで今は何を?」
拓也の友人が言うと、小夜は、名刺を取り出して、
それを手渡したー

”株式会社ネオンハート 社長 榎本 小夜”と
書かれているー

「し、し、し、社長!?!?!?」
拓也が驚くと、
小夜はにっこりとほほ笑むー。

「ーーうんー。
 大学を卒業したあとに、
 アクセサリーとか、ファッションとか、
 そういうものを企画するベンチャー系の企業を作って、
 続けてるのー

 まぁ、それほど大きくはないんだけどねー」

小夜の言葉に、
拓也の隣にいた友人が”ネオンハート”を検索した
画面を見せるー

今、話題のベンチャー企業の一つで
”そこまで大きくはない”という言葉が
謙遜だと、拓也は理解するー

「ーーす、すごいなぁー」
拓也が”俺はフリーターだよ”と、心の中で思っていると、
小夜は「お礼が言いたくてー」と、微笑むー。

「お礼?」
拓也が言うと、
拓也本人は、もはや覚えていなかったが
自分の暗い性格を悩むような発言をした当時の小夜に、拓也は
”頑張れば絶対になりたい自分になれるから”と、
励ましの言葉を掛けたのだというー。
 
拓也は、別に何も深く考えていなかったのだがー
小夜はその言葉を支えに、こうして
女社長にまでのし上がったのだー。

「ーーー石崎くんのおかげでわたしはここまで
 これたからー
 本当に、ありがとうー」

小夜の言葉に、
「ど、どういたしましてー」と
拓也は顔を赤くしながら照れくさそうに言葉を口にしたー

”こ、これはもしかしてー
 榎本さんとお付き合いが始まって玉の輿ルートか!?”
拓也がそんなことを思っていると、
”美人になったかつての同級生”との再会に
顔を赤くしている拓也に少し腹を立てたのか、
友人が「こいつ、今、何してるか知ってるか?」と、
小夜に声を掛けるー。

小夜は「石崎くんのことだから、きっとー」
と、嬉しそうに微笑むー。

だが、その言葉を拓也の友人は打ち消したー

「こいつは今、フリーターでコンビニの店員やってるよ!
 ま、俺もフリーターだけどさ!」

友人が笑いながら言うー。

「ーフリーターだってちゃんと働いてるんだよ。
 バカにすんなよ」
拓也がそう言い返すと、友人は「悪い悪い」と呟いたー。

だがー
それ以上に、態度を変えたのはー
小夜だったー

「え?何?ごめん、聞き取れなかったー
 もう1回ーお願い」

小夜の表情には、先ほどまでと変わらず笑みが浮かんでいるー

だが、その笑みは
再会を喜ぶ笑みや、感謝の笑みではなくー
”侮辱するような”あざ笑うような笑みに変わっていたー。

「ーーえ…そ、その、コンビニでバイトをー」
拓也が言うと、
小夜は突然、鼻で笑ったー

「ーーえ?ご、ごめん…ってことはフリーター?」
小夜の態度に、拓也は強い不快感を覚えるー。

「ーーそ、そうだけどー」
拓也がそう答えると、小夜は「へ~~そうなんだ」
と、笑いながらうなずくー。

「ーーその年でフリーターとか…ふふっ」
見下すような発言ー

高校時代はー
こんな子じゃなかったー

拓也と、その友人の顔から笑顔が消えるー

「あ、ごめんね。別にバカにしてるわけじゃなくてー
 ちょっと意外だったから…

 ふふっ…

 あ、じゃあ、お金困ってる?
 お小遣いあげよっか?」

小夜の態度にー
拓也と友人は、強い不快感を覚えるー。

「い、、いや、いいよー」
拓也が言うと、
小夜は「ーーあ、わたし、あっちに行くね」と、
急にテーブルから立ち上がったー。

「あ、うんー」
拓也が返事をすると、足早に立ち去っていく小夜ー。

そして、他の女子の方に近付いていくと
「ねぇねぇ~あの二人、フリーターなんだって~」と、
あざ笑うようにして呟いたー

「ーーなんだ、あいつー」
拓也は不満そうに言葉を口にするー

女社長にまで上り詰めた小夜はー
”傲慢”な性格に豹変していたー。

拓也がフリーターだと知った瞬間に、
態度を豹変させて、拓也と、その友人を馬鹿に
し始めたのだー。

高校時代は、そんな性格ではなかったー。

露骨に態度を豹変させた小夜に対して
イヤな気持になりながらー
同窓会は進んでいくー。

そしてー
同窓会が終わるー。

「ーーなんか、悪かったな」
拓也の友達が言うー。

「ーいや、お前のせいじゃないよ」
拓也が言うと、友人は
「…俺がフリーターとか言い出しちゃったから、
 嫌な思いさせちゃっただろ?」と、申し訳なさそうに呟くー。

「ーーまぁ…仕方ないよ。
 榎本さんがあんな態度取るなんて、当時からじゃ
 想像できないだろうしー」

拓也の言葉に、友人は申し訳なさそうに「本当に悪かったー」と
呟くー。

そんな会話をしながら、同窓会の会場から外に出るとー

偶然、他の友達と話していた小夜の様子が目に入ったー

「ーみんなにお小遣いあげるから、
 頑張って!」

小夜が、封筒に入れた5000円札を配っているー。
その態度は、露骨に”わたし、お金持ってるのー”と
自慢するかのような態度にー
拓也には少なくとも見えたー

拓也に気づく小夜ー。

「ーあ、石崎くん、フリーターなんだよね?
 お小遣い、欲しい?」

バカにするかのような口調ー

「ーーいらないよー」
拓也はそれだけ言うと、
小夜からお金を貰った女子たちのほうをチラッと見たー。

「ーーなんか、社長になって、榎本さん、変わっちゃったなー」
拓也が、精一杯嫌味っぽく呟くと、
小夜は、鼻で笑いながら拓也のほうを見つめたー。

「ーー今の自分の人生はー
 石崎くんが、”努力”してこなかったからだよねー?
 わたしは”努力”したー。

 努力してない人に、そんな嫌味言われたくないんだけど?」

小夜はそれだけ言うと、
「ーあ、ごめんね。ついムカついちゃった」
と、微笑みながら、そのまま立ち去って行ったー。

”努力してこなかったー”
だとー?

拓也は、そう決めつけられたことに
激しい怒りを感じたー

大学時代は、客観的に見ても相当努力したー。
そして、一流企業に就職し、
そのあとも必死に働いたー

だが、運悪くパワハラ上司が上司になってしまい、
罪を擦り付けられてー、クビにされたー。

「ーーくそ!ふざけやがって!」
同窓会から帰宅した拓也は

”会社 乗っ取り”と、
何度も何度もネットで検索を続けたー。

そしてーーー
1週間後ー

拓也はその方法と巡り合ったー。

”復讐AI”と名乗る不思議なアプリー。
会社の乗っ取りから、何から何まで、可能なのだと、宣伝されていたー。

”僕、復讐AI!君の復讐をサポートするよ!”

アプリを起動すると、そんな音声が聞こえてきたー。

「ーーーー…はぁ」
拓也はため息をつくー。
若くして女社長になっていた同級生・小夜に対する怒りで、
こんなおかしなアプリまでスマホに入れてしまった自分が
むなしくなっていたのだー。

しかしー
復讐AIを名乗るアプリは、信じられない言葉を口にしたー

”女社長への復讐のために会社を乗っ取りたいならーー
 そうだね。身体ごと会社を乗っ取るのが、一番じゃないかな?”

軽い口調のAIアプリー

「身体ごと会社を乗っ取るー?」
拓也が首をかしげると、

”そうだよ!憑依だ!憑依でその女の身体を乗っ取っちゃえ!あはは!”
と、AIアプリは、悪戯っぽい口調で呟いたー

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「ーーまさか、マジだったとはなー」

女社長・小夜の身体を乗っ取った拓也は、
小夜の指をイヤらしい目つきで見つめながらー

「これが、榎本さんのいう”努力”ってやつだよー」
と、小夜の身体で怒りの言葉を口にしたー。

女社長になっていた同級生・小夜の身体を奪った拓也はー
小夜の身体で生きていくことを決意するのだったー

②へ続く

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コメント

①は憑依までが中心でした~!
ゾクゾク要素は②以降でたっぷり楽しんでくださいネ~!

今日はこのあと12:00(皆様がこれを読んでいるころには
既に掲載されているかもしれません!)に
炎帝竹輪太郎様との入れ替わり合作も掲載しますので(新作デス)
お楽しみくださいネ~!

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