<入れ替わり>妹の秘密①~溺愛~

妹を溺愛する兄ー。

しかし、そんな兄に妹は色々な隠し事をしていたー。

2人が入れ替わってしまったことによって、
兄は”妹の秘密”を知ることになってしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「も~大丈夫だってば~!」
妹の明菜(あきな)が、苦笑いしながら言うー。

「ーー本当に大丈夫なのか?明菜に何かあったら…俺…!」
兄の透夜(とうや)が心配そうに明菜を見つめるー。

根室(ねむろ)家ー。
兄・透夜は大学生で、
妹・明菜は高校生ー。

透夜は、妹・明菜のことを溺愛していて、
明菜はそんな兄・透夜の振る舞いに少し
困っているようなそぶりも見せていたー

今もそうだー。

「ーーちょっと~!お兄ちゃんってば!大げさすぎ~!」
笑う明菜ー。

それもそのはずー。
透夜が真っ青になって明菜を心配しているのはー
明菜が軽い風邪を引いて、37.1の熱を出したからだったー。

まるで、明菜が重病になってしまったかのように、
心配そうに接してくる透夜ー。

今はインフルエンザの季節でもないし、
この世界では今のところ、特別な病気が流行しているようなこともないー

つまり、明菜の熱はほぼ確実に、よくある風邪なのだー。

だが、透夜は、涙ぐみながら
「ーー明菜が死んだら、俺…俺…」と、明菜の手を握りしめるー。

「も~~、大丈夫だってば~…!
 早く元気になるから、そんな慌てないで~」
明菜は笑いながら言うと、ようやく透夜は落ち着きを取り戻し、
「水分の補給は忘れずにな!」「食欲があるならちゃんと食べた方がいいぞ!」
「風邪薬を飲むのを忘れずにな!」「熱下げるあのシート買ってくるから!」
「俺、おかゆ作っとくからな!」
などなど、まるでマシンガンのように口から
あらゆる言葉を吐き出すと、そのまま部屋に外に立ち去って行ったー。

「ふ~~~」
兄・透夜が部屋から出て行ったことで、
安堵の溜息を吐く明菜ー。

明菜も、別に兄・透夜のことは嫌いではないー
ありがたいとも思っているー

けどー
”度を超しすぎている”点は、
明菜にとって悩みの種であり、
心配事の一つでもあったー

「ーお兄ちゃん、将来、わたしが結婚する、とか
 言い出したらどうなっちゃうんだろう…?」

将来のことも色々な意味で心配だし、
兄・透夜がああいう性格である故に、
今現在も兄に対して秘密にしていることはたくさんあるー。

決して隠し事をしたいわけではないのだがー
兄・透夜がショック死してしまいそうなこともあるし、
なかなか言い出せないのが現実だったー

”明菜~!おかゆに何入れる~?”
部屋の外から、兄・透夜の声が聞こえてくるー。

透夜は”束縛”している感じではないー。
明菜の意思は常に尊重してくれるー。
暴力や暴言もないし、
明菜が話をすれば、聞いてくれるー。

束縛系の兄ではないー。

ただ、妹の明菜に対する愛情が強すぎて、
明菜に何かがあると、心配が爆発して、
真っ青になってしまうし、
明菜が、兄・透夜にとって、ショックな行動をすると
1週間ぐらい寝込んでしまうようなこともあるー。

そんな、兄だったー。

「ーーーあ」
ちょうど、体温を測っていた明菜は、
体温計を回収して確認するー。

36.8-

「さっきより少し下がってきた…!よかった!」
明菜はそんな風に思いながら、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

しかし、翌日ーーー

”事件”は起きたー

2人の部屋がある2階の廊下の
曲がり角でー
妹・明菜と兄・透夜が、ちょうどー
出会い頭に
正面衝突してしまったのだー

「ーーーいってぇ~~~」
かなり激しくぶつかってしまった二人ー。

透夜が”風邪の病み上がりの妹のために!”と、
慌てて追加のおかゆをお店に買いに行こうとして、
猛ダッシュしていたところ、
ぶつかってしまったのだー。

「ーーーえ…?」
先に起き上がった明菜は表情を歪めたー

「ーーえ?」
髪を触るー。
さらさらとした感触ー

「ーーーう???」
胸のあたりを触るー
そこには、普段感じることのない膨らみー

「ーーーおおぉぉぉぉっ!?」
アソコのあたりを触るー
驚くほど、寂しい手触りー。

「ーーうあああああああ!?!?!?」
明菜は頭を抱えたー

「なんで!?俺なんかが明菜になってる!?」
明菜はそう叫んだー。

どうやら、
正面衝突してしまった際に、
明菜と透夜の身体が入れ替わってしまったらしいー。

困惑の表情を浮かべながら
「お、、おい…大丈夫か?お~い…!」
と、倒れたままの透夜(明菜)を見つめるー。

だが、透夜(明菜)は意識を取り戻す様子がなく、
「こ、こんな廊下で明菜を寝かせておくわけにはいかない」と、
透夜(明菜)を部屋に運んでいこうとするー

しかしー

「ーーな、、な、、なんだ…俺の身体ってこんなに…重いのかー?」
手を引っ張っても、なかなか透夜(明菜)が動かないー。

「ーーー…いや…もしかしてー」
明菜(透夜)は、自分の手ー
明菜になった自分の手を見つめるー

「これが…明菜の腕の力…?」
そんな風に思いながら、
”自分とは違って明菜は非力なんだ”ということを
自覚した明菜(透夜)は、苦戦の末に、なんとか
透夜(明菜)を部屋の中に運び込み、
ベッドの上に寝かせることに成功したー

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
明菜の身体で苦しそうに何度も何度も息を吐く
明菜(透夜)ー。

思った以上に、男女の身体に差があるー…のだろうか。
そんな風に思いながら
「ど…どうするんだこれ…」と困惑する明菜(透夜)ー

自分は今、妹の明菜の身体になっているー
おそらくはぶつかってしまった時に入れ替わったのだろうー。

しかし、透夜(明菜)は、意識を取り戻さないままー。

明菜の身体の中に自分がいる、ということは
当然、透夜の身体の中に明菜がいる可能性が高いー

「救急車を呼ぶかー?
 いや…でも待てー」

慎重に考える明菜(透夜)ー

”自分ひとり”のことなら良いのだが、
妹の明菜が絡んでいることであるため、
明菜(透夜)は慎重だったー。

”明菜が変な風に思われることは避けなくてはいけない”

そう思ったからだー。
例えば、”入れ替わってしまった”と主張すれば
透夜だけではなく、明菜まで”おかしな子”だと
思われてしまう可能性もあるし、
今、この場で救急車を呼んだり、両親に助けを
求めたりするようなことがあればー
”明菜が透夜を怪我させた”と言うことになりかねない。

中身は違えど、
今の状況は
”兄・透夜が意識不明で、妹・明菜が普通にしている”
ようにしか、周囲からは見えないのだからー。

そしてーー

「ーーー!!」
母親が1階で歩く音が聞こえるー。

親が2階に来ることはあまりないのだが、
それでも来ることはあるし、
部屋を覗いてくる可能性もあるー。

「ーここにいると、お兄ちゃんの部屋に侵入している妹…
 って思われちゃうなー」

明菜(透夜)はそう考えて、
”ひとまず、明菜が意識を取り戻すまで待つか…”と、
思いながら、自分の部屋で”目が覚めたら話がある”と、
メモ書きをして、透夜になった明菜が目を覚ましたら
すぐに気づく場所にそれを置き、
明菜(透夜)は、明菜の部屋の方に移動したー。

明菜の部屋に移動した透夜は、
明菜(透夜)の姿のまま、目を瞑り、星座をして座っていたー

”禁欲”
妹に欲情するようなことがあってはならないー。

目を瞑って正座したままの明菜(透夜)は
自分に言い聞かせるように
何度も何度も呟くー

「妹を、イヤらしい目で見ることはあってはならないー」
「本人の許可なく、明菜の部屋を見て回ることは許させないー」
「本人の許可なく、明菜の身体を色々見ることは許されないー」

繰り返し、そう呟きながら明菜(透夜)は
透夜になった明菜が目を覚ますのを待つー。

異様なまでに明菜を溺愛している透夜は、
そのまま微動だにせず、目を瞑り続けたー。

明菜の身体を触るようなこともしないし、
見るようなこともしないー。

明菜本人から「普通にしてていいよ」と言われれば
普通にしているのだが、
許可が無ければ何もしてはならないー。

そんな風に思っていた
明菜(透夜)だったがー
一つの音が、そんな明菜(透夜)の集中力を途切れさせたー。

♪~~

突然音が鳴って、ビクッとした明菜(透夜)が
目を開くと、
すぐ横の小さな台の上に置かれていたスマホに
名前が表示されえていたー。

”なんだ、スマホか…びっくりしたー”

妹と身体が入れ替わってしまうー
などという未知なる現象に遭遇して、
少し敏感になっていたのか、
ビクッとして目を開いてしまった明菜(透夜)だったがー、
音が、スマホの音だと理解し、
すぐにまた目を瞑ろうとしたー、

しかしー
その時だったー

「ん…?」
何気なく見たスマホに表示されていた”名前”に
疑問を感じて、再び目を開く明菜(透夜)ー

そこにはーー
”和馬(かずま)くん”と表示されていたー。

「ーか、、か、、か、、かず、、かずまくんだって誰だー?」
明菜(透夜)は、我を見失って、スマホを手にしたー

指紋認証を解除してー
明菜の指紋認証を自分が解除できてしまったことに
ドキドキしながら、
スマホの画面を見つめるー。

するとそこにはー
明菜の高校の同級生と思われる”和馬くん”との
LINEのやり取りが表示されたー。

「ーーぶっ!?!?!?!?」
明菜(透夜)は、驚きの表情を浮かべるー。

LINEのやり取りは、どう見ても、
彼氏と彼女のやり取りだったからだー。

透夜は知らないことだったが、
明菜は同級生の和馬くんと半年前から
付き合い始めているー。

しかし、明菜は、自分のことを溺愛してくる兄・透夜に
このことを伝えてしまったら、
透夜が失神してしまうのではないかと考えー、
”秘密”にしていたのだー。

兄のことをよく理解しているからこそー
明菜は”彼氏”のことや、色々なことを隠していたー

”和馬くん、大好き!”
”俺もだよ、明菜”

そんなやり取りを過去にしているのを見た明菜(透夜)はー

「ーーーぁ…」
明菜の身体で勝手に失神してしまったー

「ーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーふぁっ…」
明菜(透夜)が目を覚ますー。

「い、、いけない…明菜の身体で勝手に失神してしまったー」
そんなことを呟きながら、
我を忘れて、LINEのやり取りを確認するー。

さらに会話を確認するとー
”和馬くん”から求められて
可愛らしい服装を着た自撮り写真を送っているのが
確認できたー

「ーーーう…う、、、う…うぁぁぁぁ」
自分の妹を褒めるなんて、自画自賛みたいな気もするけど、
可愛すぎる!と、明菜の身体のまま絶叫するとー、
ちょうど、別の友達からLINEが届いたー。

今度は、同じ女子のようだー。

”何も見てはならない”などと最初は考えていた
明菜(透夜)だったが、
彼氏がいることを知ってしまい、我を忘れていたー。

”お兄ちゃん、過保護すぎるから~”

友達と、明菜がそんな会話をしているのを見てー

「か…かほっ…ぁ…うぁ」

明菜(透夜)は、また失神してしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー!!!!!」

兄・透夜の身体になった妹・明菜が目を覚ましたー

透夜の部屋で目を覚ました明菜は
「えっ!?!?!?」と、驚きの声を上げるー。

「わ、わたしがお兄ちゃんに…!?」
透夜(明菜)は、「え…じゃあ、お兄ちゃんは!?」と
焦った様子で、自分の部屋の方に駆け込むー。

すると、そこには、
部屋の端っこで体育座りをしてブツブツと何かを呟いている
明菜(透夜)の姿があったー

「ーーーお、、お兄ちゃん…」
透夜(明菜)が言うと、
明菜(透夜)は落ち込んだ様子で、

「過保護なお兄ちゃんで、ごめんなー」

と、呟いたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

入れ替わったことで”妹の秘密”を
知ってしまったお兄ちゃん…!

続きはまた明日デス~!

PR
入れ替わり<妹の秘密>

コメント