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※本小説は、果実夢想様制作により発売されたゲーム作品
「ただ君に記憶の鍵を」の後日談デス!
ゲーム本編のハッピーエンドをプレイしていないと、内容が分かりません!
また、ネタバレがあるので、これから遊ばれる予定の方は注意してください!
(⇒本編販売サイト(DLsite)はこちら)
※↑外部サイトに移動します。
※普段、商業作品の二次創作は基本的にしないのですが、
私が「ただ君に記憶の鍵を」を遊んで、感動したので
作者の果実夢想様の許可を取り、後日談を考えました!
※後日談の内容自体は本編を見て、私が勝手に考えたものですが、
完成後に、果実夢想様のチェックと許可を頂いています!
原作・果実夢想様
後日談小説・無名(私)
「ただ君に記憶の鍵を」を遊んだことのある人は
ぜひお楽しみください~!
※本編のハッピーエンドの「あと」から始まります!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お願いします、先輩。最後の忘れ物聞いてくれますか?」
宿木の最後の”忘れ物”
「そんな先輩のことが、わたしは…ずっと、ずっとーー」
「ずっと、ずっとね。昔からーー好きだったんだよ」
宿木の”忘れ物”ー
それはー
ずっとずっと、ゆめが伝えることのできなかった言葉だったー
「やっと、言えた」
涙を流しながらもー
どこか嬉しそうだった宿木ー。
「お前だけ、勝手に満足するな。
俺にも、忘れ物を回収させてくれよ……!」
涙ながらに、俺はそう伝えたー
「俺だって……俺だって……!お前のことが、ずっと…!」
「ずっと…」
「……好きだったに、決まってるだろー」
宿木が光となって消えていくー
俺の”忘れ物”は宿木にちゃんと、届いたのだろうかー。
きっとー
届いているー
きっとー。
あれから数日が経過した今もー
俺は、目を覚ますたびに、
自分の身体を見つめるー
また、自分が宿木になっているのではないかー
そんな風に思ってー
つい、周囲を見渡してしまうー。
振り返ればー
明るく笑っている宿木がー
頬を膨らませてちょっと怒っている宿木がー
”先輩”
という声が、聞こえてくる気がしてー。
どんなに振り返ってもー
そこに宿木はいないしー
どんなに願っても
”先輩”と呼ぶ声はもう聞こえてこないー
そんなことは、分かっているのにー
そんなことは、そう、分かっているのにー。
”こんなことじゃいけない”
そう、思いながらも、
俺はどうしても宿木の”おもかげ”を探してしまうー。
きっとどこかで見てくれている宿木はー
今の俺を見てどう思っているだろうかー。
”先輩…、そんな顔しないでください”
そう、言うかもしれないー
それともー
”先輩ってば、わたしがいないと寂しいですか~?”
と、笑いながら揶揄ってくるかもしれないー。
だめだー
だめだだめだだめだー
宿木のためにもー
俺は、前を向いて生きていかないとー。
小さな身体で、一生懸命人生を駆け抜けてー
この世に残した”忘れ物”をちゃんと取りに来た宿木のためにもー
「ーーー宿木?」
思った通りだったー。
学校のクラスメイトに聞いても、
”宿木ゆめ”という転校生は”最初から存在しない”
ことになっていたー。
あれは、夢だったのだろうかー。
いや、違うー
絶対に、夢なんかじゃないー。
けれどー
どうしても、不安になってしまうー。
その不安を払拭するかのようにー
俺は”宿木ゆめ”の”おもかげ”を探してしまうー。
クラスメイトたちもー
両親もー
”宿木ゆめ”のことをみんな、覚えていないのだー。
確かにー
”宿木ゆめ”が、学校に来ていたのは、転校初日だけだー。
何故ならー
その次の日は学校が休みだったし、
そのあとは俺と入れ替わっていたから。
そのあと、学校に登校していた”宿木ゆめ”は俺だったし、
そのあと、宿木は消えてしまったー。
でもー
これは、そういうことじゃないー
”最初から存在しなかった”
ことになっているのだー
俺は、宿木の”おもかげ”を必死に探したー
心にぽっかり穴が開いたかのように、
何もやる気が起きないー。
そんな風に思いながら帰宅した俺は
”あること”を思い出したー
「あ…」
宿木の家の鍵ー。
あの日ー
俺は、自分の身体に戻っていてー
宿木からの置手紙を見てー
宿木の家から飛び出したー
けど、
人の家の鍵を開けたまま家を飛び出すほど、
俺もバカじゃないー。
宿木の家の鍵を手に、
宿木の家の鍵を閉めてー
そのまま”最初に出会った場所”に向かったのだー
そしてー
そのままー
宿木の家の鍵を持ってきていたー。
ーーーっ
俺は、あることを思い出すー。
”あ、ゆめちゃん! ここに住んでたんだねー!こんばんは”
俺がー
宿木の身体で倒れてー
宿木が「元に戻るまで一緒に生活をー」と提案してきたあの日ー。
宿木のクラスメイトを名乗る子がー
”宿木の家に荷物”を届けに来たことをー
”こんな子、クラスにいたっけ?”
俺は、あの時、そう思ったー
ということは、少なくとも、”俺になった宿木”とは
学校で会話もしていないー
しかしー
そうなると、”宿木ゆめ”本人は、
1日しか学校に行っていないはずなのだからー、
”あんなに親しい”のは不自然な気もしたー。
それにー
あの時の荷物は何だったのだろうかー。
荷物を受け取ってから、
お風呂が入るまでの間ー
”先輩、ありがとうございますっ!”
届いた荷物を受け取った宿木は、
その荷物を開ける様子がないので、
俺は確かこう聞いたー
「それ、開けないのかー?」
とー。
”ふふふ♪これはその時が来たら、開けるんですよ~”
宿木は、そう言っていたー
「な、なんなんだよ”その時”ってー」
”それは、お楽しみです!ささ、お風呂に入っちゃってください”
結局ー
それきりー
あんなことになって、
その”荷物”が開封されることはなかったー。
「ーーーー」
鍵を握りしめた俺はー
意を決して、宿木の家に向かったー
そもそもー
”あの家”は何だったのだろうかー
まさか、あの家までなかったことになってるとか、ないよなー。
”宿木の家に置いてきてしまった忘れ物”を
取りに行くためー
俺は、宿木の家に向かったー
家は、あったー。
当然、明かりはついていないー
けれどー
”これじゃ、泥棒みたいじゃんか”
そう思いながら、俺は宿木の家の鍵を開けるー。
幸い、近所の人に見られることはなく、
その家の中に入ることができたー
宿木の笑顔ー
怒った顔ー
涙ー
色々な顔が、思い起こされるー
しかしー
そこに、もう、彼女はいないー
だがー
部屋の真ん中に”箱”は残されていたー
「ーーーー」
宿木ー
やっぱりちゃんと”存在”していたんだなー。
そう思いながらー
俺はその箱を開いたー
その中にはー
花束ー
それとー
手紙ーーー
”先輩へ”
そう書かれた、手紙ー
この字は、間違いないー。
あの日、置かれていた置手紙と同じ筆跡ー
宿木の字だー。
俺は、読む前から泣きながら、その手紙を開いたー
そこにはー
”お勤め、ごくろうさまです”
と、書かれていたー
「ーー何でそういう扱いなんだ!?」
俺はやくざか!?と、思いながらツッコミを入れるー
だが、その下にはー
”誕生日、おめでとうございます”
と、書かれていたー
「ーーー誕生日…?」
俺は、カレンダーを見るー
そうだったー。
ちょうど昨日、誕生日だったー。
俺は、そう思いながら手紙の続きを読むー。
すると、そこには、宿木の気持ちが書かれていたー。
”本当は、わたしが自分で渡したいんですけどっ!
でも、わたしの身体は、きっと先輩の誕生日まで
持たないですから…
だから、こうして、プレゼントを用意しちゃいました!
直接手渡せなくて、ごめんなさい”
そう書かれた手紙ー
宿木が、”消える前”にあらかじめ用意していたものなのだろうー
”それはそうと、先輩っ!不法侵入ですよ”
そう書かれているのを見て、俺はギョッとしてしまうー
しかしー
その下には、こう続いていたー
”なんちゃって…。
先輩がこれを読んでいるということは、
わたしはもう、この世界にいないと思いますー。
そして、先輩は全部、思い出してくれてー
こうして、またわたしの家に来てくれているってー
ことですよね?
本当に、嬉しいですー”
俺は、涙をこぼしながら、手紙を隅から隅まで読んでいくー。
手紙には”この家”のことも書かれていたー
この家は、正真正銘、宿木の家でー、
宿木が生前、住んでいた家のようだー。
彼女が亡くなってからも、両親はここに住んでいるようだが、
今はちょうど、父親の仕事の都合で、2か月ほど留守にしているー
とのことだったー。
そして、
俺は宿木からの誕生日プレゼントを見つめるー
そこに、入っていたのは、花ー。
”カスミソウ”と呼ばれる花ー
宿木の字で
”先輩はどうせ、花言葉なんて知らないと思いますからー”と
ご丁寧に解説がついていたー
「どうせってなんだよ!」と
俺は泣きながら笑ってツッコミを入れるとー
先輩に会えて、わたしは本当に良かったですー
と、書かれていたー
カスミソウには色々な花言葉があってー
そのうちのいくつかが、そこに書かれていたー
”感謝”の気持ちー
先輩に対するありがとうー
”清らかな心”ー
先輩の優しい心ー
”親切”
あの時、先輩が声をかけてくれて本当にうれしかったー
”切なる願い”
わたしは、本当に先輩に会いたかったー
そしてー
”夢見心地”
先輩といっしょにいることのできる時間は、
本当に夢のようでしたし、幸せでしたー
”ゆめ”
その名前も、花言葉に刻まれているー
はははは…
本当にー
宿木と俺を現してるみたいだなー
俺は涙を流しながら、
「ありがとうー」
と、静かにそう呟いたー
宿木の家の鍵をポストに返却して、
俺は宿木からの手紙と、カスミソウを手に、その場を後にするー
「ーーーー」
宿木は、確かにそこに存在したー。
たとえー
他のみんなが覚えてなくてもー
宿木はー確かに存在したー
俺は、そんな確かな手ごたえを胸に、
その場から立ち去ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
「ーー霧原(きりはら)さんは、いるかなー?」
俺はー
あの時”宅配のバイト”で訪ねてきた子を見つけ出しー
その子を呼び出したー。
霧原さんが他の子に呼び出されて俺の近くにやってくるー。
彼女は、不安そうな顔だったー。
彼女から見れば”先輩”である俺にいきなり呼び出されて、
しかも、俺があの日”もしかして宿木のクラスメイトか?”
なんて思ってしまうほどに、面識がないから、
当たり前だよなー…
と、思いつつもー
聞かずにはいられなかったー
「ーー宿木ゆめー 知ってる?」
俺は単刀直入に聞いたー。
彼女も、忘れているのだろうかー。
そう、思いながら
恐る恐る彼女の反応を見つめたー
「ーーーはい」
だがー
霧原さんは、覚えていたー。
俺は、宿木の話を聞こうとしてー
場所の移動を提案し、
霧原さんはそれに頷いたー。
あの日は、明るい感じだったが、
今日は”相手が先輩”だからだろうかー。
あの日とは違い、大人しそうな雰囲気だったー。
「ーーわたし、ゆめちゃんを知ってたんです」
彼女は、そう言ったー。
彼女は、病弱なことが原因で
いじめを受けていた当時の宿木のクラスメイトだったのだというー。
霧原さんは、いじめには加担していなかったー。
むしろ、助けたいと思っていたー。
でもー
助けることはできなかったー
「わたしには、勇気がなかったんです」
霧原さんは、自虐的にそう微笑んだー。
明るく、いかにも”イマドキ”という感じの
霧原さんだが、そんな彼女でも、
そういうこともあるのだろうー。
「そうしているうちに、ゆめちゃんは死んでしまいましたー」
霧原さんは、そう呟いたー
そしてー
「ーーあの日、ゆめちゃんが転校してきた日ー
わたしは、すぐに気づいたんですー。
”あの時のゆめちゃん”だとー
どうして死んだはずのゆめちゃんがここにいるんだろうー
とか、そんなことよりも先にーー
わたしは、ゆめちゃんに声を掛けましたー
今度は、あの時みたいにー
いじめを見て見ぬふりをしてー
ずっと後悔することになったあの時みたいにー
後悔したくなかったー。
だから、転校してきた初日ー
ゆめちゃんに声を掛けましたー」
霧原さんは、寂しそうに微笑んだー
”ーー宿木、ゆめちゃんー?”
”ーーえ?”
「ゆめちゃんが、わたしのことを
覚えていたのかは分かりませんー
でも、わたしは1日も忘れたことはありませんでしたー」
彼女は、宿木がこの世に戻ってきたのには、
何か理由があると感じて
”わたしがゆめちゃんにしてあげられること、何かないかな?”と
聞いたのだというー。
その結果ー
”じゃあ、お願いがありますー”
と、宿木が、誕生日プレゼントの用意を手伝ってほしいー
届けてほしいー、と
お願いしたのだというー。
「ーーーーー」
宿木と入れ替わったままのあの日、
バイトでお届けものを届けに来たこの子もまたー
俺と、同じでー
形は違うけれどー
ずっと後悔してきたのかもしれないー
”こういう時、どう声を掛ければいいのかな”
と、少し俺は戸惑いながらもー
「ーーきっと、宿木は、君にも感謝してるよ」
と、優しく言葉を投げかけたー。
だってー
他のみんなが宿木のことを忘れているのにー
この子は、ちゃんと覚えているのだからー
たぶんー
宿木には、この子の想いも、ちゃんと伝わったのだと、
そう、思うからー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
不思議だー
宿木から貰った”カスミソウ”は
いつまで経っても枯れることなくー
高校2年生のクリスマスの日を迎えていたー
宿木のお墓の前にやってきた俺ー。
この場所を見つけるのにも、結構時間が掛かった。
けれどー
ようやく、見つけたー。
「ーー今年も、クリぼっちだよー俺ー」
”どうせ友達や恋人なんていないんでしょう?”と、
当時、宿木に言われたことを思い出すー
「ークリスマスに墓参りなんて、って言われるかもしれないけどー」
俺は、自虐的に笑いながらー
けれど、嬉しそうに宿木の墓のほうを見つめたー
「ーー今日は、好きな人と、一緒に過ごしたいからー」
そうー
他の誰でもない、お前と
一緒に過ごしたいからー。
「ーーまだ、俺も宿木も、忘れ物だらけだなー」
俺は少しだけ微笑むー
まだ、感謝の気持ちも言えていないしー
一緒に色々なところにも遊びに行けてないしー
誕生日プレゼントのお返しもできていないしー
お互いに、忘れ物だらけだー
「何十年後になっちゃうか分からないけどー
今度さ、俺が宿木のいるところに、忘れ物、取りに行くからー」
必ずー
必ず、いつか宿木に会いに行くからー
「ーーだから、俺がそっちに行ったらー
”お勤めごくろうさまです”
ってーー
出迎えてくれよなー」
俺は、静かにそう呟きながら、
宿木があの日、嬉しそうに食べていたジャムパンを差し出すとー
”なんで、クリスマスにジャムパンなんですかぁ~?”
と、宿木の呆れるような声が聞こえたー
ーーー気がしたー
思わず笑みがこぼれるー。
今は一緒にいることができなくても、
いつか、必ずー。
必ず、また会えるからー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
私が他の創作者様の二次創作にあたる作品を
書くのは、極めて稀なのですが、
ゲームを遊んで感動のあまり、パパパーっとお話が
浮かんできたので、許可を頂き執筆しました~!
(※二次創作執筆のご依頼等は受けていません!)
限られた方にしか分からない作品になってしまいますが、
プレイされた方に、楽しんでいただければ何よりデス!
後日談を執筆するにあたり、
本編をプレイしている際に
「お届けモノ」が届く場面が何かの伏線かと思い、
気になったのですが、最後まで特に何もなかったので
「これは生かさなくちゃ!」ということで
後日談のお話を勝手に考えました!
また、後日談を書く際に
私なりに気になった部分で、描かれていない部分の
補完もちょっぴり行いました!
(家は何だったのか…とか★)
本編を汚すような結果になっていなければ
嬉しいデス!
お読みくださりありがとうございました~!
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