<憑依>二重人格を自称する彼女①~告白~

「わたしの中には、小さいころから別の人格がいるの…」

突然、そう打ち明けてきた彼女。

しかし、”二重人格を自称”する
彼女の本当の理由は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーえ?」
男子高校生の志藤 邦明(しどう くにあき)は、
思わず表情を歪めたー。

同じ高校に通う彼女・日野 佑香(ひの ゆうか)から、
”大事な話があるの”と深刻な表情で呼び出されてー、
その話を聞いた結果の反応だー。

彼女の佑香とは、高校で知り合い、付き合いだした間柄だー

人目を避けるような雰囲気の大人しい子で、
当初、邦明とも微妙な距離感があったのだが、
2か月ほど前に行われた文化祭の際に
文化祭実行委員を半ば押し付けられた形の彼女を
サポートしたことで、距離感が縮まり、
縮まりー、佑香から告白されて、
彼女・彼氏の関係になったのだったー。

あれから2か月が経過したー。
それなりにお互いに上手くやってきた自信は
あるのだが、今日、神妙な面持ちで佑香から
”放課後に大事な話があるの”と言われたことで、
邦明は”振られるのではないか”と覚悟して、
放課後、この場所にやってきたー。

だがーーー
佑香の口から放たれた言葉は
”振られる”などというようなものではなかったー。

もっとー
衝撃的な、信じがたい言葉だったのだー。

「ーーわたし…別の人格がいるの」

その言葉に、邦明は「え…?」と返事をすることしか
できなかったー。

「ーーーー……」
沈黙する二人ー

邦明は少ししてからようやく
「え~っと…そ、それはどういう…?」と
困り果てた表情を浮かべながら、
佑香に”確認”をしたー。

「ーーーわ、、わたし…別の人格がいてーー」
佑香の言葉に、
邦明は「え…え?ちょ、ちょっと詳しく最初から
説明してくれるかなー?」
と、話を聞く姿勢をアピールしながら、佑香のほうを
真っすぐと見つめたー。

「ーーうん」

邦明に笑われると思っていたが、
佑香は、邦明が真剣に話を聞いてくれる態度を
示したことで、少し安堵を浮かべながら
近くの椅子に座って、邦明のほうを見つめたー。

「ーーー…二重人格って知ってる?」
佑香の言葉に、邦明は「あ、うん…聞いたことはあるよ」と頷くー。

邦明の身の周りにそういう人間がいるわけではなかったがー
アニメやゲームなどで、そういうキャラクターを見たことがあるー

あくまでも”ファンタジー世界”の話ぐらいにしか邦明は
考えていなかったが、それでも、そういう言葉を聞いたことはあったー

「ーーわたし…小さいころ…
え~っと…2年生ぐらいの頃だったかな…
自分の中にもう一つの人格があることに気づいたのー」

佑香の言葉に、
邦明は「…ほ、本当に?」と確認するー。

「ーーうん」

佑香は、2年生の頃から自分の中に”もう一人の自分”が
いることに気が付いたー。
周囲には分からないように、頭の中でお互いに
会話をすることも可能だー。

そして、その人格は、佑香がトラブルになりそうになると
これまでも何度も助けてくれている、とのことだったー。

「ーーそれでね…」
佑香は気まずそうに言うー。

「ーーーそのもう一人のわたしって…
”男の人”の人格でー…
”アキト”って言うんだけどー…
そのアキトが、最近…その…」

佑香がそこまで言うと、
気まずそうに続けたー

「ーーー邦明に…その…嫉妬しちゃって…」
とー。

「ーーえぇっ!?」
邦明は唖然としたー。
彼女の佑香が二重人格で、アキトという人格が別にいて、
しかもそのアキトが邦明に嫉妬しているのだというー。

これまでの経緯を詳しく話す佑香ー
アキトはとても過保護で佑香のことを必死に守ってくれるのだというー。

アキト自身が”誰にも言わないでほしい”と
強く希望していることから、
今まで誰にも言ってこなかったものの、
アキトは、邦明と佑香が付き合うことに猛反対しており、
このままじゃ、佑香自身が邦明を傷つけてしまうかもしれないー、と
佑香が危惧したことで、こうして今日、
秘密を打ち明けたーと、佑香は説明したー。

「ーーーーーー」
邦明は表情を歪めるー。

”佑香が本当のことを言っているのか”
判断に困ったからだー。

邦明自身、男子の友達は多いものの、
恋愛経験は少ない方で、佑香と付き合うのが
邦明にとって”初めての恋愛”だったー。

”誰にも言っていない”という部分が引っ掛かる。

自分自身がもしも佑香と同じ立場だったらどうするかー。
自分であれば、家族に相談するだろうし、
病院の診察も受けるだろうー。

だからこそー
病院の診察も受けておらず、家族にも相談していないという
佑香の行動は、”疑問”でもあったー。

「ーーわ、、わかったー…それで、俺はどうすればいい?」
邦明が言うー。

「ー俺は…佑香のこと好きだし、佑香と一緒にいたいー
でも、佑香がそれじゃ苦しいって言うんだったらー
俺は、佑香の幸せのために身を引くことだって
考えるー…

佑香は、俺にどうしてほしいんだ?」

邦明がそこまで言うと、
佑香は、悲しそうな表情で呟いたー。

「ーーわたしも、邦明と一緒にいたいー…
だからー…
お願いがあるのー」

佑香が言うー。

「ーーこの先もし…もぉっ、、、ぉ」
佑香が突然ビクンと震えてーー
ガクンと首を落とすと、すぐに首を上げて
笑みを浮かべたー

「ーーーは~~~言いやがった。ありえねぇ」
佑香の態度が突然変わるー

邦明は唖然としながら「ゆ、、佑香…?」と声を掛けるー。

「ーーはぁ、お前が佑香の好きな男かー」
佑香はそう言うと、「お前みたいなやつの、どこがいいんだか」と、
不満そうに呟くー

「ーーお、、お、、お前が…、佑香の言ってた…アキト…なのか?」
邦明が戸惑いながら言うと、
佑香は近くの机に飛び乗って足を組みながらー
「あぁ、そうだよ」と呟くー。

「ーーそれにしても、まさか佑香が
他のやつに俺のこと言うなんてなぁ…
びっくりして人前に出てきちまったー」

佑香は髪をイライラした様子でかきむしると、
そのまま邦明のほうを見つめたー

「ーーーーーーほ、、ホントに…ホントに…二重人格なのか?」
邦明が困惑した様子で言うと、
佑香はニヤリと笑ったー

「いやーーー」
とー。

「ーーえ?」
邦明は首をかしげるー

佑香があれだけ二重人格と言っていたのに
この”アキト”と呼ばれる存在は、それをあっさりと否定してみせたのだー

「ーーしーっ」
と、佑香がニヤニヤしながら口元に手を当てると、
突然邦明に近付いてきて、顔をグイッと近づけたー

「ーーき、急になんだよ?」
顔を至近距離まで近づけられて、顔を赤らめてしまう邦明を見てー
「ーーそういうの。嫌なんだよな 俺」
と、呟くー。

「ーーーえ」
邦明が戸惑うと、
佑香は邦明から離れて、「お前、今、俺が近づいたからドキッとしたんだろ?」と
不快そうに呟くー

「え…あ、そ、、その…ごめんなさい」
邦明が言うと、佑香は「いや。別に責めてるんじゃねぇ」と、首を振るー

「ーー俺だって、こんなかわいい子に顔を近づけられたら
ドキッってするさー。今のお前みたいにな」

佑香の言いたいことが分からないー
邦明は「あ、、あの…な、、何が言いたいのか、さっぱりー」と、呟くー。

「ーー俺は男だー
だからーー女の身体は、イヤなんだよー」
佑香が言うー。

「ーーー…そ、それはー」
邦明が戸惑っていると、佑香は

「俺は佑香のことは好きだー。確かにお前に嫉妬もしてるー。
でも、俺に勝ち目はないってこともわかってるー。

ーー俺はーーこんな、女の身体で生きながらえてるような
やつだからなー」

と、呟くー

「ーーど、、どういう…佑香をどうするつもりだ…?」
邦明は不安そうに言うー。

しかしー
佑香は首を振ったー。

「ー俺は佑香のことをホントに大事にしてるー
佑香を傷つけることは絶対しないー」

その言葉に、邦明は、佑香が”アキトがわたしを守ってくれている”と
さっき言ってたことを思い出すー。

「ーーーじ…じゃあ、な、なにが目的なんだ…?」
邦明の言葉に、佑香は「ー俺、消えたいんだよ」と、
笑みを浮かべるー。

「ーーき、消えたい…?」
邦明の言葉に、佑香は頷いたー。

「ーーそう。だって俺は男として生きたいのに
 この身体で…佑香の身体でしか生きることしかできないー。

 それに、俺がいれば、俺が大好きな佑香に
 余計な気遣いをさせてしまうし、
 俺は、佑香にお前みたいな彼氏ができれば
 嫉妬してしまうー

 だからー
 俺は消えたいんだよ。
 佑香のためにも、お前のためにも、俺自身のためにもー」

佑香の言葉に、
邦明は「ーで、でも、二重人格の治療って…
あれか…?病院で治療を…」と、言いかけると、
佑香は首を振ったー。

「ーー病院じゃ、俺は消せねぇ」
とー。

「ーーえ」
邦明が言うと、佑香は笑みを浮かべたー。

そして、近付いてきて小声で耳打ちしてくるー。

邦明は、”アキト”が表に出ている状態の佑香の
距離感の近さにドキドキしながらも、話を聞くー。

「ー佑香…二重人格じゃないんだよー
 結果的に同じような状態になってるけど、
 俺は佑香の中で生まれた人格じゃねぇ」

佑香の言葉に、
邦明は「え…そ、それはどういうーーー」と、
佑香のほうを見るー

佑香の顔が近すぎて顔を赤らめてしまうと、
佑香は少しイヤそうにしながらー
「ーー俺は”佑香に憑依した”別の人間だー」
と、呟いたー

「ーー!?!?!?!?」
邦明は驚くー。

「ーー佑香には、”二重人格”だと思わせてるー。
 だって、”他の男に憑依された”なんて言われたら
 佑香も驚いちまうだろ?
 俺は佑香を傷つけたくないー。
 だからーー
 お前も、佑香には言うんじゃないぞ」

そこまで言うと、佑香に憑依している”アキト”は、
説明を続けるー。

自分は、石澤 明人(いしざわ あきと)という
実在していた人間であり、
佑香の中で生まれた別人格ではない、ということをー。

そしてー
小さいころ、佑香がインフルエンザの症状が悪化して
入院した際に、
自分は同じ病院に入院していた男子大学生であったことを
邦明に明かしたー。

「-俺はさ、助からない病気でさー…
 最後の瞬間まで、死にたくない、死にたくないーって
 思ってたらー…
 
 きっとー…執念ってやつだろうなー。
 気づいたらこの子に憑依してたー。」

その言葉に、
邦明は「じゃあ…き、君は、既に死んでいるってことかー?」と呟くー

「ーーまぁ、俺の身体はもう、な…」
佑香を乗っ取っている明人はそう言うと、
”最初は佑香に恋心なんてなかったが、成長している佑香を
 見ているうちに、だんだん好きになってしまった”と説明したー。

「ーーでもさ、俺にはもう身体がないー
 男として生きることもできないー。

 それに、あの時死ぬはずだった俺は、もう、この子の身体で
 何年も”プラス”の人生を貰ったんだー。

 だからー
 もう未練はないー」

佑香はそう言うと、邦明のほうを見たー

「ーー俺は、消えたいんだー。
 どうだ?力を貸してくれるかー?

 こんな状態は、佑香のためにもならないんだー。
 だから、力を貸してくれー」

佑香が頭を下げるー。

そんな光景を見て、”いきなり言われても、そんな…”と、
混乱しながらー
邦明は少し考えてからー

「わ、、わかったー…
 俺も佑香のためなら、何でもするからー
 力を貸すよー」

と、決意の表情で言い放ったー

②へ続く

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コメント

二重人格モノ…ではなく、
憑依モノデス~!(記事名に<憑依>ってなってるので、ネタバレしてますケド…笑)

②もぜひお楽しみくださいネ~!
今日もありがとうございました~!

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