妹と入れ替わってしまった兄…
意中の子の前で
妹の奇妙な行動に翻弄されていく…。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーこれで、1階の冷蔵庫に残ってた入れ替わりジュースも含めて
全部、飲み終えました~~!」
得意げにピースしながら言う孝雄(久美)
意味が、分からないー
妹はいったい何をしているのだろうかー。
「ーーーー…あ????」
久美(孝雄)は、妹の奇妙な行動に首をかしげることしかできなかったー
孝雄の同級生である和花も口をぽかんと開けて唖然としていたー
何故なら、たった今ー
”入れ替わりジュースがなくなっちゃうと、元の状態に
戻れなくなっちゃうから残量には注意”という説明を
久美になった孝雄からされていたからだったー。
「ん…???ん?????ん??????」
久美(孝雄)の周囲に大量の「?」マークが浮かんでいるー
まさに、そんな状態ー
「ーーこれで、入れ替わりジュースは完食!!
あ、飲み物だから完食とは言わないか! テヘッ」
孝雄(久美)は悪戯っぽく舌を出しながら
「じゃ、わたしはまた部屋に引きこもるから、あとはよろしくぅ~」と、
手を振りながら孝雄の身体のまま久美は自分の部屋に
戻っていこうとするー。
「ーーおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!!!」
久美(孝雄)は大声で叫んだー
「ーーん~~~?」
孝雄(久美)は立ち止まるー。
「ーーお、お、お前、自分が何したか分かってるのか?
あ、あのジュースないと、もう、元には、元には戻れないんだぞ?!」
久美(孝雄)は、自分が久美になっていることも忘れて
足を広げた状態で、男モード全開ー
そんな状態で必死に叫んだー。
戸惑った様子の和花が背後からその様子を見守っているー
「ーだって~…ジュースの色があまりにも美味しそうだったから~
飲みたくなっちゃったんだも~ん」
孝雄(久美)が、もじもじしながら言うー
「お、俺の身体でそういう仕草をするな!」
そう叫びながら、久美(孝雄)が詰め寄ると、
「ーあ、お兄ちゃん!もしかして元自分の身体とエッチしたいの?」と
孝雄(久美)が意味不明な言葉を口走ったー
「ば!ばか!禁断の領域に俺は足を踏み入れるつもりはないぞ!」
久美(孝雄)が、
つい”妹の久美とエッチをする自分”の姿を一瞬頭の中に
浮かべてしまったが、
すぐに決して開いてはいけない扉のような気がして
慌ててその空想を閉じたー。
「ーーわたし、漫画読まないといけないから!じゃ!」
孝雄(久美)はなぜか敬礼すると、そのまま自分の部屋の
扉を閉めて、部屋に引きこもってしまったー。
いつものように、趣味の少女漫画やゲーム、アイドルなどを
楽しむつもりだろうー
「ちょ!?ちょっと!?おい!?」
久美(孝雄)はそう叫ぶと、少し考えてから笑い出したー
「は…ははははははははは」
笑い出した久美(孝雄)を困惑した表情で見つめる和花ー。
和花が引き気味なことに気づいた久美(孝雄)は
「あ、ごめん」と、すぐに謝ると
「いやぁ、久美も冗談きついなって思って」と笑みを浮かべるー
「え…?」
和花が首をかしげると、久美(孝雄)は
「俺さ、冷蔵庫にも入れ替わりジュースの残り入れて置いたからさー
飲んだって言ってたけど、たぶん本当はちゃんと残ってるんだよ」
と、笑いながら言うー。
久美はよく、悪戯でドッキリもしてくるー
冷蔵庫に置いてある方の「入れ替わりジュース」も飲んだ、と
言っていたが本当は飲んでいないー
そんな感じなのだろうー。
「ちょっと待ってて」
久美(孝雄)は和花に向かってそう言うと、
階段を下りて冷蔵庫の方に向かうー
途中で母親に声を掛けられたもののー
手短に話を終わらせて、とにかく冷蔵庫に向かうー
そこにはー
「ーーあった…」
そうー
あったのだー。
オレンジジュースのような色をした入れ替わりジュースが、ちゃんとー。
「ーーふぅ~…びっくりした~」
久美(孝雄)はそこまで言うと、何かに気づいたー
「ーーーん????」
入れ替わりジュースを入れていた容器に
何かメモ書きが貼ってあるー。
”入れ替わりジュースは全部飲んじゃった!
代わりにおにいちゃんには本物のオレンジジュースを
プレゼント!テヘペロ♪”
と、書かれたメモがー
「ーーー!!」
顔色を真っ青にして、久美(孝雄)が
オレンジジュースのような色をした入れ替わりジュース…で
あるはずの飲み物を一口だけ口につけてみるとー
その味はー
正真正銘、オレンジジュースだったー
「ーー…おぉぉおおおい!!!元に戻れねぇじゃねぇか!」
大声で叫ぶ久美(孝雄)ー
「ーーど、どうしたの?」
戸惑う母親ー
引きこもり気味の娘が、学校の時間でもないのに
急に部屋から出てきて、
冷蔵庫を開けたと思ったら
男言葉で奇声を上げているー
母から見ればかなり狂気的な光景だったー
「あ、いや、いえ、わ、、わたし、ちょっと
演劇の練習をー」
久美(孝雄)は笑ってごまかしながらそう言い放つー
「え…演劇!?」
さらに戸惑う母親ー
”これ以上は無理だ”
と、そう判断して、久美(孝雄)は2階に引き返すー
「お、、お~い!久美!久美!
入れ替わりジュースをどこに隠したんだよ!?」
久美(孝雄)が久美の部屋の扉を叩くー
だが、部屋の中からは、なぜか
クラシック音楽が聞こえてくるー
バッハのトッカータとフーガニ短調という曲だー。
今の孝雄の気分をあざ笑っているかのようー
「ーーおい!!ちょっと!!おい!」
久美(孝雄)は元々ボサボサだった久美の髪を
さらにボサボサにしながら、焦った様子で
部屋に戻ると、和花が久美(孝雄)のほうを見つめたー
「それで、入れ替わりジュースは…?」
もはや状況についていけない雰囲気の和花に対して
久美(孝雄)は「ちょ、ちょっと待ってて」というと、
スマホを取り出して、バイト先の先輩・亀井に連絡を入れたー
妹の久美の奇行には困ったものだー。
自分だって入れ替わった状態で、元に戻れない状態に
なってしまえば、困るはずなのにー
まさか”入れ替わりジュースを全部飲み干してしまう”
などという恐ろしい行為に走るとはー
”もしもし、亀井ですー”
バイト先の亀井先輩が電話に出たー
「ーせ、先輩!あの、俺…えっと、、松沢です!
バイト先の松沢 孝雄ー」
”え…”
亀井先輩が戸惑った声を出すー
確かに、いきなり女の声でそう言われれば
戸惑うのも無理はないー。
「ーーーあ、、あの、先輩の入れ替わりジュースで
妹と入れ替わっちゃって、妹が全部ジュースを
飲み干しちゃったんで、元に戻れなくなっちゃいまして」
久美(孝雄)は焦った様子で言うとー
”お~~!孝雄か~!妹さんと入れ替わったなんて
お前もなかなかマニアだな。
もうヤッたのか?”
亀井先輩が笑いながら言うー。
入れ替わりジュースをくれただけあって、さすがに
入れ替わりのことはすぐに信じてくれたー
「ヤッ…やりませんよ!
それより、入れ替わりジュース…もう1本くれませんか?
お金が必要なら、お金は払いますから!」
久美(孝雄)が言うと、
亀井先輩は”はははっ”と笑ったー
そしてー
”悪いなー。
お前にあげたので、全部だったんだー。
だからもう、おかわりはないー”
亀井先輩から、残酷な返事が返ってきたー。
「ーーえ…ちょ!?それは…つまり…」
久美(孝雄)が言うと、
亀井先輩は”元に戻れないってことだー”と、
淡々と告げたー
「え…いや、じ、じゃあ、アレをどこで手に入れたのか
教えてください!」
と、叫ぶ久美(孝雄)ー
しかし、亀井先輩は
”祖父の蔵を整理してたら出てきたやつ”とだけ
説明しー
亀井先輩自身も入手ルートや
どうやって作られたのかは、知らない様子だったー
「そ、そ、そんなぁ~~~!?」
久美(孝雄)はスマホを落として、家の廊下に
へなへなと座り込んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーおはよ~!」
和花が手を振るー
「ーーお、、お、、おはよう…」
久美(孝雄)は恥ずかしそうに返事をするー
あれから半月ほどが経過したー
孝雄と妹の久美は元に戻ることができないまま、
妹・久美として生活していたー
その事実を知るのは
当事者の孝雄と久美、そしてあの時一緒にいた、
孝雄の意中の相手である和花のみー。
孝雄と久美の両親もまだ二人が入れ替わったことは知らないー
「ーー孝ちゃんツインテールよく似合うよ~」
和花が笑いながら、久美(孝雄)のツインテールにした髪型を見て笑うー。
ボサボサ頭だった久美の髪は、今や綺麗に整えられていて、
別人のようになっていたー
両親も久美の変化に驚いたものの、
まさか息子と娘が入れ替わっている…などという考えに至ることはなく、
二人の入れ替わりには、まだ気づいていないままだったー。
「ーーそ、その孝ちゃんって呼び方はちょっと…」
久美(孝雄)が言うと、和花は
「だって、”松沢君”って呼ぶわけにもいかないし…
かといって久美ちゃん、って呼ばれるのも違和感あるみたいだし…」と、
戸惑いながら笑うー
確かに今まで通りの”松沢くん”だと、久美になった孝雄自身は気にしないとは言え、
周囲から変な目で見られる可能性はあるー
「孝ちゃんなら大丈夫かな~って」
穏やかに笑う和花ー
「ーそれにしても…永森さんがまさか”同級生”から”師匠”に
なってしまうなんて…」
久美(孝雄)が恥ずかしそうに笑いながら言うと
「女の子として生きていく方法、これからも色々教えてあげるからね!」と、
和花は微笑んだー。
久美と入れ替わって以降、
久美(孝雄)は和花から”女子としての過ごし方”をあれこれ
教わっており、ツインテールにしたのも和花からの
アドバイスを受けてのことー
大学生と高校生の間柄になってしまい、
同じ学校ではいられなくなってしまったものの、
結局、入れ替わる前より接点は増えてー
久美になった孝雄も、悪い気はしてなかったー
”まぁ…久美の身体もかわいいし…
なんか、入れ替わってよかったのかもー”
久美(孝雄)はそんな風に思いながら、
静かに微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーありがとうございました
お礼が遅くなっちゃってすみません」
大学に行っているとき以外は自宅の部屋で引きこもるようになった
孝雄(久美)ー
両親の目を気にして、お互いに二人は”部屋”を交換したもののー
既に孝雄になった久美の部屋には
漫画やゲーム、アニメなどがずらりと並んでいるー
特にー
多いのは、イケメン同士の恋愛を描く漫画ー。
久美は、男同士の恋愛が描かれる漫画が大好きだったー。
”いや、別にいいけどさー…
ホントに良かったのか?”
電話の相手が戸惑いながら言うー。
「はいー。
”わたしが作った入れ替わりジュース”を、
お兄ちゃんに渡してもらって、
どさくさに紛れて、わたしがお兄ちゃんの身体を奪うー
わたしの作戦通りうまくいきました!」
孝雄(久美)が嬉しそうに言うー
入れ替わりジュースは、引きこもっていた部屋の中で
久美自身が作り出したものー。
それを、兄・孝雄のバイト先の先輩であり亀井先輩に渡して
「お兄ちゃんに渡してください」と依頼し、
久美が”報酬”を亀井先輩に手渡すことと引き換えに、
亀井先輩が、孝雄に渡したものだったー。
亀井先輩と久美は面識がなかったが、
孝雄がいつも”バイト先の頼れる先輩”と、久美に亀井先輩の
話をしていたため、久美は一方的に亀井先輩のことを知っていたー
”…っていうか、入れ替わりジュースっていったいどうやって作ったんだー?
わざわざ俺に渡させた理由も分からないしー
それに、どうしてお兄さんの身体を奪おうとなんてー?”
亀井先輩が言うと、孝雄(久美)は静かに微笑んだー
「ーーわたしが直接、お兄ちゃんに入れ替わりジュースを飲ませたりすると
お兄ちゃん、たぶんわたしのこと疑うんで、
他の人を通す必要があったんです~!」
孝雄(久美)が言うー。
亀井先輩が”そ、そうなのか”と呟くとー
孝雄(久美)は、”残り二つの質問は、秘密です!”とだけ言って、
そのまま少し雑談をしてー電話を切ったー
”入れ替わりジュース”の作り方は企業秘密ー。
そしてー
孝雄(久美)は、イケメン同士の恋愛が描かれている大好きな
漫画を手に取ると、にっこりとほほ笑んだー
「漫画だけじゃ、満足できなくなっちゃったんだもんー」
そう呟くと、孝雄になった久美は
”兄・孝雄の大学の男子たち”を思い浮かべてー
「ーイケメンカップル…尊い…えへへへ…」と、涎を垂らしながら呟いたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わり状態のまま過ごしていくことに…
特に誰も困っている感じはなさそうなので
これはこれでハッピー(?)エンドなのかもですネ~!
お読みくださりありがとうございました~!
コメント
誤字です。 漢字が違います。
「その鷹ちゃんって呼び方はちょっと」
↑孝○
全部、久美の計画だったんですね。天才とかならともかく、普通の女子高生が入れ替わりジュースを作れてしまうとこには少し無理がある気もしますが。
孝雄と和花は百合カップルみたいになっていくのか、そうでもないのか分かりませんが、いわゆるBLの趣味があるらしい久美は兄の身体で男と恋人になるのが目的なんですかね?
しかし、現実にはそう男同士の恋愛なんてないでしょうし、あったとしても、イケメンとは限らないでしょうから、久美の思うようなことにはならなそうな気がしますね。
コメントありがとうございます~!☆
久美の目的はコメントにある通りですネ~!
上手くいくかどうかは、また別問題デス…!
漢字の違いは修正しておきます~!
ありがとうございます☆!!
書き忘れてたことがあったので追加のコメントです。
予想では久美は重度のブラコンで兄を誰にも渡したくないとか、あるいは和花に恋愛感情を抱いていて、自分が兄になって和花と恋人にでもなりたいのかと予想してたので、かなり意外な方向性のオチでした。
まあ、それほどダークな展開ではなかったのでホッとしました。ここの作品の兄妹入れ替わりとかの話って、ハッピーエンドみたいな話、あまりないですし。
それにしても、入れ替わり物はやっぱり戻れなくなる展開の方が楽しいですね。
久美の身体で生活するうちに、心身共に孝雄が女の子に染まっていく可能性も妄想出来ますし。
追加のコメントもありがとうございます~!☆
ダークとハッピーを織り交ぜながら
この作品はどっちになるのかな…?と最後まで
予測できないドキドキ感を目指しています~!笑
兄に対しては特に特別な感情は久美にはなかったですネ~!
「イケメンな身体」ぐらいにしか思っていないデス笑