<憑依>黒き村~過去の追憶~(前編)

「村を訪れた人間は帰ってこないー」

そんな物騒な噂のある”黒月村”を訪れた
女性の身に起きた悲劇…

その過去の物語ー。

※「黒き村」本編の「過去」を描く作品デス!
先に黒き村の本編をお読みください~!

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姉・神矢紅葉(かみやもみじ)が、半年前に失踪したー。

妹の友美恵(ゆみえ)と、紅葉の婚約者でもあった祥吾(しょうご)は、
そんな紅葉の行方を調べるうちに
”黒月村”と呼ばれる村の存在にたどり着いたー。

半年前ー
紅葉が失踪し、豹変して連絡を絶つ前に、
紅葉がこの村を訪れていたというのだー。

当時、記者として働いていた紅葉は、
”一度立ち入ったものは2度と帰ってこない”という
噂のある黒月村の取材を上司の男から指示されれ、
その村に足を運んでいたー

そしてその結果、紅葉は黒月村に住み着き、
”帰ってこない”状態になってしまったのだー

姉・紅葉の所在地を知った妹の友美恵は、
紅葉の婚約者であった祥吾と共に
黒月村を訪れることを決意するー。

そして、その先に二人が目撃したものは…!

…この物語は、
二人が黒月村を訪れる半年前ー…

姉の紅葉に何が起こったのかを
解き明かす物語…。

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半年前ー。

「ーーえ?本当に?元気でやってる?」
記者として働く神矢 紅葉は、自宅で妹の友美恵と
連絡を取っていたー

紅葉と妹の友美恵はとても仲良しで、
現在大学生の友美恵のことを、紅葉は実家を出た今でも
気遣い、連絡を取り合っているー。

お互いの日程が合えば、実際に会うことも多いー。

大学での出来事を色々聞きながら
”うん!元気だよ!”と、友美恵から返事が返ってきて
紅葉は「そっか~よかった」とほほ笑むー

「今度取材の仕事があるから、また終わったら連絡するね~」
紅葉はそんな風に言いながら、紅葉との通話を終了したー。

「ーーー友美恵ちゃん?」
ちょうど遊びに来ていた彼氏の祥吾が、微笑ましそうに尋ねてくるー

「うん。友美恵も頑張ってるみたいだし、わたしも頑張らないとね」

紅葉が笑いながら言うー。
祥吾とは既に婚約していて、まもなく正式に結婚する予定だー。
現在は具体的にスケジュールを決めている最中で、
お互いの仕事の都合などから、日程を相談中だー。

最近では、お互いの家を行き来して、荷物の整理なども
している最中ー。

紅葉自身は、明日から”ある村”の取材に行くことになっていてー、
数日間は、この家を留守にするー。

その前にー、と今日は祥吾が紅葉に会いに来たのだったー

「ーー今日は出張前に会えてよかったよ」
祥吾の言葉に、紅葉は「わたしも!」と、微笑むー。

楽しそうに雑談をする二人ー。

だがー
祥吾も、紅葉も、
この日を最後に”次”の再会が半年も先になるとは
夢にも思わなかったー。

そしてー
その”次”の再会の時にはー
紅葉が、今の紅葉ではなくなっているー…
などということは、本人も祥吾も
まったく想像していなかったのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

紅葉が勤務している編集部の編集長が
「じゃあ、頼むぞー」と、紅葉のほうを見るー。

紅葉の勤務している出版社は、それなりに有名な会社で
決して怪しい会社ではないー。
現在は、都市伝説や世の中の不思議なことなどを取り上げる
雑誌の編集部に配属されており、
その一環で”訪れた者は2度帰ってこない”という都市伝説のある
「黒月村」の取材に向かうことになっていたー。

「ーー神矢さん、変わって貰っちゃってごめんなさいー」
同じ編集部に所属する2歳年上のちょっとギャルっぽい記者・阿左美(あざみ)が
苦笑いしながら言うー。

当初、この阿左美が黒月村に向かう予定だったのだが、
半月ほど前に、車に乗っていた際に後続の車に追突され、
怪我をしてしまったことから、編集長の配慮と、紅葉自身が、申し出たことにより
”交代”となったのだったー

阿左美は、この編集部に来てからとても良くしてくれていて、
その恩を少しでも返したい、という紅葉の気持ちもあったー

「ーー塩村(しおむら)、お前もしっかりな」
編集長の堂原(どうはら)が言うと、30代の男性記者・塩村は
静かに頷いたー。

”黒月村”には不気味な噂があるー。
流石に、紅葉のような若い女性に一人、行かせるわけにはいかないー。

そう判断した堂原編集長は、男性記者の塩村を”護衛”も兼ねて
同行させることにしていたー。

「ー塩村さん、よろしくお願いしますー」

「ーーあぁ、こちらこそ」
寡黙な塩村は、それだけ言うと”黒月村”に向かう車の
用意を始めたー。

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過酷な山道を超えてー
とても人が住んでいるとは思えないような場所に入っていくー

「こんなところに、村がー」
紅葉が言うと、先輩記者の塩村も少しだけ表情を
歪めながら車の運転を続けるー。

車がこれ以上進めなくなった時点で、
塩村は「ここからは歩こう」と呟くー。

「ええ」
紅葉も頷くと、そのまま険しい道を進んでいく二人ー。

そして、ようやくー
二人は”黒月村”の入口にたどり着いたー。

都市伝説や噂ー
不思議な出来事などを主なテーマとしている雑誌の取材として、
黒月村にやってきた紅葉ー。

”一度訪れたら、二度と帰ってこない”
そんな、不気味な噂のある黒月村の取材を行うのだー。

「ーーー」
村の入口を前に、少しだけ不安そうな表情を浮かべる紅葉ー。

婚約者でもある祥吾には”黒月村”を訪れることまでは
伝えていなかったー
妹の友美恵にも、だー。

”足を踏み入れたものは2度と帰ってこないー”
ほぼ確実に迷信であることは分かっているー
けれどー。
そのような村を訪れる、と言えば二人とも心配するであろうことは
容易に想像ができるー

だから、祥吾にも友美恵にも”取材で数日留守にする”としか
伝えて来なかったー

不安そうにしている紅葉を見て、煙草を吸っていた塩村は
携帯用の灰皿にその煙草の吸殻を捨ててから
「ー大丈夫だ。噂は噂だ。それを取材するのが俺たちの仕事だろ?」と、
冷静に呟くー。

「はいー。そうですね」
紅葉は少しだけ緊張を緩めると、
塩村と共に、そのまま黒月村へと足を踏み入れたー。

「ーーようこそいらっしゃいましたー」
笑みを浮かべた老人男性が近づいてくるー

紅葉が「ーーあの…すみません…」と、
簡単に自分と塩村の自己紹介をするとー
その老人は、静かに微笑んでから頷くー。

そしてー
老人は、自らを示しながら、
「黒月村の、村長でございますー」と、
深々と頭を下げたー。

「ーーよろしくお願いします」
紅葉が言うと、同行していた男性記者の塩村は
「ーー村長、さっそく本題で申し訳ありませんがー」と
話を切り出すー。

「ーこの村には”村に入ったものは2度と帰ってこない”
 という噂があることはご存じですか?」

塩村が言うと、
村長は「えぇ、存じておりますー」と頷くー。

「我々はその真相を突き止めるために、ここに来ましたー。」
塩村の言葉に、隣にいる紅葉は、少し不安そうな表情を浮かべるー。

”いきなり失礼ではないか”
と、いう不安だー。

「ーー人は”未知の存在”を前にすると
 どうしても、ありもしない話を口にしたり、
 想像してしまったりするものですー。

 ご覧くださいー」

村長が黒月村の入口のほうを指差すー。

先ほど、紅葉や塩村がこの村に入った時に通った
ところだー。

「ーー黒月村への出入りは”自由”でございますー
 「村に入ったものを幽閉している」だとか
 そのような噂もあると存じておりますが、
 そのようなことは、決して、ございませんー」

村長の言葉に、
塩村は「ーーもちろん、分かっています」と
不愛想な表情のまま頷くー。

「ーですが、このような平和な村が、
 そんな怖いイメージを持たれたままー、というのは
 悲しいことです。

 ですから我々が”黒月村はいい村です”ということを
 取材して、伝えていきたいのですー」

塩村の言葉に、村長は微笑むー。

「ーーー」
そのやり取りに、少し紅葉はホッとしたー。

”本題”に切り出しつつも、
相手を不快にさせないよう、ちゃんと
相手を立てる言葉もその中に織り交ぜて会話をしていた
先輩記者の塩村ー。

紅葉も、これから記者として色々な経験を
積んでいかなくてはいけないー

そう、思ったー。

「ー皆、久しぶりのお客さんじゃ!歓迎の準備を」
村長が叫ぶと、村の人たちが集まってくるー。

老人ばかりだと思っていたがー
子供や、若い男女もおりー
平均年齢は”想像よりはるかに低い”状態だったー

「ー若い方も結構いらっしゃるんですね」
紅葉が微笑むと、村長は「えぇ、おかげさまで」と、
意味深な笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

村の”歓迎”が始まるー
村人たちはみんな、気さくな性格で、
紅葉も楽しそうに村人たちと雑談を交わしていたー。

「ーー娘の美音(みおん)です」
村長が随分と歳の離れた娘を紹介するー

「よろしくお願いします」
美音の言葉に、紅葉は「よろしくね」と、微笑みながら
握手を交わしたー。

「ーーーー」
少し離れた場所でノートパソコンを使い、
村の様子をまとめている男性記者の塩村ー。

塩村は、記者としての仕事を淡々とこなしていたー

”特に変わった様子はないなー
 予想通り、人里離れた場所に存在する村に
 都市伝説的な噂がついた…という感じだろうな。”

塩村はそう思いながら、楽しそうに村人たちと
話をしている紅葉のほうを見つめるー。

”ー確かに居心地は良さそうな村だー
 外から来て、住み着いたやつもいるんだろうー。
 それが”黒月村に入ると2度と帰ってこない”
 という都市伝説につながったー…
 そういうことだな”

塩村はそう心の中で呟くー。

そしてー
村人たちの歓迎は終わりー

夜になったー

二人には、それぞれ別の宿が提供されたー。
”男女の同僚がひとつ屋根の下は気まずいだろう”という
村長の配慮だったー。

「ーー神矢さん、この村のことは分かったし、明日の夕方には
 この村を出ようと思うが、それでいいか?」
塩村が言うと、紅葉は「はい、そうですね」と、微笑むー

「一応確認だが、”黒月村から出たくない”なんて
 思ってないよな?」

”念のため”の確認だったー
”洗脳”のようなー
そんな現象がないとも限らないー

紅葉が急に”わたし、この村に住もうと思うんです”なんて
言い始めないとも限らないー

「ーわたし、この村に住もうと思いますー」
紅葉が微笑むー

「ーーえ」
基本無口で、冷静な塩村が表情を一気に歪めたー

「ーーーな~んちゃって!
 ふふ、塩村さんの焦る顔、初めて見ました!」

紅葉の冗談だったー

「ーーそんなこと言うわけないじゃないですか!
 妹や彼氏も心配しますし!」

紅葉が言うと、
塩村は少し顔色を青ざめさせたまま
「そ、それならよかったー」と、笑みを浮かべたー

だがー
”冗談”が、まさか現実になってしまうとは、
この時の紅葉はまだ”夢”にも思っていなかったー

翌朝ー

塩村は、パソコンで色々な情報を調べていたー。

辛うじて、ネットは繋がるー。

「ーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

塩村は、あることに気づいたー。

”少女が失踪ー”

数年前のニュース…
その”失踪した少女の顔”はー
村長の娘を名乗っていた美音と同じだったー

「ーーーー…」
塩村はすぐに宿から外に出るー。

そして、紅葉が宿泊している村の宿の方に向かったー

だがーーー
宿から出てきた紅葉はーー
巫女服を身に纏い、不敵な笑みを浮かべていたー

<後編>へ続くー

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コメント

黒き村の「お姉ちゃん」に何が起きたのかを描く
過去編デス~!
続きは、毎週土曜日だけ書置き(予約投稿)で更新している
都合上、来週の土曜日になってしまいますが、
ぜひお楽しみくださいネ~!

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憑依<黒き村>

コメント

  1. 匿名 より:

    面白いことは面白いんですが、本編で最終的に紅葉がどうなるか既にはっきりしてるのがアレですよね。

    本編の後日談だったなら先がどうなるのか分からなくてワクワクするんですが。

    本編とこの過去編の順番が逆だったら良かったのでは?
    あるいは同じ過去編としても、もっと大昔の村の話だったら先が分からなくて良かったかもしれません。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      時々、映画とかゲームとかでも、
      後から過去を描いて、結末は分かっているケド…みたいな作品があるので
      今回はそんな感じの作品をイメージして書いてみました~!

      もっと大昔の話…!
      それも面白かったかもしれませんネ~★!