<憑依>黒き村①~噂~

”その村に入ったものは2度と帰ってこない”

そんな噂のある不気味な”村”に
とある女性が足を踏み入れようとしていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒月村(こくげつむら)ー
その村には、不気味な噂があったー

それはー
”その村に入ったものは2度と帰ってこない”という噂だー

人里離れた山奥に存在し、
交通のアクセスは非常に悪く、
滅多に外部の人間が訪れることはない。

定期的にライフラインに関係する物資の輸送などが
行われる以外に人が出入りすることはめったになく、
村人たちは”自給自足”と中心に独自の文化を形成しているー。

そんな”黒月村”にまつわる噂ー

”その村に入ったものは2度と帰ってはこない”という噂ー。

それが本当なのか、嘘なのかは分からないー。
そもそも、黒月村はほとんどの人に知られておらず、
観光名所になっているわけでもなく、
交通の便が非常に悪いー
訪れるだけでも一苦労な場所に存在するのだー。

”黒月村は夢のような村で、一度入ると居心地が良すぎて
 そこに住み着いてしまう”と、噂する人間もいればー
”黒月村には悪魔が潜んでいる”などと噂する人間もいるー

一部には”呪いの村”であるという人間まで
いるほどだー。

「ーーー……」
女子大生の神矢 友美恵(かみや ゆみえ)は、
そんな”黒月村”を訪れようとしていたー。

「ーーお姉ちゃんー」
友美恵の姉で、記者として働いていた姉の紅葉(もみじ)が
半年前に、仕事の取材中に失踪し、”帰ってこない”のだー。

半年前、紅葉は
大好きだったはずの記者の仕事を辞めてー
当時、付き合っていた彼氏との連絡も遮断ー
さらには大の仲良しだった妹の友里恵に対しても冷たくなり、
やがて、連絡を遮断されてしまったー。

そして、先月ようやく紅葉の居場所が判明したー。
警察の調べによって
紅葉は現在、”黒月村”と呼ばれる村にいることが分かったのだー。
”その村に入ったものは2度と帰ってはこない”という噂のある村だー。

しかしー
紅葉本人とは連絡がついたことー
紅葉本人の無事を確認できたことー
そして何より、紅葉本人が”自らの意思”で”失踪”状態にあったことを
伝えてきたため、それ以上、警察も動くことができなかったのだー

黒月村の取材に向かい、そのまま黒月村に住み着いてしまった姉・紅葉ー
”呪いの村”とも言われるその村ー。

”黒月村には何かがある”
そう考えていた友里恵は、姉・紅葉を救うために
黒月村に向かう決意をしていたー。

「ーーー…よろしくお願いします」
友里恵が頭を下げると、
優しそうな男が「こちらこそ」と、礼儀正しく答えるー。

「ーーでも、友里恵ちゃんまで無理をする必要はないのにー」
男が言うと、友里恵は「いえ、わたしも行きます」と
意を決した様子で呟くー。

この男は、黒月村に入り、事実上の失踪状態になっている
紅葉の彼氏だった男だー。

紅葉とは結婚の約束もしていて、そのままゴールイン
するはずだったのにも関わらず、
取材中に失踪した直後、豹変した紅葉から一方的に振られ、
連絡手段も遮断されてしまったのだー。

紅葉の彼氏だった男・山崎 祥吾(やまさき しょうご)は、
紅葉が失踪後、紅葉の妹である友里恵と共に、
紅葉のことを調べ続けていたのだー

そして、居場所が分かった今、
祥吾は「黒月村」まで直接足を運ぶ決意をしていたー。
その話を聞いた友里恵が、祥吾に「わたしも連れて行ってください!」と
言ったことから、二人で紅葉のいる黒月村に向かうことになったのだー。

祥吾は、彼女である紅葉の真意を聞くためーー
友里恵は、姉である紅葉の真意を聞くためーー

「ーじゃあ、そろそろ出発するよ」
祥吾は、乗ってきた車のハンドルを握ると、
「山奥だから、途中からは徒歩かもしれないな」と苦笑いしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

車を走らせること数時間ー
祥吾の懸念していた通り、結局最後には歩くことに
なってしまい、
長いスカートを汚しながら、友里恵は祥吾と共に
山道を進んだー

半年前、姉の紅葉は
”呪いの村”の取材と称してこの黒月村に取材に来ていたー。
そして、黒月村を訪れた紅葉は
どういうわけか、そのまま黒月村に住み着いてしまい、
そのまま妹の友里恵とも、彼氏の祥吾とも、職場とも
一切の連絡を絶ってしまったのだったー。

警察に捜索願が出されたあとも
しばらく紅葉が発見されなかったのは
”黒月村”という人里離れた場所に紅葉がいたことー
そして、紅葉が勤務していた出版社が
”呪いの村”と知ってて紅葉に取材に行かせたことに
責任とうしろめたさを感じ、しばらくそのことを
隠していたために、紅葉の発見が遅れてしまっていたのも
一つの事実だったー。

「ーーーごめんな…こんなところを歩かせるなんて」
友里恵に向かって言う祥吾ー

祥吾は姉・紅葉の彼氏だが、結婚を前提にお互い付き合っていたため、
友里恵とも面識があり、友里恵のことも妹のように
可愛がっていたー

「いえ、わたしだって、お姉ちゃんを助けたいですから」
友里恵が言うと、祥吾は
「友里恵ちゃんみたいな妹がいて、紅葉も幸せだろうな」と、
優しく微笑んだー。

険しい山道をかなりの時間進むとー
ようやく”黒月村”の入口が見えてきたー

決して、広い村ではないー
狭く、人口もほとんどいないようなその村はー
日が暮れていたこともあり、不気味だったー

”足を踏み入れると2度と帰ってこない”

そんな不気味な噂まである黒月村ー

「ーー」
その入口前で緊張した様子の祥吾と友里恵ー。

だが、ここまで来て引き返すわけにはいかないー。

大切な女性をー
大切なお姉ちゃんを救うため、
二人は黒月村に足を踏み入れたー

するとー

「ーーようこそいらっしゃいましたー」
笑みを浮かべた老人男性が近づいてくるー

「ーーあなたは?」
祥吾が言うと、老人は「黒月村の、村長でございますー」と
丁寧に答えたー。

「あなたが村長…」
祥吾はそう言うと、
「夜分遅くに急に訪れてすみません。
 午前中から移動していたのですが、不慣れなもので
 到着が遅れてしまいました」と、村長に、
”夜に村を訪れた”ことをわびたー

村長は優しく「いやいや」と笑うと
「街に出入りするのが自由なように、村に出入りするのも自由ですからな」と、
穏やかな口調で言うと、
村長は突然両手を叩いたー。

「ほれ、皆、お客さんがいらっしゃったぞ!」
とー

すると、村の民家の扉が開き、
”村人”たちが出てくるー

老人から子供まで、少数ながら、
色々な年齢層の人間が、そこにはいたー。

「ーー娘の美音(みおん)ですー」
村長がそう言うと「美音です」と、可愛らしい少女が頭を下げるー。

「ーーはじめまして」
友里恵は、笑顔で美音にそう答えると、
周囲を見渡したー

「それでー、そのー」
友里恵は村人たちに歓迎されながら、
早速”本題”を切り出したー。

姉・紅葉の写真を手に、
その写真を村長に手渡すー。

村長がその写真を確認するー

友里恵が「お姉ちゃんがこの村でお世話になっていると聞いて、
わたしたち、会いに来たんですー」と穏やかに言うー。

別にこの”黒月村”と争うつもりは全くないー。
姉の紅葉が本当に心からこの黒月村を気に入ったのであれば、
それはそれで、姉の選んだ道ー

けれど、連絡まで遮断される意味は分からなかったし、
理由があるならあるで、しっかりと聞いておきたかったー

「あぁ、、巫女の妹さん」
村長が言うー

「巫女?」
友里恵が、紅葉の彼氏・祥吾と顔を合わせて不思議そうな表情を浮かべるー。

村長は笑いながら
「そうです。我が村の巫女ですー」と、呟くー。

「ーーみ、巫女っていったい…?」
戸惑いながら、友里恵が言うと、
村長の娘・美音が「よければご案内しましょうか?」と
微笑みながら提案したー。

「ーー紅葉と会えるんですか?」
祥吾が言うと、村長は「えぇ、もちろん」と、頷くー。

「ーじ、じゃあ、お願いします」
妹の友里恵も、頭を下げてお願いすると、
村長の娘・美音がゆっくりと「こちらです」と、村の端の方にある
神社の方に向かって歩き出したー。

村人たちもそれに合わせてゆっくりと動き出すー。

友里恵と、姉・紅葉の彼氏、祥吾は互いに顔を見合わせてから
移動を始めるー

”黒月村に入ると、二度と帰ってこない”という
黒い噂がある村ー
もう少し敵対的な雰囲気かとも予想していたが、
村長をはじめ、村人たちの雰囲気は決して悪くはないー。

そんな風に感じながら、友里恵と祥吾は案内された場所に移動したー。

するとー
そこには巫女服を着た女性が、村のシンボルマークのようなものの前で
祈りを捧げていたー

「ーーお姉ちゃん!」
後ろ姿かつ、巫女服という見慣れない恰好だったが
友里恵はすぐに、その人物が姉の紅葉であることに気づき、そう叫んだー。

祈りのようなものを捧げていた紅葉が振り返るー。

「ーーー友里恵……祥吾…」
巫女服姿の紅葉は穏やかな口調でそう言い放ったー。

少し、雰囲気が変わっただろうかー。
神秘的で少し近寄りがたい感じを感じさせるー。

いやー
巫女服を着ているから、そう感じるのかもしれないー

村長やその娘の美音、他の村人たちが
穏やかな表情でその様子を見つめているー

「ーーー……久々の再会、積るお話もあるでしょう。
 どうぞ、ごゆるりと」

村長はそう言うと「これ、わしらは一旦外に出るぞ」と
建物の外に出るように他の村人たちに促し、そのまま
外へと立ち去って行ったー。

「ーーーー」
しばらく沈黙する三人ー。

紅葉の様子から、
紅葉が友里恵と祥吾がここに来たことを歓迎している様子は
感じられなかったー。

「ーーーなんで、ここに来たの?」
紅葉が呟くー

「え…」
友里恵は不安そうに紅葉のほうを見るー。

そんな友里恵の様子を見て、紅葉の彼氏である祥吾は
「そ、そんな言い方はないだろ!?」と、戸惑いながら言うー。

「ーこの村はわたしを必要としてくれているー
 だからー
 この村で生きていくことに決めたの。
 それだけのこと」

紅葉の言葉に、友里恵は「でも、わたしたち、お姉ちゃんが心配で!」と叫ぶー。

「ー心配?」
紅葉は不愉快そうに表情を歪めたー

「ーそんなもの、いらないから」
紅葉はそれだけ言うと、立ち上がってそのまま
立ち去って行こうとするー。

「ちょ、、な、なんだよその態度は?!」
祥吾が戸惑いながら言うー。

「半年間、友里恵ちゃんも、俺も、ずっと
 紅葉のこと、心配してたんだぞ!?
 それなのに、その態度はあんまりじゃないか!?」

祥吾が少し感情的に叫ぶと、
紅葉は鋭い目つきで振り返って、言い放ったー

「ーーわたしは生まれ変わったのー。
 もう、あなたたちの知る紅葉じゃないー。

 あたたの彼氏でも、あなたのお姉ちゃんでもないー。
 急に村に来られて、迷惑なのよ」

それだけ言うと、紅葉は不機嫌そうにそのまま
立ち去って行ってしまったー

落ち込む友里恵と祥吾ー。
正直、事件に巻き込まれたわけでもなく、存命なのに
半年間、まともに連絡もくれなかった時点で、
こうなることは覚悟しておくべきだったのかもしれないー。

だがー
どうして、急にそんな考えが変わってしまったのだろうかー。

友里恵と紅葉は仲良し姉妹だったし、
祥吾と紅葉は結婚間近のカップルだったー

それなのにー

「ーーー…どうする?」
祥吾が呟くと、友里恵は「わたし、大丈夫ですからー」と、
少しだけ微笑むと、
「ここまで来たんですから、ちゃんとお姉ちゃんの真意を聞き出しますー」
と、気丈に祥吾に対して言い放ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーークク…この身体を渡すものかー」

友里恵たちの前から立ち去った紅葉は
巫女服の上から自分の胸を触って、
ニヤリと笑みを浮かべたー

②へ続く

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不気味な村にやってきてしまった二人…
お姉ちゃんの豹変の真相は…!?

続きはまた明日デス~!

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