心霊番組を見てから彼女の様子がおかしい…
そんな”彼女の異変”に気づいた彼氏の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーークク…ふふふふふふ…」
夜ー
自宅の部屋を真っ暗にした状態で、
麗は笑っていたー。
一人、低い声で笑い続ける麗ー
「ーーあぁぁぁ…ククク…クククククク」
目が赤く光ったり、普通に戻ったりを繰り返す麗は、
やがて胸を揉み始めるー。
気持ちよさそうに息を吐きながら
興奮した様子の麗は
「まだだ…まだ、足りないー」と、
不気味な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーだ、大丈夫か?」
翌日ー
洋介が戸惑った様子で麗のほうを見つめるー
麗がとても眠そうにしていたからだー
「うん…大丈夫だけど…なんか今日は眠くて」
麗の言葉に、洋介は「あまり無理はするなよ~!」と
笑いながら呟くー。
「うん…くく…ククク」
麗が不気味に笑うー
「ーーー」
洋介は麗のそんな様子を不安に思いながらも、
今日も大学生活を普通に終えたー。
明日は土曜日ー
麗が”心霊番組を見たい”と言ってきた日だー。
明日は洋介の家で、心霊番組を再び一緒に
見る約束をしているのだが、
番組は麗が用意すると言っていたー。
「ーー明日は久しぶりの”我が家”だなぁ~」
麗が楽しみ!という雰囲気で呟くー
「我が家?」
意味が分からず洋介が聞き返すと、
麗は微笑みながら「ふふ、明日、楽しみにしてるね!」
と、そのまま立ち去って行ってしまったー
「ーー麗…?」
洋介の不安は、さらに高まっていくー。
麗の様子がやっぱりどこかおかしいー
そんな違和感を拭えないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
土曜日ー
洋介が家で麗の到着を待っていると
インターホンが鳴ったー。
やってきたのは麗だったー。
いつものような穏やかな笑みー。
だが、その服装は少しだけ、いつもより派手に見えたー
いつも、落ち着いた服装を好んでいる麗にしては
露出が少し多い気がするー
そんな、違和感を抱いたのだー
「ーはぁ~…やっぱ落ち着くなぁ~」
麗はそう言うと、突然テレビをつけ始めるー
「ーさぁ、みよっ」
麗はそう言うと、テレビのほうを見てー
突然ー
目を赤く光らせたー
「ーー!?!?!?」
洋介にも、麗の目が赤く光ったのが
はっきりと見えたー
「ーーおい、麗…その目…!?」
洋介が言うと、麗は笑みを浮かべながら「どうしたの?」とほほ笑むー
「いっしょに、
心霊番組
心霊番組
見ようよ
見ようよ」
麗の声が二重に聞こえ始めるー
いやー
二重に聞こえているうちの声の片方はー
”男”の声だー。
「ーー…う、、麗…!?」
洋介が叫ぶと、
目を赤く光らせたままにやりと笑っている
麗の背後から、黒い影のようなものが集まりー
人型のシルエットになったー
「ーどうしたの?
ーどうしたの?
ーほら
ーほら
ー一緒に
ー一緒に
ー心霊番組、見ようよー
ー心霊番組、見ようよー」
麗がそう言い終えると、
目の色は元に戻り、
麗の背後から出てきていた黒い影も消えたー。
心霊番組が始まるー
内容は、この前の続きだろうかー。
この前、見た時にも登場していた男の幽霊が
登場しているー
麗は食い入るようにして、それを見つめているー。
「ーーう、麗…今のは?何なんだ…?」
洋介が戸惑いながら尋ねると、
麗は洋介のほうを見てから微笑むー。
そしてー
「”今のは”って?」
と不思議そうに首をかしげるー
洋介は一瞬迷ったものの、
すぐに麗に”確認”したー
「ーー今のはって…じゃなくて、
今、目が赤く光ってたし、麗の背中から黒い影が…!」
既に目は普通に戻り、黒い影も見えないー
だが、さっきのは幻覚なんじゃないー
”確実に”麗の背後に何かが見えていたー
「ーーあはっ!あは、、あははははははははははっ!」
麗が突然笑い出すー。
洋介はそんな麗の様子にも違和感を感じたがー
麗はただ笑っているだけだったー
「ーわたしの目が赤く光ってた?
そんなこと、あるわけないでしょ!」
笑う麗ー。
「いや、でも確かに、背中から黒い影もー」
洋介の言葉に、麗は「あ、わかった!」と、
悪戯っぽく笑いながら洋介のほうを見つめるー
「洋介ってば、これから心霊番組を見ようとしている
タイミングでそんなこと言うなんて、わたしを
驚かせようとしてるでしょ?」
その言葉に洋介は「いやいやいや!そんなことはないけどさ」と
戸惑った様子で言い放ったー
「ーーじゃあ、みよっ!」
麗はそう言うと、夢中になった様子で心霊番組を
見始めるー。
一緒にテレビを見るときには、いつも軽いお菓子を用意するのだがー
今日は用意したポップコーンの袋を麗が手でつかみ、
そのまま勢いよく食べ続けているー。
普段の麗とはやっぱりどこかが違うー
「ーーくくく…」
麗が笑いだすー
心霊番組にくぎ付けになって、
うっとりとした表情でそれを見つめているー
「ーー”俺”のーー魂がーークク…ククク」
麗が不気味に囁くー
「ー麗?」
洋介は心配になって麗のほうを見つめるー。
だが、麗はずっとテレビに夢中になったままー
それどころか、テレビから不気味な黒い煙のようなものが
出てきてー
麗の身体の方に向かっているー
「ーー!!」
洋介はとっさにスマホでテレビの番組表を確認したー
麗はさっき、テレビをつけただけで心霊番組が始まったー
それはつまり、
今、テレビで放送されている心霊番組を見ているはずなのだー
ブルーレイは入っていないし、
ゲーム機を使って動画サイトの動画を再生しているわけでもないー
だがーー
「ーーーーー!!!!」
洋介は目を見開いたー
”現在放送されている心霊番組”など存在しなかったのだー。
だが、確かにテレビには心霊番組が放送されているー
社会に絶望した男が、自ら命を絶ってしまい、
呪いのアパートになってしまった…と、そんな感じの心霊番組で、
全開、麗と見た番組の続編だと思われる番組だー
”放送されていないはずの心霊番組が、どうしてー?”
ブルーレイレコーダーのほうを見つめる洋介。
だが、ブルーレイレコーダーには何も入っておらず、
やはり、ブルーレイを再生しているわけでもなかったようだー。
動画廃止サービスにログインした様子もなかったー
「ーーう、麗!この心霊番組、なんなんだ?」
洋介がたまらず叫ぶー
だが、麗はポップコーンを無心に食べ続けながら
心霊番組を楽しそうに見ているー
普段、穏やかに笑う麗がー
「ひひひひひひ…」と奇妙な笑い声をあげているー
「おい!麗!麗!」
洋介のことなどー
まるで眼中にない様子の麗に向かって叫ぶとー
麗の目が突然真っ赤に光ったー
「ーー邪魔をするなー…この女は”俺”のものだー」
麗が呟くー
「お、、、俺…!? う、、麗…?」
自分のことを”俺”と言いだした麗に対して
洋介が心底心配そうな表情を浮かべるー
麗は笑うー
「みろ」
とー。
心霊番組のほうを示す麗ー。
”アパートで自ら命を絶った男の悪霊が巣くう”
そんな話の心霊番組ー
物語で男が首を吊りー、
そして、そのアパートは呪いのアパートと化したー
ちょうど、その心霊番組は終盤のタイミングになっていたー
心霊番組の内容が終わりー
最後に”建物”の全景が表示されるー
「ーーーーーーーーーー!!!!」
テレビに映し出されている心霊番組の”舞台”は、
ここーーー
洋介が住んでいるアパートだったのだー
「ーーククク…”俺”はこの部屋で自殺したんだー」
麗が笑うー
麗の声なのに、麗がしゃべっているようには思えないー。
麗がテレビのほうを見て、目をキラッと光らせると
テレビは消えたー。
心霊番組が放送されていないのは、当たり前だー。
何故ならー
放送されていないのだからー
麗に憑依した悪霊が、実体験したことを
怨念の力でテレビに映し出していただけなのだからー
「ーー…ど、、ど、どういうことだ!?」
洋介が叫ぶと、麗は笑うー
「ーー俺はずっとずっと、悪霊と化して
この部屋にいたんだー
ずっとずっと”新しい身体”を探していたー」
麗の言葉に、洋介は怯えた表情を浮かべているー
「ようやく見つけたよー
お前の彼女ー
へへへ…いい彼女じゃないか…
この身体で俺は人生をやり直してやるー…
俺の人生はクソみたいな人生だったからなー
へへへ…女になってニューゲームで再開だ…!」
洋介はその言葉「お、、おい!麗を返せ!」と叫ぶー
だがー
麗の目が赤く光りー
洋介の身体が突然動かなくなるー
「ーーお前を、殺すことなんて、簡単なことなんだよ?」
麗の目が狂気に染まっているー
”殺される”
そう思った洋介は、何も言えなくなってしまったー
只々、言葉では言い表せないほどの恐怖に、
支配されてしまったー。
「ーーーあ…ひっ…」
座り込む洋介ー。
「ーーへへへ…この女は、俺に支配されつつあることを
自覚できないまま、
完全に俺に同化されるのさ」
麗が言うー。
麗に憑依した悪霊が、麗を完全に支配するまで
ある程度の時間がかかるのだというー。
そして、麗は自分が支配されつつあることを
自覚できていないー。
「クククククー」
麗は心霊番組を見つめるー
「ー俺の思念を、全部この身体にー」
麗が両手を広げて嬉しそうに、テレビから湧き出る
邪悪な気配を吸収するかのような行為をしているー
洋介が唖然としていると、
麗は「俺の思念は全部この身体に入ったー。もうここに用はねぇ」と
ニヤニヤしながら立ち去ろうとしていくー
「ーーー」
洋介はあまりの恐怖に、何も言うことができなかったー。
洋介が住むアパートのこの部屋では、
麗に憑依した男が過去に自殺していたー。
洋介も事故物件とは少し、聞かされていたー
だが、こんなことになるなんてー
洋介は”俺のせいで”と、自分で自分を責め続けたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ーーーーー」
麗が食堂で、無表情のままラーメンを食べているー。
麗はラーメンが苦手だったはずなのにー
「ーーー…」
だが、洋介は、昨日の件もあり、麗に声を掛けることは
できなかったー。
大学の授業が終わり、
休憩スペースで飲み物を飲んでいると、
麗がほほ笑みながらやってきたー。
「今日、元気ないけど、大丈夫?」
麗はいつものように微笑んでいたー。
おそらく、男に支配されてない状態の麗なのだろうー
「麗…」
しかしー
洋介は、昨日の件の恐怖からー
どうすることもできない苦痛からー
逃げ出したー
そのまま足早に立ち去っていく洋介ー
麗は戸惑った様子で「え…?洋介…?」と、不安そうに呟くー。
不安を感じた麗は、急速に悪霊に支配され始めるー。
帰宅してからは、
一人で胸を触り続けて、狂ったように笑い続けたー。
「もうすぐ…
もうすぐ、俺が完全にこの女にー」
笑う麗ー
麗は、正気のタイミングで
洋介に”わたし、何かしたかな…?”
”何か怒ってるなら、ごめん…”
と洋介にメッセージを送るー
来る日も、来る日も、
洋介が突然距離を置き始めたことに疑問を抱き、
麗は必死に洋介に声を掛けていたー。
しかしー
日に日にその頻度が減っていくー。
「ーーーー洋介ー」
2週間が経過したころー
麗は洋介の前で悲しそうに呟いたー
「ーーわたし…なんか、最近、変かもー…」
とー。
けれどー
洋介は「ごめん」とだけ呟いて、
その日も麗の話を聞かなかったー
悪霊に乗っ取られた麗を前に
洋介は「こわい」と思ってしまったのだー。
洋介は特別、ビビりなわけではないー
それでも、未知なる存在に恐怖を抱いてしまったー
そしてー
その翌日ー
笑みを浮かべた麗が近づいてきたー
「ーー”完全”に支配が終わったよー。」
それだけ言うと、麗は”臆病者”と、洋介を蔑んで
そのまま立ち去って行ってしまったー
洋介は、完全に支配されてしまった彼女の後姿を見て
悔しそうに涙を流すことしかできなかったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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ホラー系(?)な憑依のお話でした~!☆
ホラーと言えば夏(?)ですが、秋でも大丈夫ですよネ…?笑
お読みくださりありがとうございました~~!
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