<憑依>ホテルへようこそ②~狂気~

何も知らずに
ホテル”ドリーム・エデン”にやってきた木森一家ー。

しかし、到着時には既に狂気に染まっていたそのホテルで、
木森一家も狂気に飲み込まれていくー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ククククククー”

ホテル中を見つめる男ー。

そして、ホテル内で起きている
”あらゆる欲望”を楽しみながら、
男は笑うー。

鋭い視線を、ホテルの各フロアに、送りながらー。

”どういうことですか”

3階のゲームコーナーの監視カメラから、
その音声が流れてくるー

「ーーーー」
男は、笑みを浮かべたー

「ーー機器にトラブルが発生したため、現在一時的に
 封鎖させていただいています。」

”崎野”というネームプレートを身に着けた
女性スタッフが頭を下げるー。

「ーーあ、、あの、この中に誰か人はいませんか?」
信也はそう呟くー。
姉の恵梨が、”ゲームコーナーに行く”と言ってから、
連絡も取れず、部屋にも戻ってこない状態が続いているのだー

「ーはい。いません」
女性スタッフ・崎野はそう呟くと、
信也は「そ、そうですか。わかりました。ありがとうございます」と
頭を下げて、そのままホテルのロビーがある1階へと向かっていったー

エレベーターに乗った信也を見てクスッと笑う女性スタッフ・崎野ー。

「ーーいるよ」
崎野は凶悪な笑みを浮かべたー

「お前の姉ちゃんがな」
崎野は綺麗な声でそう呟くと、ペロリと唇を舐めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

”さぁ、身体を賭けた戦いの始まりだ”

ゲームコーナー内に閉じ込められてしまった姉・恵梨は、
格闘ゲームのプレイを強要されていたー。

「格闘ゲームなんて…やったことないんだけど…!」
恵梨は、自分そっくりのキャラクターを使い、
不気味な小太りの男と戦っていたー

「君の身体が欲しいな」
「君の身体が欲しいな」
「君の身体が欲しいな」

”むひゃひゃひゃひゃ”

ゲーム内の対戦相手の男キャラが嬉しそうに笑う。

「ーいやいや、このキャラ、キモすぎなんだけど!」
恵梨はそう言いながら
必死にゲームをプレイしていくー

”お前はー、
 俺に身体を奪われるー”
笑みを浮かべる男ー

男は、恵梨のゲームのプレイ状況を”確認”しながら、微笑むー。

”この女、意外とうまいじゃないかー”

最初は追い詰められていた恵梨ー
だがー
恵梨は何に対しても、すぐに適応するようなタイプでー
初めてプレイするはずのこの格闘ゲームに対しても、
その性格を発揮したー

「ーーわたし、意外とこうのもできるんだから!!」
恵梨は、相手のキャラクターの体力が少なくなっていることを確認して、
最後の必殺技を放とうとしたー。

しかしー

”♪~~~~~~~~~~~~~~~~~~~”

突然、恵梨がプレイしている格闘ゲームとは別のゲーム機が起動し、
大音量の音楽が突然流れたー

ビクッとしてしまう恵梨ー

「なに!?」
そうこうしているうちにー

”K.O”
という声が格闘ゲームのほうから響き渡ったー

「ーー!」
恵梨が、格闘ゲームの方に視線を戻すと、
突然の大音量に驚いている間に、
自分のキャラクターが倒されてしまっていたー

「そ、そんな…!?何なのこれ!?」
恵梨が怒りの形相で叫ぶー。

「ーっていうか、もうここから出してよ!
 なんかもう、うんざりなんだけど」
恵梨が、ゲームコーナーの出口の方のシャッターを叩くー

だがー
その時だったー

”約束通り、身体は貰うよ”
ゲーム機の一つから、機械音声が放たれー
直後、壁からケーブルのようなものが延びてきて、
恵梨の身体は拘束されてしまったー

「ちょ…ちょっと…何これ…!?誰か!!」
恵梨が助けを求めるー。

するとー
ゲームコーナーを封鎖していたシャッターが開いたー。

「ーーーふふふ」
”崎野”と書かれた名札を付けた女性スタッフが入ってくるとー
”あなたもここの支配人の、身体になるの”と、笑みを浮かべたー。

「ーーえ…な、、なに…??」
戸惑うことしかできない恵梨にー
女性スタッフの崎野はクスッと笑いながら、静かにキスをしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーあ、あの…!」
恵梨の妹・信也はホテルのロビーにやってきていたー

支配人の小田切が「どうかしましたか?」と
紳士的な笑みを浮かべながら答えるー

「じ、実は、姉さんと連絡が取れない状態になってしまいまして…」
信也が言うと、
小田切は「それは穏やかじゃないですね」と、優しい口調で答えたー。

ホテルのロビーをさりげなく見回す信也ー。

信也は、少しだけ違和感を覚えるー。

一見するとー
”普通に動いているホテルの関係者と、ホテルの利用者たち”

だがー、
よく見ると、まるでRPGゲームのNPCのように、
”決められたパターン”で動いているように見えるー

「どうかなさいましたか?」
周囲を見回して、戸惑っている信也に気づいたのか、
支配人の小田切が信也に問いかけるー

「あ、いえ…
 あ、そういえば、先ほどの件はどうなりましたか?」
信也が812号室の自殺者の件を聞くー。

支配人の小田切は
「ああいうことは、ホテルをやっていると、時々ありますのでー…
 お客様にはご迷惑をおかけしました」と、
丁寧に頭を下げるー

「ーーー!」
小田切が頭を下げたタイミングと同時にー
カウンターの後ろにいた女性のスタッフも
”まったく同じ動作をした”ことを
信也は見逃さなかったー

”このホテル、何か…何かがおかしい!”
信也は、そう思いながら、「もう少し姉さんを探してみます」と
頭を下げると、そのまま浴室があるフロアへと向かったー。

女湯に入ることはできないが、
とにかくー

エレベーターに乗ろうとする信也ー
だがー
エレベーターの前に男が仁王立ちしていたー

「あ、、あの…エレベーターを…」
信也がエレベーターを使いたいと申し出るー。

しかし、その男は
”このエレベーターは利用できません”という
言葉を機械的に繰り返すだけで、
そこからどこうとしなかったー

「くそっ!どうなってるんだ!」
信也はスマホを手に、部屋にいるはずの父・晴彦に
連絡を送るー

”もしもし?どうした?”
父・晴彦とは変わらず連絡がついたー

「父さん!このホテル…何かがおかしい!」
信也が言うと、
父・晴彦は笑ったー

”はははっ!おかしいって何が?”

当然と言えば当然の反応だー。
むしろ、いきなりこんなことを言い出す信也の方が
おかしいと思われても仕方がないー。

「ー姉さんがいるはずのゲームコーナーには入れないし、
 なんだか、ホテルの中にいる人たちの様子がおかしいんだ!」

だがー
父・晴彦の言葉は、予想外の言葉だったー

”はははは、何を言ってるんだー。
 恵梨なら、お前が部屋を出ていったあとに
 帰ってきたぞ”

とー。

「ーーーえ」
信也が唖然とするー。

”母さんもじきに戻ってくるだろ。
 ほら、お前も戻ってこい”

晴彦の言葉に、信也は「そ、、そっか」と
返事をしー、そのまま階段を駆け上がり、
8階に向かったー。

そんな信也の様子を見つめていた
ホテル支配人の小田切は、不気味な笑みを浮かべたー。

”ーーーー”

監視カメラで、ホテルの全貌を見渡すー

男は笑みを浮かべるー

映し出されているのは、温泉があるフロアー。

そしてー
”カメラがないはず”の温泉内の様子も、
男には見えていたー

「あははははっ♡ あはははははっ
 気持ちいい♡ きもちぃぃぃぃぃぃ♡」
抱き合っている女たちー

母・美希は、その女たちに腕を掴まれて、
お湯の中から飛び出した何かが
近付いてくるのを、見つめることしかできなかったー

まるで、”赤い血”のような霧ー。
それが、美希の方に近付いてくるー。

「ーはい、あ~~~ん!」
抱き合っていた女たちが、美希の口を無理やり開くー。

美希は、目から涙をこぼしながら、
その赤い霧のようなものを飲み込まされてー
不気味な笑みを浮かべたー

「ーーわ~た~しも、、まぜてぇ~~~♡」
美希は嬉しそうに近くの別の女に抱き着いて、
激しいキスを始めるのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8階のフロアに到着した信也は、
自分たちが宿泊している部屋へと駆け込んだー。

しかしー
そこで待っていたのはー

「ーーね、、姉さん…?」
信也が唖然としていると、
バニーガールの姿で、知らない男と抱き合っている
姉・恵梨の姿があったー

「ーーわたしを…滅茶苦茶にして…♡ うふっ…♡ うふふふふふっ」
甘い表情を見せる恵梨ー。
”姉さん”のこんな表情は見たことがないー

弟として信也は強いショックを受けるー

「おいお前!何してるんだ!」
姉の恵梨と抱き合っている男に向かって叫ぶー

男は知らない男だったが、ビジネスマンのように見えるー。

「ーー憑依」

そこにー
ゲームコーナー前で会った女性スタッフの崎野が姿を現すー。

「ーーなんだって?」
振り向いた信也が、怒り心頭の表情で、女性スタッフの崎野を見つめるー。

先ほどとは違い、息が荒く、服も乱れている崎野の姿を見て、
信也は違和感は強い違和感を感じたー

「ーお客様のお姉さんは、今”憑依”されているんですよ」
クスクスと笑う崎野ー

「な、何を言ってるんだー?」
信也の言葉に、女性スタッフの崎野が悪魔のような笑みを浮かべるー

「ーこのホテルに入ってきた”身体”は俺のものー」
優しそうな声で突然”俺”と言いだす女性スタッフー

突然、うつろな目になって、まるで操り人形のように
不気味にかくかくと動くとー
「このホテルに存在する”身体”はみ~んな俺のものなんだ!」
と、ケタケタと笑ったー

「ーい、、いったい…どういう…?」
信也の言葉に、崎野は笑みを浮かべながら、自分の服の上から
両手で胸を揉み始めるー

「うへへへへへっ♡ 美人だろうが、お前の姉さんだろうが、
 ビジネスマンだろうが、全員俺のものなんだよ!うへへへへへっ!」

綺麗な顔立ちに、狂気的な表情を浮かべながら笑う
女性スタッフの崎野ー

「ーー…い、、意味が分からない…!
 姉さん!おい!姉さん!」
姉の恵梨に呼びかける信也ー

だが、恵梨は完全に乗っ取られていて、
女性スタッフの崎野と同時に
「この身体は俺のものだ!」と叫んだー。

そしてー
「ーーどけ」
恵梨が、突然抱き合っていたビジネスマンを突き飛ばすと、
ビジネスマンは虚ろな目のままその場に座り込んだー。

「ーー”お前”も仲間にしてやるー」
バニーガール姿の姉が弟である信也を見つめて笑うー

信也は”信じられない”というような表情を浮かべながら
「まさか…姉さん…やめてくれ!」と叫ぶー。

しかし、それでも姉の恵梨が止まる様子はなかったー。

「ー安心しなよー
 お前も一緒に、このホテルで楽しく過ごすんだー
 姉さんともエッチさせてやるからさぁ…

 あ、いやー
 わたしと、エッチさせてあげるからさぁ
  
 ほら、信也ー」

ゆらゆらと近づいてくる恵梨ー。

「ーーーー」
信也は怒りの形相で、背後にいる女性スタッフ・崎野のほうを見つめるー。

「ーー”お前”は誰だー!」
とー。

信也は、姉・恵梨の姿を見て
恵梨が完全に正気でないことを理解しー
恵梨や、女性スタッフの崎野、ビジネスマンを操っている人間に
向かって叫ぶー

「ーーへへへ…威勢がいいな」
女性スタッフの崎野がゆらゆらしながら笑うー

「誰か知らないけどー…
 姉さんをこんな風に弄んだお前を許さない!!」
信也の言葉に、
崎野と姉・恵梨がニヤァ…と笑うと、
「ならばチャンスをやろうー」と、二人同時に言い放ったー

「ー今から1時間以内に”俺”を見つけ出すことができればー
 お前の家族は、無事、解放してやろうー

 だがー
 見つけられなかった場合ー
 お前は”ホテルの一員”になってもらうー」

その言葉に、信也は「今の言葉、忘れるなよ」と怒りの形相で言い放ったー。

③へ続く

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コメント

憑依が蔓延する狂気のホテル…!
果たして、その真相は…!?
次回が最終回デス~!

今日もありがとうございました~!

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