とある家族が、ホテルにやってきたその時、
既にそのホテルは
”狂気”に飲み込まれていた…!
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「わ~~!すごいホテル~!」
高校2年生の長女・木森 恵梨(きもり えり)が
嬉しそうにはしゃぐー。
「ー姉さん、はしゃぎすぎだろ」
1つ年下ー、高校1年生の弟・信也(しんや)が、呟くー。
一見すると、とてもまじめそうな
”優等生のお姉さん”に見えるタイプの姉・恵梨は、
見た目とは裏腹にとても子供っぽく、
無邪気なタイプの少女ー。
そして、弟の信也は、いかにもお調子者な感じの
見た目でありながら、物静かで理知的なタイプだったー
姉と弟、両方を知る友達の一人は
”生まれてくる身体、間違えて逆になっちゃったんじゃないの?”
などと言っているほど、
恵梨と信也は”見た目と中身が逆”なタイプの姉妹だったー
「だって~~!こ~んなおっきなホテル泊まるの初めてだし!」
恵梨が興奮した様子で言うと、
父親の晴彦(はるひこ)が、笑いながら、
「偶然、会社の割引で安く泊まれるようになったからなー」と、呟いたー
穏やかそうな母親・美希(みき)も笑いながらそんな
家族の様子を見つめるー。
だがーーー
”そのホテル”は、木森一家が到着する直前ー
”既に”支配されていたー。
”ククククククー”
何者かの視線が、木森一家を見つめるー
ホテル入口の監視カメラが、不気味うごめきー
木森一家を凝視するようにして、動いているー。
”ーー美人なお母さんに、可愛いJKー…
それにおまけが二人ー”
そう呟きながら、木森家がホテルの中へ入っていくのを
カメラはじーっと、凝視していたー。
「ー木森様ですね。
お待ちしておりました。」
支配人の男が姿を現すー
ネームプレートには”小田切(おだぎり)”と書かれているー。
「ーーホテル”ドリームエデン”へようこそー」
支配人・小田切はそう呟くと、
スタッフに指示をして、木森家の荷物を運ばせるー
「うわぁぁぁ~~~!すごい~~~!!」
目を輝かせる長女の恵梨ー。
ロビーからして、普段自分たちが旅行で宿泊するような宿とは
大違いで、”品格”に満ち溢れた光景がそこには広がっていたー
「姉さん!はしゃぎすぎだって!」
あきれ笑いをしながら、弟の信也が言うと
姉・恵梨は「だってだって!すごいんだもん!」と、
興奮した様子でほほ笑んだー
「ーー」
父・晴彦と母・美希が、ホテル支配人の小田切から
部屋の案内や、ホテルの説明を受けているー。
「ーーー……ん?」
そんな様子を少し離れた場所から見つめていた弟・信也は、
柱の陰で女二人が抱き合ってキスをしている光景を
偶然目撃してしまったー
「ー(平気でこういうホテルのロビーでああいうことする人…いるんだよな…)」
少しあきれながら、心の中でそう呟くと、
突然、近くを歩いていた若い女性客が「んっ…♡」と変な声を上げたー。
「ーー?」
信也は少しだけ首をかしげながらも、
父・晴彦が「部屋に案内してくれるってよ~!」と、声を掛けてきたためにー
そのまま部屋の方へと向うことにしたー。
ホテルスタッフの一人に案内されながら、部屋の方に向かう二人ー。
不思議と、廊下ではあまり人とすれ違うことはなく、
そのまま部屋へとたどり着いたー
「わぁぁぁ…すごい…!」
部屋の光景を見つめながら、嬉しそうに微笑む恵梨ー。
部屋も、高級ホテルにふさわしい、
広々とした快適で、そして、非日常を楽しめるような
豪華さを併せ持つ部屋だったー。
部屋の説明をするホテルのスタッフー。
スタッフが説明を終えると、退出していくー
「ーわたし、さっそくゲームコーナー見てくる!3階にあるみたいだから!」
部屋に荷物を置くと、財布を握りしめて、姉の恵梨は
早速ゲームコーナーに向かうー
「ははは、姉さんはまるで子供だなぁ~」
弟・信也はそう呟くと、母親の美希は苦笑いするー。
「ーーわたしはちょっと汗かいちゃったから、
先に温泉に入ってこようかな~」
美希の言葉に、父・晴彦は「わかった」と頷くー
結局ー
父・晴彦と弟・信也は部屋に待機ー
そしてー
姉・恵梨はゲームコーナー、
母・美希は温泉にそれぞれ向かうのだったー。
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”クククククーー”
ホテル内の監視カメラが不気味にうごめくー
そのカメラは
”ゲームセンターに向かう恵梨”と、
”温泉に向かう美希”を
それぞれ見つめていたー
”新しいオカズ”が手に入ったぜー。
監視カメラが、二人を凝視するー。
静かにー
けれども、欲望を隠そうともせずにー。
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部屋でのんびりとくつろいでいる父・晴彦ー
そんな晴彦を見て
「俺、ちょっと飲み物買ってくる」と、
息子の信也は呟くー
「あぁ、わかった」
笑いながら答える晴彦ー
信也は部屋の外に出ると
「それにしても姉さん、はしゃぎすぎだよなぁ…」と
苦笑いしながら、自分たちが宿泊している部屋のある
8階を歩くー
「あったあったー」
自動販売機コーナーを見つけると、
信也は飲み物を選び、それを購入するー。
「ーさすが高級ホテルー
自販機もいっぱいあるんだな」
そんな風に呟きながら、信也は自分の部屋に
引き返そうとしてー
ふと、部屋の扉が半開きになっている客室を見つけたー。
”812”
そして、その部屋から、微かに違和感を感じ取ったー。
「ーー……」
信也は、言葉には言い表せない”勘”が冴えていてー
何か危機を感じたりする感覚に長けていたー
第六感とでも言えばよいのだろうかー
「ーーーー」
どうしても半開きの部屋が気になった信也は、
その部屋の入口に近付き
「ーーー…あの、すみません」と
声を掛けてみたー
自分でも、どうしてそんな行動に出たのかは
いまいちよく分からなかったがー
何か”事件”のような感じを嗅ぎつけたのだー。
返事はないー
誰もいないのに、扉が半開き?
そんな風に思いながら、少しためらいつつも、
部屋の中に足を踏み入れるとー
その部屋の中ではー
中年の小太りの男が、首を吊って”自殺”していたー
「ひっーー!?!?!?!?」
冷静な信也も、さすがにびっくりして、
購入したばかりのジュースをこぼしてしまうー
「た、、た、大変だ!」
慌ててその部屋にある、ホテルの内線を利用して、
フロントに連絡を入れるー。
”わかりました。ただちにそちらに向かいます”
支配人の小田切がそう言うと、
すぐにホテルのスタッフが駆け付けー
信也には外に出るように言い、
そのまま”812”の部屋は閉ざされてしまったー。
”まさか、自分たちが宿泊するタイミングで自殺者が出るなんて”
と、後味の悪い気持ちになりながらもー
父さんや、母さん、姉さんにまで伝えて
わざわざ旅行ムードを台無しにする必要はない、と
自分に言い聞かせて”812号室”での出来事は
家族のだれにも言わない決意をして、
そのまま部屋へと戻っていったー。
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ゲームコーナーにやってきた姉の恵梨は
嬉しそうにゲーム機を見つめるー
大きなホテルだが、
ゲームコーナーを利用している人はー
誰もいなかったー
「ーーあれ?誰もいない~?遊んでいいんだよね?」
高級ホテルのゲームコーナーだけあって、
それなりの種類のゲーム機が設置されているスペース。
しかし”誰も利用していない”という状況は
ある意味不気味さを引き立てていて、
さすがの恵梨も、少し困惑気味だったー。
その時だったー。
ゲームコーナーに設置されたゲーム機の画面が
突然切り替わるー
”ようこそホテル・ドリームエデンへ”
とー。
「ーーえ?」
戸惑う恵梨ー。
ゲームコーナーに設置された膨大な数のゲーム機の画面が
全て切り替わりー
ゲーム機が”これから、ゲームをしようよ”と
機械音声が喋っているー
”その可愛い身体を賭けた、最高のゲームだ”
ゲーム機の機械音声がそう喋るとー
突然、ゲームコーナーの入口のシャッターが閉じてー
恵梨は閉じ込められてしまうー
「ーーえ…ちょ!?何これ!?」
戸惑う恵梨ー。
ゲーム機の一つ、格闘ゲームの画面が切り替わりー
”さぁ、身体を賭けた戦いの始まりだ”と、
機械音声が恵梨を挑発したー。
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母親の美希は、ホテルの温泉があるフロアに
やってきていたー。
「ーーあ、マッサージもある」
”あとで試してみようかな”などと思いながら
温泉の脱衣所まで入ったその時ー
美希は異変に気付いたー。
「ーーー…?」
脱衣所の先ー…温泉から、変な音が聞こえてくるのだー。
いや、声ー…?
「ーー……なに?」
美希は少し不審そうな表情を浮かべるー
そしてー
中を覗くと、そこにはー
7、8人の女性客がお互いに抱き合ったり、
キスをしたり、身体を舐めあったりしていたー
「ーー!!」
美希は、あまりの光景に温泉の扉を開けたまま
身動きすら取れなくなってしまったー。
自分と同じぐらいの年齢の女性からー
若そうな女性ー
娘ぐらいの年齢の女性ー
あらゆる年齢層の女性がー
”乱交”とも言えるような、
そんな光景を繰り広げていたー。
全部で8人の女性がー
ニヤァ…と全員同じ笑顔を浮かべるー。
そしてー
「ホテルへようこうそぉ…♡」と笑みを浮かべたー。
「ーひっ」
驚く美希ー
その直後ー
温泉が不気味な色に光りー
お湯の中から、何かが飛び出したー。
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部屋に戻った信也は、父・晴彦と二人で
部屋で過ごしていたー
「ーーどうした?なんかさっきから顔色、悪くないか?」
父・晴彦が心配そうに尋ねてくるー
息子の信也は「あ、いや…なんでもないよ」と
とりあえず何も言わなかったがー
812号室で自殺していた客のことが
何度も何度も頭をよぎってしまうー。
「ーーー…っていうか、母さんも恵梨も遅くないか?」
信也が言うと、
父・晴彦は「確かに、二人とも遅いな」と、時計を見つめるー。
「でもまぁ、母さんは元々お風呂長いし、
恵梨は、こういうホテル初めてだから、色々なところ
見て回ってるんじゃないか?」と笑みを浮かべたー
父・晴彦はいざと言うとき、頼りになる存在ではあるのだが、
その一方で、”楽観的”な部分も多く、
今もまさに、そんな状況だったー。
「ーー俺もゲームコーナー見てこようかな」
信也がそう言いながら立ち上がるー
「ーーはは、ま、お前も色々楽しんでくるといいさ」
父・晴彦の言葉に、
信也は「そうする」と、言いながら部屋を飛び出すー。
姉である恵梨がなかなか帰ってこないことー
そして、LINEを送っても返事がないことに、
妙な不安を感じた信也は、ゲームコーナーがあるフロアへと向かうー。
”母さんが帰ってこないのも心配だけど、
確かにいつもお風呂は眺めだし、さすがに女湯は覗けないしな”
母・美希にもLINEを送ったが、その返事がないのは分かるー。
入浴中まで、スマホと一緒ではないはずだからだー。
だが、姉・恵梨の方から返事がないのは、ちょっと不安だー。
”…自殺した人を見たから、俺が心配症になってるだけだろうけど”
そんな風に思いながら、
ゲームコーナーの前の前に到着した信也は、表情を歪めたー。
ゲームコーナーがシャッターで封鎖されて、中に入れないようになっていたのだー
「ーー……そこは今、封鎖中ですよ」
背後から声がして振り返ると、
そこには、”崎野(さきの)”というネームプレートを身に着けた
女性スタッフが立っていたー。
「ーーー…封鎖中?」
信也が聞き返すと、女性スタッフの崎野は
「えぇ、メンテナンス中ですから」と、不気味な笑みを浮かべたー。
②へ続く
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何かがおかしい不気味なホテル…!
続きは、また次回デス~!
(遠い昔に書いた「ホテルノシハイニン」とは無関係デス!!)
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