<憑依>浮気彼氏③~欲の果て~(完)

浮気相手に復讐するために
憑依薬を手にしたところから始まった
思わぬ事態ー。

そして、事態はさらに思わぬ方向へと進んでいくー

・・・・・・・・・・・・・・・・

雨が降り注ぐ路上ー
人通りの少ないその道で、
二人の女子大生がキスをしていたー

そのうちの一人、愛梨沙が持っていた傘が
音を立てて道路の上に横たわるー。

そしてー
ニヤニヤしながら愛梨沙にキスをしていた女ー
後輩の里菜はそのままその場に倒れ込むー

ニヤついたまま抜け殻のように意識を失っている里菜は、
降り注ぐ雨に濡れても、意識を取り戻さないー

「ーーく…くくくく…」
キスをされた愛梨沙が、静かに笑いだすー。

「ーへへへへ…やっぱお前はいい身体してるよな、愛梨沙ー」
愛梨沙は自分のことをまるで他人のように
そう言い放つと、両手で両胸を揉み始めたー。

雨に濡れたまま両胸を揉む愛梨沙ー。

「ーお前と言う名のラーメン…スープまで
 しゃぶりつくしてやるからなぁ…くくくく…」
愛梨沙はそう言うと、
倒れている里菜を見つめたー

「ーへへへ 妊娠した身体にもう用はねぇよ」
それだけ言うと愛梨沙は倒れている里菜に
唾を吐き捨てたー

「じゃあな、賞味期限切れのラーメン」
そう呟くと、愛梨沙はそのまま傘を拾って、
「邪魔くせぇんだよ」と、倒れている里菜を足でどかすと
そのまま立ち去って行ったー。

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その日からー
愛梨沙は豹変したー。

胸元を強調するような服装やー
ミニスカートー
男を誘惑するような服装を好むようになり、
次々と大学内の男を誘惑したー。

彼氏の南条 忠義(なんじょう ただよし)も、
愛梨沙の親友であり璃子も、愛梨沙の突然の豹変に
困惑したー。

「ーーわたし、性欲ヤバいの!」
愛梨沙に”どうしたんだよいったい?”と問い詰めた忠義に対する
愛梨沙の返事はそれだったー。

「知ってる?わたし、性欲まみれな女だからー
 あんただけじゃ満足できないの!
 ふふふ…
 昨日も何度も何度もイっちゃったー。

 愛梨沙の身体、里菜ちゃんよりゾクゾクするしー」

愛梨沙のそんな言葉に、
隣で話を聞いていた璃子が「え?」と首をかしげるー。

聞き間違いかもしれないー
だが、今の言葉は、明らかに”不自然”だったー

「ーあ、いや、なんでもないーふふっ」
愛梨沙はそれだけ言うと、
「今日もヤリまくってやる!ふふふふふふ」と言いながら立ち去っていくー。

すぐに、愛梨沙が大学内でヤリまくっていることが
噂となって広がるー
忠義は、速攻で振られてしまい、困惑していたー

「ーこれじゃ、まるであの子と同じー」
璃子がふと呟くー

「あの子?」
里菜のことをそれほど深くは知らない忠義が首をかしげるー。

「ーあ、うん。南条くんと付き合う前、愛梨沙に元カレがいたのは
 知ってるでしょ?」

璃子が言うと、忠義は頷くー。

その浮気相手が、里菜であり、
その里菜は、ある日を境に突然豹変して、
男とヤリまくった挙句、妊娠して大学には、先日退学届けが提出されたと聞いているー。

「ーーーあぁ…その子かー
 噂は聞いたことあるよ」
忠義は苦笑いするー。

「ーー今の愛梨沙は、その”里菜”って子と同じに見えるのー」
璃子が言うと、忠義は”急に様子がおかしくなった”
愛梨沙のことを心配そうに思い浮かべるー。

「ーー……そっか、話してくれてありがとう」
忠義はそれだけ言うと、「俺、授業があるからー」と、
璃子の前から立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー………」
一方、1年近くも憑依されていて、
妊娠しているだけではなく、
身体の色々な部分がボロボロの状態で目を覚ました里菜は、
入院していたー。

1年近くも記憶がなく、
自分が何をしていたのかも分からないー。

そんな里菜は日々、泣きじゃくるだけで
錯乱状態となっていたー。

里菜は、自分の記憶を必死に思い出そうとするー。

最後の記憶は、
今からちょうど1年前ぐらいの記憶ー
人生で始めての彼氏・俊丞ができて
幸せの絶頂だった自分の記憶ー。

俊丞のアパートで、コスプレをして
俊丞とイチャイチャしていてー

それでー

俊丞の”元カノ”であった愛梨沙が
俊丞のアパートに乗り込んできてー
あの女が、憑依薬をー。

里菜は、そこまで考えると、また泣き出してしまうー。
自分が先輩から彼氏を奪ったー
と、いう自覚は当然あるー。

しかし、それでも、泣かずにはいられなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおっ…いいじゃんいいじゃん」
愛梨沙は、大学の帰りに
行きつけのラーメン屋に立ち寄り、
大盛のラーメンを口に運んでいたー

「ー愛梨沙が太ろうと、俺には関係ないしなー。
 また”賞味期限”が切れたら捨てるだけだ」

そんなことを呟きながら、
醤油ラーメンを口に運ぶ愛梨沙は、
”愛梨沙の身体だと、塩より醤油の方がうまく感じるな”と、
”愛梨沙の味覚”で美味しく感じるラーメンの味を
突き止めて、ご満悦な表情を浮かべていたー。

「ーーふ~~~~」
スープまで飲み干した愛梨沙を見た店主が
「うれしいねぇ」と、声を掛けるー。

愛梨沙のような可愛らしい女子大生が客として
やってくることはめったにないし、
ましてや、スープまで美味しそうに飲んでくれるとは驚いたー

下心ではなく、純粋に全部食べてくれたことを
ラーメン屋の店主の男は、感謝していたー

「ーふふふ、どうも」
愛梨沙はそう呟くと、そのままラーメン店の外に出たー。

「ーー!」
ラーメン店の外に出ると、
そこには、既に”愛梨沙の元カレ”となった忠義の姿があったー。

「ちょっと、いいかな?」
忠義の言葉に、愛梨沙は「ーー少しだけなら」と
面倒臭そうにうなずいたー。

そして、ラーメン屋から少し離れた場所まで
忠義がやってくると、忠義は戸惑った様子で口を開くー。

「ーー俺、色々考えたんだー。
 愛梨沙がどうして急に変わってしまったのかーって」
忠義の言葉に、愛梨沙は笑うー。

「ー女心っていうのは、変わるものなの♡」
と、バカにした仕草をしながら、そのまま立ち去ろうとする愛梨沙ー

「ーそんな恰好だって!愛梨沙はしなかっただろ!」
忠義が、まるで見せびらかすようなほど短いミニスカートを指さすー。

「ーーふふふ…男を誘う力がこの身体にはあるのー
 可愛いわたしが、自分の可愛いを武器にしないでどうするの?」
愛梨沙の言葉に、忠義は
「本当にどうしちゃったんだ…?」と呟くー。

忠義はさらに続けるー。

「ー愛梨沙のアパートの人にも話を聞いたよー。
 最近、よく男を連れ込んだり、深夜に…その…
 喘いだりしてるんだって?」

忠義の言葉に、
愛梨沙は「ーわたしみたいな女子大生の喘ぎ声を聞けるとか、
ご褒美じゃん」と笑うー。

「ーふざけるな!本当にどうしたんだよ!?
 何かあったなら教えてくれ!」
忠義は思わず叫ぶー。

「ーーどうしたって?
 ”半熟の卵”を頼んだのにー
 外見は半熟の卵だったのに、中身はしっかりゆでられた卵だったー
 みたいな?」

愛梨沙の言葉の意味が分からないー

「ー見た目はわたしだけど、中身は別人だったりしてね?」
愛梨沙はクスクスと笑いながらそれだけ言うと、
忠義のほうを見ながら「あ、そうだ!今からラブホ行く?
わたしとセックスしたいでしょ?」と、恥ずかしがる様子も
全く見せずに言葉を口にしたー。

「ーーふざけるな!!!」
忠義は、愛梨沙に対して嫌悪感すら抱いたー

「なんなんだよ!本当に!」
忠義はうんざりした様子で立ち去っていくー。

愛梨沙はそんな様子を見つめながら
「ー愛梨沙はお前のモノじゃなくて、俺の所有物なんだよ」と、
小声で呟いたー

今の愛梨沙は、完全に俊丞の所有物と化していたー。

アパートに帰宅する愛梨沙ー。

愛梨沙は今日も、男とこの後、エッチをする約束をしているー。

「ま~また、妊娠しちまったら、
 次のラーメンを探せばいいだけだしー」

そこまで呟いた愛梨沙は、ふと気配を感じて振り返ったー。
アパートの2階の廊下を歩いていた愛梨沙は、
ふと、気配を感じたのだー。

「ーー!」
愛梨沙が振り返った先にはー
少し前まで俊丞に憑依されていた里菜の姿があったー。

妊娠していることがわかるお腹の里菜が、
愛梨沙のほうを見て、叫ぶー。

「ーー先輩のせいで…わたしは…わたしは、人生が滅茶苦茶!」
里菜が叫ぶー

愛梨沙は一瞬表情を歪めたー。

里菜は乗っ取られる直前の記憶から
”自分は、愛梨沙に1年間憑依されていて、滅茶苦茶にされた”と
判断していたー。

「ーー俊丞に何をしたの!?
 俊丞をどこにやったの!?」

里菜に憑依し、愛梨沙に乗り換えた俊丞の身体はとっくに死んでいるー。

里菜は、”愛梨沙がわたしと俊丞に憑依して、滅茶苦茶にした”と
そう思い込んでいるー

「ーーおい、おい!待てって!」
愛梨沙は、戸惑った様子で言うと、里菜は「うるさい!あんたのせいで!」
と、叫ぶー。

「ーー待て!待てよ!俺は俊ーー」
”自分は俊丞だ”と愛梨沙の身体で叫ぼうとしたが、
怒り狂った里菜が、愛梨沙に突進してきたー。

「ーーぐっ…」
鋭い痛みを感じる愛梨沙ー。

笑いながら愛梨沙のほうを見つめる里菜ー。

「ーーあ…く、、くそっ…」
愛梨沙は、自分の身体にナイフが刺さっているのに気づき、
そのまま表情を歪めたー。

「ーーテメェ…!!!浮気女のくせに…!
 賞味期限切れのラーメンのくせに!」
愛梨沙が、本性を現して里菜に向かって叫ぶー。

だが、里菜は既に精神錯乱状態なのか、愛梨沙を何度も何度も刺して、
狂ったように笑い続けているー。

”こいつの身体から抜けないとー”
愛梨沙はもうだめだー。
だがー
”俺”は大丈夫だー。

行きつけのラーメン屋が潰れてもー
新しいラーメン屋にいけばー

「ーうああああああああああ!!!」
里菜の怒りの叫び声が聞こえるー

「ー!?」
愛梨沙の身体から抜け出そうとしていた俊丞ー。
しかし、それよりも早く、怒りの形相で身体を突き飛ばしてきた
里菜共々、アパートの2階部分から下に転落してー
愛梨沙は頭から下に転落してしまったー。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーう……」
愛梨沙が目を覚ますー

記憶は、しっかりしているー。

”そうだ、、俺はーー”

浮気女の里菜に襲われたー。
そう思いながら、身体を起こそうとするー。

だがー
身体が思うように動かないー
手も、足も、激しくしびれているー。

いやー
足がー
片足がなくなってー?

”何が起きたー?”
愛梨沙は表情を歪めるー

いや、とにかくまずは、こんな状態になってしまった
身体から抜け出さないとー

「ーー!!!!」
愛梨沙は表情をさらに歪めるー

”…!?抜けることができない!?”
信じられない、と言わんばかりに、愛梨沙が表情を引きつらせるー。

何故だかー
愛梨沙の身体から抜け出すことができなかったー。

愛梨沙の身体が想像以上のダメージを受けたことが何か影響しているのかー
それとも、長い間昏睡状態だったことが影響しているのかー
とにかく、憑依から抜け出すことが、できなくなってしまったー。

顔に醜い傷が残り、ボロボロの愛梨沙の姿が鏡に映るー。

「ーーう、、、嘘だ!」
愛梨沙は叫ぶー。

「嘘だ…!俺が…俺がこんな…!」
愛梨沙は目から涙をこぼしながら叫ぶー

「俺がこんな、腐ったラーメンみたいな身体でいきることになるなんて…!
 嘘だ…嘘だ…!」

しかもー
愛梨沙の発音がおかしいことに気づくー

愛梨沙は転落した際に、脳を損傷して、
重大な後遺症が残ってしまっているのだー。

「嘘だー
 うああああああ……
 うああああああああああああああああっ!!!!」

数多くの人間を弄んだ俊丞はー
これから味わう生き地獄を想像して、
この世のものとは思えないような悲鳴をあげたー。

おわり

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コメント

「浮気彼氏」の最終回でした!
結局、メインの3人には、暗い結末が
待ち受けていました…!

お読みくださり、ありがとうございました~!

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憑依<浮気彼氏>

コメント

  1. 匿名 より:

    これは因果応報、自業自得としかいいようがない結末ですね。
    ラーメン、ラーメン鬱陶しい最低男に天罰が下ったのでとても痛快です!
    乗っ取られた愛梨沙は気の毒ですが、悲惨な状態になった体を解放されても逆に酷いので、何も知らずに憑依されたままの方が幸せかもしれませんね。
     
    里菜は色々勘違いしてますが、仮に真実を知っても同じ事になったに違いはなさそうです。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      憎まれキャラがちゃんと葬られてスッキリ…!ですネ~☆
      スカッとする結末を目指してみました~!!

      確かに愛梨沙にとっては…そうかもしれないですネ…!笑