<憑依>お母さんがわたしの身体を狙ってる!②~真夜中~

若さに飢える母親の日記を目撃してしまった娘の佳緒里ー。

そこには”憑依薬”という不穏な言葉も書かれていたー。

”お母さんがわたしの身体を狙っているかもしれない”
そんな不安を抱いてしまった彼女の運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…」
夜になりー、
佳緒里は入浴を済ませて、部屋に戻ろうとしていると、
兄の秀太が声を掛けてきたー。

「大丈夫か?今日は何か元気がなかったからー」
秀太が言うと、
佳緒里は「あ、うん…大丈夫だよ」と、
無理に笑顔を作って答えたー。

兄の秀太も、父の恵三も、
母・蛍のあのような日記の存在は、おそらく知らないのだろうー、

特に、秀太は昔から妹である佳緒里のことを
とても気遣ってくれていて、可愛がってくれているー。
そんな佳緒里のことを、母親の蛍が狙っていると知れば
真っ先に教えてくれるだろうし、一緒に対策を考えてくれるはずだー。

「ーーー…」
佳緒里は一瞬、秀太に相談しようと思ったが、
母・蛍の真意も分からないし、”お兄ちゃんを巻き込みたくない”という
想いから、特に相談するようなことはせずに、
そのまま口を閉ざしたー。

「ーー…まぁ、何かあったら、いつでも相談してくれれば 
 俺も全力で力を貸すからさー」
秀太はそう言うと、佳緒里の肩を優しくポンポンと叩くと、
そのまま立ち去って行ったー。

「ーーー…(ありがとう、お兄ちゃん)」
そんな風に思いながら自分の部屋に戻る佳緒里ー。

どうしてもー
母親の日記に書かれていた文章の数々が忘れられないー。

若い佳緒里への嫉妬ー
佳緒里の身体を奪いたいという願望

そしてー
”今日”のページに書かれていた
”憑依薬”を手に入れたという言葉ー。

リビングを通過して、自分の部屋に向かう最中にも、
リビングで会話していた
母・蛍と父・恵三の姿を横目で見つめるー。

母・蛍に特に変わった様子はなくー
父・恵三もいつも通りー。

”やっぱり、ただの日記の中での発言なのかな…”

佳緒里はそんな風に思いながら
自分の部屋へと戻るー。

佳緒里たちの年頃で言えば、
ネットの中でだけ凶暴化するような人はいるし、
大きな発言をする人はいる。
ネットでストレスを発散しているー…
と、でも言うのだろうかー。

母の佳緒里は、世代的にそれが”日記”なだけで、
ツイッターやSNSで発散するような人たちと
同じなのかもしれないー。

つまりは、憑依薬なんて存在しないし、
日記には、ああ書きながらも、
佳緒里のことを、実際には別に憎んでいないー、
ということだー。

「(そう…きっと、そう)」
佳緒里は、自分にそう言い聞かせるようにして、
寝る準備をすると、そのまま布団の中で眠りについたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー佳緒里、身体をちょうだい」
母の蛍が、突然、冷たい言葉を告げたー

「え…お、お母さん…な、なに言ってるの…?」
佳緒里は震えながら母・蛍の方を見つめるー。

だが、その表情は冗談を言っているような表情ではなく、
蛍は”本気”だったー。

「ーーわたし、おばさんになんてなりたくないのー
 いつまでも女の子でいたいの…」
蛍が笑いながら、佳緒里に近付いてくるー

「ーや、、やめて…お母さん…!
 お、お母さんの気持ちは分かるけど…
 で、、でも…わたしもいつかはおばさんになったり、
 おばあさんになったりするんだし…

 や、、やめて!」

佳緒里が必死に叫ぶー

「お母さんが、辛い思いをしてるなら、わたしも
 できることは何でもするから!
 相談に乗ったりするから!」

追い詰められていく佳緒里ー。

「ーーーできることは何でもするー」
クスッと笑う蛍ー

「じゃあ、その身体をお母さんのために、ちょうだい?」
蛍の言葉に、佳緒里は「いや…っ、いやっ!」と、
表情を歪めながら逃げようとするー。

”憑依薬”の入った容器を口にして、
それを飲み干すと、蛍はクスッと笑ったー。

そしてー
佳緒里にキスをしてーー

蛍の身体はその場に倒れ込みー
佳緒里は笑みを浮かべたー

「ーあぁぁ…♡若い身体ー」
綺麗な手を見つめて、佳緒里が笑みを浮かべるー。

太もものあたりを触って、佳緒里がクスクスと笑うー

「ーーあぁぁぁ…若いって、、若いって最高…♡」
佳緒里が笑いだすー。

「ー今日からわたしはまた、女子高生…
 ふふふ…ふふふふふふふふふふっー」

邪悪な笑みを浮かべる佳緒里ー

”やめてーー…
 お母さん!やめてーーー!”

ーーー!!!!!

「ーー…!!!」
見覚えのある天井ー。
自分の、部屋だー。

「ーーー(ゆ、、夢…)」
佳緒里は荒い息をしながら、
今、自分が見た光景は”自分が乗っ取られる夢”であると悟るー。

荒い息を何度も何度も吐き出しながら
佳緒里はようやく心を落ち着けると、
まだ、深夜の2時30分であることを確認してー
再びそのままベッドに潜ったー

目を閉じて、なんとか気持ちを落ち着けて、寝ようとする佳緒里ー。

しかし、その時だったー。

部屋の扉が、ゆっくりと開いたのだー。

佳緒里は、部屋を誰かと一緒には使っていないー。
母親の蛍も、父親の恵三も違う部屋だし、
兄の秀太も、当然違う部屋だー。
こんな深夜に、部屋に入ってくるなんてー…

「ーーーーーー」
佳緒里は、とっさに寝たふりをしながら
自分の部屋に入ってきたのは”誰か”を
ほんの少しだけ目を開いてー
確認したー。

「ーーーー!!」
部屋に忍び込んできたのは、母親の蛍だったー。

蛍が佳緒里の部屋の入口を閉じると、
佳緒里が寝ていることを目視で確認するようなそぶりを見せてからー
”何か”を取り出すと、それを飲むような仕草を見せたー

ほんの少しだけ目を開くことしかできない佳緒里は、
母の蛍が何をしているのか、はっきりとは確認できなかったが、
身の危険を感じたーー

蛍はそのまま佳緒里に近付いてくると、
佳緒里に顔を近づけてー
そのままキスをしようとしたー。

「ーー!?!?!?」

佳緒里は、とっさに目を開いたー

「ーー!!!」
母の蛍が驚いたような表情を浮かべて、すぐに少し後ろに下がるー。

「ーーあ…お、、お、、お母さんー」
佳緒里は、あたかも”今”目を覚ましたかのように振る舞うと、
母の蛍も、一瞬戸惑いの表情を見せながらもー
「あ、ごめん…起こしちゃった?」と、
いつものような笑みを浮かべたー

「ーーお、、お、、お母さん…急にどうしたの?」
時計をわざとらしく確認しながら、佳緒里は「こんな夜中に」とつけ加えるー。

母・蛍は「ううん…ちょっと、この前、佳緒里に貸した
ボールペン、貸したままだったかな~って思って」と
笑いながら、佳緒里の部屋にあるボールペンを手にしたー。

確かに、ボールペンを数週間前に借りて、そのままだった記憶はあるー。

「ー部屋で家計簿つけてたんだけど、ボールペンがちょうど
 なくなっちゃって」

蛍は悪戯っぽく笑うと、そのまま「ごめんね、起こしちゃって」と
呟きながら、部屋の外に向かおうとしたー。

「ーーー本当に、それだけー?」
佳緒里は思わず、そう言葉を口にしてしまったー

「ーーー」
蛍が立ち止まるー。

その雰囲気に、ちょっと怖くなってしまった佳緒里は、
咄嗟に「あ、ううん、その、こんな時間まで、家計簿つけてるなんて…って
思っただけ」と、少し質問のパワーを自ら弱めてしまうー。

「ーーそう、それだけ」
蛍は振り返ってボールペンを見せびらかすようにすると、
「この時間のほうが、静かで集中しやすいから」
と、微笑むー。

「そっか」
佳緒里が言うと、蛍は「おやすみなさい」と呟くー。

「うん、おやすみー」
佳緒里は穏やかな笑みを浮かべながらそう返事をしたもののー
その日は、眠ることもできなくなってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーーお、、おはよう…」
佳緒里が不安そうにリビングで母親に声を掛けると、
母・蛍は「おはよう」と、優しそうに微笑んだー。

「昨日は、起こしちゃってごめんね」
母の言葉に、
佳緒里は「ううん…大丈夫」と、微笑むー。

微笑みながらもー
心の中では”恐怖”しかなかったー。

昨日ー
深夜に母・蛍が部屋に忍び込んで来たときー
蛍は”ボールペンを取りに来た”と、そう説明していたがー
どう見ても、蛍はボールペンを取りに来たのではなかったー

”わたしに、キスをしようとしてた…?”

あの仕草は、
どう考えてもーー…

「ーーー…佳緒里…」

心ここに非ず、という感じで考え込んでいた佳緒里は、
無意識のうちに食事を終えて、学校に向かう準備をしていたー。

そんな佳緒里を心配して、兄の秀太が声を掛けてくるー。

「ーーー大丈夫…ごめんね」
佳緒里は、心配する兄の秀太に、心配させまいとそう呟くと、
そのまま学校へと向かったー。

母・蛍が自分に憑依しようとしているー
その”確証”がない。

日記もー
昨日の深夜の出来事もー
”確証”とは言えないし、
勝手な決めつけで、家族の関係を壊してしまうようなことはー
絶対に、避けたいー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校でも、家のことを考えていると
親友の紗羅が「大丈夫?」と声を掛けてきたー。

紗羅は、佳緒里が、幼馴染の龍斗とのことで悩んでいると、
そう思い込んで「あんまり気にしないほうがいいよ」と
微笑むー。

佳緒里は、小さいころから家族ぐるみで付き合いのあった
幼馴染・龍斗に少し前に告白されて、それを振っているー。

理由は、龍斗が嫌いだからー、ではなく
幼馴染としていた時間が長すぎて、そういう相手としては
見ることができないからー…。

だが、その件から、龍斗とは、どこかぎこちない状態が続いているー。

「ーーあ、ううん。龍斗とのことじゃなくてー」
佳緒里が言うと、紗羅は不思議そうに表情を歪めるー。

「ーーちょっと、家庭で…ね」
佳緒里の言葉に、紗羅は「え~?佳緒里、家族とすごい仲良しなのに~!」と
少しだけ戸惑った様子で言うー。

「ーー困ったことがあるなら、あのお兄さんに相談してみれば?」
紗羅が言うー。

以前、紗羅・佳緒里・佳緒里の兄、秀太の3人で
休日、遊びに行ったことがあるー。
そのため、親友の紗羅と兄・秀太にも面識があるのだー。

「ーー優しそうだし、わたしもあんなお兄さんが欲しかったな~!」
紗羅のそんな何気ない言葉に、
佳緒里は「そっか…うん…そうする」と、静かにうなずいたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した佳緒里は、兄・秀太が帰宅するのを待ち、
兄の秀太に”相談”したー。

隠していても仕方がないー。

日記のことー
昨日の深夜のことー

実在しているのかは分からない”憑依薬”のことー。

「ーーそんなことが…」
兄・秀太は戸惑いながらも、
「母さんが持ってるかもしれない、その憑依薬っていうのを使うと、
 佳緒里の身体を乗っ取ることができる…ってことかー?」

と、親身になって相談に乗ってくれたー。

「ーーそんなものが、現実にあるとは思えないけどなー」

そういう反応をするのも、当然と言えば当然と言えたー。

だが、秀太は、少し考えてから
「わかった」と頷くと、
「ーーそれとなく、母さんの様子から目を離さないようにするよー。
 あと、母さんが佳緒里に何か手を出そうとしたら、
 俺が必ず助けてやる」と、笑みを浮かべたー。

「ありがとうー…お兄ちゃんー」
秀太は昔から、佳緒里のことをよく助けてくれているー。

頼りになってー
尊敬もできるー
立派なお兄ちゃんだー

安堵する佳緒里ー

だがーー
ちょうど同じ時間ー
母・蛍は、引き出しに隠している”憑依薬”を手にー
「ーーわたしは、綺麗でいたいのー」と、不気味な笑みを浮かべていたー

③へ続く

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佳緒里は憑依されてしまうのでしょうか~?
それとも…?

真相と結末は、次回のお楽しみデス~!

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