<憑依>妖しいお姉ちゃん①~謎の女~

ある日の放課後ー
下校中の少年を突然誘拐したのは、
綺麗なお姉ちゃんだったー。

彼女の目的とは…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー」

彼は、女子がとても苦手だったー。
理由は、簡単だったー。

”女子からいじめ”に会ったことがあるからだー。

まだランドセルを背負っていた時代ー、
クラスの女子に目をつけられて、いじめを
受けてしまったことがあるー。

その時の記憶が、どうしても頭の中に
蘇ってしまい、女子と話すことすら、
まともにできない状況だったー。

全員が全員、そうではないー。
心のどこかで、そう理解はしつつも、
”女なんてクソだ”という考えをどこかで抱いてしまうー

彼、平山 宗司(ひらやま そうじ)は、
そんな人間だったー。

「ーーー」
最近では、思春期に突入して、
彼女ができ始めるクラスメイトも出てきたー。

その都度、彼は”リア充爆発しろ”などと
思ってしまうー。
今では、男子の友達はそこそこの数いるが、
女子の友達は相変わらず0のままー。
口を利くことすらしないー。

過去の経験から、
女性に対する苦手意識と嫌悪感は
日に日に膨らんでいき、
同性の友達に彼女ができて
その友達が”自分よりも彼女を優先するようになる”と
その彼女に対して激しい憎悪を抱いてしまうほどに
彼の”苦手意識”は増幅していたー。

視界に入れるだけでも、恐怖を感じてしまうー。
そんな”トラウマ”を彼は抱えていたー。

「ーーーー!」
過去のことを考えながら下校していた宗司ー。

ふと、気配を感じて振り返ると、
そこには、見知らぬ”お姉さん”がいたー。

自分よりも少し年上ー。
女子高生か、女子大生だろうかー。

そんなことを一瞬考えながら、
”自分の真後ろにいたこの女”に、警戒心を露わにするー

「ーー平山 宗司くん?」
女がクスッと笑ったー。

「ーーーえ!?」
宗司は”なんで俺の名前を!?”と叫ぼうとしたが、
すぐに、何かを打ち込まれて、そのままその場で
眠らされてしまったー。

ちょうど、宗司が歩いていた場所が
通学路に使っている道の中で、唯一人通りがほとんどない場所で
あったことから、宗司はそのまま女に連れ去られてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…う…」
宗司が目を覚ますー。

「ーーおはよ。よく眠れた?」
女の声がするー。

宗司がビクッとして、目をぱちぱちとさせると、
「ー手荒な真似をしてごめんね。
 君に打ち込んだのは、ただの眠り薬だから
 健康に害はないから心配しないでね」
と、女を微笑んだー。

「ーーな、な…な…」
宗司は”なんのつもりだ!?”と言おうとしたー。

しかし、
”今の状況”と、”女性相手”であるというこの現状では、
宗司は、まともに喋ることもできなかったー。

短いスカートに黒タイツ姿の女は、
綺麗な足を見せつけるようにしながら、微笑むー。

肩をわざと見せるかのような服装も、
宗司には、刺激的すぎたー。

「ーーふふふ、心配するなよー…
 あ、いやー
 心配しないで。
 わたしはあなたの味方」

女はそれだけ言うと、クスッと微笑んだー。

「ーー…お、、お、、俺を…どうする…どうするつもりだ…!」
宗司が言うと、
女は微笑むー。

「ーーまずは、ちゃんと喋れるようにしようか。
 気持ちを落ち着けて」

女の言葉に、
宗司は、女から目を逸らしながら、何度も何度も深呼吸をすると
女に目を合わせないようにしながら叫ぶー

「俺を…どうするつもりなんだ!」
とー。

「ーーあなたの未来のためー」
女はそう言うと、
宗司に近付いてきて、宗司の顔をじーっと見つめたー

綺麗な女性の顔が目の前にあるー。
直視することもできずに、宗司は身体をビクビクと震わせるー

過去に女子からいじめられた経験からか、
彼は女性が近くに来るだけで拒否反応を覚えてしまうようになったー。

平気なのは、母親ぐらいだー。

「ーーまず、わたしの顔を見て」
女が優しく言うー。

だがー
宗司は、女の顔を見ようともしなかったー。

「ーーゆ、誘拐犯の顔なんて、見るものか!」
とー。

「ーー…誘拐…!?」
女は少しだけ驚いた様子で、
「う~ん、まぁ、そうだなぁ…」と、一人でぼそぼそと呟くと、
「ー心配しないで」と、つけ加えたー。

「ーわたしがあなたをここに連れてきた理由は
 あなたを傷つけるためでもないし、
 あなたの家族を苦しめたりするためでもないからー」

とー。

そして、そこまで言うと、女はさらに、
宗司に顔を近づけてきて、
「ーーいいから、わたしの顔を見て」
と、少し怒りっぽく言ったー。

「ーーい、、嫌だ」
宗司は拒否反応を示すー。

クラスの女子の顔でさえ、直視なんてしないし、
目を合わせようとしない宗司が、
こんな綺麗で、知らない相手で、しかも誘拐犯の女の顔など
見るはずがないのだー。

「見なさい」
女の言葉が乱暴になっていくー。

それでも目を逸らす宗司ー

「ーいいから”この女”の顔を見ろって言ってんだよ!」
女が叫んだー

「ひっ!」
宗司は悲鳴を上げながら女の方を見るー。

すると女は
「ごめんね!こうでも言わないと、顔を見てくれないと思って」と、
穏やかな口調に戻って笑うー。

「ーわたしと話すときは目を合わせること。いい?」
とー。

「ーー……だ、、だ、、誰なんだ…!
 なんで俺のことを知ってるんだ…!」

宗司は必死に目を合わせながらそう呟くー。

すると女は「ちょっと待ってて」と言いながら
背後に歩いていくー。

黒いタイツがまぶしいー
思わず目を逸らしてしまう宗司ー。

女は、背後に置いてあった自分のかばんらしきものを
漁ると、小声で「あったあった」と呟いてから
再び振り返ったー。

「ーーーー橋森 瀬奈(はしもり せな)ー?」
宗司は表情を歪めるー。

宗司を誘拐した謎の女は、
大学の学生証を見せてきたー。

そこには、橋森 瀬奈と書かれているー。
学生証の顔写真と、今、目の前にいる瀬奈の顔は
そっくり…というか同一人物だー。

と、いうことは、この女は、橋森瀬奈なのだろうー。

「ーーー…」
宗司はさらに表情を歪めたー。

”橋森 瀬奈”なんて女は知らないし、
瀬奈が見せてきた学生証に書かれている大学の名前についても、
よくわからないー。

「ーー俺に…なんの恨みが…?」
宗司が戸惑いながら言うと、
瀬奈は「別に…恨みなんてないよ。だから安心して」とほほ笑むー。

恨みがないのに誘拐、とはどういうことなのかー

「ーーやっぱり、金かー!?」
宗司が叫ぶと、瀬奈は「ちがうちがう」と首を振ったー。

「ーあなたは、”女の人”が苦手でしょー?
 しかも、結構重度にー」

瀬奈の言葉に、
宗司は「な、なんでそんなことまで知ってるんだ!?」と
思わず叫んでしまうー。

正直、気味悪いとさえ思えたー。
家族や一部の親友は知っていることだが、
宗司とは接点のない、この瀬奈という女が
なぜそれを知っているのかは、
不思議でたまらなかったー。

「このままじゃあなたはどんどん女の人に対する
 苦手意識や憎しみを増やしていっちゃう」

瀬奈の言葉に、
「ー別にいいだろ」と、宗司は即答したー。

「今の時代、結婚がすべてじゃないんだから、放っておけよ」
とー。

「ーーだめよ。放っておいたら、いずれあなたが困るー」

「ーー困らないよ!俺は生涯独身の覚悟だってできてるんだ!」
宗司が叫び返すと、
瀬奈は少しだけ鋭い目つきで

「”それ”で済めばいいけどね」
と、小声で呟いたー。

その時だったー

ーーー♪~~
瀬奈のスマホが鳴り始めるー。

だが、瀬奈は出る様子を見せないまま、
宗司の方を見て
「わたしはあなたを誘拐したんじゃないー
 救いに来たの」
と、不気味な言葉をつぶやいたー

”怪しいー
 いや、妖しいー”

そんな風に思いながら、宗司は
「スマホ…鳴ってるけど…」と、瀬奈のかばんの方を指さすー。

「そんなこと、今はどうでもいいの」
瀬奈はそれだけ言うと、
宗司の方を見て、にっこりとほほ笑んだー。

「ーーじゃあまずは、わたしの名前を呼んでみてー

 え~っと、”瀬奈”ね。
 ほら、呼んでみてー」

瀬奈の言葉に、
宗司は戸惑いを隠せないー

この女子大生のお姉さんはいったい何を言っているのか、
宗司には全く理解できなかったー。

綺麗な感じのお姉さんで、悪いことをしそうな雰囲気には
まったく見えないのが、逆に不気味だったー。

「ーーー……そ、、それは…」
宗司は目を逸らすー。

宗司は、とにかく”女子”や”女性”が苦手なのだー。

できることであれば、一切かかわりたくないー。
そう、思っているー。

「ーー…ほら、呼んでみて」
瀬奈の言葉に、宗司は
「お、、俺が名前を呼んで、何になるって言うんだよ?」
と、聞き返すー。

宗司に名前を呼ばせて、この瀬奈という
女子大生は何がしたいのか。
さっぱりわからないし、理解もできないー。

「ーーーふふふふ…理解できなくてもいいの。
 あなたの、未来のため」

瀬奈はそう言いながら、
宗司に身体を近づけてきて、不気味に微笑むー。

「ーーねぇ、わたしの名前を、呼んで?」
瀬奈の甘い声に、宗司はドキドキしてしまうと同時に、
激しい恐怖を覚えて目を背けるー。

「ーーそんな身体を震わせちゃってー。
 よほど、女の人が苦手なんだね…」

と、微笑む瀬奈ー。

「ーーーー!」
宗司は震えながら、相手のー
瀬奈の手も震えていることに気づくー。

「ーーー…とにかく、早く呼んで」
瀬奈が言うー。

「ーー……いやだ…誘拐女の名前なんて、誰が呼ぶものか!」
宗司は目を逸らしながら、そう叫ぶー。

「ー呼びなさい」
瀬奈の口調が鋭くなるー。

「ーーだから、何がしたいんだよ!」
宗司は大声で叫ぶー。
まるで意味が分からないー。

「ーーーいいから、呼べよ」
宗司の手を乱暴に掴む瀬奈ー。

「ーとにかく、あんたのためだって、言ってんだろ?
 わたしの名前を呼べよ!」
瀬奈の口調が、さっきから、急に荒々しくなることにも
恐怖を覚えながら、宗司が瀬奈の方を見つめるー。

瀬奈は顔を真っ赤にしながら、宗司の方を見ているー

”なんなんだこのお姉さんは…”

宗司は恐怖を覚えながら
「ーーーは、、橋森……さん」
と、呟いたー。

さっき、自分で”橋森 瀬奈”と言っていたー。

その名前を、呼んだのだー。

「ーーちがう」
瀬奈が言うー。

「ーーち、ちがう?」
戸惑う宗司ー。

瀬奈は続けたー。

「ーー”瀬奈”って呼ぶのー
 女の人の下の名前を、呼ぶの」

その言葉に、
宗司は激しく震えてしまうー。

”女子を下の名前で呼んだこと”なんてないー。

女子からのいじめー
その”恐怖”がどうしても、彼の心に沁みついて、
抜けることはないー。

「ーーほら、早くー。」
瀬奈が、宗司の方を見つめるー。

宗司は、”なんなんだよ、この女…”と、思いながらも、
このままじゃ何をされるか分からない…!という恐怖から
「せ……せ、、瀬奈さん…」と、呟いたー

「はい!よくできましたぁ!」
瀬奈はそう言うと、宗司の手をつかんで握手したー。

綺麗なお姉さんの綺麗な手ー
宗司はドキドキしながら
「な、、何がしたいんだよ…?」と、不安そうに呟くー

瀬奈はにっこりしながら
「ふふふ…それは、言えない♡」と、呟いたー

②へ続く

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コメント

不気味なお姉さんにつかまってしまった彼の運命は…!?

続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!

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