悪の組織”ジード”の幹部に憑依されてしまった彼女ー。
それでも彼女を見捨てることはできない、と、
乗っ取られた彼女の下僕として働く彼氏ー。
二人の愛の行方は…!?
その先に待つ、運命は…!?
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次元の狭間に存在する悪の組織”ジード”の
本拠地が爆音に包まれるー。
いかにも特殊部隊、という感じの服装の人間たちが、
ジードの本拠地に、銃を持って迫っているー。
対ジード特殊部隊ー。
次元の狭間に存在するジードの本拠地の場所を特定し、
特殊な技術でここまでやってきたのだー。
人類とて、黙ってジードに屈するほど、
愚かではないー。
「-ーーー愚かな人間どもめー」
ジード首領は、クリスタルに映るその様子を見つめながら、
歯軋りをしたー。
そして、幹部4人に命じたー。
「--侵入した人間どもを、根絶やしにせよ!」
ジード首領の言葉に、
ガオスに乗っ取られた唯花を含む4人は、笑みを浮かべながら頭を下げたー
「っかし、女の身体を乗っ取った途端に、武器を鞭に変えるとか
悪趣味だなお前は」
唯花に向かって、幹部の一人・ゴリラスが笑うー。
「---ククク…悪の女王様みたいな感じがして、
楽しいだろう?」
唯花が禍々しい鞭を手にしながら言うと、
「-ま、確かにお前が元々使ってた剣よりも
ドSな女王様って感じがして、ゾクゾクするけどな」
ゴリラスが笑いながら、通路を歩くー。
「--この手を血で染めてやる…ククククク」
唯花はそう言うと、ゴリラスと別れて、別の方向に向かって歩き出したー
各所で、戦闘が始まるー。
拷問室から出た健司も、
ジード本拠地の中層階の窓から、その様子を見つめるー
「--あれは…人間…!
ってことはーー」
健司の心の中に、少し希望が湧いたー。
人類が、悪の組織ジードに対する反撃に出たということなのだろうー。
もし、ジードを倒すことに成功すれば、
自分も、唯花も、助かるかもしれないー。
そんな、希望を抱きながらー。
「---」
窓から外を見つめると、
幹部の一人、”悪意を人間にプレゼントする”サタン・クロースが、
戦いを続けていたー。
「--…そうだ…唯花は?」
健司は一気に不安に駆られたー
まさかー
幹部のガオスに憑依されている唯花もー
戦闘をさせられているのではー
そう思ったからだー。
健司は必死に廊下を走り始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーあははははははははっ!」
鞭を振るいながら、特殊部隊を始末していく唯花ー。
悪の女王のようなポーズを取りながら
”今、楽しめる欲望を全て楽しむ”ことがモットーな
幹部ガオスは、唯花の身体で、戦いを続けていくー。
「---助けてほしい?」
唯花が、悪女のような声で、倒れた特殊部隊隊員の頭を踏むー
「た、、た、、たすけてくれ…!」
悲鳴を上げる特殊部隊隊員ー
「-じゃあ…”女王様、たすけてください”って命乞いしてごらん?」
唯花が冷たい声で言うー。
「--く、、、く…」
プライドからか、言葉を口にできない特殊部隊隊員ー
「--おら!死にたいのか?」
唯花が足で乱暴に特殊部隊隊員を踏みつけるー。
他の隊員が、唯花に銃を放つー。
唯花は、バク転してそれを回避すると、
禍々しいオーラを纏いながら、奇声を上げて特殊部隊隊員たちの方に向かうー
邪悪なオーラをこめた鞭で、
悪の女王のような笑い声をあげながら、特殊部隊隊員たちを蹴散らしていくー
「--!」
だがー
特殊部隊隊員はそれなりの人数がいて、
唯花の背後を取ることに成功したー。
両手を上げる唯花ー
「いいの?この身体は、唯花っていう人間のものなんだけど」
唯花がクスッと笑うー。
唯花が憑依されて、健司がここに来てから
既に数週間ー。
元の世界では、唯花と健司の捜索願も出されていてー
”女子大生消息不明”のニュースは、大々的に報じられていたため、
特殊部隊隊員たちもそれを把握していたー。
「馬鹿ね」
クスッと笑った唯花は、その隙を見逃さなかったー。
鞭を振るい、特殊部隊隊員を蹴散らしていくー。
隊員も銃弾を放ったが、それは唯花の肩をかすめただけだったー。
「ふぅんー」
肩から噴き出した血を見て笑う唯花ー
「人間の身体って貧弱なのね」
唯花は指に血をつけてペロリと舐めるー。
「でもーー」
唯花に憑依しているガオスが闇の魔力を用いて、
唯花の身体の傷を強引に修復していくー
「-多少のダメージなら、問題ないー」
唯花はペロリと唇を舐めると、特殊部隊隊員の方を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦いはさらに激化するー。
優れた技術力を持つ悪の組織・ジードは、
本来”人類と真っ向勝負を仕掛ければ”確実に勝てるほどの
技術や戦力を有していたー。
だが、”人類侵攻”に分散させている戦力はわずかであり、
また、”人類を遥か格下”と見下していることー、
そして、”人類をいたぶるように、遊び半分で侵略している”ことが、
”仇”となったー。
人類はいつの間にか、ジードに所属する悪魔の組織を崩壊させる
特殊な化学兵器の開発に成功していたー
「--ぐおおおおおおおっ…」
幹部ゴリラスが吹き飛ばされるー。
吹き飛ばされたゴリラスの側に別の隊員が駆けつけて、ゴリラスの頭を撃ち抜くー。
「クリア!」
南側を守っていた幹部のゴリラスが突破されたー。
「---……」
そんなことも知らない健司は、唯花がいる東側に向かうー。
北側では既に、人類に悪夢をプレゼントする幹部、サタン・クロースが、
特殊部隊に死をプレゼントされ、突破されていたー。
本拠地内に特殊部隊隊員がなだれ込んでくるー。
健司は、特殊部隊とは遭遇しないままー
東側にたどり着いたー
「--唯花!」
健司が叫ぶー。
唯花は、鞭を手に、少しだけ苦しそうにしていたー
「---(チッ…さすがに人間の女の身体では、もたぬか)」
はぁはぁ言いながら、唯花は舌打ちをするー。
いかに闇の魔力で、唯花の身体を酷使しようと、
唯花は”普通の女性”でありー
限界を超えて激しい動きをしていたことで、
唯花の身体は激しく消耗していたー。
横たわる特殊部隊隊員たちー。
唯花が、残る隊員たちに、鞭を振るうー。
「--あははははは!死ね!死ね!」
唯花は、とても楽しそうに人間たちを始末しているー
”あんな唯花…僕は見たくない!”
健司はそう思いながらも、唯花の方に向かって行くー。
その時だったー。
パァン!
”健司もジードの一員”と勘違いした特殊部隊隊員の一人が、
健司の足を撃ち抜いたー。
「ぐあっ!」
その場に倒れる健司ー。
「----!」
唯花も、健司が撃たれたことに気づくー
「--ククク…バカな下僕だな」
唯花はそれだけ呟くと、健司から視線を逸らして
他の特殊部隊隊員との戦いを続けようとしたー
しかしー
「------…」
唯花は、少しだけ表情を歪めたー。
「--覚悟しろ」
特殊部隊隊員が倒れた健司に近づくー
健司は、足を押さえながら
「ち、、違う!待ってくれ!僕はー」
と、叫ぶー。
だが、特殊部隊隊員は、聞く耳を持たなかったー
銃を手にー
健司に向かってそれを放ったー
パァン!!!!!!
「--!?」
しかしーー
健司の前に、悪の女幹部のような姿をした唯花が立ちはだかりー
”盾”になっていたー
「--!?!?」
健司が驚くー
撃たれた唯花は、笑みを浮かべると
そのまま、特殊部隊隊員を倒したー。
その場に膝をつく唯花ー
「--え…な、、なんで…?」
健司が戸惑うー。
唯花は、闇の魔術で傷を回復させながら
健司の方を見つめたー
「--何で?”この女の彼氏”なんて立場の
面白い下僕はもういないからに決まってるでしょ?クククー」
唯花が笑うー
”乗っ取った身体の彼氏”
そんな立場の人間は、健司一人しかいないー。
下僕はいくらでも補充できるー
だが、そういう立場の下僕は、健司しかいないー
だから、助けたー
「---ありがとう…」
健司は、唯花に助けられた気がしてそう呟くー
唯花は少しだけ戸惑ったような表情をしながらー
「--ありがとう、ございます!、だろうが!」と
健司を蹴り飛ばすとー、
そのまま鞭を手に、再び特殊部隊の方に向かって行ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
破壊され尽くした指令室ー。
ジード首領が苦しそうに呟くー
「我は所詮…”数ある実働部隊の司令官”に過ぎぬー」
既に、ジード首領の部屋まで到達した特殊部隊は、
ジード首領に銃撃を加え、制圧を完了していたー
ジード首領の脇には、幹部の一人・パリピーナスが屍となって転がっているー。
「---ジードは……滅びぬ…!」
ジード首領がそう叫ぶと同時に、銃弾が放たれて
ジード首領はそのまま死亡したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---おのれ人間どもがああああああああああ!」
鬼のような形相で、乗っ取られた唯花が、
鞭を振るっているー。
特殊部隊隊員の数が多くー
唯花を乗っ取ったガオスの魔力による
回復も追いつかなくなっていたー
「--はぁ…はぁ…はぁ… ぐっ…
所詮は小娘の身体か…」
唯花は、表情を歪めて膝をつくー。
「---ーおわりだ」
特殊部隊隊員の一人が銃を唯花に向けるー。
「--さっきも言ったけど…この身体は…人間…
俺を殺せば…この女も、、、死ぬ!」
唯花が笑いながら言うー。
特殊部隊隊員は一瞬躊躇したー。
だがー
「--………それしか、その子を救う方法はないー」
特殊部隊隊員は、唯花を撃つ気だったー。
そうしなければ、この子の身体は、永遠に悪用され続けるからだー。
「---ま、、待って…くれ…」
戦いの巻き添えを喰らい、既にボロボロになっていた健司が、
ふらふらと、膝をついた唯花の前にやって来るー。
「--君も人間だな?どくんだ」
特殊部隊隊員が言うー。
だがー
健司はどかなかったー。
「---唯花を…唯花を…殺さないでくれ…」
嘆願する健司ー。
唯花は笑みを浮かべるー。
「--ククク…下僕!そうだ!わたしを助けなさい!」
唯花の心ない言葉ー。
健司は、傷つきながらも、
それでも唯花を守ろうとしたー。
「--どくんだ!」
特殊部隊隊員が叫ぶー。
「--僕…約束したんだ…
何があっても唯花の側にいるってー
何があっても、唯花を守るってー」
健司が涙を流しながら特殊部隊隊員たちの方を見るー。
「--ククク…バカなやつ」
唯花が低い声で呟いて笑うー
「-------」
健司は両手を広げて、唯花を守るようにして立ちはだかったー
たとえー
唯花がどんな姿になってもー
たとえー
唯花がどんなになってもー
それでも、唯花の側にいたいー
特殊部隊隊員の一人が、「ジードの首領を始末した」と、遠くから叫ぶー。
「了解した」
唯花に銃を構えている隊員が返事をすると、
健司の方に銃を向けたー。
「-ーー5秒以内にどくんだー。
君の気持は分かる。
だが、ここで引けば、そいつの思うつぼだー
君が引けないようにー
我々も引くことはできない」
特殊部隊隊員にも、強い決意があったー。
健司と、同じようにー。
「-------」
「---5、4、3,2--」
特殊部隊隊員は本気で撃つ気だー。
健司は、静かに目を閉じたー
”もういいよー”
健司が、ふと目を開くー。
そこには、”いつもの穏やかな唯花”がいたー。
「--もういいよ…健司ー。
わたしのためにー
ごめんなさいー。
もう、十分だからー」
唯花は涙を流しながら、
健司の方を見つめたー。
健司は、周囲を見渡しながら、
唯花の方を見つめるー。
「--ずっとそばにいるって、約束したからー」
健司が言うと、
唯花は、悲しそうにー
けれども、嬉しそうに微笑んだー
「--これからは、ずっと、いっしょだよー」
唯花の言葉に、健司は、優しくほほ笑むと、
そのまま、光に包まれて、穏やかな表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-------クリア!」
特殊部隊隊員がこの場を制圧したことを確認して、叫ぶー。
「--------」
悪の組織ジードを壊滅させたー。
いや、ジード首領の言葉から、
また、別の部隊がやってくるのかもしれないー
だが、その時は、またー。
「-------」
特殊部隊隊員は、
最後まで彼女を守ろうと立ちはだかった健司の方を見つめたー
健司は、悪女のような恰好をした唯花と、手をつないでー
そして、満足そうに倒れていたー。
ジードの幹部・ガオスに乗っ取られたまま倒れた唯花もまたー、
最後の表情は穏やかそうだったー。
そんな二人の亡骸を見つめて、
特殊部隊隊員は、静かに”来世では幸せになれよ”と
祈りをささげたー。
おわり
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コメント
乗っ取られてしまった彼女に
それでも寄り添い続ける彼氏のお話でした~!
もっと長い話数で、もしも書いていたら
身も心も下僕になっちゃうような展開に
なっていたかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました!!
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