憧れのクラスメイト・美冬(みふゆ)-。
文化祭の実行委員になったことから、
亜紗美と共に作業する機会が増えた彼は、
この機会に、亜紗美との距離を縮めていこうとするものの…?
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男子高校生の倉林 達也(くらばやし たつや)は、
”文化祭実行委員になってよかった!”と思っていたー。
クラスのリーダー格、というほどではないが
ほどほどに友達もいるー
そんな感じの、
ごく普通の高校生活を送っている達也は、
浮かれていたー。
何故ならー
文化祭実行委員で、
憧れのクラスメイト、雨宮 美冬(あめみや みふゆ)と
一緒になったからだー。
最初、達也は文化祭実行委員に立候補するかどうか
迷っていたー。
が、なんとなく好奇心が湧いたことや、
文化祭実行委員の経験も、進学の時に
何らかの役に立つかもしれない、という”打算”から、
文化祭実行委員に立候補したのだー。
その結果ー
思いもよらないことが起きたー。
達也が立候補したあとにー、
美冬も立候補したのだー。
美冬は、単純に達也より立候補が遅れただけで
達也が立候補したから、わたしも!ということではないと思うが、
元々美冬にあこがれのような感情を抱いていた達也にとって
思わぬ収獲だったー。
「--あ、雨宮さん…よろしく」
今日は文化祭実行委員の最初の顔合わせの日ー。
美冬はクラスメイトだから、普段も顔を合わせているし、
クラスメイトとして話をすることも時々あるー
が、決して深い関係ではないし、
男女問わず、誰からも人気者状態の美冬からしてみれば
”ただのクラスメイト”でしかないのは確実だったー。
「倉林くんー。よろしくね」
穏やかに微笑む美冬ー
(あぁ~~!文化祭実行委員になってよかった!)
達也は、改めてそう思ったー。
ここは天国か何か、か、と。
美冬は、とても可愛らしいー。
容姿に恵まれている、と言っていいだろうー。
その上で、成績もよく、運動神経も良くー
さらには、人間性まで完璧ときたー。
誰にでも優しいしー
いじめなどの悪さをしているわけでもないしー
授業態度もとても、真面目だー。
気配りも出来るし、何もかも完璧な存在ー、と言えた。
だからこそ、達也は、そんな美冬に
同年代でありながら”憧れ”のような感情を抱いていたのだ。
性別は違えど、
美冬のようになりたいー、と。
その日からー
文化祭実行委員の仕事をしながら、
楽しい学校生活を送る日々が続いたー。
「----あ、倉林くん、文化祭のことなんだけどー」
昼休みー、美冬が達也の机の側にやってきて、
この前の実行委員の話し合いで使ったプリントを
達也の机に置きながら、相談を始めたー。
「--うん、あ~、そうだな~…そっちの方がいいかもしれないな~」
達也も、真剣に相談に乗るー。
「ーー(ってか、ちかっ!)」
美冬が達也の机の横に立って、プリントを見ているために、
距離が近いー。
わざと近づいているわけではないのは分かるのだがー
美冬を意識してしまっている達也からすれば、ドキドキしてしまうー。
「-じゃあ、倉林くんの案の方で進めたほうがよさそうだね」
ほほ笑む美冬ー
(こんな近くで微笑まないでくれ~!)
心の中でそう叫びながら、達也が返事をしないでいるとー
「だ、、だめ?」
と、不安そうに美冬が呟くー。
達也が返事しなかったことによって、
美冬の出した結論に、達也が不満を抱いているのかと、
美冬が勘違いしたのだー。
「---あ、ご、ごめん!大丈夫!大丈夫だよ!」
達也が言うと、美冬はほほ笑んで
「じゃあ、他のみんなにも伝えておくね!」と、
そのまま立ち去って行ったー。
「---(はぁ~~やばいやばい…ちゃんと実行委員の仕事をしろ!俺)」
心の中でそう言い聞かせる達也。
そんな達也の様子を見ていた、友人の草本 恵一(くさもと けいいち)が、
「-お前、のぼせ過ぎだろ、草生えるぜ」と、笑みを浮かべながら揶揄ってくるー。
「うるせー!だ、、だって、雨宮さんがこんなに近くにいたんだぞ!」
小声で言うと、恵一は「いやいや、近くにいただけでその反応は、草でしょ」と
再び笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文化祭の日が着々と近づくー。
いつも楽しそうに、
誰にでも優しく接している美冬ー。
”どうしてこんなに、天使のような振る舞いが出来るのだろうー”
と、達也は、一緒に文化祭実行委員として
活動してみて、改めてそう思ったー。
「---倉林くんがいてくれたおかげで、スムーズに
当日を迎えられそうー。
本当に、ありがとうー」
放課後ー
前日の準備を終えた美冬が、達也の方を見てほほ笑むー。
文化祭実行委員の活動を通じて、
美冬と話す機会も多くなり、
少し距離を縮めることが出来たー…
達也は、そんな風にも思ったー。
もちろん、美冬の側は、何も意識していないのだろうけれどー。
「---え、、あ、いや」
達也が照れ臭そうに目を逸らすと、
「ーーほら、1年生の子たち、あんまりやる気ないみたいだしー」
と、苦笑いする美冬ー。
そんな”1年生の子たち”にも、美冬は優しく接しているー。
「--あ、陰口じゃないからね」
美冬が、少しだけ悪戯っぽく笑うと、
「雨宮さんっていつも本当にすごいよなー」と達也が呟くー。
「ーーすごい?わたしが?」
美冬が不思議そうな顔をして、達也の方を見るー
「だって、勉強も一生懸命だし、友達もいっぱいだし、
部活も、バイトもしていて、その上で実行委員もやってー
ほんと、凄いよー
何もかも、持ってる感じで…
なんというか、羨ましいし、憧れるー」
達也が、笑いながら言うと、
美冬の表情から、突然笑顔が消えたー
「-わたしが、羨ましいー?」
気まずい空気が流れるー
「あ、いや!その!変な意味じゃなくてー!」
”変な意味に取られた”
そう思った達也は慌てて謝罪するー
美冬は、それでも、表情を曇らせたままだったー。
「そっか…”そう見える”んだー」
美冬は自虐的な笑みを浮かべながら頷くと、
すぐに笑顔を取り戻して
「-あ、ごめんね!急にイヤな空気にしてー」と、ほほ笑んで見せたー
「お、俺こそごめん。なんか気分を害したならー」
達也が言うと、「ううん 気にしないで」と、美冬はそのまま立ち上がったー
「--じゃ、明日の文化祭、楽しもうねー」
「--あぁ。雨宮さんも、楽しんで」
達也の言葉に、にこっ、と笑ってから立ち去っていく美冬ー。
「--」
美冬が、文化祭実行委員の話し合いが行われていた部屋から
出ていく姿を見つめながら
達也は”なんか、悪いこといっちゃったのかな”と、
不安そうな表情を浮かべたー。
その翌日ー。
文化祭が行われたー
「--お前、なんでそんなしけたツラしてんだよ?
雨宮さんに振られでもしたのか?
もしそうだとしたら、草生えるぜ」
恵一の言葉に、達也は
「--うるせ~!ってか、草生えるって、口に出して言う言葉じゃねーだろ!」
と、ツッコミを入れるー。
「はは!分かりやすいなー
雨宮さんとなんかあったんだろ~?」
なおも揶揄い続ける恵一に対して、
達也は「なにもない!」と大声で叫んだー。
文化祭はー
終わったー。
去年と同じように、ほどほどに楽しく過ごした達也ー。
あわよくば、雨宮さんと一緒にー
などという期待もしていたがー
所詮、それは夢だったー。
「--ま…でも、楽しかったし…いいか」
達也が、文化祭終了後の、片づけが進む会場を見つめながら
そう呟いたー
「--おつかれさま」
背後から、美冬に声を掛けられた達也は
「あ、雨宮さん! 雨宮さんもお疲れ様」と、振り返りながら微笑むー
文化祭実行委員の仕事も、今日で終わりー。
片づけが終われば、実行委員は解散だー。
少しだけ、寂しさを感じる達也ー。
実行委員が終われば、
”また”元通り、”ただのクラスメイト”に戻ることになるー。
そう思うと、何とも言えない悲しさが
込み上げてくるー。
けれどー
それは、それで、仕方がないー
「-倉林くん、片付けが終わったら、ちょっとお話、いいかな?」
美冬の予期せぬ言葉に、達也は「え?」と聞き返すー。
話ー?
一体、何の話だろうかー。
もしかすると告白ー?
そんなことを思いながら、期待と不安が入り乱れた状態で
「あぁ、わかったー」と達也は返事をしたー
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文化祭の片づけが一通り終わりー、
文化祭実行委員もいよいよ解散となったー。
実行委員が使っていた部屋に、残された
達也と美冬の二人ー。
達也が、期待と不安が入り混じった状態のまま
「それで…話って…?」と、尋ねると、美冬は
いつものように、穏やかな笑みを浮かべたー。
「---倉林くん、この前、
わたしのこと羨ましいって言ってたよね?」
美冬の言葉に、達也は「あ、うん…言ったけど…」と
不安そうな表情を浮かべたー
文化祭前日、美冬のことを”羨ましい”と口にしたとき、
美冬の様子は”明らかに”おかしなかったー。
一瞬、笑顔が消えたー。
そんな気がしたのだー。
「---わたしのどこが羨ましいの?」
美冬の言葉に、達也は、「あ…えっと…」と、戸惑っていると、
「怒ったりしないから大丈夫!ただ、知りたいだけ!」と、
美冬が笑顔で言い放ったー。
達也は、少しだけ安心するとー
容姿のことやー
何でもできることー
誰にでも優しいところー
そんな、穏やかな心を持っていることー
色々な点を挙げたー。
「--そっか」
美冬は、どこか寂し気に頷くと、
達也に対して”信じられない提案”を口にしたー。
「-じゃあさ、わたしと入れ替わってみない?」
とー。
「---え」
達也は唖然とするー。
美冬が、何を言っているのか、全く理解できなかったー。
「---わたしと、倉林くんの身体を入れ替えて、
わたしになってみない?」
美冬の言葉をようやく理解する達也ー。
つまり、アニメとかでよくある”入れ替わり”を美冬は
提案しているのだー
「は???え????え?????」
達也が混乱するー。
「--わたしが倉林くんとして、
倉林くんがわたしとして生活するのー。
わたし、さっき”入れ替わり薬”を飲んだからー、
あとは”キス”すれば、入れ替わることが出来るからー」
美冬の”現実離れした提案”に、達也は
思わず笑ってしまうー。
「い、、いや、そんなー。
えっ…??え??
そ、それにもしも入れ替わったら、色々、やばいんじゃ…?
私生活とか、あの、その、見られたくない場所とか!」
達也が言うと、美冬は「別にわたしは構わないよ。
倉林くんがいいなら」と、あっさりと答えたー
「えぇっ!?」
達也がさらに戸惑うー
美冬は「どうする?入れ替わってみる?それともやめとく?」
と、ほほ笑むー。
「-も、元に戻る方法は、あるのか?」
達也が聞くと、美冬は「もちろん」と笑うー。
「--そ、そ、、それならー
って、、てか、冗談だよな?!」
達也が言うと、
美冬は続けたー。
「そしたら、普通のキスになっちゃうけど…ごめんね」
笑う美冬ー。
”入れ替わり薬を飲んでキスをすれば入れ替われる”
確かにー
仮に”入れ替わりが嘘”でも、美冬とキスできてしまうだけー
それなら、別にいいかー
と、達也は心の中で思うー
”というかこれ、遠回しな告白だよなー
入れ替われるわけないしー”
そう思った達也は、顔を真っ赤にしながら「わ、わかったー」と
答えたー
にこっと笑う美冬ー
美冬とキスをすることになるなんてー
そんなことを思いながら
心臓が張り裂けそうなほどドキドキしていた達也はー
美冬から、キスされたー
そしてーー
「--!?!?!?!?」
今まで感じたことのないような感覚を覚えてー
達也は、その場に倒れたー
達也が倒れ終わったころには、
美冬も髪を乱して、その場に仰向けに倒れていたー
②へ続く
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コメント
①は入れ替わるところまででした~!
次回以降は、”笑顔の裏に潜む闇”が
見えてきますよ~☆!
お読み下さりありがとうございました!!
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