<入れ替わり>笑顔の裏に潜む闇①~憧れ~

憧れのクラスメイト・美冬(みふゆ)-。

文化祭の実行委員になったことから、
亜紗美と共に作業する機会が増えた彼は、
この機会に、亜紗美との距離を縮めていこうとするものの…?

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男子高校生の倉林 達也(くらばやし たつや)は、
”文化祭実行委員になってよかった!”と思っていたー。

クラスのリーダー格、というほどではないが
ほどほどに友達もいるー
そんな感じの、
ごく普通の高校生活を送っている達也は、
浮かれていたー。

何故ならー
文化祭実行委員で、
憧れのクラスメイト、雨宮 美冬(あめみや みふゆ)と
一緒になったからだー。

最初、達也は文化祭実行委員に立候補するかどうか
迷っていたー。
が、なんとなく好奇心が湧いたことや、
文化祭実行委員の経験も、進学の時に
何らかの役に立つかもしれない、という”打算”から、
文化祭実行委員に立候補したのだー。

その結果ー
思いもよらないことが起きたー。

達也が立候補したあとにー、
美冬も立候補したのだー。

美冬は、単純に達也より立候補が遅れただけで
達也が立候補したから、わたしも!ということではないと思うが、
元々美冬にあこがれのような感情を抱いていた達也にとって
思わぬ収獲だったー。

「--あ、雨宮さん…よろしく」

今日は文化祭実行委員の最初の顔合わせの日ー。
美冬はクラスメイトだから、普段も顔を合わせているし、
クラスメイトとして話をすることも時々あるー

が、決して深い関係ではないし、
男女問わず、誰からも人気者状態の美冬からしてみれば
”ただのクラスメイト”でしかないのは確実だったー。

「倉林くんー。よろしくね」
穏やかに微笑む美冬ー

(あぁ~~!文化祭実行委員になってよかった!)
達也は、改めてそう思ったー。

ここは天国か何か、か、と。

美冬は、とても可愛らしいー。
容姿に恵まれている、と言っていいだろうー。

その上で、成績もよく、運動神経も良くー
さらには、人間性まで完璧ときたー。

誰にでも優しいしー
いじめなどの悪さをしているわけでもないしー
授業態度もとても、真面目だー。

気配りも出来るし、何もかも完璧な存在ー、と言えた。

だからこそ、達也は、そんな美冬に
同年代でありながら”憧れ”のような感情を抱いていたのだ。

性別は違えど、
美冬のようになりたいー、と。

その日からー
文化祭実行委員の仕事をしながら、
楽しい学校生活を送る日々が続いたー。

「----あ、倉林くん、文化祭のことなんだけどー」
昼休みー、美冬が達也の机の側にやってきて、
この前の実行委員の話し合いで使ったプリントを
達也の机に置きながら、相談を始めたー。

「--うん、あ~、そうだな~…そっちの方がいいかもしれないな~」
達也も、真剣に相談に乗るー。

「ーー(ってか、ちかっ!)」
美冬が達也の机の横に立って、プリントを見ているために、
距離が近いー。

わざと近づいているわけではないのは分かるのだがー
美冬を意識してしまっている達也からすれば、ドキドキしてしまうー。

「-じゃあ、倉林くんの案の方で進めたほうがよさそうだね」
ほほ笑む美冬ー

(こんな近くで微笑まないでくれ~!)
心の中でそう叫びながら、達也が返事をしないでいるとー

「だ、、だめ?」
と、不安そうに美冬が呟くー。

達也が返事しなかったことによって、
美冬の出した結論に、達也が不満を抱いているのかと、
美冬が勘違いしたのだー。

「---あ、ご、ごめん!大丈夫!大丈夫だよ!」
達也が言うと、美冬はほほ笑んで
「じゃあ、他のみんなにも伝えておくね!」と、
そのまま立ち去って行ったー。

「---(はぁ~~やばいやばい…ちゃんと実行委員の仕事をしろ!俺)」
心の中でそう言い聞かせる達也。

そんな達也の様子を見ていた、友人の草本 恵一(くさもと けいいち)が、
「-お前、のぼせ過ぎだろ、草生えるぜ」と、笑みを浮かべながら揶揄ってくるー。

「うるせー!だ、、だって、雨宮さんがこんなに近くにいたんだぞ!」
小声で言うと、恵一は「いやいや、近くにいただけでその反応は、草でしょ」と
再び笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

文化祭の日が着々と近づくー。

いつも楽しそうに、
誰にでも優しく接している美冬ー。

”どうしてこんなに、天使のような振る舞いが出来るのだろうー”
と、達也は、一緒に文化祭実行委員として
活動してみて、改めてそう思ったー。

「---倉林くんがいてくれたおかげで、スムーズに
 当日を迎えられそうー。
 本当に、ありがとうー」

放課後ー
前日の準備を終えた美冬が、達也の方を見てほほ笑むー。

文化祭実行委員の活動を通じて、
美冬と話す機会も多くなり、
少し距離を縮めることが出来たー…

達也は、そんな風にも思ったー。
もちろん、美冬の側は、何も意識していないのだろうけれどー。

「---え、、あ、いや」
達也が照れ臭そうに目を逸らすと、
「ーーほら、1年生の子たち、あんまりやる気ないみたいだしー」
と、苦笑いする美冬ー。

そんな”1年生の子たち”にも、美冬は優しく接しているー。

「--あ、陰口じゃないからね」
美冬が、少しだけ悪戯っぽく笑うと、
「雨宮さんっていつも本当にすごいよなー」と達也が呟くー。

「ーーすごい?わたしが?」
美冬が不思議そうな顔をして、達也の方を見るー

「だって、勉強も一生懸命だし、友達もいっぱいだし、
 部活も、バイトもしていて、その上で実行委員もやってー
 ほんと、凄いよー

 何もかも、持ってる感じで…
 なんというか、羨ましいし、憧れるー」

達也が、笑いながら言うと、
美冬の表情から、突然笑顔が消えたー

「-わたしが、羨ましいー?」

気まずい空気が流れるー

「あ、いや!その!変な意味じゃなくてー!」
”変な意味に取られた”
そう思った達也は慌てて謝罪するー

美冬は、それでも、表情を曇らせたままだったー。

「そっか…”そう見える”んだー」
美冬は自虐的な笑みを浮かべながら頷くと、
すぐに笑顔を取り戻して
「-あ、ごめんね!急にイヤな空気にしてー」と、ほほ笑んで見せたー

「お、俺こそごめん。なんか気分を害したならー」
達也が言うと、「ううん 気にしないで」と、美冬はそのまま立ち上がったー

「--じゃ、明日の文化祭、楽しもうねー」

「--あぁ。雨宮さんも、楽しんで」

達也の言葉に、にこっ、と笑ってから立ち去っていく美冬ー。

「--」
美冬が、文化祭実行委員の話し合いが行われていた部屋から
出ていく姿を見つめながら
達也は”なんか、悪いこといっちゃったのかな”と、
不安そうな表情を浮かべたー。

その翌日ー。
文化祭が行われたー

「--お前、なんでそんなしけたツラしてんだよ?
 雨宮さんに振られでもしたのか?
 もしそうだとしたら、草生えるぜ」

恵一の言葉に、達也は
「--うるせ~!ってか、草生えるって、口に出して言う言葉じゃねーだろ!」
と、ツッコミを入れるー。

「はは!分かりやすいなー
 雨宮さんとなんかあったんだろ~?」

なおも揶揄い続ける恵一に対して、
達也は「なにもない!」と大声で叫んだー。

文化祭はー
終わったー。

去年と同じように、ほどほどに楽しく過ごした達也ー。

あわよくば、雨宮さんと一緒にー
などという期待もしていたがー
所詮、それは夢だったー。

「--ま…でも、楽しかったし…いいか」
達也が、文化祭終了後の、片づけが進む会場を見つめながら
そう呟いたー

「--おつかれさま」
背後から、美冬に声を掛けられた達也は
「あ、雨宮さん! 雨宮さんもお疲れ様」と、振り返りながら微笑むー

文化祭実行委員の仕事も、今日で終わりー。
片づけが終われば、実行委員は解散だー。

少しだけ、寂しさを感じる達也ー。

実行委員が終われば、
”また”元通り、”ただのクラスメイト”に戻ることになるー。

そう思うと、何とも言えない悲しさが
込み上げてくるー。

けれどー
それは、それで、仕方がないー

「-倉林くん、片付けが終わったら、ちょっとお話、いいかな?」
美冬の予期せぬ言葉に、達也は「え?」と聞き返すー。

話ー?
一体、何の話だろうかー。
もしかすると告白ー?

そんなことを思いながら、期待と不安が入り乱れた状態で
「あぁ、わかったー」と達也は返事をしたー

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文化祭の片づけが一通り終わりー、
文化祭実行委員もいよいよ解散となったー。

実行委員が使っていた部屋に、残された
達也と美冬の二人ー。

達也が、期待と不安が入り混じった状態のまま
「それで…話って…?」と、尋ねると、美冬は
いつものように、穏やかな笑みを浮かべたー。

「---倉林くん、この前、
 わたしのこと羨ましいって言ってたよね?」
美冬の言葉に、達也は「あ、うん…言ったけど…」と
不安そうな表情を浮かべたー

文化祭前日、美冬のことを”羨ましい”と口にしたとき、
美冬の様子は”明らかに”おかしなかったー。
一瞬、笑顔が消えたー。
そんな気がしたのだー。

「---わたしのどこが羨ましいの?」
美冬の言葉に、達也は、「あ…えっと…」と、戸惑っていると、
「怒ったりしないから大丈夫!ただ、知りたいだけ!」と、
美冬が笑顔で言い放ったー。

達也は、少しだけ安心するとー

容姿のことやー
何でもできることー
誰にでも優しいところー
そんな、穏やかな心を持っていることー

色々な点を挙げたー。

「--そっか」
美冬は、どこか寂し気に頷くと、
達也に対して”信じられない提案”を口にしたー。

「-じゃあさ、わたしと入れ替わってみない?」
とー。

「---え」
達也は唖然とするー。

美冬が、何を言っているのか、全く理解できなかったー。

「---わたしと、倉林くんの身体を入れ替えて、
 わたしになってみない?」

美冬の言葉をようやく理解する達也ー。

つまり、アニメとかでよくある”入れ替わり”を美冬は
提案しているのだー

「は???え????え?????」
達也が混乱するー。

「--わたしが倉林くんとして、
 倉林くんがわたしとして生活するのー。

 わたし、さっき”入れ替わり薬”を飲んだからー、
 あとは”キス”すれば、入れ替わることが出来るからー」

美冬の”現実離れした提案”に、達也は
思わず笑ってしまうー。

「い、、いや、そんなー。
 えっ…??え??
 そ、それにもしも入れ替わったら、色々、やばいんじゃ…?

 私生活とか、あの、その、見られたくない場所とか!」

達也が言うと、美冬は「別にわたしは構わないよ。
倉林くんがいいなら」と、あっさりと答えたー

「えぇっ!?」
達也がさらに戸惑うー

美冬は「どうする?入れ替わってみる?それともやめとく?」
と、ほほ笑むー。

「-も、元に戻る方法は、あるのか?」
達也が聞くと、美冬は「もちろん」と笑うー。

「--そ、そ、、それならー

 って、、てか、冗談だよな?!」

達也が言うと、
美冬は続けたー。

「そしたら、普通のキスになっちゃうけど…ごめんね」
笑う美冬ー。

”入れ替わり薬を飲んでキスをすれば入れ替われる”

確かにー
仮に”入れ替わりが嘘”でも、美冬とキスできてしまうだけー

それなら、別にいいかー
と、達也は心の中で思うー

”というかこれ、遠回しな告白だよなー
 入れ替われるわけないしー”

そう思った達也は、顔を真っ赤にしながら「わ、わかったー」と
答えたー

にこっと笑う美冬ー

美冬とキスをすることになるなんてー

そんなことを思いながら
心臓が張り裂けそうなほどドキドキしていた達也はー
美冬から、キスされたー

そしてーー

「--!?!?!?!?」
今まで感じたことのないような感覚を覚えてー
達也は、その場に倒れたー

達也が倒れ終わったころには、
美冬も髪を乱して、その場に仰向けに倒れていたー

②へ続く

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コメント

①は入れ替わるところまででした~!
次回以降は、”笑顔の裏に潜む闇”が
見えてきますよ~☆!

お読み下さりありがとうございました!!

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