異世界の姫様になった42歳フリーター男性と、
42歳フリーター男性になった異世界の姫様…
2人に待ち受ける運命は…?
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「---ほんと!最高よ!あなたに感謝しなくちゃ!」
夢の中の真っ白な世界ー。
何故かは分からないが、
入れ替わった二人は、
”同じタイミングで寝た”ときだけ、こうして夢の中で会話することが出来たー。
エレナ姫が嬉しそうに言うー。
「ーーそんなに俺の生活が楽しいですか?」
誠吾は思わず苦笑いしながら聞くー。
相手が”姫”であるため、自分よりはるかに年下だが、
誠吾は、無意識のうちに敬語で話しているー。
「--もう、最高!
”ばいと”も楽しいし、あの狭くて汚らしい感じの部屋も
最高!!」
と、エレナ姫は笑いながら言ったー
「--ははは…正直に言いますねー」
誠吾はそれだけ言うと、
「でも、どう考えても、姫の人生の方が最高だと思いますけどね…
もう、なんか、毎日ニヤニヤが止まらなくてー」
と、自分の近況を伝えたー。
入れ替わってから既に半月ー
エレナ姫として過ごす時間は最高だー。
メイドに”キス”を命じたら、メイドはものすごく恥ずかしそうに
キスをしてくれたー。
姫とメイドのキスー。
その場で興奮しすぎて、危うく昇天するところだったー。
「--でも、自由がないもん」
エレナ姫が頬を膨らませながら言うー。
「--そうかなぁ…自由が無くても、本当に最高の環境だと
思いますけどねー」
誠吾がそれだけ言うと、
エレナ姫は
「-ずっと、わたしのような生活が続けば、あなたもいずれ分かるわ…。」
と、悲しそうに呟いたー
その言葉に、誠吾は、少し戸惑った様子で頭をかきながらー
「それを言ったら、俺の方も同じですー。」
と、少し苦笑いしながら続けるー。
「姫もきっと、俺の人生が、クソだってことに、そのうち気づきますよー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目を覚ましたエレナ姫(誠吾)はー
「--俺の人生が楽しいなんて…
物好きな姫様もいるもんだなー」と、
呟きながらベッドから起き上がり、
自分の姿を鏡で見つめたー
「--こんなきれいなのに…」
エレナ姫(誠吾)が、自分の髪から、顔、手ー
あらゆる場所を見つめるー
入れ替わって数日は、エレナ姫の身体で
エッチなことも考えたがー
半月も経過すると、そういう感情はだいぶ消えたー。
”まぁ、何事も最初は新鮮で、だんだん慣れて来るものだからな”
エレナ姫(誠吾)の今の楽しみはー
”姫として振舞うこと”
”姫として扱われること”
女の身体にはだいぶ慣れたー
慣れれば、新鮮味は、失われるー
最初の数日のように胸を揉むだけで、ドキッ、とはあまりしなくなったし、
最初ほどの感動はなくなったー
「-ずっと、わたしのような生活が続けば、あなたもいずれ分かるわ…。」
夢の中でのエレナ姫との会話を思い出すー。
「---…いやいや、こんな楽しい生活、イヤになるわけないじゃないか」
そう呟くと、やってきたメイドに「あら、おはよう」と、笑顔で微笑みかけたー
着替えを終えて、
”姫”としての執務を行うー。
難しい仕事は、さほどないー。
書類などに目を通したり、
決断を迫られる部分はあれど、
行政的な実務は各大臣や、宰相が行うし、
防衛や、出現した魔物の退治は、王国騎士団が行うー。
「----」
兵士たちの前に顔を出して、ほほ笑みながら手を振りー
兵士にねぎらいの言葉を掛けるー。
それだけで兵士のやる気は上がりー
まるで、エレナ姫(誠吾)を、女神を見るかのように見つめるー。
”すげぇよな…姫ってー。
俺がもし同じことをしたら”キモっ”って言われて終わりだもんなー”
エレナ姫(誠吾)が門の外を見つめるとー
第5騎士団長のライナスが「姫様。最近は盗賊が近隣に出没しております故ー」と、
”外出は出来ない”ことを告げて来たー。
「--わかってます」
ほほ笑むエレナ姫(誠吾)-
第5騎士団長のライナスは、おそらく、エレナ姫がいつものように外に出たがっていると
思っていたのだろうー。
「---”わたしは”逃げ出そうとしたりしませんから、ご安心をー」
エレナ姫(誠吾)が言うと、第5騎士団長のライナスは、「--はっ」と頭をさげたー。
”こんな最高の生活ー”
自分の部屋に戻ると、エレナ姫(誠吾)は、自分の部屋のテラスへの扉を開くー。
広々としたテラスから、
王宮の南側に広がる大自然を見渡すー
「はぁぁぁ~~~~最高」
髪をふわふわとさせながらー
大地から吹く風を感じるエレナ姫(誠吾)-
ここにはー
クレーマーもいないし、
店長もいないー、
生涯独身だの、独身どうこう言ってくるやつもいないー。
「----ここはーー
俺のための鳥かごー」
エレナ姫は自分の生活を”鳥かごの中の鳥”だと表現していたー。
だがー
「こんなに最高の鳥かごなら、
俺は喜んで鳥かごに入るぜー。
鳥かごの扉が開いていたとしても、外になんか、出るもんか!」
エレナ姫(誠吾)は、
そう呟きながら、
最高の景色を見つめると、
最高に美味しい空気を嬉しそうに吸ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
誠吾になったエレナ姫は、
”自分の部屋”を、好みにカスタマイズしていたー
掃除をして、
部屋の家具の配置なども変えたー
最近は、ホームセンターに行って、色々買っては
部屋の中を便利にしていくことを楽しんでいるー。
「自分で掃除できるって、最高!」
「自分でお買い物行けるなんて、夢みたい!」
毎日が感動の連続ー。
クローバー王国にあったような”魔法”関連の技術は
発展していないが、
この世界には、この世界の技術があるー
とくに”機械”系統はスゴイー。
毎日、家電や電機系の製品を見ては
「すっご~~い!」と嬉しそうに微笑む誠吾(エレナ姫)-
「この生活のどこが地獄なんだろう…?」
首を傾げながらも、”自由”を満喫する誠吾(エレナ姫)は、
ふと、夢の中で誠吾に言われた言葉を思い出すー
「姫もきっと、俺の人生が、クソだってことに、そのうち気づきますよー」
「そんなこと、ないからー」
誠吾の言葉を改めて否定した誠吾(エレナ姫)は、
コンビニへと向かったー
コンビニー。
「--何が3円だ。3円ぐらいケチケチすんなよ。
この独身野郎!」
例の酔っ払いのクレーマーが再びやってきたー。
誠吾(エレナ姫)は冷ややかな目で
クレーマーを見つめるー
「--その3円をケチってるのは、あなたじゃなくて?」
誠吾(エレナ姫)が言うと、
酔っ払いのクレーマーは、怒りの形相を浮かべたー。
「--もうとっくにレジ袋は有料だし、
もしお金を払いたくないなら、自分で袋を用意するなり
バッグを持って来ればいいだけー。
それなのに、あなたはどうして、そうやって
”自分に都合の良いように”ルールを捻じ曲げようとするんですか?
3円をケチケチするな?
ケチケチしてるのは、お客様の方でしょう?」
誠吾(エレナ姫)は臆することなく、
そう言い放つー。
クレーマーの酔っ払いが
「俺はお客様だぞ!」と叫ぶー
「--ルールを守れないあなたは、お客様ではございません」
誠吾(エレナ姫)が、きっぱりと言い放つー
店長が、慌てて奥から出てきて、
いつものように、レジ袋をサービスしようとするー。
夢の中で、”クソみたいな出来事”として
誠吾からこういうことも説明を受けていた誠吾(エレナ姫)は叫んだー
「--あなたがルールを守らなくて、どうするんですか!!!!」
と、大声でー。
「--ひっ!」
店長がビクッと震えるー
普段は高圧的だが、本質的には小心者の店長なのだー。
だからこそ、レジ袋もすぐにサービスしてしまうー。
「---テ…テメェ…!こんな店、利用するのやめてやるぞ!
駅前に別のコンビニもあるんだからよぉ!」
酔っ払いの男が叫ぶー
「-どうぞ」
誠吾(エレナ姫)は堂々と言い放つー。
「--テメェ!!!!客に向かってなんだその態度は!」
カウンターを叩いてエスカレートする酔っ払いー
「-あなたは客ではありませんので」
誠吾(エレナ姫)は、毅然とした態度を崩さないー。
「---く…くっ…」
顔を真っ赤にしてぷるぷると震える酔っ払いのクレーマー
そのまま、何かわけの分からないことを呟きながら、
そのまま酔っ払いのクレーマーは、コンビニから立ち去って行ったー
”すごいー
少しだけ見直したかも…?”
誠吾をキモがっていた女子大生バイトは、
クレーマーを撃退した誠吾(エレナ姫)を見つめながら、
そんな風に思うのだったー。
「--店長も!ルールはちゃんと守ってください!」
誠吾(エレナ姫)の言葉に、店長は「ああいう時はーー」と
口を開くー
「言い訳しない!」
まるでお母さんのような口調でそう叫ぶ誠吾(エレナ姫)に
店長は「は、はいっ!」と叫んだー。
中身がエレナ姫になってから
誠吾の仕事ぶりは、飛躍的に良くなったー
そのためか、店長も、もう誠吾に文句を言うことは無くなっていたのだー。
エレナ姫になった誠吾も同じー
”姫”として振舞ううちに
クローバー王国という世界に愛着を持つようになり、
一生懸命、姫として振舞うようになっていたー。
結果的にー
エレナ姫になった誠吾も、
誠吾になったエレナ姫もー
自分自身にとっても、周囲にとっても、身体にとっても
”プラス”になったのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、1年が経過したー
エレナ姫になった誠吾は、
すっかり”姫”らしくなったー。
エレナ姫の言う通り、”いつかイヤになる”と思っていたのだが
イヤになることなんて、全くなかったー。
今でも、毎日が夢のような気分で、
まるで天使のようなメイドたちに囲まれた最高の日々を
送っているー。
さすがに、入れ替わった直後のように、
着替えたり、お風呂に入ったりするだけで
ドキドキすることはなくなったものの、
今でも、こんな美人でいられることが信じられないし、
”自由”はなくても、こんなに幸せならこれでいい、と
心からそう思えたー。
「--ここ1年で、姫様は変わられましたな」
執事が嬉しそうに言うー。
「--え?」
エレナ姫(誠吾)が言うと、
「--ようやく王国を背負う自覚が出て来たのかもしれませんな…
わたくしも、嬉しい限りでございます」
幼少期からエレナ姫を見ていた執事が嬉しそうに頭をさげるー
「-(ははは…まぁ、中身が変わったからな)」
そう、思いつつも、1年も一緒にいれば、この執事にも
愛着が湧いてくるし
執事が嬉しそうな顔をしていると、自分も嬉しくなるー。
「---…そうね…わたし、大人になったのかもしれませんね」
エレナ姫として、言葉を口にすると、執事は穏やかに頭をさげたー。
”元の世界で、クソみたいな人生を送っていた俺が、まさかこんな風に
なるなんてなー…
俺は…あの世界に適正がなかったんだろうな…
俺の天職は”姫”だぜ”
今日も、綺麗な髪を見つめながら、エレナ姫(誠吾)は静かに微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--店長!」
誠吾(エレナ姫)は、そう呼ばれていたー。
あれから1年ー。
”自由”を手にした誠吾(エレナ姫)は、
コンビニバイトを続けー、
活躍を見せた結果、店長に出世していたー
クレーマーに毅然とした対応を示しー、
店長が相手であっても、間違ったことにNoを告げることができー、
文句を言われても、店長が反撃できないぐらいに”仕事ぶり”で示したー。
”エレナ姫”時代の、経験から、次々と斬新なアイデアを提案し、
店舗の売上は激増ー、
ついには本部から目を掛けられて、前の店長は横領も発覚して失脚、
誠吾(エレナ姫)は店長になったのだったー。
今では、誠吾(エレナ姫)は、清潔感漂う容姿で、
”素敵なおじさま”風の容姿になっているー
(わたしは自由を与えなくちゃ伸びないタイプなのよ)
誠吾(エレナ姫)は心の中で”元の世界”の執事やメイドたちのことを
思い浮かべたー。
「--誠吾~~!」
コンビニの外から手を振る可愛らしい女性ー。
1年前ー
入れ替わる前の誠吾に陰口を叩いていたバイトの女子大生ー。
誠吾(エレナ姫)が嬉しそうに手を振るー。
”豹変”した誠吾(エレナ姫)のことを好きになりー
あれから1年、去年は誠吾のことを馬鹿にしていた彼女は、
今や誠吾(エレナ姫)と歳の差婚をして、妻になっていたー。
「---今日もじき上がりだから、もう少し待ってて」
誠吾(エレナ姫)が言うと、
「うん!」と、妻になった元バイトの女子大生は、笑顔で微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢の中ー
白い世界で、二人は握手を交わすー。
「--クローバー王国のこと、よろしくねー」
エレナ姫が微笑むー。
「--はい。俺はーーー…、、、
背負うもの、何もないですけど、頑張ってくださいー」
誠吾が言うー。
2人はー
”元に戻らない”決断をしたー。
戻る方法も分からないが、戻る必要もないー。
誠吾には、”姫”が、
エレナ姫には”自由”が、
適正な居場所なのだー。
「---背負う者、できたわー」
エレナ姫が、”結婚した”ことを告げると
「えぇっ!?あの生意気なバイトと!?」と
誠吾は驚くー。
2人は近況を報告し合うと、
今一度、固い握手を交わしたー。
それぞれ、相手に”元自分”の身体を託してー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クローバー王国ー。
精力的に活動して、幸せそうなエレナ姫(誠吾)を
遠くから見つめる第5騎士団長のライナスー。
「---ライナス様」
兵士に呼ばれて、ライナスは「今行く」というと、
その場を離れながら思うー
”禁断の呪術”
自由を欲していた姫様を自由にするためー
そしてー、
王国のためー
彼は”禁断の呪術”を使ったー。
異世界の”姫適正”がある”人間”を自動的に
エレナ姫の身体に召喚しー、
そして、エレナ姫の魂を、その相手に”交換”する呪術ー。
そうすればー
エレナ姫は自由を手にすることができー、
エレナ姫の自由奔放すぎる振る舞いに頭を悩ませていた王国は、
姫適正のある人物が、エレナ姫になることで、安泰するー。
「---姫様…どうかお元気でー」
第5騎士団長ライナスは
”異世界で別の人間として生きているであろう”
エレナ姫に向かって、そう呟いたー
そしてー
「--中身は誰だか存じませんがー
私は、今の姫様を全力でお支えしていきますー」と、
呟くと、静かに兵士たちの方に向かって歩き出したー。
おわり
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コメント
異世界の姫様と、フリーターの入れ替わりでした~!
お互いハッピーな結末ですネ~!
今回登場した「クローバー王国」という世界は、
前に書いた「勇者さまご乱心」という作品に登場した世界と
同じ世界の設定デス~!
(読んだことがなくても、全く問題ないように、作ってあります!)
もし、「勇者さまご乱心」を読んだことがある人は、
第〇騎士団長、とか、王国の名前とかで気づかれた…かも?笑
(勇者さまご乱心の時代から見ると、遠い過去なのか、遠い未来なのかは
ご想像にお任せします~!)
時々、読んだことがなくても問題ない程度に
他作品とリンクさせていることもあるので、
探してみてくださいネ~☆!
今日もお読み下さりありがとうございました~!
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