ある日、目が覚めたら突然知らない女に
憑依した状態になってしまっていた彼ー。
元に戻れぬまま、彼はその身体で生活を続けていくことになり…?
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とある病院ー
男が、緊急搬送されていたー
「--2名の急患です。
通報者は、うち1名が住んでいるアパートの住人です」
病院のスタッフが、二人を運びながら慌てて叫ぶー。
「--矢内 純太さん 28歳と、
小杉 雄一さん 同じく28歳
矢内さんは多臓器不全の状態ー
小杉さんは体内から毒物が検出されー」
状況を説明するスタッフー
純太の親友・小杉は、苦しそうに息をしながら目を開いた-
”ーーー…純太……”
小杉はこうなるまでの出来事を思い出しー
”早くなんとかしないと”と、
苦しそうにそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----今日、清美なんか元気ないね?」
一方ー、
女子大生・清美に憑依した状態の
純太は、翌日になっても、元に戻れなかったことから、
清美の身体で大学にやってきていたー
「え…?そ、そうかな…?そんなことないよ…!ふふふふふ」
笑ってごまかす清美ー。
「も~!悩みがあるんだったら聞くからね!」
立ち去っていく友達ー。
「--は~~~~…」
安堵のため息をつく清美ー。
昨日、清美として振舞えるようにと、
清美のスマホの会話の履歴などを
かなりの量、確認して、清美という人物の人間関係や
普段の振る舞い、言葉遣いなどをある程度理解したー。
しかし、だからと言って、清美になり切れるかどうかは
また別問題ー。
なかなか、清美として振舞うのは難しかったー。
「---」
そわそわした様子でスカートを気にする清美ー。
「---なんか…落ち着かないなぁ…
頼りないっていうか…
防具を忘れて戦場に来たような…そんな感じだよなぁ」
清美が一人で呟くー。
会社の昼休みでよくラーメンを食べていた純太は、
いつもの癖で、ラーメンを注文したー。
だがーー
「うえっ…ここのラーメン微妙だな」
清美はそう呟きながら、ため息をつくー。
がーー
”微妙”なのはそのラーメンではないことに気づいたのは、
夜のことだったー。
大学からの帰り、コンビニに立ち寄り
”さっきのラーメン、不味かったから口直しだ”と、
”純太がよく食べていたラーメン”をコンビニで購入したー
全国展開されているコンビニのラーメンであれば、
地域が違っても、同じ味を楽しむことが出来る。
しかしー
「-----!」
清美はラーメンを口にして表情を歪めたー。
「---………」
少し考え込んでから「あっ!」と叫ぶ清美ー
そう叫ぶ清美の姿は、ラフなシャツ1枚だったー。
下着もつけていないー。
慣れていないせいか、下着をつけていると
何だか絞めつけられているような、そんな感じが
して気持ち悪いのだー。
”家の中でならいいよな”と、
ブラはつけずに、夜の時間を堪能していたー。
「---」
スマホを見つめて
”やっぱり”と呟く清美ー。
清美に憑依する以前のLINEの会話に、
友達から”今から彼氏とラーメン屋に行くんだけど、清美も行く?”という
会話があったのだー。
昨日、スマホ内のデータを確認した時に、
純太は、それをチラッと見たことを思い出したー。
そこにはー”わたし、ラーメン苦手だから…”と、
清美が返事を送っている記録が残されていたー
「--ラーメン…この子苦手なのか…」
そう呟きながら、鏡を見つめると、
清美は自分の舌を触ったー。
「味覚も違う…そういうことか…」
清美は、コンビニのラーメンを残すとー
ため息をついてからー
”この子として生きるためには、この子の好きな食べものも
調べとかないとな…”と、心の中で呟くー。
ラーメンは好きだー。
だが、清美の身体で食べると、味がまるで違う。不味く感じるー
好きなのに、不味く感じるー
”心”と”身体”が一致しないことによる
”副作用”を清美になった純太は、強く感じざるを得なかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
電子音が響きわたるー。
「----純太…」
病院に搬送された純太の親友・小杉は
ギリギリの状態で、朦朧とした意識の状態が続いていたー。
”何のことだよ?”
「わかってるんだ…!お前だろ!」
小杉は研究所で働いていたー。
その研究所では”次世代の技術を発掘する”として、
ある薬品の開発が続けられていたー
それが
”憑依薬”だー。
純太の親友である小杉は、憑依薬ほか、
数々の新薬の研究をしている研究所で、研究を続けていたー。
基本的に”極秘”である研究ー。
しかし、純太は機材メーカーの営業として、
その研究施設に時々出入りしていたー。
純太は親友の小杉を通して、
その研究施設の上層部とも顔なじみになり、
やがて”憑依薬”の存在を知ったー。
そんなある日ーーー
小杉の働いている研究施設から
複数の薬が盗み出されたー
戸惑う小杉ー。
研究施設内での犯人捜しは難航したー。
”極秘”で研究中の薬が盗み出されるなど、前代未聞ー。
だが、外部の人間の出入りは少数でー、
出入りの際には必ず施設の人間が同伴しないといけないことに
なっているからー
持ち出しできるとすれば、内部の人間の可能性が高いー、と
研究所は判断していたー。
しかしー
”ははは、じゃあな”
「---」
小杉は、薬品が消える数日前ー、
純太が営業で訪れていたことを思い出すー。
純太とは、学生時代からの付き合いだー。
だからー
”大してチェックもせず”に、純太を外に出してしまったー
小杉は”純太が憑依薬を盗み出した”のだとそう思いー、
自分の責任を強く痛感したー。
”なんとかしないと”
そう思った小杉は、純太の住むアパートに向かって走り出したー。
「-----う…」
その時のことを思い出したながら、生死の淵をさまよっている純太は
歯を食いしばったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女子大生生活を始めてから半月が経過したー。
「---やべぇ…可愛い…!」
すっかり清美としての生活にも慣れてきていた純太は
”女子大生”としておしゃれすることの楽しさに
目覚めていたー。
可愛さを強調したりー
大人の綺麗さを強調したりー
ちょっとボーイッシュにしてみたりー
色々な楽しみ方があるー。
それに”髪型”一つでも雰囲気が大きく変わるー。
髪を下ろした状態は、穏やかな感じになるしー
ポニーテールは少し活発な感じに見えるしー
ツインテールにすると、なんだかぶりっ子のような感じに見えたりもするー
「楽しいな…これ!」
清美はそう呟きながら、メイクもすっかりと覚えて、
女子大生ライフを満喫していたー。
未だに、元に戻る方法は分からないし、
親友の小杉にも連絡がつかないー。
自分の身体もどうなっているか分からないが、
そんなこと、どうでもいいような気がしてきたー。
ただー。
この子のために、この子の身体で変なことはできないー、と
必死に”普通の女子大生”として過ごしていたー。
先日は”女”として初めてのエッチも体験したー。
もちろん、”一人で”だが、
男の自分では感じることも出来ない
想像を絶するような快感で、
清美の喘ぎ声に、自分が清美なのに興奮してしまって、
止まらなくなる、というどうしようもない快感の時間を過ごしたー。
バイト先も良いバイト先だったしー
と、安堵の笑みを浮かべる清美ー。
「--どうして、急にこの子になっちゃったんだろうな…」
そんな風に思いながらも、
清美に憑依した純太は、次第にそういう不安を感じなくなっていきー、
やがて、清美としての生活に適応していくー
1か月が経過したころには、
完全に”清美”として、女子大生になりきっていたー
「--よくわかんないけど…元々の人生より、最高じゃん!」
清美はそう呟くと、ふふっ、と笑って、
今日も大学に向かうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---小杉さんの意識は、相変わらず戻りません」
病院ー
搬送されてから1か月が経過したが
毒物を盛られたとみられる
小杉雄一は、目を覚まさない状態が続いていたー。
夢を見る小杉ー
あの日の、夢だー。
小杉は、純太のアパートに駆け付けて叫んだー。
「--おい!憑依薬…盗んだだろ!?
あれは外部への持ち出しは禁止なんだ!
…今ならまだ間に合う!俺に憑依薬と、盗んだ薬を返せー」
小杉が言うと、
純太は笑ったー
「--俺は、これを使って、可愛い女になるんだー」
とー。
小杉は表情を歪めるー。
純太は、彼女がいたことがないー。
性格もそこそこ良くて、容姿もそこそこなのだが
”良い人どまり”で終わってしまうタイプー。
”誰にでもほどほどに優しい”性格が災いしていて
恋愛向きではないのかもしれないー。
そんな純太はいつも
”俺はどうせモテないから”と自虐的に笑っていたー。
小杉もよく、純太が自らネタにしてくるものだからー
それを揶揄っていたがー
純太は、小杉の想像以上に、真剣に悩んでいたのだー。
「----やめろ…!憑依薬を返せ!」
小杉がそう言うと、
純太は憑依薬の他に、もう一つ盗み出した薬を手にしたー。
”人の記憶を調整する薬ー”
何かを強く念じながら飲むことでー
それに関係する記憶を消すことが出来る薬ー。
これも、小杉が勤務している研究所で開発中の薬の一つで、
鬱病など、精神的な症状に対し、
患者の”不安”の源となっている部分の記憶を消すことで、
その症状回復を目的としている開発中の薬だー。
「--俺はー、この子に憑依するー」
純太は、鹿児島の大学のサイトを開いてー
その画面を見せたー。
純太は”見知らぬ地”
”見知らぬ女”に憑依して、新しい人生を送ろうと決意していたー。
適当に遠くの大学のホームページを探してー
学生紹介などから可愛い子を物色して、見つけたー
それが、清美だったー。
「--顔と名前が分かってれば、憑依できるんだろ?」
純太が笑うと、小杉は「やめろ!」と叫んだー
「-絶対…絶対後悔するぞ!
お前みたいなお人よしが、他人の身体を乗っ取れば、絶対にーー
罪悪感に飲み込まれるぞ!」
小杉が叫ぶと、
純太はほほ笑むー
「だから、記憶を消すんだよー」
とー。
純太が記憶を調整する薬も盗み出したのはー
”憑依に関する記憶”と
”これからすること”に関する記憶を消すためだったー
「--お、、お前ー」
小杉は震えるー。
「--俺は今日の夜、憑依薬とコレを飲んで寝るー。
明日の朝には、”俺が自ら憑依した”ってことは忘れてー
この清美って子の身体で目覚めるのさー。
そしたら罪悪感も、何も無くなるー」
純太の凶悪な笑みに、小杉は「憑依薬を返せ!!!」と叫んだー
しかしー
純太は”さらにもう一つ”薬を盗んでいたー
それがーー
毒薬ー。
小杉を背後から羽交い絞めにしてー
それを小杉に盛るー
”じゃあな小杉ー
俺のために、死んでくれー
はは、心配はいらないー
俺はお前を殺したことを忘れるし、
俺は清美って子になるから、罪に問われる心配もないー
誰も、気づきやしないさ”
小杉は悲鳴を上げてその場に倒れー
満足そうに笑った純太は、
しばらくすると、憑依薬と記憶を調整する薬を飲んで、
布団に入ったー
清美の姿を思い浮かべながらー
そしてー
憑依や、今起きたことに関する記憶を”削除”するために
思い浮かべながらー
「--------う」
小杉は、”俺が…止めないと…”と、苦しそうに病院のベッドで
目を覚ますー
だがーーー
小杉の視界が急速に真っ暗になっていきー
”俺がーーーー 俺がーーーーーーー”
と、心の中で悲鳴を上げながらー
そのまま小杉は帰らぬ人となったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
半年後ー
「---それにしても…
どうして、俺は急にこの子に憑依しちゃったんだろうなー」
清美に憑依した純太は、
そんなことを時々思いながらも、
女子大生ライフを満喫していたー。
今では、完全に”清美”としての人生を満喫しているー
純太は”自分の意思で憑依したこと”も
”親友の小杉を自ら殺したこと”も忘れー
今日も清美の身体を堪能するのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
無自覚な状態から始まる憑依モノでした~!
ただ単に巻き添えになった彼女は
災難ですネ~…!
お読み下さりありがとうございました!!
コメント
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純太はお人よしという割に親友を殺したり、都合よく記憶を消したりと、随分計画的で狡猾ですね。
結果的に思い通りに新しい人生を始めることが出来たんだから、計画は大成功と言えますが、まったく見知らぬ他人に可愛いという理由だけで身体を奪われた清美は気の毒すぎですね。
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コメントありがとうございます~!
周囲には「お人よし」にみられるように
振舞っていただけなのかもですネ~!
清美は気の毒でした…!