<憑依>俺は浴衣を着てみたい③~お祭りの終わり~(完)

憑依された彼女とのデートは続くー。

女になって浴衣を着る、という夢を憑依で叶えた親友との
祭りの時間は終わりを迎えようとしていた…。

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「と、トイレ!?」
裕平は戸惑うー

「そ、、そ、、トイレ…!」
姫梨が小声でそう呟くー。

賑わうお祭りの会場を見渡し、裕平は
「あ、あそこにあるじゃん」と、トイレの方を指さしたー。

「憑依の前に姫梨にも許可取ってたし、
 別にいいんじゃないか?」

裕平が言うー。
眞喜雄は、確かに”憑依する前”に姫梨に
”トイレとか着替えはしてもいいか”確認しー
姫梨もOKを出していたー。

「--あ、、いや、そうじゃなくて」
姫梨が顔を赤くしながら言うー。

「--なんだよ?」
裕平が言うと、
姫梨は恥ずかしそうに呟いたー

「-女って、どうやって、トイレすればいいのかな?ってー…

 ……どうすりゃいいんだ?」

姫梨の突然の質問に、裕平は「は!?俺に聞くなよ!」と、
声を上げるー。

「--いや、さっきああは言ったけど、
 よく考えたら、女子ってどうやって、トイレ済ませてるのか、
 知らねぇな…って思ってさー」

「--いやいや、とにかく、なんとかなるだろ?」
裕平の言葉に、姫梨は「お、、おう」と、戸惑った様子で呟くー

トイレの前に移動すると、
裕平は「俺はここで待ってるから」と、祭りの賑わいを見つめながら呟いたー

「-ーーわ、わかった」
姫梨は不安そうにトイレの方に入っていくー

「おいっ!」
裕平が叫んだー

「え?」
姫梨が振り返ると、裕平が、「そっちは男子トイレだ!」と、
小さい声で叫んだ。

「--あ……そ、、そっか」
姫梨はそう呟いて深呼吸すると、
「姫梨ちゃんの身体とは言え、女子トイレに入るのは
 なんかこう…犯罪者みたいな気分だな…」と、苦笑いするー。

「--いいから、早く行け!」
裕平は”こんな会話聞かれたら変な目で見られる”と思いながら、
手で”早くトイレに入れ”と再度促すー。

「---ちょっと時間かかるかもだけど、
 浴衣、汚さないようにするよ」
姫梨はそれだけ言うと、女子トイレの方に入っていくー

「---あ!立ちションはすんなよ!」
裕平が不安に思って補足の言葉を投げかけるー

姫梨は「しねぇよ!」と笑いながらそのままトイレに入って行ったー。

”しねぇよ”とか、姫梨に言われるとー
なんだかドキッとしてしまうー。
普段の姫梨とのギャップだろうかー。

しばらくするとーー
トイレから姫梨が出て来るー

「---あ、、あのさ…やっぱ俺一人じゃ不安だからー
 お前も一緒にー」

姫梨が股間のあたりを触りながら言うー。
男の時の癖で、アソコのあたりを
触ってもじもじしているのだー

「いや、俺、そっちに入ったらリアル犯罪者なんだけど!」
裕平が突っ込むー。
姫梨は「あーーぁ、、そうだな」と、呟くー。

裕平は「-とにかく、落ち着いてトイレを済ませてこい。
大丈夫だから!」と言うと、
姫梨は不安そうにしながらも、そのままトイレに戻って行ったー。

「--ったくー
 憑依するなら、先にググっておけよー…」
裕平はそう呟くと、ため息をついたー。

結構時間が経過して、
ようやく姫梨がトイレから出て来るー。

どうやら、浴衣を汚さずにも、済んだようだったー

「わりぃ。またせたな」
姫梨が可愛らしい声でそう呟くー。

「ーー…ちゃんとできたのか?」
裕平が、歩き出しながら言うと、
姫梨は「あぁ…できたけど…女って随分やっぱ違うんだなぁ」と、
少しニヤニヤしながら呟くー

「ってかお前トイレ随分長かったけど、
 姫梨の身体で変なことしてないよな?」

裕平が、不安になり”確認”するー。

姫梨は「え、、、、べ、、別にー」
と、目を逸らすー。

「---おい!お前!」
裕平が、声を荒げるー

「--ゆ、、裕平ってば~そんなに怒らないでよ~!こわ~い♡」
甘えるような口調で誤魔化そうとする姫梨ー

一瞬ドキッとして顔を赤らめたものの
「って、その手に乗るか!」と叫ぶ裕平ー

「--姫梨の身体で何かしやがったな!?」
裕平が言うと、
姫梨は「--ち、、ちょっと…その、、胸を2、3回揉んでーー」と、
申し訳なさそうに呟いたー

べしっ、と、裕平が姫梨の頭を弱めに叩くー

「いてっ!」
姫梨が声を出すー。

「--姫梨にあとで、言うからな~?まったく!」

「--わ、、わるかったって…で、でも、それ以外は何もしてないから!」
姫梨は、申し訳なさそうに再び謝罪の言葉を口にすると、
「-その姿で謝られても、お前じゃなくて姫梨に謝られてる気がして
 なんか、変な気分だな…」と、裕平は、戸惑いの色を浮かべながら
そう呟いたー。

お祭りの会場をさらに回る二人ー

「--ね~ね~!次はあっち!」
人前では”姫梨”として振舞う眞喜雄ー。

男言葉を口にしたりすれば、
変な目で見られることになってしまうのは姫梨だー。

眞喜雄自身も、姫梨とは小さいころからの付き合いだし、
姫梨を傷つけるつもりは全くないー

女の子として浴衣を着てみたいー
その夢を叶えたかっただけだー。

「---その浴衣、可愛いねぇ!」
射的コーナーにいたおばさんに浴衣を褒められた姫梨は、
本当に嬉しそうににこにこしているー

”中身が眞喜雄なんて信じられないな…”
裕平はそう思いながらも、
本当の女子大生のようににこにこしている姫梨の姿を見てー

”本当に、浴衣着てみたかったんだなー”
と、少しだけ微笑ましそうにその様子を見つめたー。

「--1回おまけしてくれるって~!」
姫梨が、裕平に手を振るー

”あいつ、だんだん女子の振る舞い、うまくなってきたんじゃないか?”
と、苦笑いするー。

「---わかった~!今行く~!」
裕平はそう言うと、姫梨のほうに向かって歩いて行ったー。

楽しい時間はあっという間に過ぎ去りー、
花火を見つめながら、もうすぐ終わる1日目のお祭りの余韻に
浸っていたー。

「なぁ、裕平ー」
姫梨が呟くー

「ん?」
裕平が言うと、

「--今日の姫梨ちゃんと、いつもの姫梨ちゃん、どっちが好き?」
と、イタズラっぽく笑ったー

「--えっ!?!?なんだよいきなりー」
裕平が笑いながら言うと、
「-いやぁ、お前、何度も顔を赤らめてたから
 実は俺が中身の姫梨ちゃんの方が好きなのかなぁってさ」
と、悪戯っぽく笑うー。

「---馬鹿ッ!いつもの姫梨に決まってるだろ!」
笑いながら言う裕平ー。

「--ほんとに?」
姫梨が突然甘い声を出して、裕平に顔を近づけて来たー。

ドキッとしてしまう裕平ー

「--ねぇ、ほんとにいつものわたしの方が好きなのー?」
姫梨が甘い声でさらに顔を近づけて来るー

「う…???え???ちょ?」
裕平は顔を真っ赤にしながら戸惑っていると、
姫梨は続けたー

「--今日の姫梨となら、なんでもできちゃうんだよ?」
とー。

キスをしようと、顔を近づけて来る姫梨ー

裕平はドキドキが止まらずー
言葉を失ってしまうー

だがー

「な~~~んてな!
 お前、狼狽えすぎだぜ!」
姫梨が笑いながら裕平から離れるー

「お、、おまえ…バカ!そういうのやめろよ!
 ドキドキすんだろ!?」
裕平が顔を真っ赤にしながら叫ぶと、
姫梨は「--ははははははっ!」と、楽しそうに笑ったー

そしてー

「-明日は、”本当の姫梨ちゃん”と、
 今日よりも楽しく、デートするんだぜ?」

と、姫梨は笑いながら言ったー。

その言葉に、裕平は
「もちろんー。今日より2倍も3倍も楽しく過ごすさー」
と、答えてからー

「でもまぁ、今日も楽しかったよー。
 今度、男同士で祭りに来るのもいいかもな」

と、付け加えたー。

「はは、そうだなー」
姫梨はそれだけ呟くと、花火を見つめながら
名残惜しそうに、自分の浴衣に手を触れたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---本当に、ありがとう」

お祭りが終わり、裕平の家に戻ると、
眞喜雄は約束通り、姫梨の身体をすぐに解放したー。

そしてー
倒れていた眞喜雄の身体が起き上がりー
眞喜雄は、姫梨にすぐにお礼の言葉を告げたー。

「--あほ!まだ起きてないぞ!」
裕平がツッコミを入れると、
まだ意識を取り戻していない姫梨の方を見て、
眞喜雄は「あ!わりぃ」と笑みを浮かべたー

「----う…」
直後、姫梨も無事に目を覚ましたー

眠そうな顔で周囲をキョロキョロすると、
「---あ……お祭り、楽しめた…?」と
ウトウトしたような表情のまま、裕平と眞喜雄の方を見つめたー

眞喜雄は改めて、姫梨に向かって
「本当にありがとう」と、呟くと、
姫梨は「どういたしまして」とほほ笑んだー。

「--裕平も、楽しめた?」
姫梨が笑うと、裕平は
「まぁ、楽しかったけど、俺はやっぱり、明日の、
 本当の姫梨とのお祭りの方が楽しみかな~!」と、
笑みを浮かべたー。

そんな、仲良しな二人を見つめながら、眞喜雄は
「二人のおかげで、浴衣を着てみたい、って夢が本当にかなったよー。
 ありがとう、ありがとうー」と、何度も何度もお礼の言葉を口にしたー。

裕平はそんな眞喜雄の姿を見ながらー
”本当に、まっすぐなやつだよなー”と
心の中で呟き、これからも眞喜雄との友情を大切にしていこうー、と
改めて思うのだったー。

”憑依薬”ー
悪用すれば、いくらでも悪用できるはずだー。
許可なく姫梨に憑依することだってできたはずだしー
姫梨以外の人間に憑依して、何をすることだってできたはずー。

正直、”憑依”なんて現実にあるとは思わなかったし、
眞喜雄が誰にも言わず悪用すれば
誰も、乗っ取られた人間の行為が眞喜雄によるものだとは
思わないだろうー。

犯罪を犯さないまでも、他人の身体で好き放題は出来るー

それを眞喜雄は、
誰も傷つけないように、と、自分が飼育している
ウーパールーパーで試し、
姫梨と裕平にも、わざわざ憑依する前にお願いをしてきたー

眞喜雄のことだし、断れば憑依は絶対にしなかっただろうー。

「---お前はいいやつだな、本当にー」
裕平が小声で眞喜雄に言うと、
眞喜雄は「は?なんだよ急に…気持ちわりぃな」と、笑みを浮かべたー

「--トイレで胸を揉んだ以外は、な」
裕平が小声でニヤニヤしながら言うと、眞喜雄は
「悪かったって!」と、謝罪の言葉を小声で口にしたー

「--ん~~~?揉んだってなに~~?」
姫梨が笑いながら近づいてくるー

眞喜雄は「あ~~~いや、なんでもない!」と、
目を逸らしながら、裕平に「絶対言うなよ!」と、
小声で呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

裕平にとっては、二日連続のお祭りー

今日は、本当の姫梨とのお祭りだー。

「--次はあれやりたい~!」
姫梨が嬉しそうにお祭りを楽しんでいるー

「--やっぱ、姫梨の中身は姫梨が似合うなぁ~」
裕平は笑いながら姫梨についていくー。

昨日のお祭りも
今日のお祭りも、どっちも楽しいー。

けれど、やっぱり、姫梨の身体を動かすのは
姫梨じゃないとー、と
昨日とは違う気持ちで、お祭りをたっぷりと堪能したー

「ーーー昨日なんだけどー」
帰り道ー、姫梨が微笑みながら言うー。

「--眞喜雄くんに憑依されたわたしに、
 花火見てるとき、ドキッとしてたよね~~?」
いじわるっぽく笑う姫梨ー。

「--ふぇっ!?!?」
裕平は思わず変な声を出してしまうー

「--ねぇ、ほんとにいつものわたしの方が好きなのー?
 って、眞喜雄くんに言われたとき、ドキッとしてたー」
揶揄うようにして言う姫梨に対して、
裕平は「え…!?ちょ!?昨日の記憶、あんの!?」と、
顔を真っ赤にしながら答えたー

「--憑依されていた間もね~、意識あったの!
 だから、裕平が意外とデレデレしてたのも、
 眞喜雄くんがトイレでわたしの胸触ったのもー
 見えちゃった!」

笑う姫梨ー

裕平は顔を真っ赤にしながら戸惑うー
まさか、記憶があったなんてー。

裕平は、昨日のことを思い浮かべながらー
”姫梨に怒られるようなこと、したかもしれない”と思い、
必死に昨日のことを思い出していると、
姫梨はにっこりと笑いながら「ありがとう」と呟いたー。

「--え?」
裕平が姫梨を見ると、
姫梨は「--裕平、わたしの身体のこと、とっても心配してくれてるの
ちゃんと伝わって来たからー、
だから、ありがとうー」と、改めてお礼の言葉を口にしたー。

その言葉に、裕平は照れ臭そうにしながらー
姫梨の方を見つめたー。

姫梨ともー
眞喜雄ともー
これからの人生でも、良い関係を続けていきたいー

裕平は、改めてそう心の中で誓ったのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

たまには平和的なモノも!
ということで、悪意のない憑依モノでした~!

3人は、これからもうまくやっていけそうですネ!

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    最後まで平和的な明るい雰囲気のまま終わりましたね。

    もしかしたら眞喜雄が最終的に姫梨の身体を返したくなくなって、約束破って、そのまま乗っ取るダークな展開になるのではと予想してたので、逆に意外でした。

    もし眞喜雄が他の作品の憑依人みたいに自分勝手な性格だったら、確実にそんな感じの展開になってたに違いない。というか、そんな性格だったらそもそも許可なんもらわずに一方的に憑依してたかな?

    姫梨は眞喜雄がまともで良心的な人物で本当に幸運でしたね。
    そうじゃなきゃ、今頃、完全に乗っ取られているとこです。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    あまりにも平和的過ぎて
    ダークな展開になるのかな…?と思わせつつ、ならない!
    という作品にしてみました~笑

    姫梨も、小さいころから眞喜雄のことを知っているので、
    信頼していて、身体を貸した、という感じですネ~!