親友が、彼女に憑依して
”親友に憑依された彼女”とお祭りデートをすることになってしまった彼ー。
戸惑いつつも、お祭り当日を迎えて…?
--------------------—
お祭り当日の夕方ー
お祭りが始まる2時間前に、裕平の家に集まった
姫梨と眞喜雄は、話し合いをしていたー。
「--お祭りが終わったらすぐに身体を返すから」
眞喜雄がそう言うと、
姫梨は「うん」と頷いたー。
さすがに”これから乗っ取られる”となると、不安なのか
昨日より、少しだけ元気がないように見える姫梨ー。
「-大丈夫か?嫌なら今からでもパスしてもいいんだぞ?」
彼氏の裕平が気にしながら姫梨に声を掛けると
「ううん。大丈夫ー。
なんていうか、こうー…受験前のドキドキみたいな感じー」
と、笑みを浮かべたー。
「---姫梨の身体で、変なコトするんじゃねぇぞ?」
裕平が、眞喜雄に”確認”すると
「わかってるって!俺がそんな奴に見えるか?」と、眞喜雄が笑いながら答えたー
「いや、お前の場合、
悪さ…というより無自覚で変なことしそうだからなぁ」と、裕平は
戸惑った様子で呟くー
「--わ、分かってるって!ちゃんと女の子として振舞えばいいんだろ?」
眞喜雄がそう言うとー、
「あ、でも!」と、二人に向かって言い放つー
「その…トイレとか、浴衣に着替えるときとかー…
それは仕方ないよな…?」
眞喜雄の言葉に、姫梨は少し恥ずかしそうにしながらもー
「うん…それは……仕方ない…かな」と、答えたー。
裕平は「我慢しろよ!トイレ!」と
眞喜雄にツッコミを入れたがー
眞喜雄は「なに~!?漏らしちゃったらどうするんだよ!?
それともお前、彼女が漏らしてるとこ、見たいのか~?」と
揶揄うような口調で反論してきたー
裕平は顔を赤くしながら「ばかっ!そんな趣味はねぇ!」と
声を上げたー。
そしてー
いよいよ、眞喜雄が姫梨に憑依する瞬間がやってきたー。
「-じゃあ…俺が憑依薬を飲んでー
これから、姫梨ちゃんに憑依するからー」
「----うん」
姫梨は深呼吸してから頷くー。
「---飲むと俺、急に気を失ってここに倒れるけどー
幽体離脱しただけだから、気にしなくて大丈夫だからな」
眞喜雄はそう言うと、「よし」と呟いてからー
憑依薬を一気に飲み干したー
眞喜雄はすぐに、ふらっ、として、その場に倒れるー。
「--!」
裕平も姫梨も、一瞬戸惑ったが、
先に眞喜雄から説明されていたため、それ以上は驚かなかったー。
「-ーーじゃあ……その…楽しんで」
姫梨が緊張した様子で言うと、
裕平は「楽しめるかは分からないけど、眞喜雄のことはしっかり見張るから」と
笑みを浮かべたー。
「--うっ…」
姫梨がビクンと震えるー。
「--…」
裕平は複雑な気持ちで姫梨を見つめたー。
”彼女が憑依される”
三人全員が同意の上で、とは言え、やはり、複雑だったー。
「----……はぁぁぁ……マジで憑依しちまったー」
姫梨がニヤリとしながら、自分の手をまじまじと見つめるー。
「--ほ、本当に眞喜雄なのか?」
裕平が戸惑うと、姫梨は
「へへっ!もちろん!俺だぜ!」と笑みを浮かべたー。
姫梨の口から眞喜雄の言葉が、姫梨の声で出て来ることに
激しい違和感を感じながらも、
裕平は”目の前の姫梨が眞喜雄に憑依された”ということを
実感したー。
「--それで、姫梨は今、どうなってるんだ?」
裕平が言うと、姫梨は答えたー。
「-ウーパールーパーでしか試してないから分からないけど、
たぶん、姫梨ちゃんの意識は眠ってると思うー。
ほら、アニメとかみたいに、心の声が聞こえてきたりもしてないしー」
姫梨が言うと、
裕平は「そっか」と呟いたー。
「--さてさて…浴衣に着替えますか!
俺の長年の夢!」
姫梨はそう叫ぶと、あらかじめ姫梨本人が用意していた
浴衣に着替え始めたー。
「---って、これ、どうやって着るんだ?」
姫梨が浴衣を手にしながら、苦笑いするー。
「--俺に聞くなよ!」
裕平が、思わず声を上げるー。
「-ーーだよな。なんか男と女で違うとかなんとか
聞いた気がするけど」
姫梨が、浴衣を見つめながら呟くー
「-だったら、憑依する前に、着替えて貰えば良かったじゃないかー。
それともお前、まさか、それを口実に姫梨の身体で
着替えを楽しもうとしてるんじゃないだろうな?」
裕平が言うと、姫梨は「ちげーよ!」と可愛い声で叫ぶー。
その声に、
裕平と姫梨は二人ともドキッとしてしまうー
「-おい…姫梨の身体でそんな声出すなよ」
裕平が言うと、
姫梨も「今のは、なんかこう、グッと来たなー」と呟いたー。
「--と、とにかく…
”女の子として浴衣を着てみたい”ってのは
着替えるところから始まるんだよ。
別に着替えて、下着を見たりとか、そういう目的じゃないし!」
姫梨の言葉には、嘘をついているようには感じられなかったー
眞喜雄は”着る”ところから体験したいー
そういうことなのだろうー。
「-わかったわかった
…で、どうするんだよ?」
裕平が言うと、姫梨に憑依した眞喜雄は、姫梨の身体でニヤッと笑うと、
「こういうときはーー」
「ググれ!」
と、叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お祭りの会場にやってきた二人ー。
「ん~~~これ、、歩きにくいぞ~」
ふらふらしながら、裕平の背後を歩く姫梨ー。
「あんまりふらふら歩くなよ」
裕平が、周囲の目を気にしながら呟くー。
「---はぁ~~~~~~」
隣でため息をつく姫梨ー
「-今度は何だよ?」
裕平が言うと、姫梨は満面の笑みで答えたー
「いやー…
なんか、こうして俺が女の子として浴衣を着てるなんて…
ほんと、夢みたいでさ…」
姫梨は、”夢を叶えた子供”のように、
嬉しそうに笑いながら、お祭りの光景をうっとりと見つめたー。
「--俺の夢を叶えてくれた、姫梨ちゃんにもー
お前にも、本当に、感謝してるよー」
姫梨の言葉に、
裕平は一瞬ドキッとしたような表情を浮かべてー
首を振ったー
「くそっ!ダメだー。
見た目は姫梨なのに、中身はお前とか…
俺の頭がバグりそうだー」
裕平が言うと、姫梨は笑ったー
「--へへへへっ!じゃあ裕平~♡
今日はたっぷり楽しもうね~!」
姫梨みたいな口調で、腕にしがみついてくる
姫理に憑依した眞喜雄ー。
「おいマジでそういうのやめろ~~!
頭が破裂する!」
裕平が言うと、
姫梨は「恥ずかしがらない恥ずかしがらない~!」と
嬉しそうに、裕平の手を握りしめたー。
「(ダメだー。頭がおいつかないー)」
裕平はそんな風に思いながら
姫梨の方を見るー
姫梨がにこっ、とほほ笑むー
顔を真っ赤にする裕平ー
”これは姫梨じゃない”
”これは姫梨じゃない”
”これは姫梨じゃない”
頭の中で、自分に言い聞かせるかのように
何度も何度もそう呟くー
”こいつは眞喜雄だー”
”こいつは眞喜雄だー”
”こいつは眞喜雄だー”
さらに、自分の中でそう念じてからーーー
目を開いて姫梨の方を見つめるとー
にこっ、とほほ笑む眞喜雄の姿が目に浮かんでーー
「おぇっ」
と、叫んだー
「おぇっ???」
姫梨が首を傾げるー
「な、なんでもねぇ」
裕平はそう言うと、
「ほら、浴衣の女の子でお祭り体験したかったんだろ?
とにかく色々回るぞ」
と、気を紛わせるために、言い放ったー。
スーパーボールすくいに挑戦する二人ー
「--あっ」
裕平は、最初の1個をすくおうとして、早速失敗するー
「あはははははは!お前へたくそだな!」
姫梨が笑いながら寄ってきて、
「俺が見せてやるぜ!」と叫ぶと、
そのままスーパーボールを次々とすくってみせたー。
スーパーボールすくいを終えると「おい」と小声で
裕平が呟くー
「言葉遣い!」
裕平の言葉に、姫梨は「あっ!」と声を上げるー
「-お前がスーパーボール1個もすくえないもんだから、つい」
姫梨が、ごめん!と手を合わせて言うとー、
「--変な風に見られるのは姫梨なんだからな~?
次ミスったら憑依終了だぞ~?」と、姫梨の方を
じーっと、見つめたー。
「--あ、、い、、わ、わかったよー」
姫梨の言葉に、裕平は、少し顔を赤らめると
「まぁ、多少は仕方ないけど、さっきみたいに露骨に男化してるのは
やめてくれよ」と、言葉を付け足したー。
「--お、おぅ」
姫梨はそう言うと、そのまま裕平と共に、再びお祭りの色々なものを
回り始めたー
こうして、一緒に歩いていてー
言動も、姫梨らしくされてしまうと、
本当に、姫梨と一緒にお祭りに来ているような
気分になってしまうー。
中身はあのゴツイ眞喜雄だと言うのに、
身体が姫梨、というだけで、頭がバグってしまいそうになるー。
「裕平~!今度は金魚すくいやろうよ~!」
裕平の方に向かって、姫梨が可愛らしく手を振るー。
そんな仕草を見ただけで、裕平はドキッとしてしまうー。
(違う…違う違う違う
あれは姫梨じゃないー
眞喜雄だー
眞喜雄にどきどきしてるなんて、どうかしてるぞ、俺)
心の中で何度も何度も深呼吸を繰り返す裕平ー。
眞喜雄本人が
”今度は金魚すくいやろうよ~!”などと
会話らしく手を振って来たらー
裕平はドキッとなどしないだろうー。
むしろ、オエッとするはずだー。
だが、身体が姫梨のもの、というだけで、
どきどきしてしまうー。
「おま、、お前さぁ…」
裕平は姫梨に近づくと、小声で呟くー
「--そ、そんなに女の子っぽい仕草されちゃうと、
中身がお前って分かっててもドキッとしちゃうだろ!?」
その言葉に、眞喜雄は「なんだよ、お前、俺にどきどきしてるのか?」
と、小声で返事を返すー。
「いや、だってさ…ほら」
裕平の言葉に、眞喜雄は笑いながら
「さっきお前が、男っぽい仕草はやめろって言ったんだぞ?」と
笑いながら言葉を返したー
「ぐっ…ぐっ…そうだけどさ」
震えながらそう答える裕平ー。
「へへへ、ほら、もっと楽しも、裕平♡」
ウィンクしてくる姫梨ー
裕平は再びドキッとさせられてしまうー。
「ーーーあ!チョコバナナ~!」
姫梨が、チョコバナナの方を指さすと、
裕平は「お前は、甘いもの嫌いだっただろ~?」と、
首を傾げるー
「でも、わたしは今、姫梨だもん!」
浴衣をひらひらとさせながら笑う姫梨ー
「--姫梨は、甘いモノ大好き!」
姫理の言葉に、裕平は、ハッとするー。
”そうか…眞喜雄は今、姫理に憑依しているから…
味覚も姫梨のものなのか”
とー。
「--へへへ 女子として甘いもの食べてみたかったんだよなぁ~」
姫梨が小声で裕平に言い放つー。
「あんま食べ過ぎるなよ…
太らせたら、姫梨が怒るぞ?」
裕平の言葉に、姫梨は「1個ぐらいで太るわけないだろ」と、
返事をするとー、
そのまま嬉しそうにチョコバナナの方に向かって歩いて行ったー。
チョコバナナをおいしそうに食べる姫梨ー
ガツガツ食べているのが少し気になってしまったが、
これ以上突っ込むと、眞喜雄が再び何か
どきどきさせてくると思った裕平は、
何も言わなかったー。
そしてー
チョコバナナをおいしそうに食べ終えた姫梨は、
少し周囲をキョロキョロと見まわしてから、
申し訳なさそうに呟いたー。
「あのさーーー」
「ん?」
裕平が姫梨の方を見ると、
姫梨は申し訳なさそうに呟いたー。
「--トイレ、行きたくなっちまったー」
とー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
親友に憑依された彼女とのお祭りデート!
ほのぼのとした感じで進んでいますが
最後までほのぼのと進めるのでしょうか~?笑
次回が最終回デス!
コメント