馬と、彼女が入れ替わってしまったー。
2人を元に戻すために、
実家の牧場で、彼氏は奔走する…!
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ある日ー、
大学生の卓三は、彼女の紗江を楽しませようと、
実家の牧場に紗江を招き入れていたー。
牧場では、乗馬の体験なども行っており、
今日は紗江のために、と、特別に父親からの許可を得て、
貸し切り状態で、紗江に牧場を堪能させてあげることが
出来るー…
そんな、日だったー。
しかし、スタッフの井尻の立ち合いの元、
馬のリリに乗馬したところ、突然リリが暴れ出して、
リリは転倒ー
乗馬していた紗江もそのまま転倒してしまうー。
その結果ー
2人は入れ替わってしまって、
紗江がリリにー、
リリが紗江になってしまったのだったー。
井尻にも、父親にも信じてもらえない状況下で、
井尻の提案により
”もう一度入れ替わった時の状況”を作り出すことを
卓三は決意したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「----大丈夫か?」
卓三が馬のリリに声を掛けるー
中身は、卓三の彼女・紗江だー。
リリ(紗江)は、
馬になってしまったために、
人間の言葉を発音することが出来ないー。
馬として声をあげながら、
何度か頷くー
「そっかー。
ごめんな。
必ず、元に戻すからー。」
そう呟いていると、井尻が「つきました」と
声を出したー。
最初に、紗江とリリが入れ替わってしまった場所ー。
そこで、今度は、リリになった紗江が
紗江になったリリを乗せてー
入れ替わったときと同じような行動をすれば、
”元に戻れるのではないか”
そう、考えたのだー
「-紗江、さっきと同じようにー」
卓三が、馬のリリになった紗江に説明するー。
馬とは言え、中身は紗江だから、
説明をするのは簡単だったし、
さっきと同じような行動をしてもらうことも、
比較的容易だー。
リリ(紗江)は、人間の言葉をしゃべることは
出来ない様子だったが、
深くうなずいて”わかった”ということを
示してくれたー。
「--ふぁぁぁあぉぉぉおぁああああ」
奇声を上げながらじたばたしている紗江(リリ)を見るー
問題はー
紗江(リリ)の方だー。
人間の言葉を発音は出来るはずだが、
中身が、馬のリリであるために、先ほどから
意味不明な奇声を発することしか出来ていないー
スカートがめくれた状態で、芝生に寝転んでしたばたしている
紗江(リリ)を見て、
卓三が少し顔を赤らめていると、
背後からリリ(紗江)がやってきて、首でどつかれたー
「--わっ!ごめん!
つい」
卓三が苦笑いしながら、リリ(紗江)の方を見て
すぐに謝るとー
「今、元に戻してやるからな」と、呟いてー
その場に立ち尽くしたー。
”どうしたの?”と言わんばかりに、リリ(紗江)が近づいてくるー。
「---あ」
スタッフの井尻も、紗江(リリ)の方を見つめて笑うー。
紗江(リリ)は、芝生に寝ころんだまま、
お漏らしをしてしまっていたー
”いやっ…”と言わんばかりに
目を逸らすリリ(紗江)-
「あらら…馬にとっては、人間の身体は慣れませんし、
人としてトイレに行く、なんて分かりませんしねぇ…」
と、スタッフの井尻は、戸惑いながら、紗江(リリ)の方を見つめたー。
「-と、とにかく、早く元に戻しましょう!」
卓三が言うと、
「--っていうか、ドッキリのためにここまでやります?」
と、井尻が呆れ顔で笑ったー
「だ、だからぁ!本当に入れ替わってるんですって!
おふざけで、こんなお漏らしまですると思います!?」
卓三がスタッフの井尻に言うと、
井尻は少し考えてから、フッ、と笑って、
「まぁ、そういうことにしておきますか」と呟いたー
「いや!?信じてくださいよ!」
卓三はそう叫びながらも、
紗江(リリ)を見つめて、考えるー。
”問題は、どうやって、紗江になったリリを、
馬の上に乗せるか、だなー”
とー。
正直、こんなにじたばたされたり
何だりしていると、紗江(リリ)を馬の上に乗せるのは
非常に難しいー。
「-----」
卓三は考え込むー
そうこうしているうちに、紗江(リリ)が、また、
四つん這いの姿勢になって、そのまま牧場を走り出すー
「あ!ちょっと!待てってば!」
卓三が叫ぶー
井尻は面白そうにその様子を見つめて、笑っているー
「井尻さん!手伝ってくださいよ~!」
卓三が叫びながら、紗江(リリ)を追いかけていると、
井尻は「仕方ありませんね」と笑いながら、
紗江(リリ)を捕まえるのを手伝ってくれたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんとか、紗江(リリ)を捕まえた卓三とスタッフの井尻ー。
井尻が紗江(リリ)を押さえている間に、
卓三は、リリになった紗江の方に近づいて
「もうすぐ、元に戻れるから」と、呟く。
リリ(紗江)は静かに頷くー。
入れ替わった相手が”馬”ではなく
”昆虫”とかだったら、本当に大変なことになっていたー。
馬であれば、こうして、頷いたりすることも出来るし、
ある程度の意思疎通は出来るー。
もちろんリリになった紗江は、今頃
”人間の言葉を話せないもどかしさ”を強く感じているとは
思うけれど、それでも、何も意思疎通することができないよりはマシだー。
昆虫と入れ替わっていたら、首を振ることも出来ないし、
見失ったり、踏みつぶしてしまう事故が起きる可能性もあったー。
「-入れ替わったのが馬でラッキーだったのかもな」
そんな風に思いながら、卓三は、「井尻さん!」と叫んだー。
スタッフの井尻が、草を口に咥えてむしゃむしゃしている
紗江(リリ)を連れて来るー。
「--って、草!草!食べてる!」
卓三が言うと、
リリ(紗江)も、馬の身体で声をあげたー。
「---と、ところで、どうやって、この子を馬に乗せるんです?」
スタッフの井尻が言うー。
最もな疑問だー。
このまま、紗江(リリ)を馬に乗せようとしても、
中身がリリである紗江が、大人しく言うことを聞くはずがないー。
手を離した瞬間に、走り去っていく可能性もあるし、
誰かが押さえていないといけなかったー。
「-二人乗りします。
俺が後ろから紗江の身体を押さえますんで」
卓三が言うと、スタッフの井尻は、「なるほど」と頷いたー。
じたばたする紗江(リリ)を苦戦しながら馬に乗せると、
その後ろから、卓三も、リリ(紗江)の上に乗るー
「お、重いよな?ごめんな」
卓三が、リリ(紗江)に言葉を掛けるー。
普通だったら手綱などで馬をコントロールする必要もあるがー、
リリの中には今、紗江がいるー
言葉で指示を下すだけで、リリ(紗江)はしっかりと動いてくれるー。
だからー
卓三は、紗江(リリ)が馬から落ちたり、逃げないように、
背後から、がしっと、押さえつけたー。
「---じゃあ、紗江…さっきと同じような感じで、
うまく転倒してー…
痛いかもしれないから…なるべく気を付けながらな…」
卓三が言うと、リリ(紗江)は静かに頷くー
スタッフの井尻が、その様子を見ながら
「それにしても…本当に元に戻れるんですか?」と首を傾げたー
「--戻れるはずですー。
いやー
可能性があるなら、俺はなんでもやりますー」
”入れ替わり”という未知の現象の解決策は分からないー
だが、今のような状況では
”入れ替わった時の状況”をもう一度再現するのが、
一番手っ取り早かったー。
「----…」
今までヘラヘラしていたスタッフの井尻は、
少しだけ間を置いてからー
「--本当に、彼女さんのことが好きなんですねー」と、
感心したかのように呟いたー。
「--わかりました。
もし落馬の時に怪我をした場合には、
すぐに応急手当できるように、
救急箱も持ってきましたのでー。
安心して、落馬してください」
スタッフの井尻の言葉に、
「安心して落馬 って なんだか変な響きですね」と
卓三は苦笑いしたー
「--確かに」
スタッフの井尻も笑うー。
「--紗江、準備はいいか?」
乗馬した状態で、紗江(リリ)を背後から押さえながら呟くー。
紗江になったリリに聞いているのではなく、
リリの身体になった紗江への確認だー。
紗江は、静かに頷くー
「よしーじゃあ…」
卓三はそう呟くと、紗江(リリ)に向かっても
声を掛けるー。
「リリ…もうすぐ元に戻れるからな。ごめんな」
卓三は、そう呟くと、
スタッフの井尻の方を見て
「じゃあ、行ってきます」と呟いたー
走り出すリリ(紗江)-
リリになった紗江は
”馬として走るのって、なんだかすごく変な気分”
と、思いながらも、
まるで遊園地の乗り物に乗っているかのようなー
そんな、新鮮な感覚を覚えるー。
さっき落馬した地点に向かい、バランスを崩そうとするリリ(紗江)-
”さっきと同じ環境を、作りさないとー”
そんな風に思っていた、その時だったー
「--!?」
卓三が表情を歪めるー。
紗江(リリ)が雄叫びを上げて馬の上で暴れ始めたのだー
「あ!ちょっと!暴れるなって!
もう少しで元に戻れるんだから!」
卓三が言うー
だが、紗江(リリ)は暴れるのをやめようとしないー
リリになった紗江の上で
暴れる紗江になったリリー
それを必死に止めようとする卓三ー。
馬の身体に不慣れだったリリ(紗江)は、
上で暴れられたことによって、うまく身体をコントロール
できなくなってしまうー。
「---え…!?紗江!?」
リリ(紗江)がバランスを崩して、向かっていた場所とは別の場所に走り出してしまうー。
卓三は驚きながらも、紗江になったリリを必死に支えようとするー。
しかしー
”--お願い!暴れないで…うまく走れないよ…!”
リリになった紗江の叫びー。
当然、馬の身体では人間としての言葉を
発することもできず、
その叫びは、卓三にも、紗江になったリリにも届かないー
「---え」
少し離れた場所にいたスタッフの井尻が異変に気付いたときにはー
もう、手遅れだったー。
リリになった紗江がこっちに向かってくるー
「--井尻さん!よけて!!!」
卓三が、紗江(リリ)を押さえながら大声で叫んだー
「え…っ!?えっ!?
予想もしていなかった出来事に、スタッフの井尻は回避
することもできずー
そのまま、リリ(紗江)と衝突し、
リリ(紗江)は転倒ー
乗馬していた卓三と紗江(リリ)も、投げ飛ばされたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
うーーー…
卓三が意識を取り戻すー
慌てて周囲を見渡そうとする卓三ー
”みんな、大丈夫か!”
そう叫んだつもりだったー
だがー
自分の口から、人間としての言葉は
発音されなかったー
”--!?”
卓三は首を動かして、自分の様子を確認するー
そしてーー
”えっ!?!?お、、俺がリリにーーーー!?
周囲を見渡すと、
馬のように四つん這いで牧場を走るスタッフの井尻の姿がー
「--おぉぉぉ……おぉぉぉぉぉぉっ!?」
紗江がニヤニヤしながら自分の手を見つめているー
そしてーー
「--わ、、わたしたち…」
起き上がった卓三が、唖然としながら叫んだー
「--わたしたち4人、バラバラに入れ替わっちゃった!?」
卓三になった紗江の叫びー
馬になってしまった卓三は、唖然とした様子で
周囲を見渡すことしかできなかったー。
おわり
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コメント
最後は「ウマカレ」になってしまいましたネ笑
書こうと思えば続きも書けそうですが
集団入れ替わり発生エンドにしてみたかったので、
ここでおしまいデス~!
お読み下さりありがとうございました!!
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