<皮>放課後の告白②~返事~

後輩女子からの突然の告白…

「愛」の告白と、
「闇」の告白を前に、彼は、どうするべきか困惑するー…!

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告白の返事まで、あと6日ー。

「昨日は、どうだったんだよ?」
友人の五太郎が笑うー。

昨日は、結局、五太郎にメッセージの返事を返す
気力も無くなってしまい、
只々、恐怖におびえていたー。

昨日のことを思い出すー。

「--蒼井琴葉は、小3のときに、俺が”皮にして乗っ取ったー」
「---この子本人の意識は、その時から封じ込められたままー」

「-----…と、いうことなのでーー
 わたしは、わたしであって、わたしではないんですけどー
 でも、わたしも、蒼井琴葉として、もう7年ぐらい生きて来たのでー
 今ではわたしが蒼井琴葉みたいなものなんですー」

あまりに、衝撃的な出来事だったー。

後輩・琴葉の姿がペロリとめくれてー
中からはいかつい感じのヤバそうな男が姿を見せたー。

まるで”着ぐるみ”のように、めくれてー
”着ぐるみ”のように着られた琴葉ー

あれは、いったいー

「--おいってば!」
五太郎の言葉に、ようやく我に返った明弥は
「ご、ごめん」と、五太郎の方を見て
お詫びの言葉を口にしたー。

「--で?結局、昨日はどうだったんだよー?

 あ、まぁ、言いたくないなら言わなくていいけどさ。
 その様子じゃ、イイ感じの話じゃなかったんだろうし」

五太郎が言うと、
明弥は「いや、告白されたよー。蒼井さんから」
と、五太郎に言い放ったー。

「マジで!?やったじゃん!おめでとな!
 だから言っただろ~?
 これで、チーズバーガー10個奢りな!」

昨日の”賭け”の話をして笑う五太郎ー。

だがー
明弥は元気がない様子だー。

五太郎が、”琴葉ちゃんから告白されたのに、
どうしてこんなに暗いんだ?”と疑問に思いながら
「--お、お前、なんかさ…その割に、暗くね?」と、
表情を歪めるー。

「-あ、もしかして、お前…蒼井さんのこと、興味ない…とか?」
五太郎が言うと、明弥は首を振ったー

「興味…っていうか、蒼井さんに悪い印象はないし、
 告白自体は嬉しいよー」

そんな明弥の言葉に、少し安心しながらも
五太郎は、やはり明弥の様子に戸惑っていたー。

「---振ったのか?」

五太郎が言うと、明弥は「いいやー」と呟いてから
「返事は、1週間後にしてあるー」
と、答えたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

告白の返事まで、あと5日になったー。

明弥の中で、答えは決まらないー。
そして、今日は放課後の図書当番の日で、
しかも、あろうことか、琴葉と一緒に担当する日だったー。

「--あ、先輩!」
琴葉はもう、図書室に到着していて、
いつも通り、放課後の図書室利用者のために
カウンターで業務をこなしていたー。

「--あ、蒼井さん、お疲れ」
明弥は”動揺している”と悟られないように、
カウンター内の、琴葉から少し離れた場所で
図書委員の仕事を始めるー。

別に、わざと距離を取っているわけではないー
”いつも通り”だー。

琴葉の方をチラッと見る明弥ー。

カウンターに利用者が来ないタイミングでは、
琴葉は、本を読んでいることが多いー。

今日も、そうだー。

「---!」
明弥は、琴葉が読んでいる本を見て、少しだけ震えたー。

残酷な凶悪犯が、
カップルを次々と地獄に落としていく
スプラッター系の小説ー。

「---………」

”元々”琴葉がどんな本を読んでいるのか、意識したことは
あまりなかったー。

”普段から”こういうのを読んでいるのかー
それともー。

「--先輩…そんなに見つめないでくださいよ~? 
 何か御用ですか?」
琴葉が微笑みながら言うー。

一見すると、普通の女子高生ー
でも、その正体はー…

「--あ、俺、返却された本、戻してくるよ」
カウンターにいくつか貯まった生徒から返却された本を
手にすると、明弥は逃げるようにしてカウンターを離れたー。

遠目から琴葉の方をさりげなく見つめるー。

仕草は完全に女子高生で、
おかしなところは何もないー

昨日見た光景は、もしかしたら、夢だったのかもしれないー。

明弥はそんな風にさえ、思い始めるー。

告白までが現実で、
その後の、琴葉の”秘密の暴露”は夢だったのではないか、と
そんな、”都合の良い現実逃避モード”に入ってしまったー。

わざと時間をかけて、本を元の本棚に戻すと、
明弥は再びカウンターへと戻って行ったー。

「---ありがとうございます」
本を戻す作業のお礼を口にする琴葉ー。

「--あぁ、いやーどうってことないよ」
いつものように振舞おうと必死な明弥ー。

琴葉の態度は”いつもの後輩”だー。

もしかしたら、告白すら夢だったのかもしれないー。
そんな風に思い始めたその時だったー

「--よ~~~~!」

「--ご、五太郎!」

今日は、”明弥”と”琴葉”が、図書当番だと知っていた五太郎は、
告白された明弥を揶揄うために、遊びに来たのだったー。

「---おい!なんでここに!
 お前、本なんて読まないだろ!?」
明弥が言うと、五太郎が、周囲の利用者には聞こえないように小声で
「--琴葉ちゃん、こいつに告白したんだってな~!」
と、琴葉に対して言い放ったー

「おい!!」
明弥は思わず声を上げるー

これじゃ”告白されたこと”を言いふらしてるやつみたいだー。
まぁ…五太郎にだけは言ったのは事実ではあるのだけれどもー

「ふふふ はいー」
琴葉が嬉しそうに微笑むー

「でもあいつ、1週間も琴葉ちゃんを待たせるなんて、罪な奴だよなぁ~」
五太郎が笑うー。

”空気を読め!五太郎!早く去ってくれ!”と、心の中で叫びながらも、
明弥も苦笑いしながら、二人を見つめるー。

「-急でしたし、先輩もびっくりしてると思いますからー
 そのぐらい、全然待ちますよ!」
琴葉の言葉に、五太郎は「本当にいい子だなぁ~琴葉ちゃんは!」と
笑ったー。

「--もし振られたら、今度は俺に告白してくれよ~!」
五太郎が平気で、冗談なのか、本気なのか分からないが、
そういうことを口にしたー。

「-ふふふ 先輩は”絶対OKしてくれる”って信じてますからー」
五太郎に対して、琴葉はそう言ったー。

「ははは、すごい自信だな~!」

「---」
明弥は、そんな会話を少し離れた場所で聞きながらー
琴葉と目が合うー。

琴葉は、にこっ、と笑ったー

明弥には、その笑顔がー
”脅し”のようにも思えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

告白の返事まで、あと4日になってしまったー。

今日は休日ー。
明弥は自宅の中で悩み続けるー。

可愛い後輩の琴葉ー
琴葉の中から出て来たいかつい男ー。

「はぁぁぁぁ…」

”琴葉が乗っ取られている”
そんな、事実を知らなければ、正直、そのまま告白を受けていたー。

だがーー
どうしてもー

”人を皮にして乗っ取る”とはいったいどういうことなのかー。
そんな風に思いながら、スマホで”人間 皮”
”人間 きぐるみ”などと、色々検索してみるー。

だがー
明の望むような答えは、そこにはなかったー。

告白の返事まで、あと3日になるー。

琴葉は自宅で、笑みを浮かべていたー。

「--ククク…本当にわたしってば、可愛くなったよねぇ~…
 ”あたり”の女で良かった」

琴葉は鏡を見つめて、無気味な笑みを浮かべるー。

琴葉を乗っ取って7年ー。
小さいころに可愛くても、JC、JKと成長していく過程で、
可愛さが損なわれることは、よくあることだー。
逆も、また、そうだー。

だがー
琴葉は、順調に可愛く成長しているー。

「--…ククククククーー」
胸を揉みながら、スマホを片手で見つめる琴葉ー

「さぁ、先輩ー
 もっとわたしを楽しませてくださいー」

琴葉は歪んだ笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー
告白の返事まで、あと二日に迫ったー。

明弥は、未だに答えを出すことが出来ずにいたー。

結局、土日は無駄に浪費したー。
琴葉のことばかりを考えてしまいー
気が気ではないー。

琴葉は、7年前からあの男に乗っ取られているー
と、自分でそう言っていたー。

何かのドッキリだと思いたいー。
けれど、
琴葉の身体がぱっくりと割れて、中から男が
出て来る光景を、この目で、見たー。

何かの手品だろうかー。
いや、手品でもあんなこと、出来るはずがないー。

と、なれば、琴葉は、琴葉であって琴葉ではないー。

図書室で当番をしながら、そのことばかり考えてしまうー。

”知り合った時から今の状態なら、それは琴葉なのではいか?”
”中身に男がいるなら、知り合った時からそうとは言え、それは琴葉ではない”
”少女を乗っ取るようなやつが、どんな姿をしていようとまともな人間であるはずがない”
”告白を断れば、何をされるか分からない”

色々な考えが、頭の中を駆け巡りー
そして、消えていくー。

「--大丈夫ですか?」
琴葉とは別の後輩ー
今日の図書当番で一緒の女子生徒が、心配そうに
明弥の方を見つめるー。

「--え…?あぁ、いや…大丈夫。ごめん」
明弥はため息をついてから、
「あ、あそこ、本出しっぱなしだから、片づけてくる!」と
気晴らしのために、カウンターの外に出て、
図書室の片づけを始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--こんにちはー」

昼休みー
琴葉が、教室に遊びに来たー。

告白の返事は”明日”

「--あ、先輩!今日は来月の文化祭の時の図書室の相談でー」
と、業務的な話をし始める琴葉ー。

明弥は、戸惑いながら、話に応じるー

こうしていると”普通”-

「--先輩…”明日”の話なんですけど、
 無理しないでいいですからね?

 返事がどっちでも、わたし、受け入れますから」

琴葉は、図書委員の相談を終えると、
小声でそう呟いたー。

「--あ、、え、、あぁ、、うん」
明弥がそう言うと、

「--先輩にOKを貰えたら、喜びますしー」
と、言いながら、図書室の案内のプリントを持ちながら
嬉しそうに微笑む琴葉ー

「---先輩に断られたら、また頑張ろう!って前向きに考えますから!」

優しい笑みー

「--!」

だがー
琴葉は”先輩に断られたら”と言い始めたタイミングからー
持っていたプリントをぐちゃぐちゃに手で握りしめてー
優しい笑みを浮かべながら
それを明弥に見せつけるかのように、拳を開いたー

「---それじゃ、明日楽しみにしてますね」
琴葉が立ち去っていくー

”脅し”

明弥は、そう受け取ったー。

”断れば、お前もこのプリントと同じようになるー”

そういう、脅しーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、ついに、運命の日がやってきたー。

「--放課後、返事するんだろ?頑張れよ!」
五太郎が、明弥の肩をポンと叩く。

「--まぁ、1週間待たせた分、いい返事をしてやれよ!」
五太郎は、何も知らないー

もし、琴葉の告白を断ればー
五太郎にも何か言われるだろうー。

それにーー

「--あ、先輩!」
先に待ち合わせした場所にやってきていた琴葉が微笑むー。

明弥は「お待たせ」と、愛想笑いを浮かべながら
琴葉の方に近づいていくー。

「--先輩の返事、楽しみです!」
ほほ笑みながら言う琴葉ー

告白を断った瞬間ー
この笑顔が消えて、襲われたりするのだろうかー。

中身が”男”の琴葉ー。

確かに、高校で琴葉と知り合った明弥からすれば、
”今の琴葉”が”明弥の中での琴葉”であり、
”本当の琴葉”とは一言もしゃべったことがないー、
ということになるー。

でもー
それでもー
”他人を乗っ取るような男が中身”の琴葉を
受け入れることは、明弥にはできなかったー。

「---え、、っと、蒼井さんー」
明弥が言うー。

「-ーーーごめん…俺、、、今は、誰とも付き合わないと決めていてー」

”琴葉だから”ではなく、”誰とも付き合わない”-

そういうことにすればー
怒りを買わずにー

「---あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「--!?」

琴葉が突然大声で叫び始めたー

「---え」
明弥が唖然としていると、琴葉は、にっこりとほほ笑んだー。

「-あ、ごめんなさい。発声練習を急にしたくなってー。

 で、返事… 聞こえませんでしたけど、
 もう一度、お願いできますか?」

琴葉の言葉に、明弥は震えたー

”明確な脅し”-

「---………」
明弥は、自分の身の安全や、あらゆることを考えた末にーーー

告白を受け入れてしまったー。

③へ続く

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コメント

付き合うことになってしまった明弥くんの運命は…!?
次回が最終回デス~!

今日もありがとうございました!

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皮<放課後の告白>

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