未来ではー
”結婚した夫婦は自由に入れ替わることが出来る”
ようになっていたー。
そんな、入れ替わりが当たり前になった”未来”の物語ー。
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「--ーでもさぁ、今でこそ、男も女も体験できるけどさぁ、
昔は違ったんだろ?」
綺麗な女性が、コップに入った水を飲みながら呟くー。
「---そうみたいだね~全然想像できないけど」
本を読みながら、その女性の夫が呟くー
「--俺たちからは想像できないな」
妻の方が、まるで男のような言葉遣いで呟くー。
この夫婦は今、入れ替わっていたー。
2XXX年では、
”結婚した夫婦は入れ替わることが出来る”のが
当たり前になっていて、
この夫婦は、定期的に自分たちの身体を
入れ替えながら生活しているー。
2人は、とても仲が良くー
入れ替わりで、苦しみもうまく分かち合いながら、
生活を続けているー。
だがー
当然、”結婚した夫婦はキスをすることで入れ替わる”という
現象が、プラスになるだけではなく、
マイナスになることもあったー。
例えばー
夫婦仲が悪くなり、どちらか片方が、相手の身体を奪ったまま
行方を晦ましたりするパターンもあるし、
入れ替わった状態で、相手を陥れたり、
相手の身体で犯罪を犯したりすることも、問題になっていたー。
当初は、”相手の身体で犯罪を犯す”と、その身体ごと逮捕されてしまい、
名前も身体側で報道されてしまうことから
大問題となっていたが、
今では、”中身”で、何事も考えられるようになっておりー
”元々の身体と心が一致しているかどうか”確認することのできる
技術も開発されたー。
もちろん、それでもトラブルは起きるのだが、
現在では、最初の頃のような、混乱はないー。
最初に入れ替わり現象が確認されたのは、
とある企業の会長の娘だったー
飲料水メーカー・サンシャインドリンクカンパニー会長、竜崎 茂雄(りゅうざき しげお)の娘、
竜崎 明日香(りゅうざき あすか)が、結婚した夫とキスをした瞬間、
身体が入れ替わってしまい、騒動になったー。
その後も、原因不明のまま少しずつ、”結婚した夫婦が入れ替わる現象”が
拡大していきー
現在では、”すべての結婚した夫婦”が入れ替わるようになっていたー。
はっきりとした原因は、今でも分からないー。
最初に入れ替わり現象が発生してしまった夫婦の妻・明日香の父親は
本業であるサンシャインドリンクカンパニーの会長としての役職を果たしながら
娘を救うために、研究を続けたー。
世間で、入れ替わり現象による混乱が拡大する中、
竜崎会長は、研究を続けたがー
最終的に成果を上げることができないまま、
竜崎茂雄は、老衰によって、この世を去ってしまったー。
そして、原因が分からぬままー
数百年の時が流れー、
人類は”夫婦が入れ替わる”現象を
受け入れることになったのだったー。
今では、当たり前のように、”結婚した夫婦は入れ替わる”
と、いう状況が生まれているー。
「---明日は、わたしがそっちの身体ね!」
妻が嬉しそうに言うー。
夫は、「明日は俺が女か~」と苦笑いしながら呟くー。
入れ替わり出来るーという状況を
当たり前のように楽しんでいる夫婦がいる一方、
「--産むのはあんただろ!」
「--はい、明日からあたし仕事だから入れ替わって!」
などと、”辛いこと”を、全て押し付けられるような
夫や、妻もいたー。
そしてー
この世界では、ある現象も進んでいたー
それが”容姿による格差の拡大”だー。
”結婚すれば、相手の身体として生活する時間も少なからず出て来る”
時代である以上、
”相手の容姿”は、何よりも重要なものとして考えられー
結婚における”容姿の格差”は、さらに拡大していたー。
容姿に恵まれなかった男女はー
”ほぼ確実”に生涯独身であるという、
容姿第1の時代になってしまっていたのだー。
もちろん、キスをしないようにして、
”入れ替わらない生活”を送る夫婦もいるが、
それはお互いが同意していなければ出来ないことであり、
片方が望んでいなくても、もう片方が、
入れ替わろうと強引にキスをすれば、
入れ替わってしまうー。
”相手と入れ替わる可能性を確実に排除できない”
そんな世の中であるからこそー
”相手の容姿”は何よりも重要なものとして、
その結果、結婚出来るか、出来ないか、は
さらに広がっていたー。
「-ーー」
今日も”婚姻届”を新たに提出して、
晴れて夫婦になった男女がいたー。
「では、こちらへ」
新婚のカップルー、
現役大学生の久米田 大吾(くめた だいご)と、
滝田 苗美(たきた なえみ)は、
婚姻届けの提出を終えると、職員から、別室に案内されるー。
これは”入れ替わり”の件とは別ー。
この未来世界では、
とある事情により「偽装結婚」が増えていた時期があり、
その対策として、”婚姻届けを提出した際に登録するシステム”が
採用されているー。
お互いに、血圧を測定するような機械に腕を入れて
「ぴぴっ」と音がすれば終了の簡単なシステムだー。
これにより、偽装結婚の件数を抑え込みー
現在に至っているー。
このシステムは入れ替わり現象発生の”前”から
採用されており、
当初”結婚した夫婦だけが”入れ替わる、ということに対し、
このシステムが真っ先に疑われたー。
何故ならー
”結婚していない人同士”がキスをしても入れ替わらないのに、
”結婚した人間同士”がキスをすると入れ替わる からだー。
結婚は、あくまでも人間が決めた”紙切れ”によるルールに過ぎないー
人間の身体自体は、何も変化していないはずなのだー。
なのに、結婚すると、相手とのキスで入れ替わるようになるー。
そのため、このシステムが疑われたー。
だがーーー
結果的に、システムは無関係であるとされ、
現在も使われ続けているー
何故なら、入れ替わり現象が最初に発生した
サンシャインドリンクカンパニーの娘・明日香と、その婚約者の入れ替わりは、
2122年のことだったからだー。
この、偽装結婚防止のために、夫婦の電子登録を行うシステムは、
2049年に導入されているー。
そのため、最初に入れ替わりが起きるまでに70年以上の間があり、
その間に”夫婦間の入れ替わり”は発生していないー。
つまり、この”夫婦紐づけ”のシステムに関しては、
無関係であると断定せざるを得なかったー。
それにー
このシステムを使った直後にー
キスをしてもーー
「--やっぱ、入れ替わらないな」
大吾と苗美が笑うー
入れ替わらないのだー。
結婚して、”ある程度落ち着く”と入れ替わるようになるー。
そのため、このシステムは”無関係”であると断定されたー。
それから数百年ー
”原因不明”のまま、人類は
”夫婦が入れ替わる”という現象を
”人間とは、そういう生き物だ”ということで、
上手く付き合い始めていたー。
「--しっかし、ヤバいよなー
今、結婚する人、2、3割しかいないんだろ?」
大吾が言うと、
「-う~ん、わたしたちはレアってことだね」
と、苗美は言ったー。
2XXX年の現在ー
”結婚する人間の方が少ない”というのが現状だー。
いやー
”できない”というべきだろうかー。
結婚すれば、”キスで入れ替わる”という状態により、
相手との結婚に慎重になる人間は確実に増えたし、
容姿の問題で、そもそも容姿に恵まれないと、結婚も難しいー
更には”偽装結婚防止システム”により、
結婚したカップルは、電子証明が行われるため、
結婚自体や、離婚自体に対するハードルも、高くなっていたー。
少し前からは、人間を”人工的に作る技術”の研究が急速に進められており、
まもなく、実用化される見込みであるとも言われているー
”未婚率”は、この世界では急激に上昇中だー。
だがーー
そんなことお構いなしに、
結婚した苗美と大吾は、入れ替わりな日々を送っていたー
「--うわぁぁぁ~~~やべぇなぁ~~~!」
メイド服を着た苗美が嬉しそうに騒ぎ出すー。
結婚してから1ヵ月ー
2人は、他の夫婦同様に入れ替わることが出来るようになっていたのだー。
「--そんなに喜ぶほど?」
大吾が言うー。
2人は、早速”入れ替わり”を堪能していたー
「喜ぶほどだよ!
苗美の身体でこんなかわいいを振りまけるなんて
もう、なんか夢みたいで語学力が消し飛びそうでーー」
メイド服を着た苗美(大吾)が言うー。
大吾(苗美)は笑いながら
「--そ、そんなものかなぁ」と、呟くー
「わたしは、自分で自分に興奮なんかしないけど…」
と、大吾(苗美)は付け足すー。
だが、そう言いつつも、大吾(苗美)も
大吾の身体のあちらこちらを興味深そうに触っているー。
「ーーほら、苗美だって、入れ替わりを楽しんでるじゃないか!」
と、大吾(苗美)のズボンを指さすー。
「--わっ!?いつの間に!」
大吾(苗美)が、膨らんだズボンを見つめながら
戸惑いの声を上げるー。
「-相手の身体になって興奮してるのは、お互い様、だな!」
苗美(大吾)が言うと、大吾(苗美)は少し恥ずかしそうにしながら笑ったー。
”初めての入れ替わり”を堪能する二人ー。
”結婚すると入れ替わることが出来るようになる”
そんな、”この時代での当たり前”を苗美も、大吾も、
たっぷりと堪能するのだったー
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1週間後ー
大学に”入れ替わった状態のまま”
向かった苗美と大吾ー
「--変なことは、お互いにしないようにな」
苗美(大吾)が言うと、
大吾(苗美)が「もちろん」と、頷いたー。
”入れ替わりが当たり前の世界ー”
入れ替わったことを隠す必要もないー
「--くっそ~~!羨ましいなぁ~!」
昼休みー
食堂で親友の光也(みつや)と雑談する
苗美(大吾)-
「-身体が違うだけで、味覚も違うんだから驚きだよな」
苗美(大吾)は、そう言いながらケーキのようなものを口に運ぶー
「だな~、普段お前、甘いもの苦手だもんな」
光也はそう言いながら、じろじろと苗美の身体の方を見つめるー
「--なぁ、触ってもいいか?」
「--だめだ」
光也は、ちぇっ、と言いながら、苗美(大吾)の方を見て
「中身がお前なら、ちょっとだけ、って思ったのに」と呟いたー。
「--それにしてもさぁ」
光也は少し間を置いてから、苗美(大吾)の方を見つめたー。
「--”結婚したら入れ替わることが出来る”ってー
当たり前だけど、なんか、不思議って言えば、不思議だよなぁ」
光也のそんな呟きに、苗美(大吾)は
きょとんとした顔をしながらー
少しだけ考えてー
「--確かに、そうだなぁ…
人間ってそういうシステムなんだと思ってたけどー、
なんか、不思議って言えば不思議だな」
と、呟いたー
その日からー
大吾は、”入れ替わり”に興味を持ってしまったー。
”当たり前”に、ほんのわずかだけ、疑問を抱いてしまったー。
②へ続く
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コメント
未来を舞台とした入れ替わりモノデス~!
未来系の憑依とかは何回か書きましたが
未来メインの入れ替わりは初めてだったような…
※「未来からやってきた僕は彼女になっていた~」は、未来がメインではなかったので…!
世界観の説明が長くなりましたが
次回もぜひお楽しみください~!
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