<憑依>身体はあっても家がない!③~名前~(完)

脱ホームレスのために通りすがりの女性の身体を
奪った男ー。

しかし、結局は、乗っ取った身体の名前も家も分からずに…?

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「--はぁ~~~髪もホームレスになると、邪魔なだけだなぁ」
乗っ取った女性の身体で、呟くシゲルー。

乗っ取った時点では綺麗な長い黒髪だったのだがー
家も名前も分からないために、ホームレスになってしまった現在ー
髪は傷みー、
最近では雨も続いているため、傷んだ髪がべとべとするような感じが
して、非常に気持ち悪いー。

「--仕方ない。切るか」
女性にとって髪は大事なものだと、聞いたことがある気がするー。

もちろん、そうじゃない人もたくさんいるだろうけれどー、
この女の場合は、おしゃれな感じだったし、
髪もよく手入れされていたからー、
恐らくは、髪も大事にしていたのだろうー

その髪をバッサリと切り、短髪になったシゲルは、
「-はぁ~これで少しは楽になった」と、生活しているテントの中で
寝転んだー。

綺麗だった生足も薄汚れているし、
すこしすりむいてしまった箇所もあるー。

「--綺麗な人って、やっぱ努力してるんだろうなぁ…」
すっかり、”綺麗”という感じではなくなってしまった
身体を見て、シゲルはため息をつくー

「あ~~~失敗したなぁ…
 せめて住所だけでも分かる女を乗っ取ればよかったー」

女性の知り合いはいなかったがー
帰宅直前の女性だったりー
家から出て来るところ見た、だったりー
相手の住所を知る方法は、いくらでもあったー。

だが、身分証明書もスマホも、何も持っていないー
などということを、
想定することを忘れていたシゲルは、
結局、ホームレス生活から抜け出すことは
できなかったー。

「--はぁ」
ため息をつきながら、薄汚れた肩だしの服で、
空き缶拾いを始めるー。

自販機のつり銭の返却口の確認も忘れないー。

おしゃれな服装なのに、
薄汚れていて、
しかも空き缶を拾っている女を見て、
周囲は、不思議そうに、それを見つめるー。

「--まぁ…女のホームレスは少ないって言うしな」
自分の口から女の声が出ることにも、もう、すっかりと慣れてしまったー。

「---」
自販機の下を覗くー
短いスカートを履いていて、後ろから丸見えの状態になっていたがー
もはやシゲルには、そんなことを気にするような
羞恥心はなかったー。

元々、長年ホームレスとしてやってきたのだー
男だろうが、女になろうが、
もはやシゲルに、そんなことは、関係のないことだー。

「---……お!」
シゲルは自販機の下に100円玉を発見して、
嬉しそうに手を突っ込むー。

「--くそっ…とれねぇなぁ」
短いスカートから下着を丸見えの状態にしながら
自販機の下の隙間に手を突っ込む女ー

周囲は唖然としているー
中には、嬉しそうにスカートの中を見つめたり
撮影している人間までいたー。

普通に街を歩いていただけなのに、
こんな風に身体を使われている彼女本人にとっては、
災難としか言えない状況ー

しかし、シゲルはそんなことお構いなしに、
「よっしゃ!100円!」と嬉しそうに叫んだー。

唖然とする周囲を無視して、
体臭を漂わせながら街を歩くー

「そろそろ、なんとか風呂も入らねぇとな…
 やっぱ、女でも何もしなきゃ臭うんだな」

シゲルは自分の短くなった髪を触りながら呟くー。

その時だったー

「---あれ…??結美(ゆうみ)じゃんー?」
背後から声を掛けて来たのはー
同じぐらいの年齢の女だったー。

「---え?」
シゲルが振り返ると、

「やっぱり結美!」
 と、その女は叫んだー

シゲルは唖然としながらも
すぐに”この身体の知り合いか!?”と
内心で笑みを浮かべたー

これでー
ホームレス生活からおさらばできるー

「--ど、どうしたのその格好!?
 最近、全然連絡も取れないし、大学にも来ないしー
 家にも帰ってないから、心配したんだよ!?」

友達らしき女がそう呟くー。

”大学”
ー乗っ取った女は女子大生だったのかー、と
シゲルは思うー。

その友達によれば、結美は一人暮らしで、
最近連絡が取れなくなったことを、
みんな心配していたのだというー。

シゲルは、笑みを浮かべながら、
「ご、ごめん…わたし、記憶が…なくなっちゃって」と、
苦笑いしながら答えたー。

さすがに”記憶があるフリ”をするのは不可能だと考えたからだー。

記憶がないのは事実だし、
そう答えておくのが、一番良いと思ったー。

「--え~…ほ、ほんとに?」
友達が言うー。

「--信じられないけど…」
友達はそう言いながらも、しばらく考えると
「--じゃあ…記憶を亡くしたから、家にも帰れず…  
 大学にも…来なくて…ってこと?」
と、呟くー。

シゲルが憑依している結美は頷いたー

「---うん」
結美の現状を見て、友達は表情を歪めるー。
”ホームレス”になり果てて、汚れた結美を見てー
あるいは、体臭を感じて、イヤな顔をしているのかもしれないー。

「---……わ、わたしの家、どこだか知ってる?
 ほ、、ほら、こんな格好だから、お風呂にも入りたいしー」
結美が言うと、
友達は少し考えてからー

「あ、じゃあ、ちょっとこれから大学に提出物だけ出してくるからー
 そのあと車で迎えに来るよ」

と、友達は答えたー

どうやら、友達は車を持っているらしいー。

”住所だけ教えてくれればいいから”とも言ったが、
友達は”記憶喪失の親友を放っておくことはできないし、大学にも事情を説明しないとでしょ”と
返事をしてきたー

確かに、その通りだー。
結美という子の記憶は読み取れないー
で、あれば、結美としてこれから生きていくためには、
事実上、記憶喪失として生きていくしかないー

スマホなどを確認しても、
結美の全てを知ることは不可能だろうからー。

「---わかった…うん…」
結美を乗っ取っているシゲルはそう言うと、
友達は、”妹尾 千佳子(せお ちかこ)”と名乗り、学生証をみせて来たー。

2時間後に待ち合わせする約束をし、
千佳子と別れた結美は、一度ホームレスの根城に戻るー。

大事な私物をいくつか回収するためだー。

しかしー

「---!」
テントに戻ると、学が笑みを浮かべながら、
シゲル…結美の方を見つめていたー

「--シゲルさん、そんなエロイ身体を見せつけられちゃ…
 俺、もう我慢できないっすよ」

結美に、シゲルが憑依していると決めつけている学はー
結美に襲い掛かって来たー

なすすべもなく、”女”として乱暴されてしまうシゲルー。

「やめろよ!」と言いながら学を突き飛ばそうとしたがー
”結美の身体”では、学の力に叶わずー
そのまま学の思うがままにされてしまうー。

やがて、強気な「やめろよ!」という態度は
弱弱しい悲鳴に代わりー、
結美の身体でイカされてしまったシゲルはー
半泣きの状態で、逃げるようにして、
ホームレスのたまり場から脱出したー。

「-くそっ!!お前らとなんか二度と関わるもんか!」
ホームレスのたまり場に向かって叫ぶー。

友達に声を掛けられてよかったー
やっぱり、男だらけのホームレス社会で結美のような女が
ホームレスになるのは、厳しすぎるー。

結美は、ボロボロの容姿のまま、足早に、
千佳子との待ち合わせ場所に向かったー。

待ち合わせ場所に到着して、しばらくすると、
赤いスポーツカーが近くに止まって、その中から千佳子が出て来たー

「え?それ、千佳子の車?」
結美が言うと、
千佳子は「あ、わたしが車好きなのも、忘れてるんだね?」と、苦笑いしてからー
「-家に送っていくから、乗って!」と、笑みを浮かべたー。

”へへへ…今日から俺も女子大生か”
結美に憑依しているシゲルは嬉しそうに心の中で叫んだー

車の助手席に乗り、千佳子の方を横目で見ながら
”悪いなぁ・・・”と笑みを浮かべるー

”お前のお友達の身体は、俺が貰ったぜ”
とー。

千佳子が「じゃあ、15分ぐらいでつくからー」と、
車を走らせ始めるー。

結美は”ボロ”を出さないように、千佳子と雑談しながら
結美の家に到着するのを待つー。

”記憶喪失の設定にできたのは良かったけどー…
 ボロは出さないようにしなくちゃな”
結美に憑依しているシゲルは、そう思いながら
千佳子との雑談を続けるー

ここで”ボロ”を出してしまったら、
全てが台無しになってしまうー。

「--…」
(この女の家、どんな家なんだろうなぁ…)
結美を乗っ取ったシゲルは、結美の部屋のあれこれを妄想するー。

まぁ、どんな家であろうと、
これからは自分が結美になるのだ。
結美の部屋も、結美自身も、
シゲルの好みに”カスタマイズ”していくー。

その、つもりだー。

「---…え?」
ふと、結美は首を傾げたー。

千佳子が運転していた車は、
廃工場のような場所に入り、そのままさらに奥へ進んでいくー

「--あのさ、わたしの家ってこんな場所にー?」
結美がそう言うと、
千佳子は車を止めたー。

結美に憑依しているシゲルは、この時点で
ゾワッ…と、本能的に危機感を感じていたー

「お前さぁ」
千佳子が呟くー

「---え」
結美が戸惑っていると、千佳子は続けたー

「--”俺”たちの憑依薬の取引、
 よくもジャマしてくれたよな?」
千佳子がうすら笑みを浮かべながら言ったー。

「----…!!」
結美は、表情を歪めるー。

「-いやぁ、憑依薬を勝手に持ち去った野郎を
 見つけ出すのは苦労したけどー
 おかしな女ホームレスがいると聞いてすぐにピンと来たぜー」
千佳子の言葉に、結美は、叫ぶー

「-お、、お前は、、誰だ!」
とー。

「--あぁ?身体は、千佳子って子だぜ?
 まぁ、その結美って子とは何の面識もねぇ女だし、
 この子の意識は、今は俺のものだけどな!」

千佳子が笑みを浮かべたー

結美は咄嗟に逃げようとしたー。

だがー
車の周囲は既に、黒服の怪しい男たちに囲まれていたー。

公園に置かれていた憑依薬をー
シゲルは持ち去り、結美を乗っ取ったー

しかし、あの憑依薬は、この裏組織が”取引”のために
あの場所に置いていたものー。

偶然、シゲルが持ち去ってしまったことで、
この組織は損害を受けたのだー。

「--へへへ 覚悟しとけよ」
千佳子が言うー。

「--ひっ!?」
車から引きずり降ろされた結美は、
そのまま男たちに乱暴に扱われて、
身体を弄ばれ尽くすー。

悲鳴を上げてー
自分が男であったことも忘れてしまうぐらいに
女として泣きじゃくるー

「---クククク まぁいいさー」
千佳子は、そんな結美を見つめながら微笑むー

「--憑依薬を盗みやがったなら、それはそれで、色々な使い道が、あるからな」
千佳子はそれだけ言うと、裸にされて、男たちに好き放題される
結美の姿を見つめながら、闇の中へと消えたー。

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数週間後ー

”組織”が経営する店でー
メイド服を着た結美が、虚ろな目で、
怪しげな男たちに”ご奉仕”していたー。

「----へへへ 結美ちゃん 俺のこれ、しゃぶれよ」
粗暴な男が言うー。

「---はい…ごしゅじんさま…」

この数週間で、すっかり自我を壊されるレベルで
好き放題され続けた結美は…
結美に憑依しているシゲルは、完全に、”組織”の
言いなりになってしまっていたー

男がズボンを脱いで、晒したソレを結美は
虚ろな目のまま咥えると、男が気持ちよくなるように
一生懸命、口を動かし始めたー。

おわり

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コメント

ホームレスが、憑依薬を使ったけれど、
乗っ取った身体の名前も家も分からない…!という
お話でした~!

それにしても、何も分からないまま
こんな目に遭っている結美ちゃんは可愛そうですネ…!

今日もお読み下さり、ありがとうございました~☆!

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