<憑依>身体はあっても家がない!①~ホームレス~

ホームレスの男が、憑依薬を手に入れた!

その憑依薬で美人の身体を奪ったもののー…
乗っ取った女が”誰で”、”どこに住んでいるのか”
分からなかった…。

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とある河川敷周辺ー。
ホームレスたちのたまり場となっている場所の一角で
過ごしているホームレスの男・シゲルは、笑みを浮かべていたー。

会社をリストラされて、住処も奪われて
ホームレス生活を始めてから、もう10年近くになるー。

いずれは元の生活に、

いずれは、いずれは、と、ずっとずっと考え続けては
いたものの、具体的な行動を起こすことは出来ないまま
無駄に月日だけが流れていきー、
気付けば、10年間もホームレスをやっていたー。

今ではすっかり、この一帯のホームレスのリーダー格。

「シゲさん!これ見てくださいよ~!」
笑いながら、小汚い男が声を掛けて来るー。

まぁ、自分も小汚いのだがー、と思いつつ、
その男が見せて来たのは
週刊誌の漫画だったー。

コンビニ近くのごみ置き場から発掘したのだと言うー。

「ーお~すげぇな~!これでしばらくは楽しめるじゃねぇか」
シゲルは、笑いながら、そのホームレスと一緒に
週刊誌を見つめたー。

”もしかしたら、これからもずっとホームレス”かも、しれないー。

だが、不思議なことに、人間、10年間もホームレス生活を
続けていると、
そんな生活の中にも”光”を見出すものだー。
彼は、次第に”この生活から抜け出したい”と思う気持ちが
薄れていき、ホームレスとして、定着しつつあったー。

がー

転機が訪れたのは、その翌日のことだったー。

あまりにも、突然の出来事だったー。

シゲルは「なんだこりゃ…」と、呟きながら
”ソレ”を見つめるー。

近所のサイクリングコースなども併設された
広々とした公園で、空き缶などを集めていたシゲルは、
”ソレ”を見つけたのだったー

”憑依薬”

他人の身体を乗っ取ることが出来る薬ー。

公園のベンチの脇に置かれていた憑依薬にはー
メモ書きも添えられていたー

”使い方は以前説明した通りだー
 飲んだあとに、乗っ取りたい相手にキスをすれば
 その身体を奪うことが出来るー。”

とー。

”キスをして、憑依する瞬間だけは、周囲に見られるんじゃねぇぞ”とも
添えられていたー。

「--な、なんだこりゃ…」
シゲルは、そう呟きながらも
途端に”ホームレス生活とおさらばできる”という欲が出て来たー。

”ずっとホームレスでもいいか”という思いは、
失われたー。

”ある日、檻の扉が開いていた動物園の動物”は
どういう行動を取ると思うー?

シゲルは、そんなことを考えたー。

どんなに、人間になついていて、
動物園の環境に慣れー
”このままでもいいか”と、動物が思っていたとしてもー
檻の扉がある日、突然解き放たれたらー?

”新しい生活”への出口が、解放されているのに、
動物はずっとそこに留まるだろうかー?

いいやー
留まらないね。

シゲルは思ったー。

俺も同じだー、と。

”憑依薬”という
ホームレス生活の出口を手にしたのに、
ずっとホームレスでいる?

そんなこと、あるわけがないー

「--俺は、、俺は、解き放たれる日がやってきたんだー!」

憑依薬を偶然見つけたシゲルは、満面の笑みでそう叫びー
その場から憑依薬を持ち去ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日から、シゲルは
ホームレスとして生活しながら
”好みの女”が現れるのを待ったー。

チャンスは一度きりー
どうせなら、とびきりの美女に憑依したいー

そんな風に思いながら、シゲルは
ホームレスたちのたまり場から、近くの道を通る人々を見つめたー。

「-シゲさん、最近、外ばかり見てますけど、どうしたんです?」
若めのホームレス・学(まなぶ)が声を掛けて来るー。

だが、”憑依薬”を手に入れたシゲルは、
ホームレス仲間を見下すようになっていたー。

少しのきっかけで、人間は大きく豹変してしまうことも、あるのだー。

「--お前は、空き缶でも拾いに行ってろ」
シゲルの言葉に、学は「最近シゲさん冷たいなぁ」と不満を口にするー。

他のホームレスも、シゲルの態度に不満を抱き始めている様子だったー。

そんな日々を1週間ちょっと送ったある日のことだったー。

「-------!!!!」
シゲルは、目を見開いたー。

とても可愛らしくて、スタイルの良い
若い美人女性が、歩いている姿が見えたー。

「うほっ…!」
シゲルは思わず笑みを浮かべるー

大胆に太ももまで晒された美脚ー。

あれが、自分のものになると思っただけで、
涎が垂れそうになるー。

ミニスカート姿のその女を見つめながら、
シゲルは、憑依薬を飲み干したー。

「--シゲさん?どこに行くんです?」
学の言葉に、シゲルは「うるせぇ!お前はゴミでも漁ってろ!」とさけ叫んで
そのままホームレスたちのたまり場から飛び出したー

「うへへへへへ…肩なんか出しちゃって…ゾクゾクするぜ」
シゲルが、前を歩く女を見つめるー

一見すると、可愛らしい穏やかそうな子に見えるがー
肩を出したり、大胆に生足を晒しているあたりー
自分に自信があるように見えるー。

「-へへへ…その身体、俺がもっと有意義に使ってあげるからなぁ…」
そんな風に呟きながら、シゲルが、その女に近づいていくー。

そしてー

裏路地の前を通りががったタイミングで、シゲルは、
前を歩くその女の肩を掴みー
無理矢理裏路地に引き込んだー

「--!?な、なにをするんですか!?」
怯えた様子の女ー

シゲルは「--その身体にお邪魔します」と、
堂々と宣言したー

「ひっ!?」
”痴漢”ー
彼女は、咄嗟にそう判断したがー
痴漢どころではなくー
目の前にいる男は、さらに恐ろしい存在だったー

「---!!!!!!」
シゲルにキスをされた女は、ビクンと震えて目を見開くー。

シゲルの姿が光となりー
そのまま女に吸い込まれていくー

「あっ…あっ、、はぁ…はぁっ…はぁっ…」
苦しそうに息を吐く女ー。

やがて、女は、はぁはぁ言いながらも
次第にその呼吸を整えていったー。

「--はぁ…はぁ…へへへ…へへへへへへ」
女は笑みを浮かべながら、自分の綺麗な肩を見つめて
それを撫で始めるー。

「--ふへへへへへ…」
そして、無理やり肩を舐めると、ニヤッと笑みを浮かべたー。

「--しっかし、すっげぇな…足…」
大胆に晒された生足を見つめるー

「--ふぁぁ…パンツ一丁で外歩いてるみたいな感覚だな
 俺からすれば」

笑いながら、慣れない靴で、ふらふらとしながら歩く女ー。

「ーーへへへっ…」
ホームレスたちがいる河川敷の方を見つめると
女は邪悪な笑みを浮かべたー

「--じゃあな。落ちこぼれども」
すっかり調子に乗った考えになってしまったシゲルは、
奪った女の身体でそう呟くと、
「ははははっ!ははははははっ!」と笑いながら
自宅に向かってスキップを始めたー。

演歌を鼻歌で歌いながら、
街中をスキップする女ー。

周囲は、
生足を晒したおしゃれな女が
演歌を歌いながらスキップしている光景に
思わず表情を歪めてしまうー

「--さ~て、これからどうすっかな~!
 やっぱ、人間は路上なんかじゃなくて、家で暮らすべきだよなぁ~ははっ!」

完全に調子に乗った女は、笑みを浮かべながら
自分の家に向かって、走っていたー

だがーー
交差点で信号待ちをしている最中にふと思ったー

「--あれ…そういや、この女の家はどこだ?」

あまりに浮かれすぎていて、適当に歩いていたが、
この女の名前も、家も知らないー

「--そうだ、まずは調べないとな」
そう思って、鞄から、身分証明書を取り出そうとするー

だがー

「---って、身分証持ってねぇじゃん」
女は、たまたま身分証を持たずに外出していたため、
身分証明書の類は持っていなかったー。

「--……」
それどころかー
スマホも持っていないー

持っていたのは、現金の入っている財布と、
ペットボトルのりんごジュース、
直前に書店で買ったと思われる本が1冊ー。

「-----…お、おい…」
シゲルは、美女の身体で呟くー。

”これじゃ、この女の家がどこだか分からないじゃないか”
とー。

「---……」

外出する際に、必ずしも
身分証明書とスマホを持ち歩くとは、限らないー。

どっちかは持っている人が多いだろうがー、
持たずに外出する人もいるー。

近場への外出なら、持たない人も当然いるだろうし、
遠くへの外出であっても、持たない人は、持たないー。

「---くそっ!」
シゲルは思わず、女の声で悪態をついたー。

鞄の中をあさるー。
だが、乗っ取ったこの女の住所や名前が分かる
手がかりになるものは、
一切存在しなかったのだー。

「----…」
女になったシゲルは呟くー。

「--待てよ…?大して荷物を持っていないということは、
 たぶん、この近所に住んでいる女ってことだろ…?」

シゲルは、自分の声が綺麗な女の声になっていることに
ドキドキしながらも、
冷静にそう考えたー。

”あんな掃きだめみたいな生活は、もうごめんだー”

そう思いながら、乗っ取った女の身体で
街中を歩くー

「--あ~~やべぇなこの格好…」
大胆に晒された生足を見つめながら
下品な笑みを浮かべるシゲルー

「ほんと、男の俺からすると、パンツ一丁で歩いているような感じだぜ」

短いスカート…
それが、ふわふわしている故に、
まるで何も履いていないかのような錯覚に襲われるシゲルー。

普段から、スカートを履いているであろうこの女は
慣れた感触なのだろうし、
何も履いていない錯覚などしないのだろうが、
普段、長ズボンで暮らすことがほとんどなシゲルからすれば、
こんな短いスカートで足を晒して歩いているのは、
まるで自分が露出狂になったかのような錯覚を感じさせるー。

「---」
「----」
街中を歩いていれば、この女の知り合いが、この女に声を掛けてくれるはずだー。

そんな風に思いながら、街中を歩き続けるー。

やがてー
日が暮れて、
夜になりー
深夜になりー

「-----……」
シゲルは、女の身体のまま、表情を歪めたー。

「くそっ!この女は誰なんだ!?どこに住んでるんだ!?」

乗っ取ったこの身体ー。
シゲルの今の状況は、
まさに、”身体はあっても家がない”という状況だったー。

「くそっ…鍵はあるのにな…」
可愛らしいクマのキーホルダーがついた鍵ー。

だが、カギに特徴が無さ過ぎて、どこの家の鍵だか分からないー。
鍵を持っているということは、この女がホームレスということは
ないのだろうがー。

「---…!」
怪しい男が、シゲルのほうをチラチラと見ているー。

見られることには慣れているー。
世間からすれば、ホームレスは怪訝な目で見られる存在でありー
イヤな目で見る人間たちが、たくさんいることを、シゲルは知っているー。

ただ歩いているだけで笑われたりー
指をさされたり、
聞こえるように”キモイ”と言われたりー

そんなことは、もはや日常茶飯事なのだー。

「---」
だがー
今”見られている”のは訳が違ったー

「--かわいいじゃん」
近づいてくる男ー

「--!!!」
シゲルはようやく、この時、”深夜に生足を晒した無防備な状態で歩く”という
危険性を理解したー

ホームレスであれば、相手から避けてくれるー

だがー
この”女”の身体ではー!

シゲルは気づいたときには、猛ダッシュで走っていたー。
自分が女の身体であることも忘れ、スカートをふわふわさせながら
必死にダッシュしたー。

「はぁ…はぁ…」
なんとか逃げ切ったシゲルは、どこに行けばいいのかも分からずー
とりあえず財布にお金が入っていることを確認しー
24時間営業のファミレスの中へと入って行ったー。

②へ続く

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身体を奪っても、奪った人の名前も住所も分からない…!
というお話デス~!

続きはまた明日★!

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