<MC>20年間、おつかれさま

「20年間、お疲れ様」

結婚20年を迎えたその日に、
夫から言われた衝撃的なその言葉ー…

妻である彼女は、驚愕の真実を知ることになる…。

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「20年間、おつかれさま」
夫の桑山 金太郎(くわやま きんたろう)が、突然、そう言葉を口にしたー。

金太郎と、妻の愛永(まなえ)は、
意味が分からないまま首を傾げたー。

19の時に大学で出会い、20の時に結婚、
娘も授かったー。
それから、20年の間、理想とも言える家庭を築いてきたー。

そして、今日が結婚20年目の記念日ー。
既に、娘は大学進学と共に、上京し、今では二人暮らしー

これからは夫の金太郎と共に、ある程度のんびりと過ごせると
思っていた矢先の言葉だったー。

「-今、なんて…?」
愛永が不思議そうに言うと、
「--好きでもない男の妻として20年も過ごすのは、辛かっただろう?」
と、金太郎は、もう一度言葉を繰り返したー。

「--え…な、なにを言ってるの?
 わたし、金太郎のこと、今でも愛してるし、
 ずっとずっとー」

「--本当に、そう思うのか?」
金太郎が笑みを浮かべるー。

愛永は、金太郎にほれ込み、大学で必死にアプローチを繰り返した末に
結婚したー。

結婚後も、フリーターとして週に2、3日働き、
残りの日は、家でオンラインゲームで遊んだり、
アニメを見ているような金太郎だったが、
愛永は”大好きな金太郎”のために、
必死で働き、家事までこなしてきたー

”おつかれさま”
その一言が言ってもらえるだけで、
愛永は十分だったー。

けれどー

「わたし、金太郎がいない人生なんて考えられない!」
愛永がそう言うと、
金太郎は笑ったー

「”洗脳”ってすごいよな。
 洗脳すれば、俺を嫌ってた女が
 20年間も妻になってくれるんだから」
金太郎の言葉に、愛永は「な、、何を言ってるの…?」と、
金太郎の方を不安そうな表情で見つめたー。

「-洗脳するだけで、俺に夢中になって
 彼氏を振って、俺とヤッて、俺の子供を出産まで
 しちゃったんだからなぁ ははは」
金太郎の言葉に、愛永はうろたえた様子を見せるー。

「--せ、、洗脳って… い、、意味がわからないー。
 わたしは、自分の意思で金太郎のこと好きになって
 結婚したのよ…?」

愛永の言葉に、金太郎はゲラゲラと笑ったー

「はははは、こりゃ傑作だ!
 愛永、覚えてるだろ?
 俺と付き合い始める前、幼馴染の男と付き合ってたのは?」

金太郎が言うと、
愛永は「お、、覚えてるけど、あの子は、わたしの好みじゃなかったから」
と、答えるー

「だよな。俺の方が魅力的だから、あいつを振って、俺と付き合い始めたんだよな」
金太郎の言葉に、愛永は頷くー。

「----でもさぁ、
 それが”洗脳”によるものだったら?」
金太郎が、再び”洗脳”という言葉を口にするー。

「-さ、、さっきから何なの!?洗脳って!?
 今日の金太郎、何かおかしいよ!?」
愛永が叫ぶとー
金太郎は立ち上がったー

「今から、お前の”洗脳”を解除してやる」
笑みを浮かべる金太郎ー

金太郎は、20年前、
大学で一目ぼれした愛永にしつこく言い寄っていたー。

俗に言うストーカー状態だ。

愛永には、当時、幼馴染の彼氏もいたー。
愛永は突然、彼氏がいるから、と金太郎の誘いを断っていた。

”俺の好きなアニメキャラに似てるから、俺の女になってくれ”
それが、金太郎の告白だったー。

愛永は、しつこい金太郎を嫌悪し、
幼なじみの彼氏に相談し、
幼なじみの彼氏も金太郎にキツく、
「愛永にこれ以上近づかないでくれ」と、
当時、そう言い放っていたー。

しかしー
逆上した金太郎は、禁断の”行為”に走ったー。

それが”洗脳”だったー。
大学の帰りに愛永を無理やり、使われていない廃屋に引きずり込みー
そこで、”洗脳”したー。

悲鳴を上げていた愛永が、みるみる従順になっていきー
金太郎のことを好きになっていく様子を見るのは、
本当に興奮したー。

洗脳が済んだあとは、愛永に彼氏を振らせて
愛永にエッチをさせ、結婚もしてー、出産もさせたー。

それから、20年ーー
夫婦として過ごしてきたのだー。

だが、愛永も既に40-。
金太郎はだんだんと愛永に興味を無くしていきー
偶然、最近行きつけのバーで、
好みの女を見つけたことから、
次はその女を”妻”にしようと考えていたー

「--せ、、洗脳されたからじゃないから!」
愛永が叫ぶー

洗脳を解除しようと、愛永に手をかざそうとしていた
金太郎が少しだけ表情を歪めたー。

「--わたしは…自分の意思で、金太郎のことを愛して、
 金太郎と結婚して、金太郎の子供を産んだのー。

 今だって、そうー。
 わたしは金太郎のことが、本当に、好きなのー」

愛永の言葉に、
金太郎は、フッ、と笑みを浮かべたー。

「--最高だよ。自分の意思でそう思ってるとー
 ”思ってる”ところがなー」

金太郎はそう言うと、愛永の洗脳を”解除”したー

「---------!!!!!!!」
愛永が表情を歪めるー

20年ぶりに、”歪められていた思考”から解き放たれてー
自分本来の意思を、完全に取り戻したー

「え……」
愕然としている愛永ー。

「--どうだ?もう1回言ってみろよ」
金太郎は笑うー。

金太郎は”飽きたおもちゃに興味がない”
子供の頃からそうだったー。
飽きるまでは大事にするが、飽きた瞬間に、ゴミのように扱うー。

愛永もそうー。
昨日の夜、”次の女”を妻にする決意をした金太郎は、
その瞬間に、愛永に対する興味を失ったー。

だからこそー
洗脳していたとは言え、20年間も寄り添った相手を
こんなにも冷たく”切り捨てる”ことができるのだー

「--わたしは…自分の意思で、金太郎のことを愛して、
 金太郎と結婚して、金太郎の子供を産んだのー。

 今だって、そうー。
 わたしは金太郎のことが、本当に、好きなのー」

「ってーーもう1回、言ってみろよ」
金太郎は、笑いながらそう呟いたー

愛永は、震えていたー
自分が、洗脳されていたことを、イヤでも自覚してしまったからだー

洗脳を解除された途端ー
洗脳される前に金太郎に抱いていた嫌悪感ー

そしてー
金太郎に洗脳されて、大好きだった幼馴染を振った事実が
重くのしかかってきたー

「--わ…わたし…わたし…
 うそ…? わたし…」
涙を流す愛永ー。

20年間洗脳されていたショックは大きすぎたー

大好きな彼氏を振りー
大っ嫌いな迷惑男と結婚させられー
エッチをさせられー
出産させられーー

しかもー
生まれた娘は、何も悪くないー。

そういう”板挟み”の状況が、余計に愛永の心を
地獄のどん底に突き落としたー。

「--自分の意思で、俺の子供を産んだんだろ?」
笑う金太郎ー

「うっ…うっ…う…」
愛永は目からボタボタ涙をこぼしながら、金太郎の方を見つめるー。

20年間ー。

長き洗脳から目覚めた愛永は、
地獄のような苦しみを味わっていたー

自分がどのような状況であってもー
”過ぎ去った時間”は、もう元には戻らないー

愛永が40歳を超えたこの状況からー
もう、元に戻ることは出来ないー

洗脳されていた20年間を取り戻すことは出来ないしー、
洗脳されて幼馴染を振ってしまったことも、
この男と結婚させられたことも、この男に妊娠させられた事実もー
もう、変えられないー

「--うっ…う…なんてことを…なんてことをするの…!
 ひどい…酷いよ!」
愛永が大声で泣き叫ぶー。

”洗脳されていた間”の記憶はあるー。

だがー、
洗脳を解除され、自分が”何をされたのか”を
自覚した上で、この男のことを、洗脳されていた間のように
愛することなんて、絶対にできないー

「--返して!わたしの時間を返して!」
愛永が泣きながら金太郎の腕を掴むー

「--返して?お前も喜んで俺の妻になってただろ?」
笑う金太郎ー。

「--…酷い…ひどい…ひどい…」
泣き崩れてしまう愛永ー

「はははっ、お前は最高の妻だったぜー。
 だが、如何せんババアになりすぎた。

 俺はこの力でいくらでも
 ”新しい妻”を手に入れることが出来るし、
 お前のことはもう解放するから、
 あとは好きに生きな」

金太郎の言葉に、愛永は思わず
「ふざけんな!!!」と大声で叫んだー

「--わたしの…わたしの人生を滅茶苦茶にしておいて…!
 そんな言い方…!」

愛永の目は、涙まみれになっているー。
怒りと屈辱と悲しさと恨みとー
あらゆる感情が止まらないー

「俺を愛してるんだろぉ~?」
笑う金太郎ー

「あんたが言わせただけ!」

愛永が思いっきり金太郎をビンタしたー。

金太郎は「へへ…」と笑いながら、愛永の方を見つめるー。

「--忘れるなよ?今からもう一度お前を
 ”俺を愛する妻”にしてやることだってできるんだぜ?」
金太郎の脅すような口調にー
愛永は震えながら金太郎を見つめるー。

「---…許さない…絶対に許さない!」
愛永は怒りに満ちた表情で金太郎を睨みつけるー。
恐怖よりも、怒りが勝るー。
そんな、状態ー

それでも、金太郎は余裕の笑みを浮かべて言い放ったー

「さっきまで、俺にメロメロだったくせになぁ?」
金太郎の言葉に、愛永は屈辱のあまり、再び涙を流すー。

「--まぁ、いいさー。
 出てけ。
 じゃないと、また洗脳して、一生言いなりにさせてやるぞ?」

金太郎が言うー。
愛永は何か言いたげに金太郎の方を見つめているー。

「--あと20秒以内に出てけ~!おらぁ!」
金太郎が叫ぶー。

”このままじゃ、わたし…また洗脳されちゃう…”
愛永はそう思いながら、吹き出す怒りの感情を
金太郎にぶつけるかのようにして叫んだー

「-この最低男!!!!!!!!!」

とー。

金太郎はうすら笑みを浮かべながら
残り10秒のカウントを数えるー。

愛永は、怒りの形相のまま、そのまま外に
立ち去って行ったー。

「へへへへへへへへ」
金太郎はニヤリと笑うー。

”念のため”
保険も与えてあるー

”金太郎を殺してはいけない”と、
愛永を強く洗脳してあるのだー。

そのため、愛永を逃がしても、
自分が後から殺される心配もないー。

「---ふぅ~~さ~て、次の女を洗脳しにいくか」
金太郎は嬉しそうに、そう叫んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

金太郎は、行きつけのバーの女が
店から出て来るのを待っていたー。

次は、この女を妻にするためだったー。

「---!」
金太郎は、ふと人の気配を感じて振り返ったー。

そこには、愛永の姿があったー。
髪がボサボサの愛永ー。
20年間洗脳されていたショックで、おかしくなっているようにも見えるー。

「--な、なんだよ…」
金太郎は、急に愛永が姿を現したことに驚きつつも、
余裕の表情を浮かべたー

”金太郎を殺してはいけない”と洗脳してある以上ー
金太郎を殺すことは、できないからだー。

「---もうお前に用はねぇ。それとも俺にまた洗脳されたいのか?」

金太郎は、そこまで言ってー
表情を歪めたー。

愛永の目が、赤く光っているー。

これはーー
洗---

そう思った時には、もう手遅れだったー。

愛永は、憎しみのあまり、金太郎が20年前に使った洗脳の力の
入手ルートを調べ、執念でそれを入手したー

そして、金太郎を洗脳したのだー。

”金太郎を殺す”ことは出来ないー。
金太郎にそう洗脳されているからだー。

でもー

「---自分の人生、滅茶苦茶になるように、
 全裸で街中を笑いながら走り回りなさい!」

愛永は、泣きながら金太郎にそう、”命令”したー

金太郎は「は、、はい!」と叫んでー
そのまま服を引きちぎるように脱ぎながら
繁華街の方に走って行ったー

愛永は、怒りの形相で、金太郎の”破滅”を見届けると、
その場で静かに涙を流して、座り込んだー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結の洗脳モノでした~!

20年も、操られて解放されたら
解放された瞬間、どんな気持ちになるのか、
気になるところですネ~☆

お読み下さり、ありがとうございました!

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小説

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    うーん、復讐で殺されないように洗脳しとくのはいいですが、詰めが甘かったですね。どうせなら全部忘れさせるとかしておけばよかったのに。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    20年間も洗脳して楽しんでいた彼なので、
    記憶は残して苦しめたいという悪趣味な一面も持っていました~!

    それが、身を滅ぼす結果になってしまいましたネ~!