<入れ替わり>僕がお姉ちゃんだよ①~悪ガキ~

近所に、いたずら好きの”悪い子”がいたー。

悪戯されるたびに、その子を叱っていた女子大生は、
ある日、その悪ガキに、身体を入れ替えられてしまう…。

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「--ねぇ、見てこれ~」
メガネをかけた真面目そうな女子大生・杉原 萌奈(すぎはら もな)が、
呆れ顔で、洋服を見せるー。

洋服に、絵の具のようなものがついているのを見て、
彼氏の唐沢 伸之(からさわ のぶゆき)は苦笑いしたー

「--うわ~~!またやられたのか?」
伸之が言うと、萌奈は「うん」と頬を膨らませながら言ったー。

伸之と萌奈は、同じ大学に通う大学生ー。
別々の家に一人暮らししているものの、
家が近所であることや、お互いに一人暮らしであることから
こうして、互いの家に行き来することも多かったー。

「ひっどいなぁ~…どうにかならないのか?」
伸之が言うと、
萌奈は「何度も注意してるんだけど、なかなか」と、
困り果てた様子で笑ったー。

萌奈が大学に行く前に干しておいた洗濯物の一部に
絵具のようなものが付着していたー。

萌奈には、その犯人が分かっているー。

犯人は、近所の子供・松原 丸男(まつばら まるお)-。
超がつくほどのイタズラ好きで、
まだ2年生だが、悪知恵もとてもよく働くー。

萌奈をはじめとする、近所の住人は、
丸男にうんざりしていたー。

「--ご両親も、何度か謝りに来てるんだけど、
 なかなか改善しないみたいでー」

萌奈の言葉に、
伸之は不安そうに「そっか…」と、
困惑の表情を浮かべたー。

彼女の萌奈は、しっかり者で、とても真面目な
お姉さん的タイプー。
誰にでも優しい一方で、悪いことをした相手には
ちゃんと叱ることのできるタイプでもあるー。

「---俺もなんとかしてあげたいけど、
 なかなかなぁ…」
伸之が頭をかきながら言うー。

伸之も、その丸男という子供に会ったことはあるー。
確かに、いかにも”悪ガキ”という感じの
イヤな感じの子だったー。

けれどー
伸之が、丸男のイタズラに対してできることと言えば、
悪戯の場面を目撃したら、萌奈と一緒に叱ることぐらいで、
できることが限られているのも事実だったー

「ううん。伸之が心配してくれているだけでうれしいし、
 大丈夫ー」
萌奈は、それだけ言うと、
「ーあ、ごめんね!わたしの家に来るなり、いきなり愚痴を聞かせて」と、
笑いながら、伸之の方を見つめたー。

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それからも、丸男の”悪戯”は続いたー

「やーい!」
絵具を入れた水鉄砲を手に、萌奈に向けてそれを撃つ丸男ー

「--え…ちょ…!?!?え…」
大学に向かおうと家から出た萌奈は、
スカートに黄色の絵具が付着したのを見て、
戸惑うー。

「--も~~~!こら~~!!」
萌奈が声を上げると、丸男はお尻ぺんぺんをしながら
逃げていくー

けれどー
年齢差やー
丸男自身が足がそんなに速くないこともあり、
あっけなく萌奈に追いつかれた丸男は、萌奈に腕を掴まれたー。

「--離せよ~!」
丸男がもがくー。

「--こういう悪戯、しちゃだめって何度も言ってるでしょ!」
萌奈が丸男を叱る。

「--うるさいおばさんだなぁ~!」
丸男が反抗的な態度を取るー。

「--お、、おばっ…?」
萌奈は、動揺しながら丸男の方を見つめるー

まだ大学生だし、
全然老け顔でもないはずだー。

”おばさん”と言われたことに衝撃を感じながらも、
丸男の方を見て、萌奈は
「どうしてこんなことするの!」と、理由を聞くー。

萌奈は決して、丸男のことが嫌いなわけではないしー
丸男をいじめたりしたいわけでもないー

純粋に”悪いことはだめ”と、いうことを伝えたいだけだったー。

しかしー

ピュッ!

丸男が、絵の具の入った水鉄砲を萌奈の顔に放ったー

「きゃっ!?」
萌奈は目をつぶりー、自分についた絵具を手で確認すると、
「こらーーーっ!」と声を上げたー

「べーーっ!」
丸男はそのまま走り去っていくー。

「も~~~~~!!!!!」
萌奈はそう叫ぶと、時計を確認して、慌てて家に戻り、
着替えと洗顔を済ませて、遅刻ギリギリの時間に大学に到着したー。

「--ど、どうした?そんなに息を切らせて」
彼氏の伸之が、萌奈に気付くー。

萌奈は、少し怒った様子で笑顔を浮かべながら
「も~、悪い子には困っちゃう」と、だけ呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--俺からも強く言おうか?
 一度ガツン!って言われた方が、その子も
 少しは反省するかもしれないしー」

大学帰りー。
伸之が萌奈の家の側まで一緒に歩いてきて、
そう口にしたー

「う~ん、わたしも結構ガツン!って言ってるつもりなんだけどなぁ~」
萌奈が苦笑いすると、
伸之は「萌奈は優しい雰囲気だからな~」と笑ったー。

「--でもまぁ、ホントに、これ以上は!ってなったら
 俺も全力でサポートするから、な?」

伸之の言葉に、萌奈は「うん!ありがとう」と、嬉しそうに微笑んだー。

「--あ、寄ってく?」
萌奈が家を指さすと、伸之は
「あ、いや、今日は洗濯物とお風呂の掃除このあとしないとだから、
 やめとくよ」と、申し訳なさそうに言うと、
そのまま手を振って、萌奈と別れたー。

「--------」
その様子を、悪ガキ・丸男が物影から睨みようにして見つめていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

丸男のイタズラは変わらずー

萌奈は、丸男の両親に今一度相談するー。

先日、絵の具で汚れたスカートを持参し、
「ーーーちょっと、最近、困ってしまっていて…」と、
丸男の両親に告げたー

両親は平謝りー。

「クリーニング代を出しますから」と、お金を払おうとした両親を見て
萌奈は「あ、いえ、それはいいんですけど…」と、お金の受け取りを
断ったうえで、丸男の両親を見つめたー。

「--わたし、丸男くんが心配でー」
萌奈は言うー

”悪戯を繰り返している丸男のことが心配”であるとー。
弁償とかじゃなくて、丸男のイタズラが少しでもなくなるように、と、
その一心で、ここに来たのだと、萌奈は説明したー

「-わたしも、他の人も困ってるのはもちろんですけどー…
 わたし、丸男くんがどうしても心配でー…」

そんな萌奈の言葉に、
丸男の両親は、「本当にごめんなさい」と頭を下げてー
「丸男には、よく言っておきますので」と、萌奈に対して
申し訳なさそうに説明したー。

「どうして悪戯ばっかりするの!」
萌奈が帰宅したあとー
丸男の母親は、丸男に対して厳しい言葉を投げかけたー。

「-悪戯はやめろって言ってるだろうが!」
父親も大声で叫ぶー。

両親からの叱責を受けながら、
丸男は怒りの形相で歯ぎしりをしていたー。

そして、その翌日ー。
”それ”は起きたー。

土曜日の朝ー。
丸男は、萌奈の家の前で、萌奈を待ち伏せしていたー。

「-あれ?丸男くん?」
萌奈が言うと、丸男は再び萌奈が持っていた家の鍵を、突然、ひゅっ、と
取り上げたー

「あ、ちょっと!?え!?」
萌奈は慌てて走るー

今日は、彼氏の伸之が家に来る予定なので、
近くのスーパーでちょっとだけ買い物しておこうと
思ったところだったー

「--待ちなさい~~!」
自宅の鍵を取られたままはさすがにまずいー

萌奈は慌てて丸男を追いかけると、
丸男は人通りのあまりない、方面へと走っていくー。

「ちょっと、、、も~~!」
”合鍵”で玄関は閉めてきたが、
”他人”がカギを持っている状態は、
さすがに不安だー。

丸男を追い詰めると、
丸男は「ばーか!」と、萌奈の方を見て笑ったー

そしてー

「--え」
萌奈は唖然としたー

河川敷までやってきた丸男は、
あろうことか、萌奈の家の鍵を、川に投げ捨てたのだったー。

「--え、、ちょっと!!!何するの!?」
萌奈は思わず声を荒げてしまうー。

「--ねぇ、お姉ちゃん」
丸男は笑いながら、萌奈の方を見つめたー。

「-ーえ」
丸男が持っているのは、黒っぽい色の糸ー。

「これ持って!」
丸男の言葉に、萌奈は「そ、そんなことより、人の鍵を投げるなんて!」と
怒りの形相で叫ぶ萌奈ー。

しかし、丸男は、笑いながら萌奈に糸を持たせたー

萌奈は”え?いきなり何?”と思いながらも、
深く考えずに、きょとんとした表情のまま、その糸を手に持つー。

これから起こる”恐ろしいこと”など、
全く想像もせずにー。

萌奈が糸を持ったことを確認すると、
丸男も糸の反対側を持ち、
萌奈の方を見つめるー

「---え…なにこーーーー」

そう言いかけた瞬間ー
突然、自分の前に、もう一人自分が現れたー

「---!?!?!?!?」
萌奈と向き合うようにして、糸の反対側の先端を持っていた丸男が、
突然、萌奈になったのだー。

”え…なにこれ?丸男くんが、わたしにー?”

そんな風に思いながら、

「--え!?ちょっと、これ、どういうー…」

と、言いかけて、萌奈は言葉を止めたー

自分の口から出たのが、自分の声ではなく、
男の子の声だったからだー

「--え…」
萌奈は戸惑うー。

目の前にいる萌奈がニヤニヤと笑っているー
まるで、無邪気な子供のようにー

「--!」
よく見るとー
視界に入っている風景が変わっているー。

さっきまで萌奈が見つめていた方向とは”反対側”を見つめた
状態になってしまっているー。

それにー
自分の手が、子供のように小さいー

”丸男くんがわたしになったんじゃなくて…
 これって、もしかしてー?”

目の前に”もう一人萌奈がいる”
それを見て、最初、萌奈は
”丸男くんがわたしに変身した!?”と思っていたー

それだけでも十分、日常では絶対に起きない”異常”事態で
あることには変わりないけれどー、
今、自分の身に起きていることは、それ以上に
恐ろしいことであることを理解したー

「--え…ちょっと!?わたしと丸男くんが、入れ替わってー?」
丸男になった萌奈が困惑しながら叫ぶと
萌奈になった丸男は、ニヒッ、と笑ったー

萌奈の顔が悪ガキのように歪むー。

そしてー

「今日から、僕がお姉ちゃんだよ」
萌奈(丸男)はにっこりとそう呟いたー

”自分の身体が目の前で勝手に動いている”
こんな、奇妙な体験を萌奈はしたことがないー

丸男になった萌奈は、言葉を失いそうになりながらも
「ど、どういうこと!?元に戻して!」と、叫ぶー。

だがー

「--べーーーーっ!」

と、萌奈の身体で叫ぶと、そのまま萌奈(丸男)は
猛ダッシュで走り始めたー

「ま、待ちなさい!」
丸男(萌奈)が慌てて萌奈(丸男)を追いかけるー

だが、別に運動が得意なわけでもなく、
まだ小さい丸男の身体では大学生の萌奈に
追いつくのはなかなか難しかったー。

「--ばーーか!」
萌奈(丸男)はお尻ぺんぺんをしながら
丸男(萌奈)を挑発すると、そのままさらに距離を広げるー

「--ま、待って!」
丸男(萌奈)は、そう叫んだ直後ー
慣れない歩幅の身体で走っていたせいで、
歩道の段差に躓いてー
その場で盛大に転んでしまったー

「-きみ!大丈夫か!」
通りがかりの人が「子供が転んだ」と思って駆け寄って来るー

丸男(萌奈)は、萌奈(丸男)が走り去っていった方向を見つめながら
「待って‥・待って!!」と、悲痛な叫びをあげたー。

②へ続く

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コメント

悪ガキ・丸男くんに身体を奪われてしまった萌奈の運命は…!?
続きはまた明日デス~☆

今日もありがとうございました!!

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