<憑依>地獄のPTA②~深き闇~

”PTA内の陰険な嫌がらせ”で妻が鬱になってしまった…!

妻に憑依してしまった夫は、復讐を進めるうちに
PTAの”闇”を知ることになってしまうー。

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押し付けられたベルマークを、
PTA会長の恵の頭からぶちまけた梨花ー。

”俺の妻を苦しめやがって!”と
叫びたかったがー
今は梨花の身体ー

それを我慢して必死に荒い息をしながら、
恵の方を見つめたー

恵は、ベルマークまみれになって
放心状態になっているー

PTA会長の恵はー
最初でこそ、梨花と同学年ということもあり、
梨花にとてもよくしてくれていたー

梨花が、病弱であることを理解し、
必死にサポートしてくれていたー。

だがー

”-そうやっていつも仮病を使って、恥ずかしくないのかしら?
 わたしにも、我慢というものがあるの”

ある日を境に、豹変したー。

梨花から、夫の尚政も、そう聞いているー。
その結果”人望のある会長”に影響されて、
周囲のPTAメンバーも梨花のことを遠ざけるようになりー
中には嫌がらせに加担するメンバーもいたー。

その結果が、”梨花の鬱”という結果だったー。

「---ーー」
ベルマークをかけられて放心状態になっていた恵が、
チッ、と舌打ちをしたー

そしてーー

「調子に乗るんじゃねぇぞ!このクソ女が!」
と、鬼のような形相で叫ぶと、恵は、
突然梨花の胸倉を掴んで、梨花を壁に叩きつけたー

「--!」
梨花に憑依している夫・尚政が驚くー

恵は、
優しそうな顔を、悪魔のように歪めて、
梨花を睨みつけているー

「--こっちが大人しくしてりゃ調子に乗りやがってー
 お前のせいで、、”俺”は、、”俺”は…!」
恵が自分のことを”俺”と言ったー。

「--俺!?」
梨花が表情を歪めて聞き返すと、恵はハッとした表情を
浮かべて、梨花を押し飛ばしたー

「--と、、とにかく、あんた、これ以上調子に乗らないこと」
恵が床に散乱したベルマークを見つめながら、呟くー。

「---あんたみたいな女、わたしは認めないー」
恵はそれだけ言うと、髪についたベルマークを
怒りの形相で振り払い、机を蹴り飛ばして
そのままPTA室から立ち去ってしまったー

「なんなんだ…あの女…」
梨花は、唖然とした様子で、恵が立ち去って行った方向を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

”お父さんは仕事でしばらく帰ってこれないの”
梨花になった尚政は、娘の凛に、そう説明したー。

何故だか分からないが、梨花に憑依してしまった以上ー
自分は、梨花の中にいて、
他の人から見れば”失踪”してしまっているような状態だー。

とは言え、凛にそんなことは言えない、と、
凛には、”お父さんは出張”と説明しておいたのだー。

凛が理解したかは分からなかったが
とりあえず、”父親はしばらく帰ってこれない”
と、いう点においては、ちゃんと理解してくれたように見えた。

「---どうすっかなぁ~…」
梨花は、そう呟きながら、ベランダに向かい、
ベランダに置いてある灰皿を見つめるー。

「--」
すぐに、自分の手をパン!と叩く梨花ー。

夫の尚政は、それほど数は吸わないが、喫煙者で、
妻の梨花は、煙草を吸わないー。

今は梨花の身体である以上ー
尚政は、妻の身体に配慮して”禁煙”しているのだー

「梨花の身体で吸うわけにはいかないからなー」

そう、思いながらー。

冷蔵庫から、ペットボトルの飲みかけのお茶を取り出して
それを飲む梨花ー。

「---どうすっかなぁ…」

元に戻る方法も分からないー

会社はとりあえず、体調不良ということで
妻の梨花として連絡を入れて休みにしてあるが、
このままずっと”尚政が行方不明”の状況ではまずいー。

梨花の身体も心配だし、
早く元に戻らないといけないー。

だがー
同時にPTAの連中に対する怒りが、激しく湧いてくるー

今日もPTAの話し合いがあったはずだー。

「--」
時計を見つめた梨花は深呼吸をすると、
「梨花を鬱にしたお前たちを、許さないからな」と、
梨花はそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

PTAの部屋にやってきた梨花ー

会長の恵や、
他のPTA役員が入って来るー

PTAの部屋には、まだベルマークが散乱したままー

「--みなさ~ん、聞いて下さる~?」
恵がニヤニヤしながら言うー。

「--これ、高山さんがやったのよ~?」
床に散乱したベルマークを指さしながら、恵がクスクスと笑うー。

「--え」
「高山さんが?」
「最低」
「何考えてるのかしら?」
「さすが仮病の奥様ね」

周囲のPTA役員が嫌味を口にするー。

「---拾いなさい」
恵が腕を組みながら言ったー。

「----」
梨花は恵を睨んだままー

「--ほら、拾うのよ」
恵が言うと、
周囲のPTA役員たちも「拾いなさい!」「拾うのよ!」と
口々に言い始めたー

これじゃー
子供のいじめと同じだ、と
梨花に憑依している尚政は、強く思ったー。

だがーーー
梨花は拾わなかったー。

そして、叫んだー

「--PTAってこんなレベルが低かったんですね」
とー。

失笑するかのようにー

恵が表情を歪めるー。
恵以外のPTA役員は顔を赤らめているー。

「-これじゃ、まるで子供のいじめじゃないですか。
 特に、あなたたちー」

恵以外のPTA役員を指さす梨花ー

「いじめっ子のリーダー格に
 金魚のフンみたいにしがみついて、
 一緒になって、いじめに加担して、
 大人になってそんなことしていて、恥ずかしくないんですか?

 それで子供の親とか、
 言っちゃ悪いですけど、信じられませんね」

梨花が顔をヒクヒクさせながら言うと、
恵以外のPTA役員たちは、キーキーと何やら騒ぎ始めたー

恵は、梨花の方をじっと見つめているー。

「--高山さん!あんま調子に乗らないでよ!
 なんなら、子供たちに言って、
 凛ちゃんを仲間外れにしてあげてもいいのよ!」
恵の横にいた、化粧の濃い女が叫んだー。

周囲のPTA役員たちも
”凛ちゃんをいじめる”だの”仲間外れにさせてあげる”だの、
騒ぎ始めるー。

梨花と尚政の”娘”まで標的にしようとしているのだー。

「--は~~~~~~」
梨花は、イライラした様子で頭をかきむしるー

「--それでもあんたは母親か!?」
怒りの形相で、ボイスレコーダーを机の上に叩きつけると、
音声が再生されるー

「--高山さん!あんま調子に乗らないでよ!
 なんなら、子供たちに言って、
 凛ちゃんを仲間外れにしてあげてもいいのよ!」

”お前の娘をいじめるぞ”
そういう趣旨の、母親たちの脅迫じみた言葉が
しっかりそこには録音されていたー

「これを、学校と皆さんの旦那さん、
 それと、子供にも、直接聞かせますー

 いいんですよね?
 あなたたちは、母親として恥ずかしくないと
 思ってるから、そういうこと、言うんですよね」

梨花が怒りの形相でそう言うと、
PTA役員の母親たちは、突然態度を豹変させて
「じょ、冗談に決まってるじゃない」だとか
「ベルマーク、いっしょに拾いましょ」だとか
青ざめた様子で言い始めたー。

ボイスレコーダーを回収すると、梨花は、
「これ以上、皆さんがわたしに嫌がらせをするなら
 わたしも黙ってませんから!」と強い語気で叫んだー。

恵以外のPTA役員は、あっけなく意気消沈してー
「高山さん」「高山さん」とアリのように寄ってきてー
「ごめんなさいね」「ごめんなさい」と、
次々と言葉を口にしたー

”本当に情けないやつらだ”
梨花に憑依している尚政は、そう思ったー

恵以外のメンバーと共に仕方なくベルマークをかき集めると、
PTAの話し合いが始まったー

恵は、梨花の方を睨むようにして見つめたままー

他のメンバーたちは、梨花に気を使い始めて、
もはや何も嫌味を言ってこなくなったー。

”こんなやつらが、母親か。”
あきれ果てた梨花ー。

話し合いが終わると、
他のメンバーたちが、梨花をおだてるようなことを言いながら
立ち去っていくー

みんな”あんたの娘を仲間外れにするから”と
発言したことが広がることを、
すっかり恐れていたー。

”こんな、レベルの低いやつらに、妻が鬱に追い込まれたなんて”と、
さらにPTAメンバーへの怒りを覚えながら、
梨花がPTA室から出て行こうとすると、
座ったままだった会長の恵が声をあげたー

「--お前、誰だ?」
とー。

「--え?」
梨花が振り返ると、
恵は立ち上がったー

「お前は、誰だー?
 高山梨花じゃないだろ?」
恵はそう言いながら、近づいてくるー

「--な、、な、、何言ってるの?」
梨花の口調を必死に真似ながら答えると、
恵は、壁ドンしたー

「--ちょっと前までと態度がまるで違うー。
 お前は、誰だ?」
恵の睨むような視線ー

梨花は、混乱しながら
「--え…」と、恵の方を見つめ返すー。

恵はしばらく梨花を見つめていると
ドサッ、と近くのイスにだらしなく座って呟いたー

「--”俺”と同じなんだろ?」
とー。

「--な、、何のこと?」
梨花は意味が分からずそう言い返すー。

まるで、意味が分からないー。
梨花に憑依している尚政は、必死に恵の言っている
言葉の意味を考えたー。

だが、尚政がその”答え”にたどり着く前に、
恵は笑みを浮かべたー

「--お前も、その身体を乗っ取ってるんだろ?」
恵が邪悪な笑みを浮かべたー

「---!」
梨花が表情を歪めるー

「俺もだよ!俺もこの身体を乗っ取ってるんだよ!」
恵は嬉しそうに両手を広げながら叫んだー

”恵さんが、急に変わっちゃったのー”
鬱になる前の梨花から、尚政は、そう聞かされていたー

”急に変わっちゃったー”

まさかー

「--ま、、まさか、わたしに嫌がらせを始めたのは…!」
あくまで”梨花”のふりをしながら
梨花の身体で尚政が叫ぶと、恵はニヤリと笑ったー

「--そうだよ!俺が”妻”の身体を乗っ取ったんだ!
 こうしてなぁ!」
恵が胸を触り出すー
イヤらしさ全開の汚らしい笑みを浮かべながらー

「-な、、なんてことを…」
梨花が戸惑いながら言うー

”俺の妻”と言ったー。

PTA会長の恵は、夫に憑依されている、
ということだろうかー。

そしてー
元々梨花のことを配慮してくれていた恵が、豹変して
梨花に嫌がらせを始めたのは、この夫に
憑依されたからだと言うのだろうかー。

「--恵はさぁ、その女が病弱だからって、
 その女のことばっかり心配してさぁ、
 いつもいつも”高山さんが”
 ”高山さんが”って言ってたんだー

 俺のことをそっちのけでな」

恵はそう言うと、
歪んだ笑みを浮かべるー

「高山梨花ー
 お前がいたせいで、俺の妻は
 お前のことばかり考えるようになったー

 お前がいたせいで、夫である俺は、
 放っておかれるようになったー。

 だからーー
 恵に憑依して、PTAの場でその女を
 追い詰めてやったんだよ!
 恵の身体でな」

恵は笑ったー。

「--……ふ、、ふざけないでー」
梨花のフリをして、尚政が言い返すと、
恵はクスッと笑ってから、
梨花を見つめたー

「--お前、その女の夫だろ?
 感情的になる雰囲気を見ていれば分かるー」

恵の言葉に、
梨花はギクッとするー

「--隠さなくていいぜ。
 ”妻に憑依した人間同士”
 仲良くしようじゃねぇか」

恵が近づいてきて、梨花に顔を近づけると
イヤらしい目つきで梨花を見つめるー。

”PTAの会長が夫に憑依されているー”

PTAの”地獄”を知ってしまった
梨花に憑依した尚政は、唖然とした表情で、恵を見つめたー

③へ続く

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次回が最終回デス~!

最近は暑さで溶けそうな毎日ですが、
頑張ります★
皆様も熱中症などなどに気を付けてくださいネ~

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