<憑依>地獄のPTA①~崩壊~

長女が通う学校でPTA活動に参加していた母親。

しかし、ある時を境に、理解者であったママ友が、
突然、彼女にきつく当たるようになり、
彼女は鬱になってしまうー。

鬱になってしまった妻を見た夫は、妻に憑依して復讐を決意した…!

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高山 梨花(たかやま りか)は、
長女・凛(りん)の通う学校のPTA役員に選ばれて、
PTA活動をしていたー。

立候補したわけではないー
希望者がいなかったために、保護者会でくじ引きとなり、
その結果、梨花がPTA役員の一人に選ばれてしまったのだー。

だが、梨花は
突然のめまいや頭痛に苦しんでいて、
PTA活動などが難しい状態にあったー。

体調の良い日と、悪い日の波が激しく、
自宅であれば家事をやりながら
休んだりすることもできるものの、
野外活動や、学校での活動となるPTA活動を行うとなると、
体調の波がある梨花には厳しいものだったのだー。

当初、梨花は、PTA役員を辞退しようとしたものの、
娘・凛の友達の母親・恵(めぐみ)が、梨花のことを
本当に気にかけてくれて
”体調が悪い時は、わたしがフォローするから”と、
親身になって、接してくれたー。

「それなら…」と、梨花は、原則辞退できないPTA役員を
嫌々ながら引き受けて、今に至っていたー。

PTA会長でもある恵は、若く、優しい母親で、
梨花と同じ来年30歳ー。
年齢も同じであることから、意気投合し、
恵は、最初の約束通り、
梨花が体調不良で出席できないときには、
梨花の分もPTAの仕事をしてくれたり、
梨花が急に体調不良になってしまった時には、
他のPTA役員からイヤな目で見られないようにと、
配慮もしてくれたー。

恵のおかげで、梨花は
なんとかPTA役員としてやってこれたし、
無理のない範囲内で活動することが出来たー。

しかしーー

何がきっかけだったのか分からないー。
何が、恵を怒らせてしまったのか分からないー。

恵が、ある日を境に、梨花を敵視するようになったのだー。

その日もー
朝からめまいが酷く、
”今日のPTA活動にはいけない”と、
申し訳なさそうに、恵に連絡したー。

失礼なことは言っていなかったと思うし、
いつも通りだったー。

けれどー

”-そうやっていつも仮病を使って、恥ずかしくないのかしら?
 わたしにも、我慢というものがあるの”

恵から、きつい言葉が返って来たー

その日からだっただろうかー。

「--あなたみたいな人がお母さんだなんて
 凛ちゃんもかわいそう」

「--どうせ遊び半分でやってるんでしょ?
 PTAの仕事も、子育ても、家事も」

「-専業主婦とか、甘えよ。わたしはお仕事もしてるのよ」

「-この怠け者!」

恵からの”言葉の暴力”が始まったのだー

信じられなかったー。
まるで、人が変わってしまったかのように、梨花を”いじめ”
始めた恵は
PTA会長の立場を悪用して、他のPTA役員も味方につけたー。

その結果、梨花は孤立したー。

体調不良の中、無理やりPTA活動に参加させられてー
言葉の暴力を浴びせられーー

梨花の心は、簡単に壊れてしまったー。

「---ーーーすまん」
夫の高山 尚政(たかやま なおまさ)は、頭を下げたー。

”PTA”で、梨花がそこまで苦しんでいることに
気付くことができなかったのだー。

梨花が泣きながら”うつ病の診断を受けた”と打ち明けてきたときー
尚政は、梨花が追い詰められていることに気付けなかった自分を呪ったー。

仕事が忙しかったー
梨花自身も、尚政に迷惑を掛けないように、と、そのことを隠し続けたー。

だが、そんなことは言い訳にはならない、と
尚政は「すまん、本当にすまないー」と、
心が壊れてしまった梨花を見て、悲しそうに呟いたー。

それでも容赦なく続く梨花への”攻撃”-

PTA会長の恵から、家にも電話がかかって来るようになりー
さらには、恵は夫である尚政にまで接触してきたー

「--ー出来の悪い奥さんを持つと、大変ですね」
恵が微笑むー
優しそうな風貌の中に潜む、棘ー

「--妻はあんたらのせいで鬱になったんだ!」
尚政が叫ぶー。

「---どうせ仮病でしょ」
恵は失笑したー。

恵は夫と別居して、現在はシングルマザーのような状態だと
梨花から聞いているー。
もしかすると、自分という夫がいる梨花のことが
羨ましかったのかもしれないー。

尚政はそんな風に考えながら恵の方を睨んだー。

「--これ以上、妻を傷つけたら、俺はあんたを許さないー」
とー。

クスッ、と笑う恵ー

「--こわ~~~い」
甘えたような声を出すと、恵は、尚政に顔を近づけて囁いたー

「--でも、ドキドキしちゃう♡」
とー。

「--どうですか?あんな女より、わたしと一緒にー」

「-ふざけるな!」
尚政は恵に対して怒りの形相で叫ぶと、
「-妻に手を出したらただじゃおかない!」と、
恵を睨みつけてから、そのままその場から立ち去ったー。

尚政の後ろ姿を見つめながら
恵は、不満そうに舌打ちをしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

家事に、娘のことに、
最大限のサポートをしながら、尚政は
それからもいつも通りの日々を送っていたー

だが、ある日、
帰宅すると、長女の凛が
助けを求めるように、尚政の方に近づいてきたー

「--お母さんが!お母さんが!」
そう叫ぶ凛ー

ただ事じゃないと思って、
梨花の元に駆け付けると、
梨花の元には、罵詈雑言が書かれた手紙が
大量に散乱していたー。

全部、PTA会長の恵と、恵に従う他のPTA役員たちから
送りつけられたものだったー。

しかもー
恵は泣きながらベルマークを分配する作業をしていたー。

恵が、PTAの仕事であるベルマークの回収を
家にいる梨花に押し付けたのだー。

その光景をみた尚政は、怒り狂ったー

”あの女…!”
怒りの形相のまま、文句を言ってやろうとする尚政ー。

梨花に”そんなことしなくていいから!”と
ベルマークの作業を辞めさせると、
尚政は、怒り狂った表情で、学校のPTAの案内を見つめたー。

そしてー
”次の日”
それは、起きたー。

「----!?!?!?」
目を覚ますとー
夫の尚政は、梨花に憑依してしまっていたのだー。

「---え…???え…?????」
梨花の身体で戸惑う尚政ー

「ど、、どういうことだ…お、、俺が…梨花に…?」
驚きながらも、ドキドキしながらもー
それよりもー、梨花がどうなったのかが心配だったー。

「り、、梨花???」
梨花の身体で、梨花に呼びかける尚政ー。

だが、返事はないー

”俺が梨花の身体に…?
 と、いうことはー?”

尚政は思うー。
”入れ替わり”
そんな、映画を見たことがあるー。

それが起きたのではないか、と、
思いながら、自分自身が普段、寝ている部屋に駆け込むー

だが、そこに尚政の姿はなかったー

「ど、どういうことだ…?俺が梨花の身体に入ってしまったということか?」
梨花がそう呟いていると、
娘の凛が不安そうに「お母さんどうしたの…?」と
尋ねて来たー

「あ、いやー、別に何でも、、、
 なんでも、、ないよ」

梨花っぽい笑みを浮かべながら凛に対してそう言うと、
立ち去っていく凛を見つめながら、
梨花は頭をフル回転させたー。

”俺が梨花になっているー
 これはいったいどういうことなんだ?

 夢か?夢なのか?”

そんな風に思いながら、
梨花の頬を引っ張ってみたがー

本当に痛かったー

「--なんだよこれ…」
戸惑う梨花ー。

梨花の姿が鏡に映るー。
戸惑っているのは、尚政なのに
梨花が戸惑った表情を浮かべているー。

「---」
「----」
「-----」

”会社はどうする!?”

色々なことが、頭に浮かんでくるー
自分が梨花になってしまったということはー
会社はーー
いいや、梨花はーー

♪~~~~

混乱した思考をかき消すかのように、
家の電話が鳴ったー

家の電話に出る梨花ー

「はいー
 高山です」

梨花がそう言うとー
電話相手はPTA会長の恵だったー

”昨日任せたベルマーク、ちゃんと分けて貼っておいて
 くれたかしら?”
高圧的な口調で言う恵ー

「---」
梨花は、しばらく返事をしなかったがー
PTA会長の恵からの言葉で、
自分が梨花に憑依してしまったことも
忘れるぐらいに、激しい怒りが、自分の中に
グツグツと煮えたぎって来るのを感じたー。

”今日、持って来れる?
 どうせ家事も仮病でさぼってるんでしょ?
 そのぐらい、できるわよね?”

恵の高圧的な口調に、
梨花は「持っていきます」とだけ答えて
電話を叩きつけたー。

「--チッ」
梨花の身体で舌打ちをすると、
自分が梨花になってしまったことをー
焦る気持ちすら塗りつぶすぐらいの怒りを感じながらー
外に出かけるために、着替え始めたー。

「--って、、ぶふっ!!!」
着替え始めたところで、ようやく自分が梨花に
憑依した状態になってしまっていたことを思い出しー

勢いよく妻の身体で脱いでしまったこの状況に、
顔を赤くしたー

もちろんーー
梨花とは夫婦だから、そういう経験がないわけではないし、
尚政も、異性に対して何の抵抗もない、とか、
そういうタイプの人間ではないー

ただー
それと、これとは話が別ー。

”自分が妻として、服を脱ぐ”のは、
夫婦で色々しているのとは、訳が違うー。

相手の同意もないわけだし、
何より今は自分自身が梨花になっているわけだしー

思わず、ドキッとしてしまい、
慌てて着替えを進めていくー

「こうして、自分が妻になってみると
 案外、どの服を着て外出すればいいのか、悩むものだな…」

そんな風に思いながら、
いつも何気なく見ていた妻の服装や、メイクなどを
思い出しながら、外に出かける準備をしていくー。

「--って、それよりも!」
服を着替え終えると、困惑した表情を浮かべている長女の
凛の方を見て、
”まず、凛を学校に送り出さなくちゃな”と、
自虐的に微笑んだー。

「--今日、お母さん、お父さんみたい」
凛が、準備を終えて学校に出かける直前、
不思議そうにそう呟いたー

「--え、、あ、、え、、、え、、、
 そ、、そんなこと、ないしぃ、、!」

声が裏返っているー
梨花に憑依した状態の尚政はそう感じながらも、
凛をなんとか送り出すと、ため息をついたー

「ふ~~~~」
ソファーにぐったりと座り込む梨花ー。

だらしない座り方で足を開いている梨花の姿が、鏡に映ったのに気づきー

「--り、梨花にこんな姿をさせてはいけない!」と、
慌てて座り方を整えるー。

「ふ~~~…一体、何が起きてるんだ?」
自分の手を見つめるー。

梨花の綺麗な手ー。
綺麗な爪ー

自分の手とは大違いだー。

尚政自身の手も、別に汚いわけではないのだが、
やはり、男女では手に違いが出るー。

そんなことを思いながらー
梨花の身体で立ち上がった尚政はー
学校のPTA室に向かったー。

そしてーー

「----」
PTA室にやってきた会長の恵に、
ベルマークの入った袋を、頭の上からぶちまけてやったー。

「----っ」

妻をうつ病に追いやった元凶である恵が、
まるで、大魚に狙われた金魚のような顔をして、
驚いているのを見て、
梨花は満足そうにー

”PTA内で陰険ないじめをして、
 楽しいか?
 この陰険女!”

と、心の中で叫んだー。

だがーー
梨花も、梨花に憑依してしまった尚政も知らないー

このPTAの”本当の地獄”をー。

②へ続く

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PTA内での悪質な嫌がらせの裏に潜む
地獄とは…!?

続きはまた明日デス~!

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