<憑依>置き去り憑依人①~悪趣味~

乗っ取った身体で、
出来る限り遠くに移動しー
見知らぬ地で、その身体を解放ー
戸惑う本人を見て、その反応を楽しむ迷惑な憑依人がいた…!

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「ーーーふぅ」
男は、一人旅を楽しんでいたー

こうして、見知らぬ土地のベンチに座り、
景色を眺めるのも、男の楽しみのひとつだったー。

景色を眺めながら、ぼんやりと過ごす。

見知らぬ地の景色ー
見知らぬ地の空気ー

旅は、人生に無限の可能性を与えてくれるー

仕事、帰宅、仕事、帰宅ー
それだけを繰り返している日常では
見えることのなかった”世界”がそこには広がっているのだー。

そんな風に思いながら
最高の時間を楽しんでいた男にー
ある女性が目に入ったー。

自分と同じように、旅の最中だろうかー。
女子大生ーいや、女子高生ぐらいにも見えるー。

だがー
不思議なのは、
まるで”部屋着”のような格好であることだったー。

しかも、荷物一つ持っていないー

手ぶらだー。

女は一人、ニヤニヤしながら景色を見つめるー

「ここどこだろうなぁ~
 こんな遠くに来ちゃって…へへへ」

女が一人、呟き始めるー。

男は”なんかヤバそうな子だ”と、思いながら
その女と目を合わせないようにしつつ、
移動しようとしたー

「--この子、帰れるのかなぁ…へへへへへへ」
そう呟くと、女が突然ー
その場に倒れ込んだー

「--!?!?」
旅の最中だった男は戸惑うー。

本当は関わりたくなかったが、
このまま立ち去るのも良くない気がして、
”大丈夫ですか!?”と声を掛ける男ー

目を覚ました女は、周囲を見渡すと、
「え…!?!?え…???こ、ここ、どこですか!?」
と、混乱した様子だー。
さっきまでとは、まるで雰囲気が違うー

「ど、、どこって、ここは、鹿児島県のー」
男が言うと、

「か、、か、、鹿児島ぁ!?!?!?!?」
と、女が悲鳴に似た声を上げたー。

女はー
半分パニックになっていてー
男は必死に事情を説明しているー

そんな状況を見つめながら、
上空に浮かぶ”男”は、笑みを浮かべたー

霊体の状態で、他人からは見えない状態のその男はー
”憑依薬”と呼ばれる薬を用いて
先程まで、女を乗っ取っていたのだー。

「---ククク」
この世には”他人に憑依できる”人間が、
わずかながら存在するー

裏社会で取引されている”憑依薬”によるものだー。

だが、この男は、
その憑依薬を使って”非常に珍しい楽しみ方”をしていたー

憑依能力を使う人間の中でも
特別…
レアの中のレアと言ってもいいー。

彼はー

「---」
憑依されて”見知らぬ地”までやってきてしまった女性の戸惑う姿を見て、
ニヤリと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

柴原 謙介(しばはら けんすけ)-

闇市で手に入れた”憑依薬”を服用したことにより、
憑依能力を手に入れた男だー。

彼の日課は、特殊だったー。
彼は、憑依能力を手に入れるまでは、
一流企業に勤務していたのだが、
憑依能力を手に入れてからは、会社を辞め、
現在は週に数回のアルバイトのみで生活をしているー。

”憑依”を使えば、いくらでも金を手に入れることが出来るからだー。

例えば、街の可愛い子を乗っ取って
その身体で男を誘惑すれば、
いくらでも金を稼ぐことが出来る。

稼いだ金は、適当に謙介自身にわたるようにうまくやってからー
その子の身体を解放するー

これで、金はいくらでも稼げるし、
金持ちに憑依して、自分の口座に振り込ませてー、
上手く記憶を操作していてもいいー。

だがー
謙介が、女の身体に憑依して、エッチなことをするのは
あくまでも”金”のためであり、
彼にとってはビジネスでしかなかったー。

必要以上に金も必要ないし、
生活費が足りなくなった時だけしか、それはしないー

謙介の”本当のお楽しみ”は、
他の憑依者が絶対にしていないであろうことだったー。

それはー。

「--次のシフトは3日後かー
 …なら、”今回も”やるかなー」

謙介は、そう呟くと、自分が霊体となりー
そのまま”獲物”を見つけるために飛び立ったー

「----」
上空を浮遊しながら、”かわいい子”を探す謙介ー

ちょうど、近くの高校が下校中だったのか、
女子高生がたくさん、道を歩いているー

「へへへへ…」
謙介は、”物色”を始めるー。
霊体の状態で、宙を舞い、女子高生の近くまで行き、
顔から声、身体まで色々な部分を確認するー。

じろじろと見られていても、謙介は”霊体”になっているため、
女子高生たちは、それに気づかないー。

「---くくく……」
しばらくの間物色を続けた謙介は、笑みを浮かべながら
一人の女子高生に憑依したー

「、、、あっ…ぅ」
女子高生がビクンと震えるー。

隣を歩いていた友達が「優香(ゆうか)大丈夫…?」と
心配そうに声を掛けたー

どうしても、憑依すると、
憑依される側は、ビクンと震えたり、声をあげたりするー

今のように、だー。

「--あ、、ぅぅん、大丈夫大丈夫!」
優香が笑いながら返事をするー

”へへへ…大丈夫じゃないけどな”
優香に憑依した謙介は、心の中で無気味な笑みを浮かべると、

そしてー

「あ、ごめん、わたし、今日は買い物して帰るから!」
一緒に歩いていた道と反対方向を指さすと
友達は「あ、、え?うん」と、少し戸惑いながら返事をしたー

「---ばいばい~!また明日~!」
優香は可愛らしく手を振ると、
すぐに邪悪な笑みを浮かべたー

「さぁ…優香ちゃん 遠くに行こうか」
優香は、クスッと笑うー。

制服姿のまま、ゆらりゆらりと歩き出す優香は、
鞄の中の財布を確認したー

お金はそこそこ持っているー

「--へへへ…この分だと、だいぶ遠くに行けそうだな」
優香は笑みを浮かべたー。

謙介は、”憑依した身体”で、出来る限り遠くにいくことを
楽しんでいるー

謙介自身も、元々、旅行は好きだったし、
他人の身体・他人のお金で旅行をするのは楽しいー。

自分の身体ではないから、お金もかからないし、
夢のような旅行だー。

優香の身体で、電車に乗り、
お金の許す限り、遠くに向かうー

県境を超えー
さらに隣の県に進みー
夜になると、優香は近くの洋品店に入って、適当な洋服を購入したー

大人っぽいセクシーな服装に身を包む優香ー
そして、最後にはサングラスをかけたー

「へへっ 別人みたいじゃん」
優香はそう言うと、夜の街を歩き始めるー。

”女子高生”だと思われたら警察に保護されて
謙介の目的は果たせなくなるためー
こういう格好に着替えたのだー。

優香は、知らない道を適当に歩き続けるー
どんどん、どんどん遠くに向かってー。

”へへ…今頃、この女の両親、”娘が帰ってこない~”とか
 慌ててるんだろうな”

優香はそんな風に思いながら、さらに夜道を歩くー
途中のコンビニでトイレを済ませるー

既に謙介は何度も女性に憑依したことがあるため、
女としてのトイレもお手のものだったー。

適当な晩御飯を購入して、
コンビニのホットスナックのフランクフルトを口に咥えながら、
優香は、さらに見知らぬ地へと歩いていくー。

謙介の目的は、別に優香をどうこうしようというわけではないー。
優香に憑依して、優香の身体で身代金を要求することでもないー
エッチなことも、最初の頃はしていたが、
憑依が当たり前のように出来るようになってくると、次第に飽きて来るー。

”いつでも女の身体でもヤれる”
ようになれば、次第に飽きが来るのだー。

男が、一人でヤるのと、次第に何も変わらない感情になってくるー

だからー
今は、こうして楽しんでいるー。

翌日ー
優香は、適当なバスに乗り込み、さらに遠くに移動していくー

「--は~~~!どこだここ… へへへへ」
優香は、優香自身も、優香に憑依している謙介も
知らない場所にやってくると、嬉しそうに笑みを浮かべるー。

その日も、バスや電車で移動を続けー
出来るだけ遠く、遠くに移動していくー。

その日の夜にはー
優香は、山中にやってきていたー。

山道を歩いているうちに、たどり着いたのだー

「へへへへ…他人の身体なら、迷う心配とかもいらねぇからな」
優香が乱暴な言葉を口走りながら、制服姿で歩くー

明るいうちと、人に見られる心配がない場所では、優香は高校の制服に着替えて、徘徊を
続けていたー。

既に両親は、この娘の捜索願を出しているだろうかー。

まぁ、そんなことはどうでもいいー

そろそろ”解放”してやるから、心配する必要もないー

山の奥深くにどんどん入っていくー

「へへへ…こんなにかわいい子が、両親の前から突然失踪して
 山奥を歩いてるなんて…ゾクゾクするぜ」
優香はニヤニヤしながらそう呟くと、山道で躓いて
土塗れになってしまうー。

「へへへへ…へへへ あ~~~汚れちゃった♡」
ペロっと指についた土を舐めて
ゲラゲラと笑う優香ー

「あいててててて…」
綺麗な膝は、擦りむいたのか、少し血が出ていたー。

「---は~~~」
その場に座り込んだ優香は、誰もいない山中に
座り込んで、ニヤニヤしながら周囲を見渡したー。

「しっかし、意識が飛んで、次に目が覚めたら
 こんな山奥なんて…
 なんかこう、、やべぇな」

そんな風に思いながら、
足を触ると、「思ったより痛いな…」と呟きながら、
”ここで解放するか”と、笑みを浮かべたー

十分に遠くにやってきたし、
このまま優香に憑依し続けていると、
痛覚をも支配している状況で、
優香の痛みは、自分が味わうことになるー。

「---……‥よし!」
優香は手をポンと叩くと、
そのまま「うっ…」とうめいて、意識を失ったー。

優香から飛び出した謙介は、
夜の山中で一人意識を失った優香を、
空中でニヤニヤしながら見つめるー。

霊体である謙介は、優香から見られることはないー。

「------う…」
優香が、意識を取り戻したー

寝起きかのような顔で、起き上がると、
周囲を見つめるー。
まだぼーっとしているのか、反応が薄いー

”まぁ、丸1日以上、乗っ取られてりゃ、そうだよな”
謙介はそんな風に思いながら優香の反応を見つめるー

優香の表情に焦りが見え始めるー

「えっ…!?えっ……えっ…!?どこ、ここ…!?」
優香が、泣きそうになりながら周囲を見渡すー

夜の山中で突然目を覚ませば、そうなるだろうー。

立ち上がろうとする優香ー
しかし、先ほど乗っ取られた状態で怪我をしていることで、
足が思うように動かず、優香は転倒してしまうー

”あ~らら”
謙介はニヤニヤしながら、その様子を見つめるー。

謙介の憑依の一番のお楽しみは
”この瞬間”
だー。

優香の様子を見ながら、ひたすら楽しそうに笑みを浮かべる謙介ー

優香は、鞄からスマホを取り出そうとするー。

しかしー

「ないっ…え…なんで…!?
 わたし、、え…!?」

スマホは、途中捨てたー。

だから、ないー。

”へへへ…見知らぬ場所でパニックになる反応…
 最高だなぁ”

謙介はゾクゾクしながら、
霊体のままでも抜けそうだぜ、と笑うー。

「--誰か!!誰か!!!誰かいませんか!!!」
優香が、周囲に助けを求めるー

だが、夜の山中に、人などいるはずがないー。

”--誰か??へへ、俺はここにいるけどな”
謙介はニヤニヤしながらも、手を差し伸べることはしないー。

解放した身体が、どうなろうと知ったことではないー。
無事に生きて帰ることが出来るのも、
そのままのたれ死ぬのも、それは自然の摂理だと
謙介は思っているー

「--助けて…たすけて…」
周囲を見渡しながら泣きじゃくる優香ー

ついに、優香はその場で子供のように泣き出してしまったー

”えっへっへっへっへ”
謙介はそんな優香の周りを霊体の状態でウロウロしながら、
泣いている顔を見て、満足そうに笑みを浮かべたー

迷惑な憑依人ー

”置き去り憑依人”は、
それからも欲望のために、様々な人間に憑依してはー
見知らぬ場所まで移動してー
解放するー、という
悪行を繰り返し続けたー

②へ続く

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コメント

6月最初のお話は、迷惑な憑依のお話ですネ~!☆
①で終わりのような、終わり方ですが、②もありますので
明日をお楽しみに~!

お読み下さりありがとうございました!!

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憑依<置き去り憑依人>

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