乗っ取った身体で、
出来る限り遠くに移動しー
見知らぬ地で、その身体を解放ー
戸惑う本人を見て、その反応を楽しむ迷惑な憑依人がいた…!
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「ーーーふぅ」
男は、一人旅を楽しんでいたー
こうして、見知らぬ土地のベンチに座り、
景色を眺めるのも、男の楽しみのひとつだったー。
景色を眺めながら、ぼんやりと過ごす。
見知らぬ地の景色ー
見知らぬ地の空気ー
旅は、人生に無限の可能性を与えてくれるー
仕事、帰宅、仕事、帰宅ー
それだけを繰り返している日常では
見えることのなかった”世界”がそこには広がっているのだー。
そんな風に思いながら
最高の時間を楽しんでいた男にー
ある女性が目に入ったー。
自分と同じように、旅の最中だろうかー。
女子大生ーいや、女子高生ぐらいにも見えるー。
だがー
不思議なのは、
まるで”部屋着”のような格好であることだったー。
しかも、荷物一つ持っていないー
手ぶらだー。
女は一人、ニヤニヤしながら景色を見つめるー
「ここどこだろうなぁ~
こんな遠くに来ちゃって…へへへ」
女が一人、呟き始めるー。
男は”なんかヤバそうな子だ”と、思いながら
その女と目を合わせないようにしつつ、
移動しようとしたー
「--この子、帰れるのかなぁ…へへへへへへ」
そう呟くと、女が突然ー
その場に倒れ込んだー
「--!?!?」
旅の最中だった男は戸惑うー。
本当は関わりたくなかったが、
このまま立ち去るのも良くない気がして、
”大丈夫ですか!?”と声を掛ける男ー
目を覚ました女は、周囲を見渡すと、
「え…!?!?え…???こ、ここ、どこですか!?」
と、混乱した様子だー。
さっきまでとは、まるで雰囲気が違うー
「ど、、どこって、ここは、鹿児島県のー」
男が言うと、
「か、、か、、鹿児島ぁ!?!?!?!?」
と、女が悲鳴に似た声を上げたー。
女はー
半分パニックになっていてー
男は必死に事情を説明しているー
そんな状況を見つめながら、
上空に浮かぶ”男”は、笑みを浮かべたー
霊体の状態で、他人からは見えない状態のその男はー
”憑依薬”と呼ばれる薬を用いて
先程まで、女を乗っ取っていたのだー。
「---ククク」
この世には”他人に憑依できる”人間が、
わずかながら存在するー
裏社会で取引されている”憑依薬”によるものだー。
だが、この男は、
その憑依薬を使って”非常に珍しい楽しみ方”をしていたー
憑依能力を使う人間の中でも
特別…
レアの中のレアと言ってもいいー。
彼はー
「---」
憑依されて”見知らぬ地”までやってきてしまった女性の戸惑う姿を見て、
ニヤリと笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柴原 謙介(しばはら けんすけ)-
闇市で手に入れた”憑依薬”を服用したことにより、
憑依能力を手に入れた男だー。
彼の日課は、特殊だったー。
彼は、憑依能力を手に入れるまでは、
一流企業に勤務していたのだが、
憑依能力を手に入れてからは、会社を辞め、
現在は週に数回のアルバイトのみで生活をしているー。
”憑依”を使えば、いくらでも金を手に入れることが出来るからだー。
例えば、街の可愛い子を乗っ取って
その身体で男を誘惑すれば、
いくらでも金を稼ぐことが出来る。
稼いだ金は、適当に謙介自身にわたるようにうまくやってからー
その子の身体を解放するー
これで、金はいくらでも稼げるし、
金持ちに憑依して、自分の口座に振り込ませてー、
上手く記憶を操作していてもいいー。
だがー
謙介が、女の身体に憑依して、エッチなことをするのは
あくまでも”金”のためであり、
彼にとってはビジネスでしかなかったー。
必要以上に金も必要ないし、
生活費が足りなくなった時だけしか、それはしないー
謙介の”本当のお楽しみ”は、
他の憑依者が絶対にしていないであろうことだったー。
それはー。
「--次のシフトは3日後かー
…なら、”今回も”やるかなー」
謙介は、そう呟くと、自分が霊体となりー
そのまま”獲物”を見つけるために飛び立ったー
「----」
上空を浮遊しながら、”かわいい子”を探す謙介ー
ちょうど、近くの高校が下校中だったのか、
女子高生がたくさん、道を歩いているー
「へへへへ…」
謙介は、”物色”を始めるー。
霊体の状態で、宙を舞い、女子高生の近くまで行き、
顔から声、身体まで色々な部分を確認するー。
じろじろと見られていても、謙介は”霊体”になっているため、
女子高生たちは、それに気づかないー。
「---くくく……」
しばらくの間物色を続けた謙介は、笑みを浮かべながら
一人の女子高生に憑依したー
「、、、あっ…ぅ」
女子高生がビクンと震えるー。
隣を歩いていた友達が「優香(ゆうか)大丈夫…?」と
心配そうに声を掛けたー
どうしても、憑依すると、
憑依される側は、ビクンと震えたり、声をあげたりするー
今のように、だー。
「--あ、、ぅぅん、大丈夫大丈夫!」
優香が笑いながら返事をするー
”へへへ…大丈夫じゃないけどな”
優香に憑依した謙介は、心の中で無気味な笑みを浮かべると、
そしてー
「あ、ごめん、わたし、今日は買い物して帰るから!」
一緒に歩いていた道と反対方向を指さすと
友達は「あ、、え?うん」と、少し戸惑いながら返事をしたー
「---ばいばい~!また明日~!」
優香は可愛らしく手を振ると、
すぐに邪悪な笑みを浮かべたー
「さぁ…優香ちゃん 遠くに行こうか」
優香は、クスッと笑うー。
制服姿のまま、ゆらりゆらりと歩き出す優香は、
鞄の中の財布を確認したー
お金はそこそこ持っているー
「--へへへ…この分だと、だいぶ遠くに行けそうだな」
優香は笑みを浮かべたー。
謙介は、”憑依した身体”で、出来る限り遠くにいくことを
楽しんでいるー
謙介自身も、元々、旅行は好きだったし、
他人の身体・他人のお金で旅行をするのは楽しいー。
自分の身体ではないから、お金もかからないし、
夢のような旅行だー。
優香の身体で、電車に乗り、
お金の許す限り、遠くに向かうー
県境を超えー
さらに隣の県に進みー
夜になると、優香は近くの洋品店に入って、適当な洋服を購入したー
大人っぽいセクシーな服装に身を包む優香ー
そして、最後にはサングラスをかけたー
「へへっ 別人みたいじゃん」
優香はそう言うと、夜の街を歩き始めるー。
”女子高生”だと思われたら警察に保護されて
謙介の目的は果たせなくなるためー
こういう格好に着替えたのだー。
優香は、知らない道を適当に歩き続けるー
どんどん、どんどん遠くに向かってー。
”へへ…今頃、この女の両親、”娘が帰ってこない~”とか
慌ててるんだろうな”
優香はそんな風に思いながら、さらに夜道を歩くー
途中のコンビニでトイレを済ませるー
既に謙介は何度も女性に憑依したことがあるため、
女としてのトイレもお手のものだったー。
適当な晩御飯を購入して、
コンビニのホットスナックのフランクフルトを口に咥えながら、
優香は、さらに見知らぬ地へと歩いていくー。
謙介の目的は、別に優香をどうこうしようというわけではないー。
優香に憑依して、優香の身体で身代金を要求することでもないー
エッチなことも、最初の頃はしていたが、
憑依が当たり前のように出来るようになってくると、次第に飽きて来るー。
”いつでも女の身体でもヤれる”
ようになれば、次第に飽きが来るのだー。
男が、一人でヤるのと、次第に何も変わらない感情になってくるー
だからー
今は、こうして楽しんでいるー。
翌日ー
優香は、適当なバスに乗り込み、さらに遠くに移動していくー
「--は~~~!どこだここ… へへへへ」
優香は、優香自身も、優香に憑依している謙介も
知らない場所にやってくると、嬉しそうに笑みを浮かべるー。
その日も、バスや電車で移動を続けー
出来るだけ遠く、遠くに移動していくー。
その日の夜にはー
優香は、山中にやってきていたー。
山道を歩いているうちに、たどり着いたのだー
「へへへへ…他人の身体なら、迷う心配とかもいらねぇからな」
優香が乱暴な言葉を口走りながら、制服姿で歩くー
明るいうちと、人に見られる心配がない場所では、優香は高校の制服に着替えて、徘徊を
続けていたー。
既に両親は、この娘の捜索願を出しているだろうかー。
まぁ、そんなことはどうでもいいー
そろそろ”解放”してやるから、心配する必要もないー
山の奥深くにどんどん入っていくー
「へへへ…こんなにかわいい子が、両親の前から突然失踪して
山奥を歩いてるなんて…ゾクゾクするぜ」
優香はニヤニヤしながらそう呟くと、山道で躓いて
土塗れになってしまうー。
「へへへへ…へへへ あ~~~汚れちゃった♡」
ペロっと指についた土を舐めて
ゲラゲラと笑う優香ー
「あいててててて…」
綺麗な膝は、擦りむいたのか、少し血が出ていたー。
「---は~~~」
その場に座り込んだ優香は、誰もいない山中に
座り込んで、ニヤニヤしながら周囲を見渡したー。
「しっかし、意識が飛んで、次に目が覚めたら
こんな山奥なんて…
なんかこう、、やべぇな」
そんな風に思いながら、
足を触ると、「思ったより痛いな…」と呟きながら、
”ここで解放するか”と、笑みを浮かべたー
十分に遠くにやってきたし、
このまま優香に憑依し続けていると、
痛覚をも支配している状況で、
優香の痛みは、自分が味わうことになるー。
「---……‥よし!」
優香は手をポンと叩くと、
そのまま「うっ…」とうめいて、意識を失ったー。
優香から飛び出した謙介は、
夜の山中で一人意識を失った優香を、
空中でニヤニヤしながら見つめるー。
霊体である謙介は、優香から見られることはないー。
「------う…」
優香が、意識を取り戻したー
寝起きかのような顔で、起き上がると、
周囲を見つめるー。
まだぼーっとしているのか、反応が薄いー
”まぁ、丸1日以上、乗っ取られてりゃ、そうだよな”
謙介はそんな風に思いながら優香の反応を見つめるー
優香の表情に焦りが見え始めるー
「えっ…!?えっ……えっ…!?どこ、ここ…!?」
優香が、泣きそうになりながら周囲を見渡すー
夜の山中で突然目を覚ませば、そうなるだろうー。
立ち上がろうとする優香ー
しかし、先ほど乗っ取られた状態で怪我をしていることで、
足が思うように動かず、優香は転倒してしまうー
”あ~らら”
謙介はニヤニヤしながら、その様子を見つめるー。
謙介の憑依の一番のお楽しみは
”この瞬間”
だー。
優香の様子を見ながら、ひたすら楽しそうに笑みを浮かべる謙介ー
優香は、鞄からスマホを取り出そうとするー。
しかしー
「ないっ…え…なんで…!?
わたし、、え…!?」
スマホは、途中捨てたー。
だから、ないー。
”へへへ…見知らぬ場所でパニックになる反応…
最高だなぁ”
謙介はゾクゾクしながら、
霊体のままでも抜けそうだぜ、と笑うー。
「--誰か!!誰か!!!誰かいませんか!!!」
優香が、周囲に助けを求めるー
だが、夜の山中に、人などいるはずがないー。
”--誰か??へへ、俺はここにいるけどな”
謙介はニヤニヤしながらも、手を差し伸べることはしないー。
解放した身体が、どうなろうと知ったことではないー。
無事に生きて帰ることが出来るのも、
そのままのたれ死ぬのも、それは自然の摂理だと
謙介は思っているー
「--助けて…たすけて…」
周囲を見渡しながら泣きじゃくる優香ー
ついに、優香はその場で子供のように泣き出してしまったー
”えっへっへっへっへ”
謙介はそんな優香の周りを霊体の状態でウロウロしながら、
泣いている顔を見て、満足そうに笑みを浮かべたー
迷惑な憑依人ー
”置き去り憑依人”は、
それからも欲望のために、様々な人間に憑依してはー
見知らぬ場所まで移動してー
解放するー、という
悪行を繰り返し続けたー
②へ続く
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コメント
6月最初のお話は、迷惑な憑依のお話ですネ~!☆
①で終わりのような、終わり方ですが、②もありますので
明日をお楽しみに~!
お読み下さりありがとうございました!!
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