<憑依>レンタル彼女~3年後の再会~(後編)

偶然ー。

本当に、偶然だったー。

3年ぶりの再会に、彼は…?

※レンタル彼女の後日談デス!

--------------------—-

「--やっぱり俺は、、君のそばにいたい!!!!」

恭三が、叫ぶー

夕日が輝く中ー
振り返った月菜の表情は、よく、見えなかったー。

「---俺、、……金井さんと出会うまで、
 女を、いや、女性をイヤらしい目でしか見てこなかったー。

 好きになった人は何人かいたけどー
 それは、その…エッチな目でというか…
 人間としてではなくて…

 だからー
 3年前、俺は憑依薬を手に入れた時、
 迷わず誰かの人生を奪おうと思った!

 レンタル彼女だった金井さんを呼んだのも
 正直、可愛かったからー
 ”この身体を自分の身体にしたい”
 そう思ったからー」

恭三が必死に叫ぶー。
月菜からどう思われようと、自分の気持ちを全て吐露せずには
いられなかったー。

「-------」
月菜は、何も言わず恭三の方を見つめているー。

恭三は続けるー

「--でも、あの日!金井さんの過去を知ってー
 あの日見せられた、憑依される前の写真を見てー

 こんなに素敵な笑顔を浮かべていた人がー
 こんなに悲しそうなー
 こんなに全てを諦めてしまったような顔に
 変わってしまったんだー

 って、そう思ったんだー

 そしたらーー
 そしたら、、なんかこう…
 自分のしようとしていたことが、
 恥ずかしくなってーー

 なんて言っていいか分からないけどー
 とにかく、あの日、俺は金井さんとデートして
 変わったんだー

 生まれて初めて、この人を守りたいって
 本気でそう思えたー

 憑依薬も返却したし、もう持ってないー。

 あれからずっとー
 俺、君のことが忘れられなかったー

 何度も、何度も君のことを思い出すんだー

 あ、いやー
 変な意味じゃなくてー

 ”人”として、君に心を、打たれたー

 だからーーー
 やっぱり、俺ーーー
 君と一緒にいたいー」

恭三は、そこまで言い切ると、頭を下げたー。

「---……正直な告白ですね」
月菜はそれだけ言うと、
恭三の方に少しだけ近づいてきてから、言葉を続けたー

「--素直に気持ちをぶつけてくれたみたいですからー
 わたしも素直に感想を言いますねー」

「---」
恭三は緊張した様子で、月菜を見つめるー

「--正直、キモイです」
とー。

恭三は心に刃物を突き立てられたような気持に
なって月菜を見つめるー

「---ご、ごめんなさいー」
恭三が頭を下げると、月菜は「-今のは、前半の感想です」と、
淡々と答えたー

「ぜ、前半ー?」

「---俺、、……金井さんと出会うまで、
 女を、いや、女性をイヤらしい目でしか見てこなかったー。

 好きになった人は何人かいたけどー
 それは、その…エッチな目でというか…
 人間としてではなくて…

 だからー
 3年前、俺は憑依薬を手に入れた時、
 迷わず誰かの人生を奪おうと思った!

 レンタル彼女だった金井さんを呼んだのも
 正直、可愛かったからー
 ”この身体を自分の身体にしたい”
 そう思ったからー」

恭三が自分の台詞を思い出すー

たしかに、キモイー。
”言われる側”からしたらきもすぎるのは確かだー

「--た、確かに、、キモすぎですね」
恭三は敬語に戻してそう呟くー

だがー
”前半は”と月菜は言ったー

月菜と出会ったおかげで改心した恭三のことを
月菜は認めてくれたのだろうかー。

「--で、後半の感想ですけどーーー」

月菜はそこまで言うと、
「荻田さんー」
と、言いながら優しい笑みを浮かべたー

「--やっぱり、キモイですー」

「-------」
「----------

 って、結局キモイのかよ!」

恭三は思わず叫ぶと、月菜はクスッと笑ったー

「--3年前、告白されたときに振ったはずですよね?
 
 しかも、今はもう、荻田さん、アラフォーでしたよね?
 20代前半のわたしに 告白して、
 わたしが「ありがとうございます 嬉しいです」なんて
 いうと思いましたか?

 しかも、相手は3年前に憑依しようとしていたおっさんー。
 普通、OKなんてしませんよね?」

恭三は「はぅ…」と、項垂れるー

3年前とほぼ同じような言葉で、振られたー。

「ーーもう一度だけ言っておきますねー

 ”ご自分の年齢、よく考えたほうがいいですよ”
 
 ってー」

月菜はそれだけ言うと、

「--でもー」
と、言葉を続けたー

「--3年前よりは、心に響きましたー」

そう言いながら、少しだけ笑う月菜ー。
月菜は恭三の方を見つめながらー

「--……じゃあ」
と、スマホを取り出して何かを操作し始めたー。

「---……」
恭三は緊張した様子で月菜の方を見つめるー

今度は何を言われるのだろうかー。
アラフォーまで独身だった男の生涯独身率でも
見せられるのだろうかー。

そんな風に思いながら、
月菜がスマホを操作しているのを
不安そうな表情で見つめ続けたー。

「----」
月菜が操作を終えると、ため息をついて、
恭三の方を見つめているー。

「-----」
恭三も、月菜の方を見つめるー

「---ーー何でわたしをぼーっと見つめてるんですか?」
月菜が表情を歪めるー

「え…だって、何を見せられるのかって…不安で…」
恭三が言うと、
月菜は「ちがいますよ!」と、スマホの画面を見せたー。

そこには、連絡先の管理画面が表示されているー。

「--お付き合いはできませんけど、連絡先ぐらいはーー
 と、思ったんですけど、必要ないならー」
月菜の言葉に、恭三は「ああ、いや!いや!する!する!」と必死で叫んだー

「--反応が、高校生みたいなんですけど」
月菜が、愛想なく言うと、
恭三は「--れ、恋愛に関しては子供のまま成長してないので!」と、
慌てた様子で叫んだー

スマホを狂ったようにタッチしながら
恭三が顔を赤らめていくー

”連絡先の交換”
その方法が、分からなかったー。

最近は、もうここ10年ぐらい、新しい連絡先は増えていないー

会社の上司からSMSが送られてきて
電話番号を登録したぐらいだー。

だからー
方法が、イマイチ分からなかったー

「--もぅ!貸してください!」
月菜が恭三の手に触れるー

恭三がドキッとして、顔を真っ赤にするのに気づかず、
月菜が操作をすると、
「LINEと、メール、どちらが良いですか?それとも両方?
 わたし、合わせますから」
と、恭三に対して言い放つー

しかしー
ドキドキしたまま恭三は顔を真っ赤にして、ぼーっと立ち尽くしていたー

「--おい!」
月菜が、ばしっ!と、肩を叩いてくるー

「-ひぇっ!」
急に口調が荒くなった月菜にビクッとすると、
「--LINEとメール、どっちがいいですか?って聞いてるんですけど」
月菜は、元の口調に戻って言いなおしたー。

「あ、、え、、は、、はい、、え、っと、、好きなほうで」
恭三が言うと、月菜は「じゃあ…一応両方登録しておきますね」と、
慣れた様子で操作すると、「はい、終わりましたよ」と、
恭三のスマホを恭三に返したー。

月菜が、恭三の方をじーっと見つめているー

「--さっきからニヤニヤして…
 わたし以外の前でそんなことしてたら不審者で通報されますよ?」
月菜の言葉に、恭三は、
「じ、、じ、、じ、、女性と連絡先交換とか、、初めてだから」と
顔を真っ赤にしながら呟いたー

月菜にまた”気持ち悪い”と言われるかと思ったがー
月菜はそれ以上は何も言わず、
恭三から少し離れて呟いたー

「-ーーーわたしはこれでー。
 失礼します」
月菜は礼儀正しく頭を下げると、そのまま颯爽と立ち去って行ったー

相変わらず、”棘”がある気がするし、
見た目の優しそうな感じとは違い、中身はー
まるで、そう、心が凍り付いてしまっているような感じに思えるー

けれどー
3年前に比べると、その”心の氷”は解けたのだろうかー。

恭三はそんな風に思いながら
「あ!やべっ!そろそろ帰らないと!」と
自分が出張帰りだったことを思い出して、そのまま駅に向かってダッシュしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅後ー

月菜に対して、恭三は勇気を出してメッセージを送ってみたー。

”久しぶりにお会いできてうれしかったです
 お体に気を付けて、頑張ってください”

とー。

「---」
返事を今や今かと待ちわびるー。

だが、返事は来なかったー。

恭三は「ま、こんなもんか…」と思いながら
自虐的に笑う。

間もなく、40歳になるー。
恭三は、自分でも分かっているー

恐らく、自分は生涯独身である、とー。

生涯独身は、別に悪いことではないー
自らその道を望む人もいるー。

だが、恭三のように、
”望んでいないのに”生涯独身の道に進むことになる、
というのは、辛いー。

「---…まぁ…人生、こんなもんか」
3年前の月菜が言っていたような言葉を口にすると、
恭三は少しだけ寂しそうに、
そのまま眠りについたー。

翌朝ー

「-------!!!!!」

恭三は、心のもやもやが全て吹き飛びそうになるぐらいの
衝撃を受けたー。

”月菜からの返信”があったのだー

”おはようございます”
から、月菜の返信は始まったー

”どうせ、初恋の男子高校生みたいに
 ニヤニヤしながらこの返事を読んでいるのだと思いますが”

そう、書かれていて、恭三は、ハッとして鏡を見るー

月菜の指摘通り、ニヤニヤしていたー

「--ぐえっ…なんでわかったんだ!」
恭三はそう思いながら、続きを読むー。

”荻田さんがキモイのは、事実です。
 3年前、わたしに憑依して乗っ取ろうとしていたんですから
 わたしからすれば、キモイ以外の何物でもありません

 けどー
 そんな荻田さんと、レンタル彼女としてデートして、
 わたしは、前を向くきっかけをいただいたのも事実です。

 変な話ですけど、荻田さんとあの日、デートして、
 こんな変な人もいるんだなって、思ってー
 なんか、色々吹っ切れましたー

 そのおかげで、今、わたしは、前よりも前を向いて
 生きることができています。
  
 人生、こんなもの…という考えは変わりません。
 けど、こんな人生でも、少しでも光があるならー
 もうちょっとだけ頑張ってみるのもいいかなーー

 って、そう思うことができました。

 今のわたしがいるのは、
 荻田さんのおかげー。

 本当に、ありがとうございました”

月菜からのメッセージには、そう書かれていたー。

「--ありがとうございましたーって…」
ニヤニヤしながらも、恭三は、寂しそうに呟いたー

「やっぱー
 これで、終わりかぁ…」
とー。

ファンタジーやメルヘンの世界じゃないんだし、
そんなに都合よく、結ばれたりすることはないか、
と、苦笑いする恭三ー

恭三は、返事を送るかどうか、迷った挙句ー
ようやく、返事を入力したー

”これからの金井さんの幸せを願っていますー
 こちらこそ、ありがとうございましたー”

とー。

「----」
恭三は少しだけ笑うと、そのままスマホを机の上においたー。

あの時、金井さんの身体を乗っ取っていれば
今の人生は違ったかもしれないー

今頃、バラ色の人生を送っていた可能性もあるー。

でもーーー

それでも、今の恭三は後悔していないー。

金井月菜、という子の人生を
少しでも明るくすることが出来たのだからー。

「-----」
恭三はため息をついてから、
「--俺も、もう少しだけ頑張ってみるか」と、
静かに呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

三日後ー

♪~~~

スマホが音を鳴らしたー

恭三がスマホを見つめると、
そこには、月菜からのメッセージが届いていたー

”来月、お休みが取れるので、
 また、レンタルしてみますか?”

とー。

「--レンタル?」
恭三が首を傾げると、

”どうせ、家の中汚そうですし、
 不健康な生活送ってそうなのでー
 特別に”レンタル家政婦さん”やってあげますよ。
 どうですか?”

と、そう書かれていたー。

「---はっ…… ちゃんと綺麗にしてるし!」
恭三はそう叫びながらも、
少しだけ嬉しそうにー

”じゃあ、お願いしますー”
と、月菜に返事を送ったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

レンタル彼女の後日談でした~!

いや、憑依してよ!と、いう人もいると思いますが、
毎日色々な作品を書いているので、
たまにはこういう作品も、ということで
生まれた作品でした~!

お読み下さりありがとうございました!!

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憑依<レンタル彼女>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    またフラれちゃいましたけど、なんだかんだで、二人の距離は少しずつ縮まっていってる感じですよね。

    いつかは両想いになれる可能性もゼロではなさそうです。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    もっと時間を掛ければ…
    今より良い関係になれるかもしれませんネ~!