<憑依>レンタル彼女③~決意~(完)

憑依するためにレンタル彼女を呼び出した男・恭三ー

レンタル時間は残りあとわずか。
月菜への憑依の行方は…!?

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「----」

光輝く遊園地ー
その中で、恭三は、レンタル彼女の月菜を見つめていたー

月菜は、高校1年生の時に憑依されて、
それからおよそ3年間、浅井という男に乗っ取られ続けた過去を持つー。

月菜が意識を取り戻した時には、
3年以上の月日が流れていて、
月菜はいつの間にか大学生になっていたー

月菜に憑依した浅井は、
大学生になってすぐ、痴漢に襲われて
あまりの恐怖に、月菜の中で廃人状態になってしまって、
心を閉ざしたー。

その結果ー
月菜は、こうして今、身体の主導権を取り戻し、
自分が表に出てきている状態だー

月菜曰はく、浅井という男は
完全に廃人になっていて、もう再び乗っ取られることはないー、
とのことだったー。

「さぁ、どうぞ」
月菜はそう呟いたー。

恭三が、憑依目的で月菜を呼んだことに、
月菜はすぐに気付き、
その上で、恭三に憑依を促しているー

「好きにすればいい」
そういう、反応だったー。

憑依されたことにより、全てを失った月菜は、
悟りの境地に達したかのような、
そんなオーラを発していたー。

「---そ、そういえば、どうしてー
 どうして、俺が金井さんに憑依しようとしてること、
 分かったんですか…?」

恭三が気まずくなって言葉を口にするー。
過去に憑依された経験があるとは言え、
どうして恭三がそうだと、気づいたのだろうかー、とー。

「----目…」
月菜が言うー。

「--目?」
恭三が首を傾げるー

「--あなたの目…
 あの時、わたしに憑依した、浅井って男
 そっくりー。

 ”変態の目”ですー
 これから他人の身体を奪おうとするー
 ”ケダモノ”の目ー

 一度憑依されたわたしだからこそ、分かるんです」

月菜に”ケダモノ”と言われた恭三は、グサッと
心を抉られる思いで、月菜を見つめたー。

「俺はーー
 俺は…女子から気持ち悪がられて…
 今まで散々酷い目に遭って来たんだー…

 少しぐらい、俺にだって、いいことがあったっていいじゃないか!」

恭三がそう叫ぶと、
月菜はため息をつくー

「だ・か・ら、どうぞって言ってますよね?
 どうぞご自由にって。

 ごちゃごちゃ喋ってるのは、あなたの方ですよ?」

月菜の言葉に、
恭三は顔を赤らめるー

そうだー
月菜は最初からずっと”好きにしてください”と言っているー

一歩踏み出せずに、ごちゃごちゃ言っているのは
自分の方だー。

月菜に憑依することに、踏ん切りがつかずに、
時間を稼いでいるのは、自分の方だー。

「---あと、、あと、15分ーー
 憑依は、最後にさせてもらうから」
恭三はそれだけ言うと、
月菜に背を向けたー。

「--最後、何乗ります?」
月菜は、淡々とそれだけ言ったー。

”素の金井さんでお願いします”と言ったからだろうかー、
もうレンタル彼女モードで振舞う気はないようだー。

「--…じ、、じゃあ、ジェットコースター」
恭三が指をさすと、
月菜は少しだけ表情を歪めたー

そういえばー
さっきから月菜は観覧車やコーヒーカップ、お化け屋敷に
メリーゴーランド、車の乗り物ーと、
絶叫マシンを避けているようにも思えるー

恭三は少しだけいじわるな気持ちになって、
月菜の方を見つめたー。

「--もしかして、絶叫マシン苦手ですか?」
とー。

散々、月菜の言動に振り回されてきた恭三の
なんとなくの仕返しだったー

「--別に」
月菜はそれだけ言うと、ジェットコースターの方に向かって行くー。

「--強がらなくてもいいですよ、何ならホラ、あっちのボートでも!」
恭三が言うと、月菜は「怖くないですから」と、淡々と口にしたー

ジェットコースターに乗り込む二人ー。

恭三が”ジェットコースターなんて何年ぶりだ?”と思いながら、
ふと、隣にいる月菜を見つめると、
月菜は顔を真っ赤にして、しがみつくかのように、
必死に恐怖に耐えている様子だったー。

「----」
恭三は、そんな月菜を見て、少しだけニヤニヤすると、
月菜から目を背けて、前を見つめたー。

ジェットコースターから降りると、月菜は
「大したこと、ありませんでしたね」と呟くー。

”びびってたじゃん”と言おうと思ったが
恭三は言わなかったー。

そしてー

「--あと3分ー」
月菜はそれだけ言うと、
恭三を見つめたー。

「--それで?憑依はどうするんですか?
 わたしは別に構いませんよー。

 さっきから言ってる通り、
 人生なんてこんなものですからー
 わたしの身体が欲しいなら、ご自由にどうぞ」

月菜が恭三の方を見つめるー。

恭三は”俺の人生”と、自分の人生を振り返るー。

確かに月菜の言う通り
”人生なんてこんなもの”かもしれないー

輝かしい人生を送る人がいる一方で、
恭三のように、何のイベントもないような無の人生を送る人間もいるー

もちろん、それでも不幸な人生よりはマシだー。
けれども、人生は思い描いた通りには、ならないー。

それが、今日、変わるー。

月菜の身体を乗っ取ればー
これだけ可愛い子だー
人生は、一変するだろうー

恭三の第2の人生が始まるー

色々苦労はあるとは思うー
けれどー、
バラ色の人生が、その先に待っているー

ここで、憑依をしなかったら、
恭三は一生、今のままだと思うー
せっかく手に入れた憑依薬を使わず、このまま帰るのは、
馬鹿のすることだー。

「---じゃあ、させてもらう」
恭三は、月菜に近づくー

月菜は、遊園地の景色に少しだけ視線をずらすと、
恭三の方を見つめたー。

「-------」
もう、月菜は何も言わなかったー

抵抗する気配もー
怯える気配もー
何も、感じないー

人生に完全に絶望しー
悟りに達している女子大生の姿が、そこにはあったー。

「-----」
月菜の目の前にやって来ると、
恭三は、呟いたー

「ふふふふふふふふふ」
恭三が笑みを浮かべるー

「--俺もこれでついに美少女にー」
恭三の言葉に、
月菜は「美少女かどうかは知りませんけど」とだけ呟いたー。

「----」
その月菜の姿は、死を覚悟したーー

まるで、切腹する直前の武士かのように、
堂々とー凛としていたー。

「--じゃあ、憑依するぞ!はははっ」
恭三が笑いながら言うと、
月菜は静かに目を閉じたー

あとは、キスをするだけー

「----」

「----」

月菜が、目を開くー

「----って…するつもりだったんだけどな…」
恭三が寂しそうに呟くと、
月菜は表情を歪めたー。

「---なんか……」
恭三が近くのイスに座ると、ため息をついたー。

「--なんか……金井さんとこうして半日過ごしたらー…
 憑依できなくなっちゃったよ」

恭三は頭を抱えるー。
下心丸出しな人生を送って来た恭三は
当然、月菜の身体でもあんなことやこんなことを
するつもりだったー

だが、憑依がここまで月菜という子を変えてしまった事実ー

そしてー
まるで全てを悟っているかのような、月菜の振る舞いー

恭三は”月菜”という人間に興味を持ってしまったー

自分が憑依して、月菜の身体を自分のものに手にした時点で、
神秘的な月菜はいなくなってしまうー。

乗っ取ればー
月菜の身体は自分のものになっても、
月菜の心は、消えてしまうー

「--終了です。料金は既に前払いで頂いていたと思いますので
 わたしはこれで」

月菜は時計で、レンタル彼女の時間が終わったことを確認すると
そのまま立ち去ろうとするー

「待ってくれ!」
恭三が叫ぶー

「---はい?」
月菜が不愉快そうに振り返るー。

「--じゃあ、させてもらう
 --って、さっき言ったよな?」
恭三の言葉に、月菜は表情を歪めながら
「でも、あなたはわたしに憑依するの、やめたんですよね?
 ま、今からしてもいいですけど?」
と、面倒臭そうに答えたー。

「---」
恭三が言葉を詰まらせていると、
月菜は「レンタルの時間終わったんで、失礼します」と
立ち去ろうとするー。

「--君に!!!告白!!させてほしい!」
恭三が叫んだー

「---は?」
月菜が立ち止まって振り返るー。

「--俺、、俺…き、、君に…君に、なんていうか、こう、、
 君の話と、その振る舞いを見てたらー
 君のことがどうしても気になってしまってー

 さっき、高校時代の写真、見せてくれただろー?
 あの時みたいに、、

 き、君に笑ってほしい、って、そうーー」

恭三が、女性経験がないことを前面に押し出すかのように
挙動不審な口調で喋っていると、
月菜はほほ笑んだー

「--笑ってほしい?こうですか?」
と、笑顔でー。

すぐに真顔に戻ると
「今のはレンタルのサービスです。それでは」
と、再び立ち去ろうとするー

「--俺は、、君のこと、、好きになった!!
 生まれて初めて好きになった!!!!!

 憑依しようとしてた俺が言うのもなんだけど、、
 君の過去を知った上で、君を守りたいと思った!

 俺は、、俺はーー」

恭三は、人生初の”告白”をしたー

月菜が立ち止まって再び振り返るー

「--わたしが好きになった?今、そう言いましたか?」
月菜が恭三の方に近づいてくるー。

恭三は、「え、、あ、、は、、はい…」と呟くー

「ーーー金井さんのこと、守りたいって、本気で思ってー」
恭三の目に、嘘、偽りはなかったー

憑依された経験のある月菜には分かるー。

「-----ーーー」
月菜は、恭三の方をしばらくじっと見つめたー

恭三がゴクリと唾を飲み込むー

この子を支えたいー
この子と一緒にいたいー。

この子のために、俺はー

「-----お断りしますー。
 30代中盤の下心丸出しのおっさんが、現役女子大生のわたしに
 告白して、わたしが「ありがとうございます 嬉しいです」なんて
 いうと思いましたか?

 しかも、相手は他人に憑依しようとしていたおっさんー。
 普通、OKなんてしませんよね?」

月菜は淡々ときつい言葉を投げかけて来たー

恭三は、つい、ファンタジー的な展開を期待してしまったが
そんなことはなく、一気に現実に引き戻されたー。

「---そ、そ、、そうだよな…
 す、、すんませんでした」

恭三が言うと、
月菜は「ご自分の年齢、よく考えたほうがいいですよ」と、だけ言うと
再び恭三に背を向けたー。

「-----……」
月菜が少しだけ立ち止まってから
振り返ると、恭三の方を振り向いて、

「---変な人ー」

と、呟くと、にっこりと笑ってそのまま立ち去って行ったー。

「----」
恭三は、その場に立ち尽くしたまま、

”今のは、素の彼女の笑顔…なのか?”
と、少しだけ考えてからー
”いや、レンタル彼女としての笑顔だよな”
と、苦笑いして、そのまま遊園地から立ち去ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

憑依は人の人生を壊すー。
月菜との”疑似デート”を通して、
恭三は、すっかり憑依する気を無くしてしまっていたー。

「---あれ?」
恭三が、月菜を見つめたレンタル彼女のサイトで、
月菜の名前が消えていることを確認したー。

「--もう、会えないかー」

月菜はどうしたのだろうかー。

レンタル彼女をやめて、何か前向きに歩む道でも見つけたのだろうかー

それともーー
人生に絶望して、生きることもやめてしまったのだろうかー。

恭三に、その答えは分からないー

けれどー

”ご連絡ありがとうございます 憑依薬を返品したいだとか?”

憑依薬の出品者・愛染から連絡が入り、
恭三は、「あ、はい」と、返事をするー

”困りますね…ノークレーム・ノーリターンと説明しているはずですが”
愛染の声に、恭三は「あ、いえ」と、呟いてから続けたー

「-あの…クレームとかじゃなくて…
 返金も別にいらないですー

 ただーー、、
 ただ、、、

 ただーー憑依しようと思った子にーー
 色々教えられたというか

 もう、、俺にこれは必要ないっていうか」

恭三が戸惑いながら言うと、
電話相手の愛染は少しだけ笑ったー

”--なるほどー。
 あなたのような落札者は、初めてですよ

 いいでしょうー
 返品、お受けしますー”

心なしか、愛染の声は、少しだけ嬉しそうだったー

どうして、この男は憑依薬を売っているのだろうかー。

そう思いつつも、恭三は、
「ありがとうございます」とだけ返事をして、
それ以上は詮索しなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--そ、そんなこと…!
 ほ、、ほら、今からだって、人生ー」

「---」
恭三から言われた言葉を思い出しながら

「--ほんと、変なやつー」

と、
少しだけ笑うと、

「--世の中、そんな甘くないですよ

 でもー、まぁー
 少しだけー
 夢を見てみるのも、いいかもしれませんね」

そう呟いてー
月菜は大学へと出かけて行ったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

少し変わったスタイルのお話でした~!

過去に憑依されていた、というだけで
(作中の)現在では憑依しませんでしたネ…!

毎日書いているので、たまには変則的なお話も…!

お読み下さりありがとうございました~!

憑依<レンタル彼女>
憑依空間NEO

コメント

  1. やつはし より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    僕なら迷うことなく憑依してましたね笑

  2. TSマニア より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    自分は好きな話しでした‼

    月菜と恭三いいコンビでした笑

    後半の月菜のSっぷりがサイコーでした笑

    二人ともいい方向に向いてほしいですね(^o^)

    気が向いたら二人のその後や偶然、再会した話しを書いてください(о´∀`о)

  3. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    ゾクゾクをたっぷり楽しめそうですネ~笑
    さすがやつはし様デス☆!!

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    後日談も書けそうな感じな終わり方だったので
    機会があれば~!☆

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