ごみ屋敷のおばあちゃんと入れ替わってしまった女子高生・美海
”美海になりきる”つもりが全くないごみ屋敷のおばあちゃんは
美海の身体で奇行に走り、周囲はその異変に気付いていく…
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「♪~~~~~」
久しぶりのお風呂に入ったー
そんな風に思いながら美海になったごみ屋敷のおばあちゃん・梅子は
浴槽に浸かり、大声で演歌を歌っていたー
身体は女子高生なのにー
歌っている歌は、美海が絶対に知らないであろう
昭和初期のマイナーな演歌だったー。
「--♪~~~~~」
「---?」
母親の莉子が、”美海が鼻歌歌ってるなんて珍しいなぁ”と
思いながら、洗面台の整理をしているー。
その時だったー
♪~~
インターホンが鳴るー。
「---はい」
莉子が応答するとー
モニターには”ごみ屋敷のおばあちゃん”である、梅子が写っていたー
”ちょ、何の用なの?”
近所でも評判のごみ屋敷の主である梅子。
近所からもすっかり嫌われ、”迷惑者”扱いされているー
しかし、梅子は基本的に、自分の家の周囲を徘徊するだけで
こうして、他の人の家にやってくることは今までなかったー
だからこそ、莉子は戸惑ったー。
”お母さん…わたし…”
梅子(美海)は、泣きそうになりながら言葉を振り絞ったー
「--はい?」
莉子は首を傾げるー。
美海になった梅子はお風呂で演歌を歌い続けているー。
”元自分”のことなど、まるで興味がないかのようにー
”お母さん…わたし…美海!
か、身体がおばあちゃんと入れ替わっちゃったの!”
梅子(美海)が叫ぶー。
だが、母親の莉子は取り合わなかったー
「あの、すみません…美海ならもう帰宅してますが…」
莉子の言葉に、
梅子(美海)は食い下がるー
”それはわたしじゃない!
わたしが美海なの!!!お母さん、信じて!”
その言葉にー
莉子は表情を歪めたー
莉子も、迷惑行為を繰り返す梅子にはうんざりとしていたー
「訳の分からないこと言っていると、警察呼びますよ」
語気を強めてそう言い放つ莉子ー
”ち、、違う!わたし、、
お、、お母さん、聞いて!去年のわたしの誕生日のときーーー”
梅子(美海)は慌てて
”美海たちしか知らない”であろうことを言い放とうとしたー
しかしー
インターホンを切られてしまったー
「-お母さん!ねぇ!お母さん!」
玄関先で叫ぶ梅子(美海)-
「お母さんってば!!」
泣き叫ぶ梅子(美海)-
その様子に、近所の住人が何人か、家から飛び出してきたー
”また、ゴミ屋敷のおばあちゃんが迷惑行為をしている”
周囲の住人は誰もがそう思ったー
そして、誰かが通報したのだろうかー。
警察官が駆け付けて
「おばあちゃん、ほら、行くよ」と、そのまま交番に連行してしまったー
これまでにも、何度も梅子は迷惑行為で通報されており
警察官もその都度駆け付けているため
警察官たちも既に「またか」という呆れ顔だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お風呂から出て来た美海(梅子)はご機嫌そうに
髪型を整えるー
そことなく、古い感じの髪型にすると、美海(梅子)は
そのまま部屋に向かったー
スマホを手にする美海(梅子)-
しかし、梅子はスマホを使ったことがないー
「--このポンコツ!こら!」
スマホを何度も何度も叩く美海(梅子)-
全く使い方が分からないことにいら立った美海(梅子)は
そのままスマホをゴミ箱の方に放り投げて、
不愉快そうに頬を膨らませたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
ボディチェックを終えて、満足そうな笑みを浮かべる美海(梅子)は、
晩御飯を食べていたー
父・亮人と母・莉子が少し戸惑っているー
美海が嫌いなはずの漬物を嬉しそうに美海(梅子)が食べているからだー
「-この漬物は最高ね…
わたしの若いころなんかねぇ、おばあちゃんがよく1から作ってくれたのよぉ」
美海(梅子)が口から涎を垂らすような
汚い食べ方で漬物を貪るようにして食べて行くー
「--き、急にどうしたの?漬物なんか食べ始めてー」
母・莉子は戸惑いを隠せないー。
美海が漬物を食べたりすることは、これまでになかったからだー
「--え?ふふ、や~ね~、わたしだって漬物ぐらい、食べるわよ」
美海(梅子)はどこか、おばあちゃん臭い話し方で、そう笑みを浮かべたー
父・亮人も、戸惑ってはいたものの、
まさか入れ替わりなどということは想像できず、
「ま、美海だって漬物を食べたい日ぐらいあるさ」と、呟いたー
「--そういえばさ、あんたたちは、セックスとかしてるの?」
美海(梅子)の突然の発言に、
父・亮人が飲んでいたお茶を吹き出したー
「--は、、、え、、お???き、急に何を言いだすんだ!?」
亮人が戸惑っていると、
美海(梅子)はほほ笑んだー
「だって、知りたいじゃん!ひっひっひっひ」
美海(梅子)の様子がおかしいー
父も母も、そう思いながら、顔を見合わせるー
「ねぇ、お母さんはどんな風に喘ぐの?聞かせてよ」
ニヤニヤしながら言う美海(梅子)-
一応ー
”美海”として、莉子のことを”お母さん”と呼んだりするぐらいの
”なりきり”はするつもりがあったが、
梅子には、性格まで美海になりきるつもりはなかったー
全くと言っていいほど、なかったー。
この身体は、もう自分のものなのだからー
性格も、趣味も、恋愛も、エッチも
何もかも自分が決めるー、と。
下心丸出しの笑みを浮かべる美海(梅子)-
「--してるんでしょ?
若い夫婦はいいわぁ~~~」
美海(梅子)が、ニヤニヤしながら言うー。
母の莉子も父の亮人も、困惑していたー
美海は、普段こんなことは絶対に言わないからだー
「--あ、そうだ、お父さん 今度わたしとヤラない?」
美海(梅子)が笑うー。
「--な、、な、、な、、何を言ってるんだ!」
娘から誘惑されて不覚にもドキッとしてしまった亮人は
すぐに声を荒げたー
ドキッとしただけで、そんなことをするつもりは、毛頭ないー
デリカシーというものを全く持ち合わせていない
”ごみ屋敷のおばあちゃん”が、中身になったことで
美海は豹変していたー
「--ふふふふふ、照れちゃって、もぅ、かわいい!」
美海(梅子)は両親を揶揄うと、そのまま「ごちそうさま」と
自分の部屋へと戻って行ったー。
既に散らかり始めている自分の部屋ー
しかし、美海(梅子)は全く気にする様子もなく、
鼻をかむと、そのティッシュを”まだ使えるかもしれない”と
そのまま床に放置して、部屋にあった本を読み始めたー。
「---今日の美海は、なんか変だな」
父・亮人が呟くー
母・莉子は少しだけ考えてから、口を開いたー
「そういえばさっき、例のごみ屋敷の辻村さんが
うちに急に来たんだけどー」
梅子が家に来たことを話す莉子ー
「え?あのおばあちゃんが?」
亮人が言うと、
莉子は頷いたー
そして、不安そうに言葉を続けたー
「--辻村さんが”お母さん、わたしが美海なの”って
言ってたのが気になってー」
莉子の言葉に、
亮人は、美海(梅子)が向かった部屋の方を見つめるー。
「---……」
いやー
そんなはずはないー
さっきの美海の様子はおかしかったー
だが、人と人が入れ替わるなんて、ありえないー。
「----…辻村さんにも、困ったものだな」
亮人は”ふたりが入れ替わっているのではないか?”と一瞬でも
考えてしまった不安を押し殺して、
莉子に対してそう告げたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「--ーー」
スカートを少し短くして、
まるで”おばさん”のように濃い化粧をした美海(梅子)が
学校に登校するー。
「---え‥?」
親友の雅奈が戸惑うー
「--な、なんか今日、化粧濃くない?急にどうしたの?」
雅奈はそこまで言うと、
美海(梅子)のスカートを見つめて
「スカートも短いし」と、呟いたー
「-その方が、男が寄って来るでしょ」
美海(梅子)はそう言うと、笑みを浮かべたー
「え…」
唖然とする雅奈ー
「ひっひっひっひっひ…ブスには分からないよねぇ~」
美海(梅子)はそう言い放つと、
そのまま教室の方に歩いていくー
「---え」
雅奈はさらに唖然としたー
雅奈を”ブス”と呼ぶのは、
あのごみ屋敷のおばあちゃんだけだー。
「え…ちょ!?今、なんて?!」
雅奈が美海(梅子)のあとを追いかけて教室に入るも、
美海(梅子)は、クラスの男子に手当たり次第声をかけて、
「若いっていいわねぇ~!」などと、奇妙な言葉を
繰り返し、口走っていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---あんたたち、スマホばっかり!」
昼休みー
美海(梅子)が突然机を叩いて叫んだー。
「--ど、どうしたの…?」
雅奈が戸惑うー
”ごみ屋敷のおばあちゃん”梅子は
新しいモノに適応できず、
しかも、自分が適応しないだけではなく
それにケチをつけるタイプのおばあちゃんでもあったー
「-画面ばっかずっと見てて、最近の若い子たちは!!まったく!」
美海(梅子)が怒りの形相で叫ぶのを見て、
周囲は唖然としたー。
「美海…?今日、なんか変だよ…?大丈夫?」
親友の雅奈が不安そうに聞くと、
「-ブスは黙ってなさい!そんなんだから、彼氏もいないのよ!ブース!」と、叫んだー。
「----は?」
雅奈が表情を歪めるー
親友の美海相手とは言え、我慢ならなかったー
「今日の美海なんなの!?おかしいよ!」
雅奈がそう叫びながら、立ち去っていくと、
周囲のクラスメイトたちはさらに困惑したー
「--ーまったく…まったく」
ブツブツと呟き始める美海(梅子)ー
周囲は戸惑うことしかできなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--ーーーどうしよう」
警察から解放された梅子(美海)は、梅子の家に帰宅していたー
ごみだらけの梅子の家を見て、
涙が出て来る梅子(美海)-
家に帰りたいー
けれど、この姿のまま家に帰れば
また同じ結果になるのは目に見えているー
近所の人にも、学校の友達にも
助けを求めることなんて、できないー
梅子は近所で大がつくほどの嫌われ者だし、
学校の友達でも、梅子のことを知っている人は
梅子のことを嫌っているー
「--どうしよう…」
”おばあちゃんになるとこんなに身体が重いなんて”と、
疲れを感じて、ボロボロのイスに座るー。
「------」
孤独を感じるー
ごみだらけの部屋で、一人ー。
梅子が、頑固になり、ごみを貯め初めて、
周囲に絡んだり、奇行を繰り返すようになったのは
この家のおじいちゃんー
つまり、梅子にとっての夫が死んでから、だー。
「------」
”寂しかったのかな?”と、梅子(美海)は考えるー。
確かに、寂しいー
誰もいない、この部屋でいつも一人なのだとしたらー。
そして、なんだか、気力も分からないー。
老いは、体力だけではなく、色々な物事に対する気力も
沸かなくなるのだろうかー。
「----」
梅子(美海)は少し考えてから、
動きにくい身体に鞭入れて立ち上がったー
「--よし!わたし、決めた!」
この家をピカピカに片づけてみせようー
とー
そして、おばあちゃんを安心させてあげようー、
とー。
そうすればー
身体も返してくれるかもしれないー、
そう思いながらー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
来る日も来る日も、梅子になった美海は、
必死に掃除をしたー。
梅子がお金を持っているかも分からず、
自分の力で、必死に掃除をしていくー
ここを綺麗にすることがー
元に戻るための1歩ー
自分の身体を奪ったおばあちゃんを説得するための第1歩だと信じてー
ここのおばあちゃんが、あんな風になってしまったのにはー
きっと、何か理由があるはずー。
真面目な美海は、そう信じて、
今日も、梅子のごみ屋敷を綺麗にしようと、掃除を続けるのだったー。
③へ続く
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コメント
ごみ屋敷のおばあちゃんから身体を取り戻すことは
できるのでしょうか~?
続きはまた次回デス!
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