彼女の家の近くには
”ごみ屋敷”があったー。
そこの”おばあちゃん”は近所からも嫌われる存在ー。
しかし、ある日…?
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「--いってきま~す!」
高校2年生の坂原 美海(さかはら みみ)は、
今日もいつものように高校へと向かうー。
勉強熱心で努力家、几帳面な彼女ー
綺麗好きで、部屋もいつもきれいに整理整頓されているー
そんな美海が、歩きながら、
”ある家”の前を通ったー
古びた建物に、
玄関先までゴミが散乱ー
その異臭が近所にまで広がっているー
そう、そこはー
近所でも有名な”ごみ屋敷”だったー
一人暮らしのおばあちゃんが住んでいる家で、
数年前、夫が先に死んでから、
ごみ屋敷へと変貌を遂げたー。
最初は近所も「辻村さんの家は、旦那さんが亡くなっちゃったからねぇ」と、
同情するような感じだったのだが、
今ではそんなことを言う人はいないー。
あまりにも迷惑ー。
”早く出て行ってほしい”
”ごみを片付けてほしい”
そんな、状況になってしまっていたー
「あら…美海ちゃん!」
美海が前を通ると、ゴミ屋敷の主・梅子(うめこ)が声をかけて来たー
よぼよぼで不潔な感じのおばあちゃんだー
「-あ、おはようございます」
美海は、そんな梅子に対しても、笑顔で挨拶をするー。
立ち止まって話をするようなつもりはないが、
美海は、ごみ屋敷のおばあちゃんに対しても、
イヤな顔ひとつせずに挨拶することのできる女子高生だったー。
「--おっぱいも立派に成長して…ひひひひひっ」
ニヤニヤしながら言う梅子ー。
まるでー
”童話の世界に出て来るような魔女”のような感じにも
見える梅子は、
平気で無神経な発言を繰り返すため、
今では”ごみ屋敷であること”も含め、
近所からはとても嫌われていたー
美海も、正直言って、関わりたくない、とは思っているー。
「--あ、、あはははは」
美海は愛想笑いを浮かべるー
「--足も綺麗だし、
手も綺麗ー
髪も綺麗ー
男を誘ったら、すぐに落ちるんじゃないかい?」
梅子の言葉に、
美海は少しだけイヤそうな表情を浮かべたー。
「--そ、そういうのは…あの…
遅刻しちゃうので…」
美海が言うと、
梅子は、「ひっひっひっひ」と笑いながら、
「-その身体で、男の前で股を開いたら、さぞ気持ちいいだろうねぇ」と
そのまま家の中に入って行ってしまったー
美海はため息をついてそのまま学校に向かうー
”誰に対してもあんな感じ”だー。
美海はいちいち気にしてはいないー
あのおばあちゃんは、そういう人なんだ、と割り切っているー
この前は、男性の新聞配達員に、
「あんたのここはちっこいねぇ」などと言っていたし、
離婚したばかりの近所の若い女性に
「ご離婚、おめでとうございます」などと、言っていたー。
完全に理性を失っているようにも見えるー
けれどー
美海は”たぶん、おじいさんが死んじゃったからだよね”とも
頭の中で理解していたー。
だからー
梅子に対して何か反論したりすることはなかったし、
いつも適当に話を受け流していたー。
イヤなことを言われればイヤな気持ちになるけれどー
それでも、ゴミ屋敷のおばあちゃん・梅子に、
美海は一定の同情もしていたー。
梅子と、既に死んでしまった夫は
本当に仲良しだったことを、美海も知っていたからだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--この前もさ、汚水が漏れ出してるって、板垣さん怒ってたよ」
父親の亮人(りょうと)が、ため息をつきながら、
母親の莉子(りこ)に対して言い放つー。
「--豆腐屋さんも、潰れちゃったしねぇ」
母親の莉子がため息をつくー。
ごみ屋敷のすぐそばに豆腐屋があったのだが、
ごみ屋敷がそばにあることで
豆腐屋まで”不衛生”なイメージを持たれてしまい
結果的に廃業に追い込まれたー。
「ーー辻村さんもなぁ…片づける気、なさそうだしなぁ」
亮人もため息をつくー
行政による指導にも限界があるとのことで、
梅子自体が、「これはごみじゃない!」と主張していることから
片づけること出来ない。
無理矢理、住人がごみを片付けようとして
トラブルになったこともあるぐらいだー。
近隣住民たちの間には、”諦め”も広がっていたー。
梅子本人が、改心する様子は全くないし、
行政による指導も進まないー。
住人たちの中には
”早く死んでほしい”などと思っている人も出て来る始末だったー。
しかしーー
「ーーーひっひっひっひっひ」
ごみ屋敷の主・梅子は、近隣住民の想像以上の
常軌を逸していたー。
ポルトガル語で書かれた古文書を読みながら
梅子は、まるで魔女のように、何かの準備をしているー
「若い身体ー
若い身体ー
若い身体ー
ひっひっひっひっひ」
梅子はそう言いながら、ごみだからけの部屋で
笑いながら何かの準備を進めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
学校から下校中だった美海は、
友達と一緒に歩いていたー。
親友の柿野 雅奈(かきの まさな)-。
「--うわっ」
雅奈が表情を歪めるー。
雅奈が”ごみ屋敷”に反応したのだー
最近は部活で忙しかった雅奈が、美海と一緒に
下校するのは久しぶりで、
ごみ屋敷を見るのも久しぶりだったー
「--相変わらず、こうなの?」
雅奈の言葉に、美海は「うん…」と苦笑いするー。
「---!」
窓から、何かが落ちて来たー。
雅奈の目の前に落ちたのはーー
汚れたオムツだったー。
梅子が使っている老人用のオムツだー。
「--ちょ!?」
梅子が自宅の2階から、雅奈に向かって
オムツを投げたのだー
「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
ブス~!ブゥ~~~ス!」
梅子が2階の窓から、雅奈のことを指さして笑うー。
梅子は、何故か前から雅奈のことを見ると
「ブス」と笑うー。
美海からしてみれば雅奈は決してブスではないし、
ごく普通の顔立ちなのだが、
雅奈が一度「おばあちゃん、迷惑ですよ」と堂々と
ごみ屋敷について文句を言ってから、
梅子は雅奈に嫌がらせをするようになっていたー
「この迷惑ババア!」
雅奈が怒りの形相で言い返すー
その言葉に、梅子は「--お前には天罰が下るぞ!」と、
魔女のように呟きながら雅奈を指さしたー
「--…ほんと、気持ち悪い、いこっ」
雅奈の言葉に、美海は戸惑いながら
そのまま二人でごみ屋敷の前から立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、翌日ー
”それ”は完成したー。
梅子は、完成させてしまったー。
”自分と他人の身体を入れ替える”薬をー。
「---ひっひっひっひっひ」
笑う梅子ー
小汚い賞味期限切れのパンを食べて
その袋を台所のごみの山に放り込むと、
自分の頬にハエが止まっていることも気にせず、
梅子は、笑みを浮かべたー。
美海がいつものように高校に向かうため、
梅子の家の前を通るー。
その時だったー
「たすけてぇ~~~~~」
梅子の声が聞こえて来たー
梅子の”奇行”はいつものことだー
だが、”たすけて”という声が聞こえた美海は、
「--おばあちゃん?」と、表情を歪めながら
ごみだらけの玄関の方に近づいていくー。
「た~~す~~け~~て~~」
梅子の声ー
美海は梅子が
”美海をおびき出そうと思って叫んでいる”ことも
知らずに、玄関から”きもちわるい…”と思いながらも
家の中に入るー。
足場のないほどに積み上げられたごみー。
美海は戸惑いながらも、息を止めて奥に向かうー。
するとー
梅子が仰向けに倒れてもがいていたー。
「---おばあちゃん!?大丈夫?」
心優しい美海は
たとえ、相手が”迷惑なおばあちゃん”であったとしても
心配するやさしさの持ち主ー
迷うことなく、ゴミをかき分けて梅子の方に向かうー。
しかしー
それが、”仇”となったー
梅子がニヤァ と笑うー。
「--若くてぴちぴちな身体、ほしい~♡」
そう言うと、梅子は突然、美海にキスをしたー
覆いかぶさるようにして、美海を押し倒す
梅子ー
”ごみ屋敷のおばあちゃん”に突然キスをされた
美海は驚きの表情を浮かべながらも、
そのまま梅子に押し倒されてーー
意識を失ったー
「ひっひっひっひっひ」-
しばらくして、
先に起き上がったのは美海だったー
「ひっひっひっひっひっひ」
美海が不気味な笑い声をあげはじめるー
「ひ~~っひひひひひひひひひ」
胸を触りながら笑う美海ー
「--若い…若い…若い…
--足も綺麗だし、
手も綺麗ー
髪も綺麗ー
男を誘ったら、すぐに落ちそうだねぇ… ひひひひひひっ」
美海は倒れている梅子を見つめると、
笑みを浮かべながら、そのまま家の外に立ち去って行ったー。
それから、しばらくしてーーー
梅子も目を覚ましたー
「----!」
梅子が戸惑った様子で周囲を見渡すー。
しかし、すぐに自分の身体の異変に気付いた。
何だか、身体が重いー。
何だか、感覚がおかしいー
急激に体力を奪われたかのような、そんな感覚を覚えるー。
「---!?!?!?!?」
梅子が自分の手を見て、驚きの表情を浮かべたー
梅子の手はーしわまみれになっていたのだー
「え……」
慌てた様子で梅子は、家のごみを気持ち悪そうに蹴散らしながら、
ボロボロの洗面台の方に向かうとー
そこにはーーー
「---えっ!?!??!!!!!!!!」
梅子は、思わず放心状態になってしまったー
鏡に映るはずの”自分の姿”はそこにはなく
鏡に映ったのは”梅子”の姿だったー
「--え…ちょ、、、ちょっと待って…!?え…!?」
梅子が戸惑いの声を上げるー。
彼女はーー
見た目は梅子だが、
中身は梅子ではなくなっていたー。
ごみ屋敷のおばあちゃん・梅子が完成させた
”入れ替わり薬”によって
梅子と美海は、中身が入れ替わってしまったのだー。
「--……え…うそ…うそ…!?」
梅子になった美海は、自分の老いぼれた身体を
触りながら困惑するー。
積まれたごみから、見知らぬ虫が出てきて
梅子(美海)は悲鳴を上げるー。
”わ、、わたしはどこ!?”
すぐに梅子(美海)は
”自分がこのおばあちゃんの身体になってるってことは…
もしかして、おばあちゃんはわたしの身体に…?”と
いう考えにたどり着き、部屋の方に戻るー。
しかし、ごみ屋敷と化している梅子の家の中には、
既に美海になった梅子の姿はなかった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---」
美海になった梅子は、笑みを浮かべながら美海の家の前に立っていたー。
「--ひっひっひっひっひ…」
美海(梅子)はそのまま玄関の扉を開けると
「ただいま~♡」と可愛らしい声を出した。
「--おかえりなさい」
母の莉子は、娘の美海の中身が
”ごみ屋敷のおばあちゃん”だとは夢にも知らず、普通に返事をするー
美海(梅子)は階段を見つけると、階段を一段飛ばしで駆け上がって
笑みを浮かべたー
「--若い…若い…ひひひひ♡」
階段をスムーズに登れることに興奮した美海(梅子)は、意味もなく
階段を登ったり、降りたり、5往復ほど繰り返したー
「--どうしたの?」
母親の莉子が、美海(梅子)が階段を何度も何度も
上り下りをしているのに気づいて声をかけるー。
「--若いっていいなぁ、って思って」
美海(梅子)がそう微笑むと、
莉子は首を傾げたー。
部屋に戻ると美海(梅子)は、鞄を放り投げて、
口からティッシュに向かって唾を出すと、
そのティッシュを近くに放り投げたー。
「--ひっひっひ…久しぶりに男と寝れるわぁ…♡」
美海(梅子)はうっとりとした表情を浮かべるー
若いころの梅子は、男好きだったー
最近は年老いてもう相手にもされなかったが
今は違うー
美海になった梅子は、適当にクラスメイトを誘惑して
エッチなことをしようと考えていたー。
”入れ替わったこと”を隠そうともあまり思っていない
美海(梅子)の暴走が、今、始まろうとしていたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ごみ屋敷のおばあちゃんと入れ替わってしまった
美海ちゃんの運命は…!?
続きはまた明日デス~!
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