<皮>きみとひとつになりたい③~支配~(完)

皮にされて乗っ取られてしまった女子高生ー。

その異変に気付いたコンビニの仲間たちー。

最後に待ち受ける、運命は…?

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”きみの自由時間だ”

紗理奈の頭の中に声が響くー。
ノイズが入ったかのような、声ー。

「---…もう、、やめて…」
自分の部屋で、意識と身体の主導権を取り戻した紗理奈は
泣きながら呟くー

”どうして?”

”どうしてそんなことを言うんだ”

紗理奈の脳に響く言葉ー。

”僕は君を守りたいだけだ
 君に近づく害虫は、僕が全て排除する。
 君は安心して平和な生活を送ることが出来るー。

 君に痛い思いなんてさせないし
 怖い思いもさせないー
 悲しませるつもりもないー。

 誰にも触れさせないー
 誰にも気安く話しかけさせないー

 僕は、君を宝石を守るかのように、守るー。

 だから、安心しろー”

「--安心なんかできない!」
紗理奈が大声で叫ぶー。

「--わたしは、、今、この状況が怖いの!」
紗理奈は泣きながら叫ぶー。

「今のわたしは、全然平和なんて感じてないし、
 今のわたしは、とっても悲しいの!!!」

紗理奈は、そう言いながら叫ぶー

「もうわたしから出て行って!
 いい加減に、付きまとわないで!!!!」

コンビニの迷惑客・堂島義康に対する
激しい怒りを口にする紗理奈ー

”なぜー?
 なぜ、、
 僕は君を守っているんだー。

 君が僕を受け入れてニコニコ生活していれば
 君は仕事をする必要も何もない。
 ただ、平和に暮らしていれば、それでーー

「--たとえ平和だったとしても
 そんな束縛はお断り!!

 わたしは、辛いことも含めて、自分で自分の人生を歩みたいの!」

紗理奈がそう言い放つとー

”わかったー”
と、脳内に声が響き渡ったー。

”せっかく、君に自由時間を与えているのにー
 紗理奈ちゃんにとっては、それすら恐怖で辛いことなんだね。

 だったらー”

「--!」
紗理奈は恐怖を感じたー

”だったら、僕が永遠に君の身体を支配してー
 君を怖がらせないように、悲しませないようにする”

「--!!!!」

紗理奈を守りたいー
その、一心。

しかしー
その願いは、酷く、強く、歪んでいたー。

”乗っ取られていること”に恐怖や悲しみを感じているのならー
完全に乗っ取ってしまえば、紗理奈は悲しむことも、
怖がることもなくなるー。

そんな、”歪んだ”守りたいという感情ー

「や、、やめっ…!」
叫ぶ紗理奈ー

直後、ビクンと紗理奈の身体が震えてー
後頭部に少しだけ亀裂が入るー。

「--おっと、、激しくやりすぎて、脱げちゃうところだった」
紗理奈はそう言いながら、頭を触るとー

「もう、怖くないよ。
 安心して」
と、笑みを浮かべたー

「--ほら、笑ってる顔が、良く似合うよ」
紗理奈が鏡の前でニコッと笑うー。

完全に支配される直前に、紗理奈が流した涙が
頬を伝うー。

それを指につけると、紗理奈はペロリとそれを舐めてー
「--僕は、君に悲しい顔は、もう二度とさせない」と
満面の笑みを浮かべたー

自分が紗理奈を乗っ取っていればー
悲しむことも、怖がることもないのだからー

「--僕と君は一心同体。
 僕は、きみとひとつになって、きみを守る」

そう呟くと、紗理奈は静かに笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

コンビニバイトの忠雄と、オーナーは、
フリーターのバイトスタッフにレジを少しの間、任せて
”昨日”の情報交換をしたー。

「-----」
二人とも、顔色は優れないー

忠雄は、店長の家に、
オーナーは、堂島義康の家の、昨日の夜、足を踏み入れたー。

その時のことを、二人は順番に語るー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

前日の夜ー

忠雄は、失踪した店長の家を訪れたー。

オーナーは、別の場所に存在する
紗理奈に付きまとっていたコンビニの客・
堂島義康の家にー。

だがー
どちらも留守なのか、返事はないー。

忠雄は唾をゴクリと飲み込むと、
大家さんを探して、自分の身の上を明かし、
店長と連絡がつかない日が続き、
心配していることを告げたー

話の分かる大家さんで、大家さんが同伴の上で、
店長の部屋の鍵を開けてくれることになったー。

一方ー、別の場所、堂島義康の家の前に
やってきたコンビニのオーナーは
玄関の扉が開いたままであることに気づきー
ゆっくりと内部へと足を踏み入れたー

そしてー
そこで見たものはーー

「---なんだ、、、これは…!?」

紗理奈に付きまとっていた堂島義康の家の中に
足を踏み入れたオーナーは、唖然としたー。

堂島義康の姿をした”着ぐるみ”のようなものが、
大量の画鋲で、壁に貼り付けにされていたー。

「----」
オーナーは言葉を失うー。

部屋の中に争ったような形跡は何もないー。

「-----これは…なんだ…」

堂島義康の”皮”が、画鋲で壁に貼り付けられているー。

人間が”皮”にされる、などということを
全く理解できないオーナーはただただ、恐怖を感じたー

そしてー
同時刻ー
別の場所で店長の家に足を踏み入れた忠雄は、唖然とするー

”紗理奈ちゃんは、僕が守るー”

そう書かれた日記のようなものが置かれているー

さらにはー
部屋中に、”バイト中の紗理奈を盗撮したと思われる写真”が
大量に置かれていたー

「---」
大家さんは唖然としているー
忠雄もまた、唖然としているー

店長の姿は、どこにもないー。

忠雄は日記の最後のページに目をやるー

そこにはー

”例の変態客がしつこい。
 紗理奈ちゃんも怖がっている。

 僕は決めた
 紗理奈ちゃんを守るため、
 僕は害虫を駆除して、紗理奈ちゃんと一つになる”

と、書かれていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日の情報交換を終えたオーナーと忠雄は
困惑するー。

「-と、なると、店長は、紗理奈ちゃんのことを
 ずっと好き…というか、おかしな目で見ていた、とー」

オーナーの言葉に、
忠雄は頷くー

紗理奈の豹変ー
店長と堂島義康の行方不明ー

それを結び付けようと、忠雄は推理するー。

”紗理奈ちゃんとひとつになる”
この文章が気になったー

”もしも、店長が紗理奈とひとつになっているのだとしたらー”

そんなことはあり得ないー
けれどー
もし、店長と紗理奈が何らかの方法で”ひとつに”なっているのだとすれば
紗理奈の豹変に説明がつくー。

「--オーナーが見た、堂島義康の”着ぐるみ”みたいなやつー。
 俺、たぶん、それは堂島本人だと思うんです」

忠雄はそう呟いたー

どうして着ぐるみのような状態になってしまっていたのかは
分からないー

けれど、店長の日記に”紗理奈に近づく害虫を駆除”と書いてあったー

そのことからー
堂島義康は、店長にーー

ガチャーー

「--!」
忠雄とオーナーが振り返ると、
控室に地味な格好の紗理奈がやってきていたー。

「---」
話を聞かれたのではないかと焦る忠雄とオーナー。

紗理奈は、にこっと笑ったー。

「-気づいちゃったか」
とー。

「--て、、て、、、店長…?」
忠雄が恐る恐る口にすると、
紗理奈は笑みを浮かべたー

「あぁ、そうだよ」
とー。

紗理奈を皮にして乗っ取ったのはー
堂島義康ではなくー
コンビニの店長だったー

店長は、紗理奈の姿のまま、笑みを浮かべて、説明するー。

元々店長は、紗理奈に目をかけていたー。
だが、そんなときに堂島義康が現れて、
紗理奈は落ち込みがちになったー

落ち込んでいる紗理奈を見るうちに店長は
”僕がこの子を守らないといけない”という
強い使命感を持ち始めたー

ある日ー
店長はネットで”他人を皮にして着る”という力の存在を知りー
それを手に入れたー

そして、店長は決意したー

”僕が紗理奈ちゃんと一つになれば、紗理奈ちゃんを守ることが出来る”

とー。

そう決めた店長は、紗理奈が乗っ取られたあの日、
まずは”テスト”として、害虫駆除を行ったー。

堂島義康の住所を、控えておいた送り状から調べて、
義康の家に向かい、義康を”皮”にしたー。
注射器で1発ー
簡単だったー。

そして、義康の皮を着た状態で、
紗理奈を狙ったー。

”紗理奈は僕が守らないと”
その感情が爆発しー、
義康の皮を着たまま、紗理奈の前に姿を現しー
紗理奈を皮にしたー。

先に義康を皮にしたのはー

”紗理奈に付きまとう害虫駆除”と、
”皮にする注射器のテスト”という目的があったー。

皮にしても死なないー
そう、判断した店長は、安心して紗理奈を皮にしたのだー

そして、義康の皮を脱ぎ、紗理奈の姿のまま、義康の家に行き、
義康を”皮にしたまま”画鋲で串刺しにして殺したー。

”僕はただ、紗理奈ちゃんを守りたいだけだよ。
 僕の邪魔をするやつは、さっき、紗理奈ちゃんの姿で始末してきた”

あの日ー
紗理奈に、”店長”が言った言葉ー

紗理奈は”堂島義康が店長を始末した”と勘違いしていたがー
実際には”店長が堂島義康を始末した”のだったー。

「---僕が紗理奈ちゃんになっていれば
 紗理奈ちゃんは、怖がることも、悲しむこともない。
 そうだろう?」

紗理奈がニヤリと笑うー。

忠雄とオーナーは唖然としているー

♪~~
♪~~~~

レジの呼び出しベルがなっているー。

「---?」
忠雄が、店内の様子を見に行くー。

フリーターのバイトがレジをやっているはずだったが、
混雑しているのだろうかー

と、思いながらー

しかしー
レジの中ではーーー

”フリーターのバイト”が”皮”になって、横たわっていたー

忠雄が、ゾクッ、と恐怖心を感じると同時にー
首筋に注射器が差し込まれたー

「-ばれたからにはー
 ”皆殺し”だー」

地味な格好の紗理奈が微笑むー。

「--あ、、、うぁ、、、、、」
身体が皮になっていくのを感じながら、男子大学生の忠雄が、紗理奈にしがみつくー

地味な服装の紗理奈が微笑むー。

「--わたし、店長に守ってもらってるの♡」
とー。

店長が紗理奈の口調を真似て、そう言わせているー。

忠雄は、”なんとかしてあげたい”と思いつつも、
力が抜けて、そのまま床に横たわったー。

脱ぎ捨てられた着ぐるみのようにー。

「---ひっ…」
オーナーが悲鳴をあげながら後ずさるー。

「--こ、こんなことをして!店内のカメラに映像が残ってるんだからな!」
オーナーが叫ぶと、
紗理奈は笑ったー

「--紗理奈ちゃんを守るために”上から別の皮を着ればいい”」
とー。

オーナーは控室のイスを掴んで、そのまま紗理奈に
殴りかかるー。

しかし、紗理奈は、それを回避して、
笑いながら、オーナーに注射器を突き刺したー。

オーナーも皮になるー

「--紗理奈ちゃんを守るために、
 秘密を知るものは全員消しちゃわなくちゃ」

皮になったオーナーと忠雄、そしてフリーターのバイトを
鞄に詰め込むと、
ちょうど店内に入って来た女子大生の客に注射器を打ち込み、
それを皮にして、店長は、紗理奈の皮を着たまま、その女子大生も
着込んで、そのまま立ち去って行ったーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

紗理奈は姿を消したー。

両親が警察に届け出を出したが、
見つかるはずがないー

何故なら紗理奈はーー
店長が、”皮”にした別の女性の家の中に
”飾られて”いるからー。

「---ふふふふふ」
一人暮らしのOLが帰宅するー。

家の中には、”紗理奈の皮”が飾られているー

帰宅するや否や、OLの後頭部がぱっくりと開き、
中から店長が出て来るー

そして、店長は紗理奈の皮を身に着けたー。

「--ふふふ 紗理奈は僕だけのものだー
 僕が一生、守ってあげるから、安心するんだぞ」

店長は紗理奈の姿でそう呟くと、
嬉しそうに笑みを浮かべたー。

紗理奈と何の接点もないこのOLの家に
警察が紗理奈を探しにやってくることはないー

紗理奈は永遠にー

そう、永遠に店長に守られていくことになるー。

永遠にー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

危険な男に皮にされてしまう女子高生のお話でした~!
お読み下さりありがとうございました~~!

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