知らない間に、”自分と全く同じ姿に変身した男”が
アイドルデビューしてしまった…!
困惑する彼女、しかし…?
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「---野乃花だよ~♡ うふっ♡」
ファンたちの視線を感じながら
”偽”の野乃花が、かわいらしさを振りまくー
歌声を披露して、
野乃花は、いかにもアイドル、という感じの衣装で、
ポーズを決めるー
そのライブ配信を見ながらー
”本物”の野乃花はため息をついたー。
「どうすればいいの…?」
とー。
「--ーこの子に直接会うとか…?」
”本物”の野乃花を匿ってくれている親友の魔理沙は
戸惑った様子でそう呟いたー。
「---で、でも…」
野乃花は戸惑うー
”自分の偽物”である、アイドル活動をしている野乃花が
何者なのかー
確かに、それを知る必要はあるー。
けれどー
同時に”怖い”という気持ちもあるー。
自分が姿を現したらー
相手のーー
”偽物”の野乃花は何て言うだろうかー
自分が、何かされるんじゃないかー
周囲が、どう思うだろうかー
そういう、悪い方向にばかり、考えてしまうー。
「--いつまでも大学に行かずにーって
わけにもいかないし、学長からもいわれたんでしょ?
別人であるという証拠を出せって」
魔理沙の言葉に、野乃花は「うん…」と頷いたー
「--見て」
魔理沙は、スマホを手に、
”偽の野乃花”の握手会が明後日行われることを
野乃花に伝えたー
「--…ここに行けば、会えるってこと?」
野乃花が言うと、
魔理沙は頷いたー。
「-----」
戸惑う野乃花ー
”怖い”という感情がどうしても前に出てきてしまうー
”自分の名前を名乗り、勝手にアイドル活動をしている人物”
敵意があるのかどうかも、
何者なのかもわからないー
「--わたしも一緒に行くから」
魔理沙はそう呟くと、野乃花は少しだけ考えたあとに、頷いたー。
「確かに、逃げているわけにはいかないもんね…」
”本物”の野乃花はそう呟くと
”偽物”の野乃花に会いに行く決意を固めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
握手会の準備をしながら、
”偽”の野乃花は笑みを浮かべたー
アイドルになりたいー
その夢を、去年、学園祭で見かけた、この野乃花という
女子大生の姿に変身することで、
叶えたー
彼ー
熊原 祥太郎は、
”待っていた”
”本物”が自分に会いに来るのをー。
祥太郎は、”野乃花”の姿に変身しているだけー
憑依して身体を乗っ取ったり、
身体を入れ替えたわけでもないー
つまり”本物の野乃花”は
もう一人、この世に存在している状態だー。
当然、地下アイドルとして活動しているころは、
それを本物の野乃花に知られる可能性は
限りなく低かったが、
こうして、表に出て来た今、確実に本物の野乃花は
”知らない場所でわたしがアイドルになってる!?”と
戸惑っているだろうー。
だがー
”その対策”は、ちゃんとしてあるー。
本物の野乃花を何とか説得するためにー
今までの”アイドル”としての活動で稼いだお金のほとんどを
祥太郎は”貯金”していたー。
祥太郎は”アイドルになりたい”という願いだけでー
野乃花に変身したー
そして、その夢をかなえたー
金は、生活費以外は、必要ないー
莫大な金を払えば、本物の野乃花はきっと納得してくれるー。
これからー
さらに仕事が増えて、さらに人気アイドルとなればー
さらに収入は増えるー
その”莫大な収入”を野乃花の本物に全て捧げるー
”本物の野乃花”は働かずして莫大なお金を
手に入れることが出来るー
その交渉に
”本物”が乗らないはずがないー。
祥太郎は、そう考えていたー。
野乃花の母親は病気で入院しているー
その治療費を、野乃花が実家に仕送りし続けていることも知っているー
そして、海外で手術をすれば、その母親の病気は治せるかもしれないことも
祥太郎は調べたー
”金”で釣れば必ず”本物の野乃花”は納得するー
本物が騒ぎ出す前にー
祥太郎は野乃花と接触するためー
”わざと”握手会の予定を何個も入れていたー
そしてーー
「--みんな、またね~~~♡」
握手会を終えて、帰路についた野乃花の姿をした祥太郎の前にー
本物の野乃花と、親友の魔理沙が姿を現したー
本物の野乃花は、周囲からバレないようにーー、か、
マスクをして、髪型も少し変えていたー。
「---あの」
野乃花は言うー
”少し派手な格好をした偽物の自分”を前に、
戸惑う本物の野乃花ー
”わたしは、、逃げないー”
本物の野乃花と、魔理沙が互いを見つめ合って頷くとー
本物の野乃花は口を開いたー
「--わたしが本物の浅霧 野乃花ですー。
あなたは、誰ですか?」
とー。
野乃花の姿をしている祥太郎は「--ちゃんと説明します」と
頭を下げると、自分の住んでいる家を指さして、
その場に野乃花を招き入れたー。
”まだ”メジャーデビューしたばかりで、
デビューから少し時が立った今、
常に週刊誌の記者に見張られているレベルの
アイドルにはなっていないー。
今のうちに”交渉”を取り付けるー。
マスクを取って、
ポニーテールにしていた髪を元に戻す野乃花ー
野乃花に変身している祥太郎は、私服に着替えるー。
ジャージ姿の偽の野乃花ー
「--あ、部屋ではこれが落ち着くんですよ」
と、野乃花の姿をした祥太郎は呟いたー。
本物の野乃花と魔理沙は戸惑った表情を浮かべながらー
”男っぽさ全開”の部屋を見つめているー。
「--…浅霧 野乃花さんー。
突然のことで、驚いたでしょう?」
野乃花の姿をした祥太郎が言うー。
祥太郎は、野乃花の姿に勝手に変身した男だがー、
野乃花に敵意はないー
”丸め込むことさえ”できればー、の話だがー。
「---全て、ご説明します」
野乃花の姿をした祥太郎は、丁寧な口調でそう呟くとー
”自分は、特殊な義眼の力で変身していること”
”去年の学園祭に野乃花の姿に変身したこと”
”アイドルになりたいという夢”
”今に至るまで”
を、全て順番に、丁寧に説明したー
「------」
野乃花は唖然としているー
偽の野乃花は立ち上がるとー
そのまま”変身”を解いたー
熊原 祥太郎の姿に戻るー
野乃花は目に涙を浮かべているー
「--そ、そんなこと…」
野乃花の親友・魔理沙は戸惑っているー
当然と言えば当然だー
”他人の姿に変身できる力”なんて、
”ふつう”ではないのだからー。
「--君に許可も取らず、勝手に君の姿に変身していたことは
本当に申し訳ないと思うー」
祥太郎は、それだけ言うと、
でもー、と続けるー
「でも、事前に”君の姿に変身して、君の姿でアイドルになりたいです”
なんてお願いして、OKを出してくれる子はいないと思うんです。
だからー
こうするしかなかったー」
祥太郎は、それだけ言うと、
奥からー
”通帳”を取り出したー
そこには、莫大な金額が表示されているー。
「--これを、全てーーー
浅霧さんー
”姿の使用料”として、全てあなたに捧げますー」
祥太郎は土下座するー
「-!!」
野乃花がその金額に驚くー
魔理沙は「すごい!」と思わず叫ぶー
「--それにー
今後の収入は、生活費と経費を除いて
全てあなたに捧げることを約束しますー
あなたのために家も建てますー
俺はただ、本当にただ、アイドルとして
いきたいだけでー
他には何もいらないー
お金も、家も、あなたの欲しいものも、何でも
俺が手に入れますー
だから、どうかーーー
”あなたの姿”を俺に貸してくださいー」
祥太郎は土下座をしたー
”確実に野乃花は受け入れるー”
何も不便はないはずだー
確かに、外でアイドル扱いされるのは大変だがー
アイドルの仕事は全部、祥太郎が、野乃花の姿でやるー。
野乃花は働くことなく、莫大なお金を手に入れー
祥太郎がこれから準備する”豪邸”で、ずっと不自由なく
趣味に打ち込むことが出来るー。
母親の病気も治せるー
絶対に、野乃花は承諾するー
祥太郎は、土下座しながら、笑みを浮かべていたー
しかしー
「--お断りします」
「--!」
祥太郎が顔を上げるー
野乃花はー
”怒って”いたー。
「--わたしの姿に勝手に変身してー
お金を払うから、このままアイドルとして活動させろ???
ふざけないで!」
普段穏やかな野乃花が怒りをあらわにしたー。
「---野乃花」
魔理沙が、驚いているー
「--でも、野乃花、一生遊んで暮らせるよ?」
魔理沙が耳打ちするー
魔理沙は”祥太郎の提案を魅力的”だと感じていたー
「-------」
野乃花は、魔理沙の言葉に、「ーーーだって」と、
否定の言葉を口にするー
そして、野乃花は祥太郎の方を見つめて言い放ったー
「--わたしの姿をこれ以上、勝手に使うことは許しませんから
もしー
もしも、あなたがこれ以上、わたしの姿で勝手なことをするのならー」
「---!!!」
祥太郎は表情を歪めたー
野乃花は”ボイスレコーダー”を持ち込んで会話を記録していたー。
魔理沙も驚くー。
「---…わたしは、今の会話を世間に流しますー。
そして、わたしは自分の人生を取り戻しますー
わたしの”姿”をあなたの勝手にはさせませんー
だからーーー
どうか、これ以上、わたしの姿で好き勝手しないでー」
野乃花の言葉に、
祥太郎は歯ぎしりをするー
「-わたしだって、穏便に済ませたいんです」
野乃花の言葉に、祥太郎は、悔しそうに無言でうなずいたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--ねぇ、あれでよかったの?」
魔理沙が言うー。
祥太郎の提案を受け入れれば
恐らく、祥太郎は本気で、
野乃花に、今後の収入も全て捧げて、
野乃花は何不自由なく、一生遊んで暮らすことができたはずー。
”アイドル”として扱われて外出は色々不便には
なるだろうけれどー
”偽の野乃花”が稼いだ収入で、
野乃花は何不自由なく、一生の収入が保証されるーー
「---……だって」
野乃花が魔理沙の方を見るー。
「--わたしは、アイドルになんてなりたくないし…
わたしの人生は、わたしのものだからー」
野乃花の言葉に、
魔理沙は「そっか」と頷くー。
「-わたしが野乃花の立場だったら、
あの男をアイドルとして働かせて
ず~っと、働かずに贅沢三昧するのになぁ~」
魔理沙の言葉に、
野乃花は苦笑いしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アイドル
”ののちゃん”は、急激に仕事を減らし始めたー
ファンの間では、心配する声ー
野乃花は相変わらずまともに外出することもできず、
困惑する日々を送っていたー。
けれどー
祥太郎は”引退”を口にし始めてー
野乃花との約束を守ろうとしているように見えるー。
”少しずつ、表舞台からフェードアウト”しようとしているようだー。
「---」
野乃花はため息をつくー。
両親には、来週、ボイスレコーダーの情報を元に
なんとか説明するつもりだー。
少しずつー
なんとか、日常を取り戻すことができればー
今日は、魔理沙は病院に行っていて、野乃花は
留守番ー。
”もしも自分が、あの男の人の提案を受け入れていれば
一生外出以外では不自由なく、暮らせたのかな…?”などと
野乃花は考えながら、
けれどー
”自分の人生は自分のものだから”と
首を振って、そのままため息をついたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
祥太郎は、野乃花の姿をやめてー
また、別の人間に変身して、
アイドル活動をしようと思っていたー。
本物の野乃花に、”ボイスレコーダー”の音声を流されたら
自分はおしまいだー。
♪~~
その時だったー。
「--野乃花です」
インターホンのモニター越しに野乃花の顔が見えるー。
「--え?」
突然、自宅に本物の野乃花がやってきたのを見て、
偽の野乃花…祥太郎は、驚きの表情を浮かべたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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他人の姿で勝手にアイドルデビュー!
その結末は…!?
続きは明日デス~!
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