<他者変身>いつの間にかわたしがアイドルに!?①~異変~

”自分と全く同じ姿形をした”人間が、
勝手に、アイドルデビューしてしまった…

ある日ー
全く身に覚えがないのに、彼女は「アイドル」になっていたー…。

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とある大学の学園祭ー。

「---!」
学園祭で”誰かを探す”かのように、
周囲を見渡していた男が、笑みを浮かべたー

”あの子にしようー”
笑みを浮かべた男は、左目を赤く光らせるー

そしてー
男の姿が変異し始めたー

男が見つめている女子大生と”同じ姿”にー。

「---くく」
女子大生と全く同じ姿・形になった男は
笑みを浮かべるー

「あ、野乃花(ののか)~!どうしたの~?」
背後から別の女子大生に声を掛けられるー

「--え」
野乃花と呼ばれる女子大生に変身した男が振り返るー。

”偽物”とは知らずに声をかけて来た友達は
「なんか一人でニヤニヤしてたから」と笑うー。

「--ううん、別にー」
野乃花に変身した男は、笑いながら、そのままその場を後にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからー
1年ー。

「----」
女子大生の野乃花は、大学2年生になり、
今日もごく普通の学生生活を送っていたー。

「--あ、あの…!」

ある日ー
大学帰りに声を掛けられた野乃花が
知らない男に声を掛けられて振り返るー

野乃花は「わたし…ですか?」と戸惑いながら
自分を指さすと、
男は「やっぱりそうだ!」と、嬉しそうに呟いたー

「--あの、サインを下さいー!」
と、色紙を野乃花に差し出しながらー。

野乃花は「へ?」と首を傾げてしまうー

「--この前のライブも、最高でした!」
男がニヤニヤしながら言うー

「ら、、ライブ…?」
野乃花は、さらに戸惑うー

楽器の演奏をするスキルもー
カラオケ以外で人前で疲労するような歌声を自分は持ち合わせていないー

ライブに参加した覚えもないー

”この前のライブも最高でした”
の、意味が全く分からないー。

「--あ、、あの、、あの!すみません!」
野乃花は戸惑いながらも声を上げるー。

「--だ、誰かと人違いしていませんか?」
とー。

「--え?やだなぁ~
 ののちゃんですよね~?」

”ののちゃん”

「---」
野乃花はさらに強い戸惑いを覚えたー

”ののちゃん”

自分の名前は、野乃花だー。
大学内に、自分のことを”ののちゃん”と呼ぶ友達もいるー。

この男は、人違いをしているわけではないのだろうかー。

「--あ、あの!」
野乃花は、困惑しながら続けたー

「ライブって、どういう意味ですか…?
 わたし、ホントに分からなくて!」
野乃花が言うと、男は笑みを浮かべたー

「ほら、この前のライブハウスでのライブ!
 「早くメジャーデビューできるようにがんばりますぅ♡」って
 言ってたじゃないですか!」

男の言葉に、
野乃花は”やっぱり人違いだー”
と、苦笑いしたー

男の言う”ののちゃん”とは
地下アイドルか何かなのだろうー。

きっと、野乃花をその”ののちゃん”と間違えているー。

野乃花はそう思って、親切に答えたー

「えーっと…
 ごめんなさい。
 わたし、その”ののちゃん”じゃなくて、
 別人ですー。

 わたしと似てるのかもしれませんけど、
 わたしはただの大学生ですので」

野乃花がそう言うと
「はっは~!」と男は笑ったー

「ののちゃん、冗談きついよ」
そう言うと、男はスマホで写真を見せて来たー

そこにはー

「---!!!」

アイドルのようなキラキラした衣装を身に着けて
歌っている最中のー
野乃花の写真があったー

「えっーーー」
野乃花は戸惑うー

”他人の空似”には、とても見えないー
まさに、自分自身に見えるー。

「---え…こ、、これ…?」
野乃花が混乱していると、男は
「1週間前のライブの写真です。楽しかったですよ。本当に」と、
野乃花の方を見て笑ったー。

「--------」
唖然としてしまう野乃花ー

”まさか、自分にそんなに似ている人がいるなんてー”

とー。

「--あのぉ…
 そっくりですけど、わたしじゃないんですよ…」
野乃花はそう言うと、
1週間前のライブが行われたと言われている時間には、
ちょうど大学にいたことを、その男に話したー。

”それを証明するもの”もちょうど持っていたので
男に見せると、男は「わ…!す、すみません!」と
ようやくー
”ののちゃん”が、”野乃花”ではないことに
気づいてくれたようだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”わたしにそっくりなアイドルなんているんだなぁ…”

そんな風に思いながらもー
野乃花は次第にその日のことを
忘れていたー。

しかしー

数か月後ー

「野乃花すごいじゃん!いつの間にこんな?」
友達がやってきてー
マイナーなファッション雑誌の1ページを見せて来るー

そこにはー
”今話題のアイドル・ののちゃん”と書かれたページに、
大胆に生足を晒した、モデルのようなファッションの写真が載っていたのだー

「え……??え?」
野乃花は戸惑うー。

「---これ、野乃花でしょ?すっご~い!」
友達が笑うー

「--…ち、、違うけど…!?」
野乃花はそう言いながらも、数カ月前にも”ののちゃん”と間違えられたことを
思い出すー

そして、その時の話をその友達にすると、
友達は「え…そうなの?」と戸惑ったー。

「---名前まで似ててホント困っちゃう」
野乃花はそう言いながら、友達の方を見てほほ笑んだー。

けれどーーー

「--浅霧 野乃花(あさぎり ののか)
 1stシングル ”霧の雫”が発売決定ー」

というニュースが流れて、野乃花が唖然としたのは
数日後のことだったー

「--ーーごめん!ちょっと、訳が分からない」
野乃花は、周囲に群がる同級生たちを押しのけて、
大学から逃げ去るようにして帰宅するー

”浅霧 野乃花”とはー
野乃花の本名だー。

勝手に自分の名義でCDの発売が決定しているー

”地下アイドル出身”ののちゃん”衝撃のメジャーデビュー”

「--どういうこと!?」

まるで意味が分からないー
自分が何も知らない間に、CDを発売することになっているー

歌なんか歌った覚えもないし、
CDの発売の話なんて、誰かとした覚えもないー

「--これ…誰なの…?」
野乃花は戸惑いながらー
大学に行くたびに、同級生たちから色々と聞かれる羽目になってしまうー

”誰かがわたしの名前を勝手に名乗っているー”
野乃花はそう感じたー

数日後ー
野乃花は、テレビに”浅霧 野乃花”が出ると知り、
その番組を、自宅で見つめていたー

”野乃花です♡”

いかにもアイドルのような振る舞いをするー
”偽”の野乃花ー

野乃花は、テレビを見つめながら震えたー。

姿・形はもちろんー
”声”も、完全に野乃花そのものー

”他人の空似”ではないー
誰かが、野乃花の名前を勝手に使っているー
そういうレベルでもないー

テレビに映っていたのはー
完全に”自分自身”だったー。

「-----……」
野乃花は放心状態でテレビを見つめるー

その歌番組は”生放送”-。

「---……わ、、」
野乃花は、へなへなと座り込みながら呟いたー

「わたしが、、ふたり…?」

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お疲れ様でした~♡」
”偽”の野乃花は、番組の出演を終えると、
一人暮らしの自宅に帰宅したー

「ふ~~~~~~」
野乃花は一息つくとーー
笑みを浮かべながら
”男”の姿に戻ったー

「へへへへ…最高だぜ」

男の名はー
熊原 祥太郎(くまはら しょうたろう)-

アイドル育成ゲームにはまっていて、
ドはまりするうちにー
自分が”アイドルの女の子になりたい”と
思うようになってしまったー

その欲求を叶えるために手に入れたのがー
”他人に変身をするための義眼”

片目を失い、義眼を取り付け、
地獄のような激痛を味わった代償として
手に入れたのがー
”他人に変身する能力”だったー

その力でー
彼は”己がアイドルの女の子になる夢”をかなえたー

去年、大学の学園祭に足を運びー
その時に、適当に”一番かわいい”と思える子の姿に
変身したー

それが、野乃花だったー。

野乃花に変身した男は、
浅霧 野乃花…彼女の本名で、
地下アイドルとしてデビューし、
そしてついにメジャーデビューを果たしたのだー。

「--俺の姿じゃ誰も見向きもしないのに…
 へへへへへ…
 姿が違うだけで…

 人間ってのはー愚かだな」

偽物の野乃花はクスッと笑うと、
笑みを浮かべたー

学園祭の時に見かけたこの女の
”本物”は今も普通に生活しているのだろうー。

けれどー
そんなことは、いくらでも対策することが出来るー

いくらでもーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---野乃花!野乃花!霧の雫歌って~!」
友達が野乃花に声をかけるー。

「-野乃花!サイン頂戴!」

「浅霧さん、普段大人しい感じなのに、テレビではあんなに可愛さを振りまいて…」

「なんかゾクゾクしてきた」

大学でも
”野乃花が実はアイドルだった”
という噂が広がり始めたー

「--あ、、あれ、わたしじゃないから!」
野乃花はそう言い返すと、そのまま授業に向かうー

しかしー
大学側から呼び出された野乃花は
”隠れてアイドル活動をしていたこと”をついに
叱責されてしまうのだったー。

「--そんな…ほ、、本当にわたしじゃないんです!」
野乃花が必死に反論するー。

それでも、大学側に信じてもらうこともできなかったー。

”生放送の時間”に、別の場所にいたことを主張する野乃花ー。

大学側は困惑しながらも
”なら別人であるという証拠を持ってきなさい”と
野乃花に言い放つのだったー。

大学からの帰路ー
週刊詩の記者と思われる人物に声を掛けられるー。
ファンを自称する人物から声を掛けられるー。

”おめでとう、野乃花ー
 まさかお前が急にアイドルの道に進んでたなんてー”

父親からのLINEが届くー。

「--なんで…??なんで…?
 わたしじゃ、、わたしじゃないのに…!」
野乃花は震えながら
”いつの間にか自分が、世間ではアイドルになっていた”
ことに、恐怖を感じ、部屋の中で震えたー。

やがてー
アパートに報道陣やファンが駆けつけて来るようになるー。

”アイドル ののちゃんの家はここだ!”
と、まとめ系のサイトに掲載され始めー
さらに、野乃花は追い詰められていくー。

「---ごめんなさいね」

そしてー
追い打ちをかけるように、アパートの大家さんから
呼び出されてー
”こうも人が集まってしまうと、他の住人の迷惑になるから
 来週までに出て行ってほしい”と
お願いされてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---しばらく、ここで休んでて」

野乃花が頼ったのは、
大学の親友の穂村 魔理沙(ほむら まりさ)-。

「---ありがとう」
野乃花は、野乃花と同じく一人暮らしをしている魔理沙の
家に匿ってもらう形で、居候したー。

「----でも、あれって何者?」
魔理沙が、今日も動画配信をしている”偽の野乃花”の
映像を指さしながら言うと、
野乃花は「ホントにわたし、何も分からないの」と呟くー。

「--まぁ…こうしてずっと一緒にいるのに、
 普通に動画配信もしてるしー
 あんたじゃないっていうのは分かったけど…」
魔理沙も戸惑った様子ー。

「---双子?」
魔理沙の言葉に、野乃花は
「双子はいないと思う…」と首を振ったー

”他人の空似”レベルではないー。
今、アイドル”ののちゃん”として活動している野乃花は
野乃花の本名である”浅霧 野乃花”を名乗っているし、
服装や振る舞いは違えど、
顔、声ー
それらは完全に野乃花と同じだー。

「--ドッペルゲンガーだったりして」
笑う魔理沙に、
野乃花は「うう~…」と、頭を抱えてしまうー。

自分と同じ姿をした”何か”が、
いつの間にか勝手にアイドルデビューをしたー

その事実に、野乃花は震えることしかできなかったー。

②へ続く

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コメント

突然、他人が自分の姿でアイドルデビュー…!

とんでもないことになってしまいましたネ~!

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