<MC>相手がいなければ作ればいいじゃない①~洗脳~

独身の人間から税金を取るー。
そんなシステムがスタートしてしまった世界ー。

そこに、救世主として現れたのが
”洗脳”で相手を作る”洗脳ビジネス”だったー

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20XX年ー。

人類は、少子化により、その総数は大幅に減少していたー。

その対策として打ち出されたのが
”独身から税金を取る”という恐るべきシステムだったー。

世の中の反対を無視するかのように導入された
その税金は、
人々を恐怖に陥れたー。

しかしー
強引なシステムを導入すれば、必ず”闇”が生まれるー。

独身から税金を取るー。
そんなシステムにより、生まれた闇が、
その世界には、存在したー

それがー
”洗脳ビジネス”であるー。

”相手がいなければ、作ればいいじゃない”の
キャッチコピーで誕生した
”洗脳”ビジネスー。

世の中にはー
次第に”それ”が拡散しつつあったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---しかし、姉さんが結婚するとは思わなったよ~」
20代前半の男・野山 克太(のやま かつた)が、笑いながら呟くー

「--ふふふふ…♡」
姉の沙希菜(さきな)が嬉しそうに笑うー
沙希菜はアニメキャラのコスプレをしていて、
克太に飲み物を出すと、夫である祐太郎(ゆうたろう)に抱き着いたー。

「---ははは、ホント、姉さんはラブラブだなぁ~」
克太は、そう言いながら、出されたお茶を飲むー。

克太は今日、仕事の帰りに、久しぶりに姉・沙希菜の家に
立ち寄ったのだー。

沙希菜は小さいころから男が苦手で、
一度も彼氏が出来たことがなかったのだがー
昨年、突然彼氏を実家に紹介しにきてー
そのまま、1か月も経たないうちに結婚してしまったのだー

”税金対策”
克太も、沙希菜の両親も、そう思ったー。

この世界ではー
15年ほど前からー
”25歳以上の独身から税金を取る”という
システムが導入されており、
節税のために、沙希菜は結婚したー…

と、両親も、弟である克太もそう思っていたー

しかしー
そうではなかったー

沙希菜は夫である祐太郎にほれ込んでいてー
今ではアニメオタクである祐太郎に
べったりとくっつき、
家では毎日のようにアニメキャラのコスプレをして
祐太郎を喜ばせているー

「--ぐへへへへへ」
笑みを浮かべる夫の祐太郎ー

祐太郎は
”コミュニケーションが取れないタイプ”の人間で、
かなりの巨漢ー。

正直、克太からすれば、モテる感じには見えなかったー
かなり体臭もしていて、聞けば「お風呂にもあまり入らない」とのことで、
容姿がどうこう以前の問題ー
そんな感じの男だったー

だがー
姉の沙希菜は、そんな祐太郎に夢中でー、
祐太郎以外が何も見えていないような、
そんな状況にも思えたー。

「--最初さ~、姉さんが結婚するって聞いたとき、
 絶対”偽装結婚”だと思ってたんだけどなぁ~」
笑う克太ー。
沙希菜は「そんなわけないでしょ~」と言うと、
アニメキャラの衣装を揺らしながら
「-祐太郎のこと、愛してるんだもん!」とほほ笑んだー

「---はははは~」
見てるこっちが恥ずかしくなってくるほどの
ラブラブー
そんな風に思いながら、
克太は出されたお茶を口に運ぶー

雑談をする克太と沙希菜ー
祐太郎は、隣の部屋でアニメを見て喜んでいるー

独身から税金を取るー
そんなシステムが導入されてから流行ったのはー
”偽装結婚”と呼ばれる手法だったー。

”ただ単に手続き上結婚だけして、
 あとは別々に他人として暮らす”
そんな、手法だー。

それにより、税金を逃れる手法が
世間では流行していたー

ただ、時折ー
それが税務署から指摘されたり、
偽装結婚した相手が、偽装訴訟を起こして
慰謝料を取り上げたりするような
”トラブル”があったのも事実だー。

「---あんたも、来年25でしょ?」
沙希菜が言うー。

「--え?あぁ、まぁ」
克太が笑いながら言うー

25歳以上の独身からは税金を取るシステムー
克太も、来年には25歳になるー。
つまり、この税金を払わなくてはいけなくなるのだー。

「--沙希菜~!今度はエミちゃんの衣装を着てよ~」
祐太郎が、奥の部屋から叫ぶー

「--うん~♡ わかった♡」
沙希菜が甘い声を出すと、克太にごめんね、とだけ呟いて
祐太郎の方に向って行くー

克太がお茶を飲み終えて
「元気そうでよかったよ」と、声を掛けようとすると、
沙希菜が、魔法少女のような恰好をして、
アニメキャラのポーズを決めている最中だったー

少し恥ずかしそうに克太が「あ、俺、そろそろ帰るね」と言うと、
沙希菜は「うん!」とほほ笑んだー

克太が姉の家から出るー。

”姉さんも変わったなぁ…
 好きな人が出来ると、人ってあんな風になるんだなぁ”

そんな風に思いながら、克太は歩くー。

克太は、モテなかったー。
容姿は普通で、同性の友達はいるのだが、
異性とは”良い人どまり”になってしまい、
どうしても恋愛関係に発展することはなかったー

今、克太が働いている職場は
男性が多く、女性は、一人だけ若い子がいるものの
彼女は既に彼氏がいるほか、
他の女性社員は40代以上の人間が、ほとんどだったー。

「---はは…税金払うしかねぇよなぁ…」
克太は”偽装結婚”とか、相手から
でっちあげで訴えられたら終わりだしな、と
苦笑いしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ご主人様ぁ…」

克太が去ったあとー
克太の姉・沙希菜は、メイド服姿で
夫・祐太郎のアレをしゃぶっていたー

「ふへへへへへ」
祐太郎が笑みを浮かべるー
祐太郎はーーー

ある方法で沙希菜を妻にしたー

”税金対策”だー。

「---へへへへ」
祐太郎が、笑みを浮かべるー

”洗脳ビジネスー”

偽装結婚など遥かに上回る
恐るべき”闇”が、
この世の中には誕生していたのだー

「-お前は、一生、俺のおもちゃだ」
祐太郎がイヤらしい笑みを浮かべながら言うと、
沙希菜は「はぁい…♡」と気持ちよさそうに微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

25歳になった克太ー

克太の家の郵便受けに
”税金の支払い案内”が届いたー

「ったく、税金関係の書類だけは早いよなぁ~」
克太は苦笑いしながら
役所からの封筒を開くと、
そこには25歳以上の独身者向けの税金の振り込み用紙が
入っていたー

「昔は独身でも良かったんだよなぁ~」

克太は呟くー。

克太が小さいころは、まだこのような税金は存在していなかったー。
けれどー
少子化がやばいだとか、未婚率がやばいだとか
そんな理由で強引にこのシステムが導入されてしまったー

しかもー
残念なことに成果も出ていない。
独身者に対する税金が始まったのにも関わらず、
少子化は進んでいるし、未婚率も改善していない。
出生率は下がり、婚姻届けの提出数も減っているー

税金で多少の改善は…
あったのかもしれないー
けれど、それ以上に、少子化の進行が早かったのだろうかー。

それともー
ハナからこのようなものは意味がなかったのだろうかー。

結果的には
偽装結婚のような闇ビジネスが生まれたり
”独身デモ”と呼ばれる行為が各地で定期的に行われて
数年前には死者も出ているー

「--ま、俺がそんなこと考えても仕方がないか」
克太は、”払うもんは払うしかねぇよな、面倒くさいし”と
思いながら案内の用紙を見つめたー

そしてー
残り2つ、ポストに入っていた封筒を見つめるー。

ひとつはー
自動車保険の宣伝ー。
”車持ってねーし!”とツッコミながら、
その封筒の中身を適当に確認して処分する克太ー。

そして、もう一つー
もう一つの封筒には
”株式会社 DOKUSIN”と書かれていたー。

「---なんだこれ?」
克太は封筒を広げるー

”あぁ、偽装結婚ビジネスの会社か”と
思いながら中身を見つめる克太ー

「-俺も25歳だから、こういうの送って来たわけかぁ~
 抜け目ないなぁ~」

克太がそう呟きながら
封筒の中身を見ているとー

”月とスッポンー
 偽装結婚はスッポンの方である”

などというキャッチコピーと共に
”確実に妻or夫をゲットする”と、書かれたチラシが入っていたー

「はぁ…?」
克太がチラシをさらに見つめるー

”違法性なし!相手も笑顔で納得、同意の上の結婚をあなたに!”と
書かれているのを見た克太は、
その下に書かれていた地図を見つめるー

”--独身とサヨナラ!あなたの思い通りの結婚を!”

「-----」
独身に対する税は決して安くないー

”相手がいなければ作ればいいじゃない”

そんな風に書かれているチラシを何度も何度も見つめる克太ー

「いやいやいや、絶対怪しいだろ」
そうは思いつつもーー
克太は、どうしても、それが気になって仕方がないー。

「----」

もしー
もしも、これが本当だったらー?

余計な税金を払わなくても済むー、と
克太は思うー

克太も決して生活が楽なわけではないー。
ある程度遊ぶお金はあるが、
それでも裕福…とまではいかないと自分では思っているー

欲しいものを我慢したりすることは、よくあることだ。

そこに、独身に対する税が入って来るようなことがあれば、
当然、さらに状況は悪化してしまうー。

そのお金を浮かせることが出来るのであればー。

それにー

「--まぁ、もしも楽に結婚できるっていうなら…
 してみたくもあるかなー」

隣人の女子大生ー
いつも通勤電車で見かける若いOL-
職場の優しい後輩ー

「ーーむふっ」
克太は、姉の沙希菜が夫の祐太郎のために
アニメキャラのコスプレをして、
祐太郎にベタベタな光景を思い出すー

「--俺も、あんなことしてもらえたりして」
ニヤニヤする克太ー

”警戒心”と”好奇心”
その二つがせめぎ合いー
やがてー
克太の中の好奇心が打ち勝ちー、
次の休日になったタイミングで、克太はその会場に向かうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

地図に示された場所は、地下だったー。

いかにも怪しい雰囲気ー。
克太は引き返そうかとも思ったものの、
”いや、俺は戦う”と、
いざという時はスマホで通報できるように準備をしながら
その奥に向かうー

”部外者立ち入り禁止”と書かれた扉ー

そして、その横に座る女性が
「何か御用ですか?」と無表情で呟いたー

「あ、はい…」
克太は先日届いた封筒に入っていた書類を見せると、
女性は「どうぞ」と呟いたー

扉の鍵の音がするー

その中に入るとー

「---ようこそ」
と、理知的な眼鏡をかけた男が座っていたー

克太は警戒するがー
柄の悪い男が急にぞろぞろ出てきて囲まれるようなことはなかったー。

「--ははは、そんなに警戒しなくていいよ。
 私は株式会社DOKUSINの社長・毒本 身伍(どくもと しんご)だー。」

名刺を受け取る克太ー

克太が表情を少しだけ歪めると
毒本社長は「ははは、まぁ本名ではないんだが」と苦笑いしたー。

「--”紹介状”が届いたのだろう?
 君もチャンスを手に入れたということだ」

毒本社長の言葉に、
克太は「紹介状?」と首を傾げるー

毒本社長は「我々から封筒が届いたということは
君は選ばれたということだ。
闇雲に案内を送っているわけではないんでね」と、答えたー。

克太は知らなかったが、
姉・沙希菜の夫である祐太郎もこの”DOKUSIN”の利用者であり、
祐太郎が、克太を紹介したことにより、
DOKUSINからの封筒が克太の家に届いたのだったー。

祐太郎の目的は
”妻にした沙希菜の弟にも妻が出来れば、
 姉さん姉さん言って、うちに来なくなるだろう”と、
沙希菜を独占する目的だったが、
克太はそんなこと知る由もなく、社長の言葉の続きを待ったー

「--…独身に対する税…君も回避したいだろう?」
社長が言うと、
克太は「まぁ…できることならば」と頷いたー

「--偽装結婚でもさせるつもりですか?それともー?」
克太が言うと、
「いやいや」と社長は首を振ったー

「--相手がいなければ、作ればいいー」
社長は、そう言うと、ニヤリと笑みを浮かべー
スクリーンのようなものに、映像を映し出したー

”洗脳結婚”

「--!」
克太が表情を歪めるー

「---この世には、一定数ー
 どんなに望んでも、他人の愛を手に入れられない人間がいるー

 偽装結婚とは、愛ではないー。
 
 婚活も然りー。
 望んだ人間が全て、その望みを成就できるとは限らない。

 だがしかしー
 我々の洗脳ビジネスであればーーー

 全ての希みを、成就できるー」

毒本社長はそう宣言すると、自信に満ち溢れた笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

独身の人に税金を!みたいな話題を見ていて
思いついたお話デス~!

現実でそういうのが出来てしまったら…とか、
難しく考えずに、
フィクションとして、気軽に楽しんでくださいネ~!

今日もありがとうございました!

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