<憑依>崩壊女②~地獄の底~(完)

学生時代から憑依され続けて
人生を奪われ続けた彼女ー。

そんな彼女の行方末は…?

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星香はー
心神喪失の状態で、街を歩き続けたー

「おい、あれ、茜ちゃんじゃね?」
AV女優として、いつの間にかデビューしていた星香ー。

街中で星香を見かけた人々の一部がー
AV女優の茜であると気づくー

「-----」
口を半開きにしたまま、虚ろな目で街を歩き続ける星香ー。

「---サインください!」
おじさんが、星香の前に姿を現すー

「----」
星香が虚ろな目のままおじさんを見つめるー

「--茜ちゃんのAVでさぁ、俺、1000回ぐらいは抜いたんだよね!
 サイン!サインください!」
おじさんが笑うー

「------……あかねじゃない」
星香は呟くー

「あ?」
おじさんが首を傾げるー

「-わたし、、あかねじゃないもん!」
星香は再び泣き出すと、そのまま走り続けたー

やがてー
疲れ果てて公園のベンチで
放心状態になってしまった星香ーー

だがーー
彼女の不運は、続いたー

「ひぅっ!」
ビクンと震える星香ー

星香はーーー
夜の街を笑いながら歩き始めたー

”無差別憑依人”ー
憑依した人間を30分でどこまで壊すことができるのかー。
そんなことを楽しんでいる男に
憑依されてしまったのだー

星香は笑いながら全裸で夜の街を歩き始めたー

どよめく夜の街ー
星香は狂ったように笑っているー

先程まで、泣いていたのが、嘘かのようにー

全裸で歩きながら、堂々と放尿してみせる星香ー

「狂っちゃえ!!!!!」
と、嬉しそうに叫ぶ星香ー。

やがて、すぐに警察に通報され、
星香は笑ったまま、連行されたー

星香に憑依した男は、
30分が経過するとー
”今回は88点”と、だけ呟いて
遊び半分の憑依を終えたー

星香はー
”元AV女優の痴女”として
留置所に放り込まれてしまったー

絶望する星香ー
髪は幽霊のように伸びー
笑うこともなくー
無表情で虚空を見つめるー。

牢屋の中にいてもー
何も、反省することもなければ
何も思い起こすこともないー

トイレに行くこともせずー
星香は虚ろな目で座り込んだままー
まさに”廃人”のような状態だったー。

警察の判断により、
星香は、精神を病んでいるとして
病院に入院することになったー

病院でも、星香は無気力ー
完全に、人間として生きる気力を失ってしまいー
もはや”抜け殻”と称するにふさわしいー
そんな状況だったー

自分の記憶が急に飛ぶー
星香はいまだにそれが”憑依”によるものだと分かっていないー。

自分は何かの病気なのだろう、と
そんな風に考えながらもー
もう、考えることすら面倒臭くなってきていたー。

星香の人生は中2のときまでは順調だったー
けれども、そのあとは、
勝手に他人に、自分の人生を作られているー

そんな状態が続きー
星香に”自由”という文字は、もはや存在していないー

赤ん坊も勝手に出産させられたしー
勝手にAV女優になっていたしー

もう、疲れたー

「------」
星香はそのまま、心神喪失の状態で、33歳までを過ごしたー

来る日もー
来る日も、茫然と、虚空を見つめてー
そして、寝るー

それを繰り返す日々ー。

親族とも既に縁が切れておりー
友達も、既に縁が切れているー
誰も、お見舞いにも来ないー

星香は、別にそれでもよかったー。
もう、自分の人生に疲れてしまったー
願わくば、このままーーーー

このころには、星香は”自死”も考えていたー
もう、疲れ果ててしまったー
またいつ、自分の記憶が飛ぶか分からないー

またいつーー
自分の記憶がーーー

だがー
これまでの苦しい人生ー
ついに、それが報われるときが
やってきたのだー

星香のことをやたら熱心に心配してくれる
病院の男性看護師ー

星香は次第にその男性看護師に心を開いていったー。

やがてー
35歳になったころには星香の表情に、笑顔が戻りー
ついに、病院を退院したー。
その男性看護師と”結婚”し、退院したのだー

「--星香」
男性看護師はー
初めて星香を見た時に、ひとめぼれしたのだというー。

星香が元AV女優だったり、補導歴があったりすることも
”気にしない”と、彼はそう言ったー。

星香は、そんな奇跡的な出会いによってー
20年近くの”絶望”の人生に幕を下ろしー
これからは明るい人生が待っているー

そのはずだったー。

ギリギリの年齢で子供を出産するー。
可愛い女の子ー。

星香は”昔”、気づいたら出産していた子供を思い出すー

あの子も、元気な女の子だったー
記憶が飛んでいる間に妊娠してしまいー
出産した子供ー
あの子は、今、どうしているのだろうかー

出産したのは、確か19歳ー
今や36歳となった星香ー。

その子がまだ生きていれば
その子はそれなりの年齢だろうー。

「----」
夫となった男が、子育て中の星香を見つめて舌打ちしたー。

1年後ー
看護師だった男性は、突然離婚を突き付けて来たー

彼がー
病院で星香に優しくしていたのはー
”AV女優・茜”のファンだったためー

星香が、AV女優・茜であることに気づき、
茜を自らのものにしようと、親切にし、
結婚したのだったー

しかし、最近は、その星香が
”子供にばかり”と感じるようになり、
彼は星香を捨てたー

「--お前なんて、性欲のはけ口でしかなかったんだよ!
 それなのに餓鬼ばっかり!」

彼の最後の言葉は、
星香を深く傷つけたー

けれどー
星香は強く生きてー
なんとかパートで生活費を稼ぎー
貧しいながらも、娘・美代(みよ)を必死に育てていたー

星香が40代になり、
美代は、元気に学校に通い始めるー。

だが、ある日ー
それは、”起きた”

部屋で美代が突然苦しみだしてー
邪悪な笑みを浮かべたー。

「--へへへへ…”俺の元・身体”を犯すのは最高だぜ」
実の娘に犯されてしまった星香ー

放心状態で涙を流す星香に向かって、
娘の美代は呟いたー

「へへへへへ…覚えてるか?
 俺は下校中のお前を乗っ取ったー
 栗原(くりはら)だー」

美代が笑うー

「栗原…?」
星香が戸惑っているとー
美代が突然気を失ってー
中から男が出て来たー

「---!!」
忘れもしないーーー

この男はーー

”中2の頃の星香を下校中に拉致した不良グループのひとり”

かなり年を取っているがー
その男の顔は、忘れもしないー

”最初に星香に憑依した男”は、再び美代に憑依すると笑うー

「”憑依”-
 へへへ、親子2代にわたって俺に”憑依”されるなんて、不幸だねぇ」

笑う美代ー

星香は唖然としたー

”憑依”-?

この時、星香は、初めて自分が何度も何度も記憶が飛んでいたのはー
”憑依”によるものだと知ったー

「へへへ お前はいろんなやつに、身体を好き放題使われてたってことさ。」

狂ったように笑う美代ー

”ひょうい…”
星香は、自分の人生を狂わせたものの存在を知ったー

そしてーーー
星香は、完全に壊れたー

台所の包丁を手にするとー

「---!」

信じられないことに、星香は実の娘である美代を
容赦なく突き刺したー

「--ひっ!?」
美代の身体から飛び出した男が悲鳴を上げるー。

”最初に美代に憑依した男”である栗原は
その場で、星香にめった刺しにされてしまったー

星香が栗原のポケットから”何か”を取り出すー。

それはー
”憑依薬”だったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---へへへへへ へへへへへへへ」

笑いながら男が自分を刺しているー

星香に”2番目”に憑依した裏社会の男ー。
彼は、今、星香に憑依されて
自分を刺していたー

「--許さない、、許さない、、へへっへへへへ」
男はやがて、動かなくなるー

星香が男から出て来るー

まるで、幽霊のような風貌の星香はー
憑依薬を手にー
”これまで自分に憑依してきた人間”を
記憶とネットの情報網から”執念”とも言える勢いで
調べてー
順番に始末していたー

「ゆるさない…ゆるさない…」

”3番目ー”
星香を最初に妊娠させた男がー
その3日後に首つりの状態で発見されたー

星香が憑依しー
首を吊ったのだー

星香は笑みを浮かべるー
”自分の人生を奪ったやつらー”に復讐するー。

栗原から奪った憑依薬を、手にー。

”4番目”に星香に憑依していた男ー
コンビニアルバイトだった、当時40代独身だった男は
既に病死していたー

星香が復讐する前に、既にその男は死亡していたのだー

星香は、ブツブツと呟きながら、さらに”次”を探すー。

「----え」
”5番目”
AV業界の男ー

星香がAV業界を引退して、正気を取り戻した日に
星香に
”「なんなら、今からお前のデビュー作、
 夜のミルクとお昼のミルク でも見るかぁ?」”と言い放った男ー

その男の目の前に、星香は幽霊のような風貌のまま、
姿を現したー

「--ゆるさない…!ゆるさない…!」

もはやー
”復讐”だけが生きるエネルギーになっている星香は、
まるでお化けのようなー
そんな風貌だったー。

「--ひっ!?」
AV業界の男は悲鳴を上げて尻餅をつくー。

星香はーー
その男には憑依しなかったー

その男には、娘がいたー
その娘に憑依してー
地獄を見せてやったー

「--やめっ!…やめろ!やめてくれ!
 娘を殺人鬼にしないでくれ!」
星香に憑依していたAV業界の男は悲鳴を上げたー。

だがー

「--あんたはわたしを勝手にAV女優にした」
男の娘の口で、そう告げてやったー

わたしを勝手にAV女優にしたんだからー
あんたの娘を勝手に殺人鬼にするのも、自由だー、と。

男は最後に泣きながら悲鳴を上げていたー。

そして、あと一人ー。
”6番目”に星香に憑依した、
無差別に人に憑依をし、”30分でどれだけ狂えるか”を
楽しんでいる男ー。

その男だけは、なかなか情報が出てこなかったが、
星香はようやく、その男を突き止めた。

峰山(みねやま)、という男ー

星香は、その男にも憑依してーーー
復讐をーーーー

「----っ」

星香は、表情を歪めたー

背後からー
刺されたー

「----え…?」
星香が虚ろな目で振り返るとー
そこには、見知らぬ女がいたー

ギャルのようなーー
かなり派手な感じの女ー

「--あたしは、あんたのせいで、地獄のような人生だった!」
女が叫ぶー

「---だ…れ?」
星香は、苦しそうに呟いたー

女はーーー
叫んだー

「--あんたの…あんたの娘よ!
 生まれてすぐにあんたに捨てられて…!
 施設に入れられて…!

 育てることもできないのに、勝手にあたしを産んで…!」

その女はー
星香が、19歳の時に出産した女の子ー。
星香が乗っ取られている間に勝手に妊娠させられてー
意識が戻った時には既に出産のタイミングだった、その女の子だー。

その子が、成長してー
母親を憎みー
今、こうして母親を刺しているー

「---っ…あ」
星香は虚ろな目のまま”娘”を見つめたー

「ごめん…なさい…」
星香はそれだけ呟くと、
その場に倒れたー

その子が「あんたなんか死んじゃえ!」と
叫びながら立ち去っていくー

星香は、薄暗い夜の路地で倒れたままー。

「----やっと…」
星香は、うつぶせに這いずりながら、空を見上げたー

やっとー
終わるー

この、地獄のようなーー
人生がーー

「---」
星香は目から涙をこぼすー。

奪われ続けた地獄のような人生ー
今、それが、やっとー

ここがー”地獄の底ー”

”底より下”はー
きっと、存在しないからー。

翌朝ー
路地裏で遺体が発見されたー

しかしー
何故か、その遺体は、
穏やかな笑みを浮かべていたのだというー。

憑依によって人生を翻弄され続けー
そして、人生を崩壊させられてしまった彼女ー。

憑依の快楽の裏で犠牲になった”人生”は
彼女以外にも、たくさん、存在しているのかもしれない…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

救いのない、ダークなお話でした~!

”6番目”に星香に憑依した人間は
私の過去作品のどれかに登場していた人だったりします~☆
(分からなくても問題ない程度にたまに小ネタを挟んだりしてます~笑)

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<崩壊女>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    確かに生まれてすぐ捨てられて施設行きになる人生は不幸ですが、地獄は言い過ぎですね。

    本当の地獄の人生は憑依されまくりの上、最後には娘に殺されてしまうあなたのお母さんの人生のことですよ。

    それにしても星香は真実を知ってキレたのかもしれませんが、実の娘ごと殺すのはやりすぎです。
    美代ちゃんがかわいそすぎる。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~!

    サブタイトルはお母さん側の結末を現したタイトルになってます~☆

    主要登場人物がそれぞれ不幸になってしまう
    ダークな憑依モノでした…!