自分の命の恩人が、
気づいたら自分の中にいた!?
ひとつの身体に2つの精神ー。
彼女と彼の運命は…?
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”ふ~ん、いい学校だなぁ~”
竜平が呟くー
「でしょ~?こうして今、ここにわたしがいられるのも
竜平のおかげー」
希海の身体に竜平が宿っていることを、
竜平自身が打ち明けてから2日ー
二人は、この状況にもある程度慣れてきていたー。
”ははは、希海ちゃんが助かって本当によかった”
竜平が笑うー。
ふたりは、自己紹介をしてから、
”これからずっと一緒にいるんだし”と
お互いを名前で呼び合うようにしていたー。
「--あ、そうだ!竜平って、その…
勉強、得意?」
希海が、ボソッと呟くと、
竜平は”う~ん、まぁ結構できるほうかも”と答えたー
「--と、いうことは!」
希海が笑みを浮かべるー。
「-来週のテスト…!手伝ってもらえる?」
希海がお願いするかのように呟くと、
竜平は”ははは”と笑ったー
”それは、ダメ”
とー。
「--ケチ~」
希海が頬を膨らませながら呟くと、
「--ねぇ」と背後から声を掛けられたー
「ひぇっ!?!?!?!?」
希海は思わず驚いて飛び上がってしまうー。
「-さっきから、一人でブツブツ言ってるみたいだけど、だいじょうぶ?」
とー。
「--あ、、えっ!?!?えっ!?
え、、え、、え、演劇部のれんしゅうぅぅぅ!」
希海が真っ赤になりながら叫ぶー
「--希海、演劇部じゃないじゃん!」
友達・真礼(まあや)のツッコミに希海は
さらに顔を真っ赤にするー。
「--希海ってば、
彼氏できないからって、
妄想で彼氏作らなくても~」
真礼が笑うー。
「--ちがーーう!」
希海が真礼の頭をぺしっと戦う。
希海と真礼は小さいころからの親友で
何でも言い合える間柄ー。
”--いいな”
竜平が呟くー
「え?」
真礼が立ち去ったあと、竜平が呟いた言葉に
希海が首を傾げると、
”あ、いや、幼馴染的な関係、いいなって思っただけ”と
竜平が笑ったー
「--あ~~うん、真礼ちゃんは小さいころから
ずっと仲良しだからね~
たまに失礼なこと言われるけど」
”ははは
それだけ仲良しってことだろ?”
竜平の言葉に、希海は「うん。そうだね」と、頷くー
”ところでーー…
俺の声は周囲に聞こえないみたいだから、
あんまり学校では俺、話しかけないようにするよ”
と、竜平が呟くー
「え?あ、、うん…ごめんなさい」
希海の言葉に、竜平は
”謝ることじゃないさ”とほほ笑んだー。
竜平と希海が会話すればー
周囲からは
”希海が独り言”をぼそぼそと呟いているように
どうしても見えてしまうー
今も既に親友の真礼に見られてしまったし、
あんまり独り言ばかり呟いているように
思われてしまうと、
希海のためにも良くないー。
竜平はそう考えて、学校では話しかけないようにしたー。
「---ねぇねぇ、望海ってば~」
真礼が他の友達に笑いながら言うー
「こらー!真礼!」
希海が真礼に向かって叫ぶー
笑う真礼ー
”いいなー”
竜平は、静かにそう呟いたーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーうん。これはそう、、うん、そうだね、うん!よろしく!」
希海が文化祭実行委員の後輩に優しく話しかけるー
「先輩~!」
今度は生徒会の後輩から声を掛けられて
希海が優しく応対するー。
「ーーーあ、希海~ここ教えて~!」
今度は友達に声を掛けられる希海ー
希海はイヤな顔ひとつせずに、
優しく対応しているー
”頼れる優しいお姉さん”のような感じだー。
”いい子なんだな…”
竜平は、素直に関心したー。
ちょっとドジなところもあるように見えるけれど
本当にいい子だと思うし、
周囲からも信頼されている様子がよくわかるー。
「ーーそんなこと言われちゃうと、照れちゃうよ~」
希海が笑う。
”--えっ!?”
竜平は驚くー
”えっ!?今の聞こえた!?”
竜平の言葉に、希海はー
「聞こえたよ」
と、微笑むー
”な、、なんだぁ…ごめん”
竜平が呟くー
いつの間にか心の中で考えていたことを
希海の中で口にしてしまっていたらしいー
”まだうまく、コントロールできなくてさぁ…”
竜平の言葉に、希海は笑うー。
「-わたしもまだ慣れないところばかりだし、全然大丈夫
いっしょにうまくやっていこ?」
希海はー
”助けてくれたあなたと身体を半分こ”
そう言ってくれたー。
竜平はすぐに希海の身体から出ていく方法を
探すつもりだったが、
希海の言葉で、少なくとも、希海から拒絶されるまでは
この身体にいよう、と思ったー。
「---希海~!」
背後から声を掛けられる希海ー
「ひぇっ!?」
希海が飛び上がるー
「-また独り言~?」
親友の真礼がニヤニヤしながら希海の方を見つめていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文化祭実行委員ー
生徒会副会長としての仕事ー
部活動ー
”すごいな…”
下校中の希海に竜平が語り掛けるー。
「--そんなことないよ~
ひとつひとつ、一生懸命やってるだけで
大したことできてないし…
竜平は分かってると思うけど、
わたし、本当は結構ドジなんだけど、
みんなには頼れるお姉さん、みたいに
勘違いされちゃってるし」
希海の言葉に
”自分でドジを自称するなんて…”と
竜平が笑うー。
「--ー」
あの日、事故に巻き込まれた現場を見つめる希海ー
「------」
”--気にするなって。
俺は、希海ちゃんを助けることが出来て本当に満足してる”
「---…うん」
希海がそう呟くー
「--でも…わたしの中にいるだけじゃ…やっぱつまらないよね?」
希海の言葉に、
竜平は”そんなことないさ”と笑うー。
”こうして、希海ちゃんと話すこともできるし
死んで何もない真っ暗な世界に行くより、全然マシだろ”
竜平の言葉に
希海は「そっかー…」とほほ笑むー
「--天国とか、地獄とかって、やっぱりないのかなー」
空を見上げる希海ー
”--どうだろうな…”
竜平は、少しだけ寂しそうにそう呟いたー
「--たまには、わたしの身体を少しだけ貸してあげる、なんてことが
できればいいのにね~?」
希海が冗談を口にすると
”それはさすがにまずいだろ”と
竜平は笑ったー
「--でも、やろうと思えばできるんじゃないの~?」
希海の言葉に、竜平は”じゃあ…やってみるか?”と
冗談を返すー。
「--家に帰ったら試してみよ!」
希海は案外冗談では無さそうだったー。
竜平としては
希海の身体の主導権を握りたい、なんて
全く思ってもなかったし、
考えたこともなかった。
そんなことをされれば、やはり希海から
してみれば怖いだろうし、
他人の身体を自由に乗っ取る、なんてことは
竜平からしてみれば、あまり良い印象のあることではなかったー
だがー
希海が”どうしても”というので、
希海の身体をなんとか動かしたりできないかどうかを
試してみるー
結果的にー
竜平が希海の身体を動かすことはできなかったー
「なぁ~んだ」
希海が呟く。
”ははは…まぁ、俺はこれで十分だから”
竜平の言葉に、
希海は「--テストとかだけ変わって貰おうと思ったのに」と
ボソっと呟いたー
”こらっ!”
竜平が笑うー
「--ふふふ、
…まぁ、本当は少しだけでも竜平に
生きている空気…というか、そういうものを
感じさせてあげたかったというか…」
希海が寂しそうに呟くと
竜平は”その気持ちだけで十分だよ。ありがとう”と
優しく微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人の共同生活は続くー
やがて、1週間が経過し、
文化祭本番の日もやってきたー
楽しそうに、親友の真礼と一緒に文化祭を楽しむ希海ー
そんな真礼の姿を、見つめながら竜平は望海の中で微笑むー。
文化祭の幸せな時間は過ぎ去っていくー
希海は時折、誰もいない場所で竜平に話しかけながら、
竜平も、希海の身体を通じて、
文化祭の空気を味わっていたー。
しかしー
希海が真礼と別れて一人で行動しているその時だったー
「--おっ!かわいい子はっけ~ん!」
明らかに柄の悪い男三人組が希海の方に近づいてきたー。
ちょうど希海が、教室に置いてきた忘れ物を
取りに戻っていた最中の出来事で、今、この場所には、
ほとんど生徒も先生もいないー。
「--え…あ、、あの…」
希海が戸惑っていると、
金髪の男が笑みを浮かべたー
「-なぁ姉ちゃん、俺たちとちょっと遊ばない?」
「--あ、、あの…わたし、急いでるので」
希海は頭を下げてそのまま立ち去ろうとしたー。
しかしー
三人組のひとりー
茶髪にピアスの男が希海の腕を掴んだー。
「--ちょ!?やめてください!」
希海が思わず声を上げるー
”--逃げろ!”
竜平が叫ぶー
「--逃げろって言ったって!?」
希海が声を上げると、
三人組のもう一人の、スキンヘッドの男が
「何言ってんだぁ~?」と笑みを浮かべたー
三人が笑いながら望海に乱暴しようとするー
「おい!教室の入口閉めとけ!」
金髪の男がスキンヘッドに指示をするー
悲鳴を上げる希海ー
希海の制服を脱がせようとする男たちー
”--希海ちゃん…!”
希海の身体の中にいる竜平は願ったー
”希海を助けたい”
”この子を助けてあげたい”
とー。
心からーー
強くーーーー
「----!」
気づいたときにはーーー
「---あ?」
金髪の男が、希海の目を見つめるー。
さっきまで悲鳴を上げていた希海がー
鋭い目で金髪の男を見つめていたのだー。
「---離せよ」
希海が低い声で言ったー
「-!?」
金髪の男が驚くー
「離せってんだよ!」
希海が可愛くも迫力のある声で叫ぶー
金髪の男が逆上して希海に殴りかかるー
希海は、その手を乱暴に掴むとー
男を、何かの格闘技の技で投げ飛ばしたー
金髪の男が机に激突するー
茶髪ピアスと
スキンヘッドが向かってくるー
しかしー
「--この子に手出しはさせねぇ」
希海はバク転して、茶髪ピアスの攻撃を避けると、
足を茶髪ピアスの肩に引っ掛けて、投げ飛ばしたー
ふわりとするスカートー
顔を赤らめるスキンヘッドの男に
希海は回し蹴りを食らわせると、
三人の男は悲鳴を上げながら逃げて行ったー
「---はぁ…はぁ…」
希海が壁に寄り掛かるー
”え……これって…?”
希海の頭の中に響くのはー
希海本人の意識の声ー
「---………はぁ…ごめん…
君を守りたくて、つい…」
”希海ちゃんを助けたい”
そう願った竜平はーー
希海の身体の主導権を奪いー
表に出て来ることが出来てしまったのだったー
”--……すごい…”
希海の意識が唖然としているー
希海を支配した竜平は
目を閉じるとーー
再び、希海の意識が表に出て来たー
「----…わたしの身体、使うこともできるんだね…
ありがとう!」
希海は、不良たちから助けてもらったことにお礼を告げたー
竜平は”いや、いいよー。それより、希海ちゃんの身体で
暴力を振るっちゃってごめん”と
謝罪したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
竜平は”希海の身体の主導権を握ることが出来るー”
ということを知ってしまったー。
恐らくー
”強く”願えば、表に出ることが出来るのだろうー
と、いうことはー
”心から強く願えば、成仏することもーーー???”
「----」
希海が、竜平の墓の前で手を合わせるー
”いいって…俺のことは”
竜平が苦笑いするー
「--ううん。2度も助けられたんだし、
やっぱり、竜平はわたしのヒーロー」
希海がそう言うと、
ちょうど、竜平の母親と鉢合わせしたー。
会釈する希海ー
”竜平が、わたしの中にいるんです”などと言えるはずもなく、
雑談を交わす二人ー。
「--ー”僕は人を助ける仕事に就きたい”
竜平は、いつもそう言ってましたー
事故の3日前も
”僕は妹を助けられなかった分まで、誰かを助けたいんだ”
なんて言ってましたからー」
母親が嬉しそうに言うー。
「-あなたを助けられたこと、本当に誇りに思っていると思いますー」
母親との雑談を終えて、
帰路につく希海ー
”---”
竜平は、何かを考えていたー
そしてー
希海も、帰路の電車でー
”母親のとある言葉”が
引っかかっていたー
「--ー”僕は人を助ける仕事に就きたい”
竜平は、いつもそう言ってましたー
事故の3日前も
”僕は妹を助けられなかった分まで、誰かを助けたいんだ”
なんて言ってましたからー」
母親の言葉ー
”僕”はーーー?
”僕”--???
希海は、表情を少しだけ、歪めたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
この先に待っている結末は、
ハッピーエンド!?
それとも…!?
最終回は明日デス~!
コメント
SECRET: 0
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なんか不穏な感じです。竜平のいいな発言とか、自分の呼び方の違いとか怪しすぎる。
希海を助けたのは偽りない善意のように見えますが…?
結末がどうなるのか凄く楽しみです。
SECRET: 0
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コメントありがとうございます~!
あっと驚く結末になっている…かも?デス!
明日もぜひ楽しんでくださいネ~!