<憑依>わたしのヒーロー②~共同生活~

自分の命の恩人が、
気づいたら自分の中にいた!?

ひとつの身体に2つの精神ー。
彼女と彼の運命は…?

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”ふ~ん、いい学校だなぁ~”
竜平が呟くー

「でしょ~?こうして今、ここにわたしがいられるのも
 竜平のおかげー」

希海の身体に竜平が宿っていることを、
竜平自身が打ち明けてから2日ー

二人は、この状況にもある程度慣れてきていたー。

”ははは、希海ちゃんが助かって本当によかった”
竜平が笑うー。

ふたりは、自己紹介をしてから、
”これからずっと一緒にいるんだし”と
お互いを名前で呼び合うようにしていたー。

「--あ、そうだ!竜平って、その…
 勉強、得意?」

希海が、ボソッと呟くと、
竜平は”う~ん、まぁ結構できるほうかも”と答えたー

「--と、いうことは!」
希海が笑みを浮かべるー。

「-来週のテスト…!手伝ってもらえる?」
希海がお願いするかのように呟くと、
竜平は”ははは”と笑ったー

”それは、ダメ”
とー。

「--ケチ~」
希海が頬を膨らませながら呟くと、
「--ねぇ」と背後から声を掛けられたー

「ひぇっ!?!?!?!?」
希海は思わず驚いて飛び上がってしまうー。

「-さっきから、一人でブツブツ言ってるみたいだけど、だいじょうぶ?」
とー。

「--あ、、えっ!?!?えっ!?
 え、、え、、え、演劇部のれんしゅうぅぅぅ!」

希海が真っ赤になりながら叫ぶー

「--希海、演劇部じゃないじゃん!」
友達・真礼(まあや)のツッコミに希海は
さらに顔を真っ赤にするー。

「--希海ってば、
 彼氏できないからって、
 妄想で彼氏作らなくても~」
真礼が笑うー。

「--ちがーーう!」
希海が真礼の頭をぺしっと戦う。

希海と真礼は小さいころからの親友で
何でも言い合える間柄ー。

”--いいな”
竜平が呟くー

「え?」
真礼が立ち去ったあと、竜平が呟いた言葉に
希海が首を傾げると、

”あ、いや、幼馴染的な関係、いいなって思っただけ”と
竜平が笑ったー

「--あ~~うん、真礼ちゃんは小さいころから
 ずっと仲良しだからね~
 たまに失礼なこと言われるけど」

”ははは
 それだけ仲良しってことだろ?”

竜平の言葉に、希海は「うん。そうだね」と、頷くー

”ところでーー…
 俺の声は周囲に聞こえないみたいだから、
 あんまり学校では俺、話しかけないようにするよ”

と、竜平が呟くー

「え?あ、、うん…ごめんなさい」
希海の言葉に、竜平は
”謝ることじゃないさ”とほほ笑んだー。

竜平と希海が会話すればー
周囲からは
”希海が独り言”をぼそぼそと呟いているように
どうしても見えてしまうー

今も既に親友の真礼に見られてしまったし、
あんまり独り言ばかり呟いているように
思われてしまうと、
希海のためにも良くないー。

竜平はそう考えて、学校では話しかけないようにしたー。

「---ねぇねぇ、望海ってば~」
真礼が他の友達に笑いながら言うー

「こらー!真礼!」
希海が真礼に向かって叫ぶー

笑う真礼ー

”いいなー”
竜平は、静かにそう呟いたーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーうん。これはそう、、うん、そうだね、うん!よろしく!」
希海が文化祭実行委員の後輩に優しく話しかけるー

「先輩~!」
今度は生徒会の後輩から声を掛けられて
希海が優しく応対するー。

「ーーーあ、希海~ここ教えて~!」
今度は友達に声を掛けられる希海ー

希海はイヤな顔ひとつせずに、
優しく対応しているー

”頼れる優しいお姉さん”のような感じだー。

”いい子なんだな…”
竜平は、素直に関心したー。
ちょっとドジなところもあるように見えるけれど
本当にいい子だと思うし、
周囲からも信頼されている様子がよくわかるー。

「ーーそんなこと言われちゃうと、照れちゃうよ~」
希海が笑う。

”--えっ!?”
竜平は驚くー

”えっ!?今の聞こえた!?”
竜平の言葉に、希海はー

「聞こえたよ」
と、微笑むー

”な、、なんだぁ…ごめん”
竜平が呟くー

いつの間にか心の中で考えていたことを
希海の中で口にしてしまっていたらしいー

”まだうまく、コントロールできなくてさぁ…”
竜平の言葉に、希海は笑うー。

「-わたしもまだ慣れないところばかりだし、全然大丈夫
 いっしょにうまくやっていこ?」

希海はー
”助けてくれたあなたと身体を半分こ”
そう言ってくれたー。

竜平はすぐに希海の身体から出ていく方法を
探すつもりだったが、
希海の言葉で、少なくとも、希海から拒絶されるまでは
この身体にいよう、と思ったー。

「---希海~!」
背後から声を掛けられる希海ー

「ひぇっ!?」
希海が飛び上がるー

「-また独り言~?」
親友の真礼がニヤニヤしながら希海の方を見つめていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

文化祭実行委員ー
生徒会副会長としての仕事ー
部活動ー

”すごいな…”
下校中の希海に竜平が語り掛けるー。

「--そんなことないよ~
 ひとつひとつ、一生懸命やってるだけで
 大したことできてないし…

 竜平は分かってると思うけど、
 わたし、本当は結構ドジなんだけど、
 みんなには頼れるお姉さん、みたいに
 勘違いされちゃってるし」

希海の言葉に
”自分でドジを自称するなんて…”と
竜平が笑うー。

「--ー」
あの日、事故に巻き込まれた現場を見つめる希海ー

「------」

”--気にするなって。
 俺は、希海ちゃんを助けることが出来て本当に満足してる”

「---…うん」
希海がそう呟くー

「--でも…わたしの中にいるだけじゃ…やっぱつまらないよね?」
希海の言葉に、
竜平は”そんなことないさ”と笑うー。

”こうして、希海ちゃんと話すこともできるし
 死んで何もない真っ暗な世界に行くより、全然マシだろ”

竜平の言葉に
希海は「そっかー…」とほほ笑むー

「--天国とか、地獄とかって、やっぱりないのかなー」
空を見上げる希海ー

”--どうだろうな…”
竜平は、少しだけ寂しそうにそう呟いたー

「--たまには、わたしの身体を少しだけ貸してあげる、なんてことが
 できればいいのにね~?」
希海が冗談を口にすると

”それはさすがにまずいだろ”と
竜平は笑ったー

「--でも、やろうと思えばできるんじゃないの~?」
希海の言葉に、竜平は”じゃあ…やってみるか?”と
冗談を返すー。

「--家に帰ったら試してみよ!」
希海は案外冗談では無さそうだったー。

竜平としては
希海の身体の主導権を握りたい、なんて
全く思ってもなかったし、
考えたこともなかった。

そんなことをされれば、やはり希海から
してみれば怖いだろうし、
他人の身体を自由に乗っ取る、なんてことは
竜平からしてみれば、あまり良い印象のあることではなかったー

だがー
希海が”どうしても”というので、
希海の身体をなんとか動かしたりできないかどうかを
試してみるー

結果的にー
竜平が希海の身体を動かすことはできなかったー

「なぁ~んだ」
希海が呟く。

”ははは…まぁ、俺はこれで十分だから”
竜平の言葉に、
希海は「--テストとかだけ変わって貰おうと思ったのに」と
ボソっと呟いたー

”こらっ!”
竜平が笑うー

「--ふふふ、
 …まぁ、本当は少しだけでも竜平に
 生きている空気…というか、そういうものを
 感じさせてあげたかったというか…」
希海が寂しそうに呟くと
竜平は”その気持ちだけで十分だよ。ありがとう”と
優しく微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人の共同生活は続くー
やがて、1週間が経過し、
文化祭本番の日もやってきたー

楽しそうに、親友の真礼と一緒に文化祭を楽しむ希海ー

そんな真礼の姿を、見つめながら竜平は望海の中で微笑むー。

文化祭の幸せな時間は過ぎ去っていくー
希海は時折、誰もいない場所で竜平に話しかけながら、
竜平も、希海の身体を通じて、
文化祭の空気を味わっていたー。

しかしー
希海が真礼と別れて一人で行動しているその時だったー

「--おっ!かわいい子はっけ~ん!」
明らかに柄の悪い男三人組が希海の方に近づいてきたー。

ちょうど希海が、教室に置いてきた忘れ物を
取りに戻っていた最中の出来事で、今、この場所には、
ほとんど生徒も先生もいないー。

「--え…あ、、あの…」
希海が戸惑っていると、
金髪の男が笑みを浮かべたー

「-なぁ姉ちゃん、俺たちとちょっと遊ばない?」

「--あ、、あの…わたし、急いでるので」
希海は頭を下げてそのまま立ち去ろうとしたー。

しかしー
三人組のひとりー
茶髪にピアスの男が希海の腕を掴んだー。

「--ちょ!?やめてください!」
希海が思わず声を上げるー

”--逃げろ!”
竜平が叫ぶー

「--逃げろって言ったって!?」
希海が声を上げると、
三人組のもう一人の、スキンヘッドの男が
「何言ってんだぁ~?」と笑みを浮かべたー

三人が笑いながら望海に乱暴しようとするー

「おい!教室の入口閉めとけ!」
金髪の男がスキンヘッドに指示をするー

悲鳴を上げる希海ー

希海の制服を脱がせようとする男たちー

”--希海ちゃん…!”
希海の身体の中にいる竜平は願ったー

”希海を助けたい”
”この子を助けてあげたい”

とー。

心からーー
強くーーーー

「----!」
気づいたときにはーーー

「---あ?」
金髪の男が、希海の目を見つめるー。

さっきまで悲鳴を上げていた希海がー
鋭い目で金髪の男を見つめていたのだー。

「---離せよ」
希海が低い声で言ったー

「-!?」
金髪の男が驚くー

「離せってんだよ!」
希海が可愛くも迫力のある声で叫ぶー

金髪の男が逆上して希海に殴りかかるー

希海は、その手を乱暴に掴むとー
男を、何かの格闘技の技で投げ飛ばしたー

金髪の男が机に激突するー

茶髪ピアスと
スキンヘッドが向かってくるー

しかしー

「--この子に手出しはさせねぇ」
希海はバク転して、茶髪ピアスの攻撃を避けると、
足を茶髪ピアスの肩に引っ掛けて、投げ飛ばしたー

ふわりとするスカートー

顔を赤らめるスキンヘッドの男に
希海は回し蹴りを食らわせると、
三人の男は悲鳴を上げながら逃げて行ったー

「---はぁ…はぁ…」
希海が壁に寄り掛かるー

”え……これって…?”
希海の頭の中に響くのはー
希海本人の意識の声ー

「---………はぁ…ごめん…
 君を守りたくて、つい…」

”希海ちゃんを助けたい”
そう願った竜平はーー
希海の身体の主導権を奪いー
表に出て来ることが出来てしまったのだったー

”--……すごい…”
希海の意識が唖然としているー

希海を支配した竜平は
目を閉じるとーー

再び、希海の意識が表に出て来たー

「----…わたしの身体、使うこともできるんだね…
 ありがとう!」
希海は、不良たちから助けてもらったことにお礼を告げたー

竜平は”いや、いいよー。それより、希海ちゃんの身体で
暴力を振るっちゃってごめん”と
謝罪したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

竜平は”希海の身体の主導権を握ることが出来るー”
ということを知ってしまったー。
恐らくー
”強く”願えば、表に出ることが出来るのだろうー

と、いうことはー
”心から強く願えば、成仏することもーーー???”

「----」
希海が、竜平の墓の前で手を合わせるー

”いいって…俺のことは”
竜平が苦笑いするー

「--ううん。2度も助けられたんだし、
 やっぱり、竜平はわたしのヒーロー」

希海がそう言うと、
ちょうど、竜平の母親と鉢合わせしたー。

会釈する希海ー

”竜平が、わたしの中にいるんです”などと言えるはずもなく、
雑談を交わす二人ー。

「--ー”僕は人を助ける仕事に就きたい”
 竜平は、いつもそう言ってましたー

 事故の3日前も
 ”僕は妹を助けられなかった分まで、誰かを助けたいんだ”
 なんて言ってましたからー」

母親が嬉しそうに言うー。

「-あなたを助けられたこと、本当に誇りに思っていると思いますー」

母親との雑談を終えて、
帰路につく希海ー

”---”
竜平は、何かを考えていたー

そしてー
希海も、帰路の電車でー

”母親のとある言葉”が
引っかかっていたー

「--ー”僕は人を助ける仕事に就きたい”
 竜平は、いつもそう言ってましたー
 事故の3日前も
 ”僕は妹を助けられなかった分まで、誰かを助けたいんだ”
 なんて言ってましたからー」

母親の言葉ー

”僕”はーーー?

”僕”--???

希海は、表情を少しだけ、歪めたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

この先に待っている結末は、
ハッピーエンド!?
それとも…!?

最終回は明日デス~!

コメント

  1. 匿名 より:

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    なんか不穏な感じです。竜平のいいな発言とか、自分の呼び方の違いとか怪しすぎる。
    希海を助けたのは偽りない善意のように見えますが…?
    結末がどうなるのか凄く楽しみです。

  2. 無名 より:

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    コメントありがとうございます~!

    あっと驚く結末になっている…かも?デス!
    明日もぜひ楽しんでくださいネ~!